Ella Fitzgerald / Ella Wishes You A Swinging Christmas (米 Verve MG V-4042)
タイトルが示す通り、フランク・デ・ヴォル指揮のビッグ・バンドをバックにエラが歌う明るく朗らかなクリスマス・ソング集。
家族や親戚、親しい友人が集まる夜の団欒のために、人混みで賑わう市場で食糧や飲み物を買い込んでいる時に感じる、
慌ただしくも幸せな気分を表現しているという感じだろう。
クリスマスには対立する2つのイメージがあるように思う。大勢で賑やかに祝うクリスマスと、大切な人・教会などで静かに祝うクリスマス。
暖かい家で家族や友人と共に過ごすクリスマスと、寒空の下で一人孤独に過ごすクリスマス。
このアルバムは言うまでもなく、前者の明るいムードのクリスマスだ。
エラもスタジオ録音らしく落ち着いた様子でわかりやすく歌い、とても聴き易い。唯一の欠点はバックのビッグバンドのアレンジが凡庸で
つまらないことだが、エラの上手い歌がその欠点をかなりの面でカバーしていると言っていいだろう。個人的にはもっとしっとりとした
ストリングスのアレンジで聴きたかったが、こういう明るい雰囲気も悪くはない。おちゃらけた幼稚な装飾を入れたりすることなく、
至ってストレートなジャズのアレンジとなっているのがまずまずよかったと思う。
ジャケットに描かれた馬はまるでピカソがキュビズムの時代に描いた馬のようで、如何にもパブロ・ピカソを愛したノーマン・グランツらしい。
音質も良好で、観賞する上では何も問題ない。
エラは丁寧ではあるが思い入れたっぷりという感じではなく、意外とさらりと歌っているので、聴いた後にあまり音楽的な余韻が残らない。
そこが惜しいかなと思う。せっかくのクリスマス・アルバムなんだから、もう少し特別感があってもよかった。