廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

何かが忍び寄ってくるような

2017年12月30日 | Jazz LP (Prestige)

Curtis Fuller And Hampton Hawes With French Horns  ( 米 Status 8305 )


これは評価が難しい作品だ。 今までとは違う新しい何かを模索しようとしている様子があるけど、従来の延長線上の単なる相似形のようでもある。
何かやらなければいけないという切迫感に追われながらも、どうすればいいのかよくわからない、そういう戸惑いも感じる。

カーティス・フラーにアルトのサヒブ・シハブ、ハンプトン・ホーズという組み合わせだけでも珍しいのに、そこにフレンチ・ホルンが2本加わっていて、
そういう異色の組み合わせをすることで新しい何かが出てくるんじゃないかという狙いがあったのは間違いない。 確かにあまり聴いたことがないような
サウンドになっていてそこは印象に残るけれど、各人の演奏が従来の演奏をそのまま持ってきているので、そこに新しさが見られない。

その一方で、テディー・チャールズやホルンのデヴィッド・アムラムが作ったオリジナル曲の雰囲気が独特なテイストで、そういう不思議なムードを持った
楽曲だけで固められたところは新しい。 従来の方法論でそういう新しい空気感を演奏しようとしたところに、振り切れていない手探り感が生まれるのだと思う。

管楽器の演奏はどれもしっかりとしていて、聴き応えは十分。 サヒブのアルトが音圧が高くこちらに迫って来るし、フラーのトロンボーンも安定している。
フレンチ・ホルンはあまりハーモニーに貢献していない感じだけど、これはアレンジが悪いせいだろう。 アディソン・ファーマーのベースがいい音で録れていて、
これが重低音としてかなり効いている。 残念なのは、ホーズのピアノ。 一人だけバップのピアノを弾いていて、空気が読めていないのか、これしかできない
からなのか、何にせよここでみんながやろうとしている音楽に全くそぐわない演奏をしている。 これは人選ミスだった。

楽曲がスタンダードの類いではないので、演奏者たちが共通のイメージを掴みきれずに音楽を進めているようなところがあるし、聴いているこちらも耳慣れない
曲ばかりなので、この音楽に関わる全員が暗黙の合意を持てない状態に置かれる。 こういうのは共通の約束事に満ち溢れたハード・バップの時代にはないことで、
未知の何かが足音もなく忍び寄ってきているのを感じずにはいられない。

録音はヴァン・ゲルダー・スタジオで、本人のカッティングでレコードは作られている。 完成したRVGのモノラルサウンドが聴ける。

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