廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

国内盤の底ヂカラ(その16)

2020年06月02日 | Jazz LP (国内盤)

John Coltrane / Ballads  ( 日本キング・レコード SH 3008 )


これはまずまずの音。コルトレーンのテナーの音色は原盤と比較しても遜色はない。ただ、全体的に音圧が低く、バックのピアノ・トリオの音が
後方へと大きく後退しているので、サウンドの足元が弱く、かなりボリュームを上げて聴くことになる。サックスの音自体は悪くないので、
深夜にBGM的に流す場合はこちらがいいかもしれない。オリジナルは音圧があって、少なくともBGMとして聴くのには向かない。"バラード" と
言いながらも、このアルバムのモノラル盤の音は、聴き手の首根っこを押さえつけて集中して聴くことを強要するようなところがあるから。

このアルバムの評価は難しい。退屈でつまらないアルバムだなと思う時もあれば、心地よい素敵なアルバムだなと思う時もあり、感じ方がどうも
安定しない。どんなタイプの音楽であっても、優れた作品には一時の気分や体調に関係なく圧倒的に感動を産み出す何かがあるものだと思うけれど、
このアルバムにはそういうものが致命的に欠けているのは間違いないように思える。

プレスティジ時代のバラードは純粋に音楽として美しく、深い情感が素晴らしかったけれど、このアルバムでは先のような素直さは薄まり、
どこか濁った感情が混ざっているのを感じる。高音域帯にフレーズのほとんどがが集中しているところにもバラードとしてのマナー違反を感じる。
100パーセントのピュアなバラード集だとは言い切れないところがあり、なかなか込み入っていて複雑なアルバムだと思う。

オリジナルのモノラル盤はサウンド全体が重いのでそういうことを感じる訳だが、このペラジャケ盤のサウンドはもっとスッキリしているので、
カジュアルな感じで聴ける。BGM的にというのはそういう意味であって、別に悪い意味ではない。何でもかんでも深刻に聴けばいいというもの
でもないんだから、そういう聴き方があっても全然いい。


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