Urbie Green / Blues And Other Shades Of Green ( 米 ABC-Paramount ABC-101 )
トロンボーンという楽器は実際に実物を目の前で見ると、その大きさに驚かされる。 こんなに大きいんなら、さぞかし大きな音が鳴るんだろうなと思うけれど、
そういう印象がそのままこのアルバムを聴いた時の印象と重なる。 とにかくトロンボーンがとても大きな音で朗々と鳴っている演奏だ。
デイヴ・マッケンナやジミー・レイニーを配したアメリカの田舎を連想させる古き良きジャズを大柄なトロンボーンのワンホーンでゆったりと歌う演奏だけど、
アービ-・グリーンの垢抜けたセンスが音楽を野暮ったい雰囲気から救っていて、スマートで都会的なところもある絶妙にバランスのいい内容になっている。
選ばれたスタンダードは古い歌物、自作はブルース、ということで小さなバーのテーブル席で酒を飲みながら聴くともなしに聴いているのが似合う感じだが、
そういう雰囲気だけでは終わらない。 速く吹くことだけが凄いわけじゃない、と言わんばかりに終始ゆったりと伸びやかに吹く。 J.J.ジョンソンなんかとは
ある意味対極的な演奏で、これがものすごく説得力がある。 他の楽器では決してこういう良さは出せない。
マッケンナもアービー・グリーンの雰囲気に合わせたのか、いつもよりもぐっと抑制した趣味のいいピアノを地道に演奏している。 この人は弾き過ぎると
ちょっと1本調子で飽きがくるのが早いけれど、ここでは陰影感も漂う魅力的なピアノを弾いている。
わかりやすい音楽に徹しているけれど、同時に質の高さも維持していて、知と情のバランスがとれた「隠れた傑作」という言葉がよく似合う。