Curtis Fuller / Sliding Easy ( 米 United Artist UAL 4041 )
裏ブルーノート、と言ってもいいこういうレコードは表側が浴びる脚光が強すぎて、ここまで光が届くことはまったくない。 カーティス・フラーがリーダーで
あること、リー・モーガンがいること、3管の憂いに満ちた分厚いハーモニーでコーティングされていること、などのすべての要素がブルーノートのムードに
包まれているにもかかわらす。
ゴルソン・ハーモニーはハード・バップの中で最も優美で洗練された様式の1つだろうと思う。 これを聴くと、例えばウェストコースト・ジャズのアンサンブルが
如何に無味乾燥でつまらないかがよくわかるし、たった3本の管楽器でエリントン楽団のハーモニーを聴いた時に感じるのと同じような深い充実感を得られる
のがとにかく不思議で仕方がない。 そして、このハーモニーのキーになっているのがカーティス・フラーの滲んだような音色で、これが無いとゴルソン・
ハーモニーは実は成立しない。
それは例えば、同レーベルの "& The Philadelphians" を聴けばよくわかることで、こちらはトロンボーンがいない2管なので、旋律の重ね方は似ているのに
ゴルソン・ハーモニーの妖艶さがなく、それでいてハーモニーを重視するような演奏の建付けをしているので、いくら「木曜日のテーマ」が名曲だとはいえ、
音楽的には物足りない内容になっている。
更に付け加えるとトランペットはモーガンでもファーマーでもさほどハーモニーには影響がなく、これも不思議なのだ。 "Blues-ette" も "Gone With Golson"
もトランペットはいないのに、見事なまでにゴルソン・ハーモニーになっている。 どうやら、ゴルソン・ハーモニーとはカーティス・フラーのためのハーモニー
なのだと言い切ってしまっても間違っていないのかもしれない。
そういうハーモニーに包まれながら、楽曲は進んでいく。 1曲目の "Bit Of Heaven" ではゴルソンのテナーがまるでスタン・ゲッツかと思うような
くすんだような音色となめらかでおおらかなフレーズで驚かされる。 "I Wonder Where Our Love Has Gone" ではフラーの誰かに語りかけるような
吹き方に癒される。 全体的にゴルソンの演奏がとてもいい。
ハード・バップがビ・バップを洗練させたものとして定義されるのなら、これはその完成形の1つと言っていい。 内容だけで言ったら、3大レーベルの比ではない。
音圧の高い分厚く骨太なモノラルサウンドで鳴るのもハード・バップには似つかわしい。 ブルーノートばかり有難がるのはそろそろ止めたらどうだろう。
フラーは時々、こういうバラードの名演を残しますね。
ARTIST HOUSE盤、あちらにはこれまた名曲の "Audrey" がありますねえ。 名曲を名演するんだから、たまりません。
"I Wonder Where Our Love Has Gone"をどうしてもオリジナルで聴きたくて懐具合を気にしながら手に入れた記憶が蘇ります。
いい作品ですね。車の中でもよく聴きます。
前日のデスモンド、同日の別の演奏を収録したARTISTS HOUSE盤を所有しています。
スタイリストの若死に、残念ですね。
確かにBNだけではありませんね。