廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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ビリー・ミッチェルを探して (続)

2019年07月15日 | Jazz LP

Al Grey, Billy Mitchell, Lee Morgan, 他 / Dizzy Atmosphere ( 米 Specialty SP-2110 )


50年代半ば頃にディジー・ガレスピーのビッグ・バンドに在籍していた管楽器奏者を集めてガレスピー・バンドのスモール版として企画されたアルバムで、
リー・モーガンやウィントン・ケリーが入っていることで一目置かれる作品。 ただ、アルバム・コンセプトがビッグ・バンドの縮小版なので、全体的に
ハード・バップ・コンボらしい自由さは後退しアンサンブルに比重が置かれていて、ちょっと肩透かしを喰らう微妙な内容だと思う。

まずはリー・モーガンに目がいくが、モーガンがレコーディングデビューして間もない頃の演奏なのでまだ個性は確立されておらず、彼らしいプレイは
聴けない。 ウィントン・ケリーも構成上出る幕は少なく、彼の良さが発揮されているとは言えない。 そこで、ビリー・ミッチェルの出番となる。

このメンバーの中では、ミッチェルがダントツで出来がいい。 ベニー・ゴルソンが編曲スコアを提供した "Whisper Not" ではほんの数小節の登場でも
圧倒的な印象を残すソロを吹いているし、"Over The Rainbow" では冒頭から最後まで彼一人の独断場で、おそらくはこの人の代表的名演と言っていい
仕上がりになっている。 アルバムの最後に置かれていることからも、重要な演奏という位置付けだったのだろうと思う。 そもそも、表ジャケットに
その姿が写っている時点で、彼がどういう立ち位置だったのかが伺える。

多管編成の中でこれだけ目立つ演奏ができるのだから、もっと前に出てリーダー作をたくさん作ればよかったのにと思う。 そうすればテナーサックスの
系譜の中にその名前をきっと残せただろう。 こういう機会喪失してしまったタイプの演奏家はたくさんいるけれど、このミッチェルはその筆頭だった
かもしれない。 ならば、せめて真価を知る我々マニアがスポットライトを充てようではないか。 既に手遅れで遅過ぎる話かもしれないけれど。


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