今週拾った安レコは、アルトの巨匠たちの傑作ライヴ。 趣味の良さと高い音楽性を兼ね備えた、大人のための音楽。
ジャズが好きな人が最後にたどり着くのは、きっとこのあたりだろうと思う。
そういうレコードたちを抱えて店を出て、ドトールで珈琲を飲みながら煙草を燻らせて、三千円でお釣りがくる。
疲れていたはずの週末なのに、家に向かう足取りはなぜか軽い。
The Paul Desmond Quartet / Live ( 米 Horizon SP-850 )
エド・ビッカート、ドン・トンプソンらカナダのギタートリオをバックにトロントのバーボン・ストリートで行われたライヴをベースのドン・トンプソンが
録音した作品。 そのせいか、手作り感と親しみやすい音場感を持ったレコードだ。
デスモンドが作曲した "Wendy" が桜の花のようにほんのりと切ない。 こんな曲を書くんだからなあ。 デスモンド・トーンがどこまでも優しい。
エド・ビッカートのギターも全体のトーンをシックで穏やかに染めていて、上品なことこの上ない。 デスモンド・ファンの期待を裏切ることのない作品だ。
Phil Woods / Live From The Showboat ( 米 RCA Victor BGL2-2202 )
フィル・ウッズ中期の最高傑作はこれだろう。 艶やかで輝くようなトーンで理知的に制御した演奏に終始している。 バックは無名のミュージシャンで
固めているにもかかわらずとても上手くて纏まりのいい演奏をしていて、ライヴにありがちな粗いところはまったくなく、スタジオ録音かと思うような
仕上がりになっている。
軽快に弾むような "A Sleepin' Bee" で始まるとワクワク感が一気に高まってくる。 ブラジリアン音楽のテイストが効いた曲も多く、しっとりと
丁寧に演奏されていて、2枚組の全編が素晴らしい。 こういう作品はジャズではちょっと珍しい。
音質の良さにもぜひ触れておかねばならない。 オーディオ的な快楽度が高く、音楽の素晴らしさをありのままに伝えてくれる。