廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

国内盤の底ヂカラ(その7)

2020年04月04日 | Jazz LP (国内盤)

Albert Ayler / My Name Is Albert Ayler  ( 日本ビクター SFON-7053 )


このレコードはオリジナルがずっと欲しかった。でも、きれいなものは10万円で、まあ一生縁がないから、国内盤で手を打つしかない。
そこでペラジャケの出番、ということになる。

いわゆるフリー・ジャズの巨人の中では、アイラーは異例なほど多くの人によってたくさん語られる。セシル・テイラーは語るには難解過ぎるし、
オーネットは掴みどころがない。それに比べてアイラーはある意味語りやすいところがあるし、人々に語りたいという衝動を抱かせる何かがある。

アイラーを語る際には、ひとまずこう言っておくとよい。「凄まじい咆哮、しかし、意外なほど普通で聴き易い」と。
これは揶揄しているのではなく、事実、そうだからだ。

アイラーの代表作と言えばスピリチュアル・ユニティーというのが大方の意見で、私もそのことには特に異存はない。何しろ聴いていて楽しいし、
ひとつのスタイルを作ったという意味でも重要な作品だと思う。でも、聴く機会が多いのは、圧倒的にこの "マイ・ネーム・イズ~" の方だ。
ペデルセンを含む北欧デンマークの優秀なピアノトリオが極めてデリケートで洗練されたバックとして典型的な欧州ジャズを展開、その中で
アイラーが蘇った伝説の怪物の如く、艶めかしくうねる。この奇跡のような音楽が放つ不思議な美しさをどう説明すればいいのか。

このペラジャケは驚くような高音質で、オリジナルが欲しいという気持ちはどこかへ消えてなくなり、2度と戻ってくることはなくなる。
適切に調整された環境で再生すれば、国内盤はしっかりとした音で鳴る。これを聴いて音質に満足できないのだとしたら、再生環境のバランスが
極端に悪いか、若しくは相当に偏屈な人柄だということだろう。音楽が好きなら、国内盤の良さにもっと目を向けるべきだと思う。


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