Debbie Poryes / Trio ( 蘭 Timeless SJP 203 )
聴き出したらこれが止まらなくなって、結局他のレコードはそっちのけで1日中こればかり聴くことになってしまいました。 それくらい、いいです。
この作品のことは何となく知ってはいたのですが、ジャケットのデザインの印象や近年の録音物であることから、私の苦手なキレイ系なんだろうと勝手に
思い込んでいてこれまでは積極的な興味が持てませんでした。しかし、先日のCD化でオランダのタイムレスの作品だということを知り、このレーベルなら
大丈夫かもしれない、とちょうど思い直していたところです。
本人の公式HPを見ると、ミュージシャンと教師の2足のわらじで忙しく充実した日々を送って来たようで、レコードやCDでしかその音楽を知ることしか
できない我々には、今週末(December 26, 2015)にオークランドでコンサートをやるという案内をただ羨ましい想いで読むことしかできないのが残念です。
このアルバムは欧州滞在中の1982年にオランダで録音された彼女の第一作。 愛らしいワルツ "Sweet Georgie Fame" で始まるのがうれしい。
ベースに主旋律をとらせてピアノはオブリガートにまわるという控えめな幕開きが象徴するように、非常にデリケートなピアノを弾く人です。
音数もあまり多くはとらず、気持ち物足りないかな、というところがもっと聴きたいというふうに繋がっていくようなところがあります。
古い歌物のスタンダードをやる場合はやはりその「歌」をどこまで魅力的に演奏して聴かせられるかが一番大事だと思いますが、ここで取り上げられた
数曲はどれも「歌」の部分を大事にした演奏で、そういう意味ではアメリカのピアノトリオの伝統的な長所がきちんと受け継がれていて、さらに上質な
スイング感もある。 だから一聴すると現代風の真新しい質感であっても、注意深く聴くと黄金期のジャズに通じる良さを感じることができるのです。
おまけに、残響豊かということではないのですが、音質がとてもよく、特にドラムの音の自然さにはちょっと驚きました。 演奏自体はピアノに負けない
くらい繊細なドラミングをしているのですが、何気ないシンバルの響きやスティックやブラシがドラムヘッドに触れる瞬間の音が本当に自然に録られていて、
目の前にドラムセットがあるような錯覚をおぼえるくらいです。 初めて聴くピアノトリオでこんなに感銘を受けたのは、本当に久し振りのことでした。
う~ん、直前まで聴いていたDenny Zeitlinが些か強烈に過ぎたのでしょう、十回程は繰り返し聴いたのでしたが①②共にちょっと喰いたらない印象を持ちました。というよりは、ピアニストの控えめな性格が反映されたトラックになった、と解釈すべきでしょうか。
しかし、よくある凡庸なピアノトリオ作品とは一線を画し、主張のある総じて好ましいピアノ作品に思いました。購入して良かったと思っています。
しばらく時間を置いて、忘れたころにもう一度聴いてみてはいかがでしょう? 気分が変わると、違うところに良さを見出したりすることもあります。
確かに、ちょっと押し出しが弱いと言えば弱いかもしれません。 Zeitlin って、レコードはよく転がってるのを見ますが、聴いたことありません。
強烈なピアノなんですか? じゃあ、テテ・モントリューとかパウエルとか、タッチの強いピアノがお好みなんですね、きっと。
ZeitlinのColumbia作品はどれもピアノトリオとしては別格の出来だと私は思っています。最近、廉価版のCDも出ましたので機会を作って是非聴いてみて下さい。
なるほど、ザイトリンはイケるんですね。では、コロンビア盤を聴いてみます。CDがあるのは有り難いですね。