廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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キャノンボール・バンドの凄み(2)

2022年05月15日 | Jazz LP (Riverside)

The Cannonball Adderley Sextet / In New York  ( 米 Riverside RLP 404 )


キャノンボールのセクステット名義で出ているアルバムは4枚だが、そのどれもがライヴ・アルバム。その理由について、オリン・キープニューズは
近年のテープ録音機やマイクの性能の大幅な向上でライヴ会場の興奮の様子がそれまで以上に上手く録れるようになったことを挙げている。
特にキャノンボールのバンドの演奏に対するオーディエンスの熱狂は凄まじく、この様子を録ることがキャノンボールの音楽の本質を把握するのに
1番相応しいのだ、と。

彼がそう考える契機となったのがラティーフが加わる前の1959年10月のサン・フランシスコのライヴハウス "The Jazz Workshop" での
クインテットのライヴ録音だった。当時のサン・フランシスコには彼の基準に適う録音機材が揃った録音スタジオがなかったので、仕方なく
ライヴハウスに機材を持ち込んで録音をしたのだが、このアルバムが見事にヒットした。これが彼のアルバム作りの方向性を決めることになった。

考えてみれば、この時期のリヴァーサイドにはライヴ・アルバムの傑作が多い。ビル・エヴァンスのヴァンガード・ライヴもこうした背景をもとに
生まれたということになるのだから、これもキャノンボールとの縁ということになるのかもしれない。物事は見えない糸で繋がっている。

このアルバムも非常に多彩な内容だ。ジミー・ヒース作の名曲 "Gemini" 、旧き良きビッグバンド時代を再現したような重奏のしっかりとしたもの、
映画 "フレンチ・コネクション" の中で流れていたような水面下で悪事が進行している様子を予感させるようなダークな曲想のものなど。
皆それぞれがコンセプトの明確な楽曲ばかりで、1回のライヴでここまで満足させられるセット・リストはまずないだろう。そして、どの演奏も
本当に上手くて、観る側に熱が入るのは当然だ。こんなライヴなら私も観たかった。キープニューズの考えは正しかったと思う。



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