廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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OJCのビル・エヴァンス(3)

2020年12月17日 | Jazz LP (Riverside)

Bill Evans / Moonbeams  ( 米 OJC-434 )


OJCのレコードは1990年、2002年、2009年にプレスされている。所有盤は1990年もの。

A面 OJC 434 A1 G1 A5 (T)
B面 OJC 434 B1 G1 A1 (T)

これはとてもいい音だ。OJC盤に共通しているのは、ベースの音が大きくクリアに刻まれていること。
そのおかげで、サウンド全体のバランスがとてもいい。これがオリジナルとは決定的に違う。

ピアノの音色が艶めかしい。特に弱音の繊細な表情は見事だ。フォルテの箇所や和音も音が潰れていない。
モチアンのブラシは鳥が羽を震わせるような感じで聴こえてくる。

こういうデリケートな音場感が、このアルバムの演奏には相応しい。音楽の特性にうまく寄り添った音作りで、
エヴァンスのやろうとしたことが見事に再生されていると感じる。アーティストとサウンド・ディレクトとの
幸せな邂逅を見る想いだ。





オリジナルのステレオ盤は、モチアンのスネアの音に硬さが見られる。ベースの音もやや後退気味で、ピアノが前面に
押し出されたマスタリングのようだ。これが当時の標準的な音作りの考え方だったのだろう。

全体的に音質としては大きく気になるところはなく、音楽に集中できる。ただ、OJC盤は一聴してすぐに「いい音だな」と
無条件に感じる何かがあるのに対して、オリジナルの方はよく聴き慣れた60年代プレスのレコードという感じだ。

このオリジナルは両方ともRIAAカーヴで再生するのが一番いい。デッカ・カーヴだとバランスが崩れる。
タイトルによって、なぜこういう差異が見られるのかはよくわからない。

このアルバムは、よく言われる「静的な演奏だけを集めた」ことに特徴があるのではなく、"Re : Person I Knew" で始まり、
"Very Early" で幕を閉じるところに意味がある。エヴァンスが自作曲に込めたメランコリックな雰囲気が何より素晴らしく、
この2曲が聴きたくてターンテーブルに載せると言っても過言ではない。ジャズの一般概念ではうまく捉えることができない、
本当の意味でオリジナリティーが際立つ作品だと思う。


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