Carla Bley / Sextet ( 西独 Watt/17 831 697 - 1 )
ようやく見つけた、カーラ・ブレイの最高傑作。 最愛聴盤なので家聴き用にレコードも欲しかったのですが、これが意外に見つからない。
CDと並行発売されていた時期のこういうレコードは売っても金にならないので出回ることがなく、本当の意味で入手困難盤になってしまう。
ちょうどポール・ブレイが亡くなったというニュースが朝から流れていた日だったので、何か因縁めいたものを感じました。
こんなのジャズじゃなくてフュージョンじゃんか、という話もあるけれど、フュージョンで大いに結構。 私はフュージョンが大好きだから。
カーラ・ブレイは人気があるのかないのかがよくわからない人です。 アメリカ人にしては珍しく芸術家っぽい雰囲気を持っているので、何となく貶しちゃ
いけないような気がするし、オーケストラを使ってフリーっぽいこともやってるし、いつも誰か才能のある男がそばにいるし、オルガンなんか弾いてるし、
ちょっと浮世離れした不思議ちゃん、というのが一般的な認識ではないでしょうか。 スイング・ジャーナルやジャズ批評などのジャーナリズムにも大体は
好意的に扱われていたし、何より玄人受けしているんだからきっとすごい人なんだ、という感じです。
つまり、この人は一般のリスナーからはその実像が捉えにくい、というのが本質にある人。 カーラ・ブレイのCDを買って聴いても、本人の演奏が前面に
出ているわけでも音楽の中心にいるわけでもないから、どれを聴いても今一つピンとこない。 カーラ自身は正規の音楽教育を受けてこなかったことや
自分のピアノの腕の無さにコンプレックスを持っているらしく、それがそういう立ち振舞いをさせてきたようですが、これだけ優れた音楽をやれるんだから
そんなの気にする必要はまったくない。
ここに収録された6曲のどれもが美メロ満載の名曲ばかりですが、その中でも冒頭の "More Brahms" が最高にいい。 ハイラム・ブロックの粘っこく伸びやかな
哀愁のトーンがどこまでも切ない。 ドン・アライアスの深いタメの効いたドラムも素晴らしく、こういうドラムが叩ける人は本当にごく一握りの人だけでした。
この曲でカーラはオルガンを弾いていますが、これが空間をセピア色に染めるような淡いトーンで素晴らしい。 カーラが作った曲ではこれが1番好きです。
彼女の芸術家としての顔とは別の、素の姿が上手く出たんじゃないでしょうか。
このレコードが出された WATT RECORDS というレーベルはカーラとマイケル・マントラーが興した自主レーベルで、ECMが全面的にサポートしています。
そのため、1987年のレコード発売時は西ドイツとアメリカの両国でECMがプレスしました。
WATTは当初、米プレス盤の自主レーベルでしたが、いつの間にかECM傘下に。自主レーベル時代は、前パートナーのマイケル・マントラーとレコードを出していましたよ。気がついたら、発売元と亭主が変わっていました(笑)。
昔はDinner musicなんかを聴いていました。
カーラの音楽は、男の影響が良くも悪くも出てますな。