廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ウィルバー・ハーデンのことを語ろう(2)

2020年02月09日 | Jazz LP (Savoy)

Wilbur Harden / Tanganyika Strut  ( 米 Savoy MG-12136 )


前作 "Mainstream 1958" セッションに引き続き、5月、6月にもヴァン・ゲルダー・スタジオでコルトレーンと録音に入る。カーティス・フラーを呼び、
リズム隊は入れ替えてのセッションだ。タイトル曲は6月のセッションからだが、残りの3曲は5月の収録になる。

冒頭の正に闊歩するような軽快なテーマ部を経て、ハーデンのフリューゲルホーンのソロが始まるとこのアルバムの素晴らしさは約束されたも同然、
という気分になる。この後にコルトレーン、フラーへとソロのバトンは渡されるが、やはりハーデンの歌うようななめらかなソロは群を抜いている。
単純な構成の楽曲と演奏だけどマイナー調の哀感のあるとてもいい曲で、映画やCFのワン・シーンで使われてもよさそうな楽曲だ。

そして、ラストの "Once In A While" でハーデンの抒情的な歌心が炸裂する。コルトレーンもフラーも、先導するハーデンの演奏をお手本にしながら
ゆったりと吹くが、クオリティーでは大きく引けを取る。サヴォイのセッションはリーダー名を特定していないけれど、演奏の内容を聴くと明らかに
ハーデンが全体を主導していることがわかる。まるでこの曲はこういう風に演奏しろよ、と全体に指示を出しているかのようだ。他のメンバーたちは
忠実にそれに従うことで演奏が纏まり、1本のスジが通るようになる。

3管になるとハーデンのソロのスペースも減るが、この人の音色とフレーズの印象は演奏時間の長い短いに関係なく、しっかりと心に残る。
そこが素晴らしいと思う。

ヴァン・ゲルダー独特の残響が効いた翳りのあるサウンド、3管の力量や演奏配分のバランスが取れた構成、わかりやすい曲想など、内容的はまるで
ブルーノートの1500番台後半の雰囲気そのままなのに全く評価されていないのは解せないが、個人的にはブルーノートやプレスティッジばかりを
有難がる世間の風潮は却って都合がいい。こういう優れた内容のレコードが安く買えるからだ。そういう風潮が続く限り、レコード屋へ行って
パタパタとめくっていく楽しみは無くならないだろう。そういう中でウィルバー・ハーデンのレコードに出会えれば最高じゃないかと思う。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウィルバー・ハーデンのことを... | トップ | ウィルバー・ハーデンのことを... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Jazz LP (Savoy)」カテゴリの最新記事