廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

リーダー作があまりない人 ~その4~

2019年08月18日 | Jazz LP (Storyville)

Ellis Larkins / Perfume And Rain  ( 米 Storyville LP 316 )


エリス・ラーキンスをこのタイトルで括るのはおかしいかもしれない。 デッカにリーダー作が数枚残っているし、近年にも数枚リリースされているし、
伴奏者としても多くの演奏が残っている。 しかしデッカのアルバムは軽音楽の度合いがより強くて私のようなジャズオヤジには手を出しにくいし、
伴奏物はあくまでも伴奏者としての演奏なので本人の本領が発揮された内容とは言えない。 そう考えると、目ぼしいところはストーリーヴィルの
2枚ということになる。 実際のところ、エリス・ラーキンスのアルバムは?と言われれば、その2枚以外は頭に浮かんでこないのである。

趣味の良さでは右に出る者はおらず、レイドバックした内容とは言え、完成した世界がある。 このピアノを聴いていると、案外レッド・ガーランド
なんかもここを目指したんじゃないかと思えてくる。 2人の音楽の質感には似ているところがある。 

歌伴でもソロでも決してペースを崩すことなく、出しゃばったり脱線することなく、淡々と弾き続ける。 そういう穏やかな演奏を聴いているうちに、
音楽は目に映る光景や記憶の中にじわじわと溶け込んでいき、ピアノ音楽を聴いているという感覚はゆっくりと消えていく。 時間の感覚を失った
ようにゆらゆらと漂う感じが続き、気が付くと音楽が終わっている。

誰かと競うことなく、争うこともなく、自分らしさを貫いた人だけが作れる世界だろう。 それを維持し続けるには相応の厳しさも必要だったはずで、
そういう中で贅肉は落ち、純度は上がっていき、まるで美しく研ぎ澄まされた工芸品を見ているような感覚になる。

少しくぐもったような音場感なのに音楽は凛として鳴っている。 脆く繊細なようでいて、容易には壊れない芯の強さをも感じる音楽である。




Ellis Larkins / In An Ellington Mood  ( 米 Storyville STLP 913 )


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