Randy Weston / The Modern Art Of Jazz ( 米 Dawn DLP 1116 )
ランディ・ウェストンを語る時にセロニアス・モンクとの類似性が出てくるのは尤もな話だ。調子外れのリズム、不協和音、へんてこりんなフレーズ、
そのどれもがモンクを彷彿とさせる。物真似をしている様子はなく、この人もモンクと同じ空間に生きているんだなという感じがする。
ただ、よくよく聴いていくと、モンクよりも中心からずっと離れた外縁部に近いところにいるように思う。モンクは意外とジャズという音楽のコアの傍にいて、
演奏面でもラグタイムなどの古いジャズがベースにあることからもそれが明確だ。それに比べて、ランディ・ウェストンはジャズというアメリカ音楽ではなく、
第三世界の土着的音楽が根っこにあるような感じで、そういう器にジャズの要素をブレンドしたような音楽を聴かせる。そういう意味では、よりラディカルと
言えるかもしれない。
初期の活動にはセシル・ペインと活動を共にし、バリトンという異色の楽器を暗い隠し味として使っているような感じで、メロディアスに歌わせることは
させなかった。スタンダードを演奏してもメロディーを美しく奏でることもなく、音楽全体が奇妙に歪んでいる。その歪みをそのまま楽しめるかどうかで、
この人への評価は変わってくるのだろう。
そういうこともあって、高名な割には人気はなく、その音楽を語られることもないけれど、意外にレコードはたくさん残っていて、当時は今よりもずっと高く
評価されていたことが伺える。白人をメインに使った作風が多いこのレーベルに、急にポツンとこの人のアルバムが出てくるのも不思議だが、彼の知性が
レーベルカラーに違和感なく溶け込んでいる。カゼヒキ盤ばかりで通常とは違う意味で中々買えない盤だが、フラットディスクのきれいなものが転がって
いたので、ようやく家で楽しんで聴けるようになった。カゼヒキもなく、値段も安かったが、こればかりは気長に待つしか手がない。