V.A / Jazz City Presents・・・・・ ( 米 Bethlehem BCP-80 )
エサ箱のアーティスト名を書いた仕切りはたいていアルファベット順に並んでいるけれど、その末席に "V.A" というのがある。これは Various Artists の略で、
誰かのリーダー作ではなく、複数のアルバムからの寄せ集めだったり、ベスト盤のようなアルバムがここには入れられることになるんだけれど、その性格上、
再発盤が多いことや作品としての統一感がないことから、マニアからは相手にされない一画になっている。
でも、それにしか収録されていない楽曲ばかりで構成された立派なオリジナル作品も中にはあって、それはそれで面白い。人気がない分野だからレコードが
出回ることが少なく、今度いつ出会えるかわからなかったりするものだから、見かけたらこうして拾うことになる。
これはベツレヘムと契約していたアーティストたちが一堂に会して、ジャム・セッション的に録音した楽曲で構成されたアルバムで、珍しい顔ぶれとなっている。
セールスなど気にすることなく、やりたいことをやりたいようにやった感があって、これがなかなかいい。
冒頭、ドン・ファガーキストがラッセル・ガルシア指揮の弦楽四重奏団をバックにワンホーンで歌う "I'm Glad There Is You" で始まる。ファガーキストは一流とは
言えないトランペッターかもしれないが、これが大変味のある演奏をしていて、心に刺さるのだ。ビッグ・バンドでの活動がメインだったのでリーダー作は少ない
けれど、ワンホーンのアルバムを聴いてみたかったと思わせるとてもいいプレイだ。こういうアルバムでしかその実像を覗くことはできないのかもしれない。
チャーリー・マリアーノとフランク・ロソリーノのクインテット、ペッパー・アダムスとハービー・ハーパーのオクテットなどが続くが、どれもその場の即席チーム
ながら、ゆるくも朗らかな演奏をしており、なぜかすべてが心に残る。不思議なものだ。
名も無きレコードだけど、聴くことが出来てよかったな、と思わせてくれる。こういうのが拾えてラッキーだった。