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Miles Davis / Cookin' ( 米 Prestige PRLP 7094 )
先日、ヤフオクでこのレコードのフラットディスクがかなりの高額で落札されていたのには驚いた。
このレコードには確かにフラットディスクがあるんだけど、私見ではこのフラットはこのレコードの初版ではないと思う。 このフラット盤は材質が軽石や
発砲スチロールのようなスカスカの軽い素材で出来ていて、実際に手で持ってみると直感的にこれはバッタもんだと感じる。 プレスティッジのレコードで
こういう素材を使っている盤は他には見たことがなく、なぜこの番号のフラットだけに使われたのかはよくわからない。
更にこの番号にはレーベルのB面の最後の曲が "Just Squeeze Me" と誤植されたものと、"When Lights Are Low" と修正されたものの2種類があって、
件のフラット盤には後者の修正版が使われていた。 誤植のほうが先発で、修正は後発、と考える方が常識的なので、やはりフラットは初版ではないのだろう。
プレスティッジは他にもマトリクス表記の問題やジャケットの体裁の問題なんかがあって、何が正解なのかがよくわかっていない。 そして一番マズいのは
それらと音質の因果関係がまったくわからない、ということだ。 そういう状態の中で、「オリジナル」と一括りにされて一様に高い値段で売られていることに
誰も違和感を覚えないというのが不思議だ。 ブルーノートの場合はあれだけ細部にこだわるのに、プレスティッジに対しては急に大らかになる。
まあ、これだけ値段が高いと複数枚買って聴き比べるなんてことは普通の人にはできないから、こればかりは仕方ないのかもしれないけれど。
このアルバムは "My Funny Valentine" がマイルスの生涯の中でも最も優れた演奏の1つだけど、それ以外の演奏は集中力の欠いた散漫な出来でつまらない。
この4部作はそういう風に曲単位で出来不出来の落差がはっきりしていて、出来のいいものが4枚に万遍なく配置されている。 だから、結局のところ我々は
4枚すべてを聴かざるを得ない。 それに加えて何が初版かもよくわからないんだから、あまり高い値段で取引するのは考え物ではないだろうか。
中古の値段は市場見合いと言うかもしれないけど、売り手が一定の操作をしている事実はあるんだから、売る側も注意して欲しいと思う。
珍しいものを欲しがるコレクターと、レアなものに高値を付ける売り手。これで成り立っているのが現実かもしれません。
このフラットは昔買った時にがっかりした苦々しい思い出があったので、同じような思いをする人が出なければという想いで書いてみました。 私が当時プレステのフラットに期待したものがこれには無くて、ヤラれた、と思ったものです。
事実をわかった上で高い買い物をするんなら全然いいと思いますが、売り手に不都合な情報は闇に葬られがちです。 プレステのフラットを欲しがる人は、きっとそれが初版だと思い込んでいるでしょうから(それが正しい知識かどうかは置いておいて)。