Lee Konitz / Konitz ( 米 Storyville LP 313 )
昔、このレコードは憧れの1枚だった。 はっきりとは覚えていないけれど、たぶんスイング・ジャーナル誌でこのジャケットを見たんだと思う。
それまでに見たことがないようなアート・ワークにすっかり心奪われた。 このジャケットを見ていると、それまでは知らなかった未知なる世界の存在を
知った、という感覚になった。 当時の自分の中にあった心象風景の何かを象徴していたんだと思う。 そういう特殊なレコードだった。
当時通っていたヴィンテージ・マインで時々このレコードを見かけるようになったのはちょうどその頃だったと思う。 でも、簡単に手を出せるような値段では
なかった。 そのジャケットを手に取って眺めては、ため息交じりに棚の中に戻していた。 見かけるたびにドキドキしながらも、手の届かない存在だった。
そういう特別な憧れを抱かせたのは、何もジャケットのアート・ワークだけのせいではなかった。 リー・コニッツのアルトが青白い炎が揺れるように漂う様が
何とも妖しく幽玄で、それまで聴いたことが無いようなこの音楽にもやられていたからで、この内容でなければそこまで憧れるようなことはなかった。
当時は新宿のユニオンの地下で見つけた国内盤の12インチ盤で聴いていた (これだって、相当珍しい廃盤だった)。
コニッツがやったこの音楽は、通常のジャズという言葉では括り切れないようなところがある。 それがトリスターノの影響なのかどうかはよくわからないけれど、
彼が他のジャズミュージシャンたちと比べて異質なイメージがあるのは、この時期にやっていた音楽が人々の印象に大きく作用しているのは間違いない。
25年振りくらいにこのレコードを改めて聴いたけど、ものすごくくっきりとリアルで生々しいアルトの音が出てくるのにとても驚いた。 当時とは使っている機器も
聴いている環境も違うから印象が違うのは当然だけど、その頃持っていた盤はそれほどいいコンディションではなかったせいもあるかもしれない。
今ではどこに行っても頻繁に見かけるようになっていて、このレコードは日本に一番たくさんあるんじゃないのか、と思ってしまう。 上記のような昔話からは
考えられないくらい現在の中古市場の状況は変わってしまったけど、何でも簡単に手に入ることがいいことなのかどうかはよくわからない。
憧れのマドンナは永遠にマドンナのままでいて欲しかった、とDUで見かけるたびに寂しい気持ちになる。
コニッツは名盤が他にもあると思いますが、これが好きでたまりません。今、聴き直しましたが良いです。
ストリービルはプロモーションがヘタでこのレコードもそれほど売れなかつたと聞きましたが、その売れなかったレコードが日本にいっぱいある。(笑)
このジャケットは本当にコニッツの音楽にピッタリだと思います。
モダンが少ないラインナップの中で、コニッツのシリーズは貴重な遺産になりました。
コニッツのいい時期を上手く録ったのはなかなか慧眼だったと思いますね。