Charlie Parker / Now's The Time ( 米 Verve MG V-8005 )
結局、ここに戻って来てしまうということか。 いろんなタイプのジャズを聴いてみても、最後はここに戻って来てしまう。
この不遜に据わった目付きはどうだろう。 何を見ているのかはわからないが、どことなく恐ろしい目付きだ。 アルトの音も、演奏するフレーズも、
そしてその外見も、すべてがデーモニッシュな人だった。 すべての面に静かな狂気を湛えている。 この人が演奏している映像を見ると、まっすぐに
前を見据えるその姿は、どこか仏像を連想させる。 人間が昇華して、何か別の存在になったかのような、そんな印象を強く受ける。
ブルース形式の曲がメインとなっているけれど、パーカーの演奏はあまりにもスピード感高く端正で張りが強いので、ブルースにはまったく聴こえない。
ブルースを演奏しても、その独特の雰囲気が支配的なこの形式すら跳ね返してしまうのだ。
パーカーの録音の中では、この時のセッションが最もきれいな音質でパーカーのアルトが録れている。 私はダイヤル・セッションが嫌いで全然聴く気に
なれないし、たくさんあるブートレグもさほど熱心に聴くこともない。 やはり、パーカーはノーマン・グランツ時代が一番いい。
この演奏はSPからLPへの移行時期だったため、クレフから10インチのSPとLPが同時発売されていて一応それらがオリジナルということになるけど、
"Now's The Time"といえば、この12インチの青いジャケットで聴かないと全く雰囲気が出ない。 セカンドプレスにもかかわらず、初版と比べても
音質だって別に遜色ない。 10インチには収まらなかった別テイクが収録されているけれど、演奏レベルはまったく一緒で単にスペースの都合だけで
外されていたのがわかる。 ならば、すべて聴きたい。 こんなにも素晴らしい演奏なのだから。 このレコードはセカンドの方が勝ち、である。
Charlie Parker / Charlie Parker ( 米 Clef MG C-157 )
パーカーを沢山持っている方ではありませんが、私も一番聴くのはコレです。「歌こそは君」やchi-chiを聴くと過去に連れ戻されるような、所謂音楽的効用を一番強く感じるディスクです。
あ、ピアノはハンクジョーンズですね。以前紹介頂いたエルビン盤のハンクジョーンズは実にヨカッタです。
それは例えば、楽器を大きな音で鳴らすこと、旋律をはっきりと歌わせること、正確なタイム感で演奏すること、自分だけの音色を持つこと、そういう所に音楽の基本と正体を見るような気がするのです。
私がパーカーが本当の凄いと思うのは、そういう所なんです。
エルビン! のハンク・ジョーンズ、良かったですか。そうですよねえ。非常に印象的な演奏をしてます。
でも、このパーカーのセッションは、アル・ヘイグとのセッションの方が個人的には好きかなあ。