[6月25日04:00.天候:不明 某県霧生市・霧生電鉄霞台団地駅 プラットホーム]
私達はついにこの地獄のようなトンネルから脱出する手段を得た。
電車運転士の生き残りが、この駅に放置されている電車を使って脱出させてくれるという。
その間、私はスコップを使って、トンネルの出口を塞いでいる土砂を何とか取り除けないか掘っていた。
意外と土砂は柔らかく、なんかこのまま掘って行けば大丈夫そうな……?
「愛原さん!高橋さん!準備OKです!このまま行けそうです!」
電車の中から阿部運転士が大声を上げた。
「おおっ!?」
いつの間にか電車の連結器は切り離されている。
前方の信号機もポイントを切り替えられたおかげで、『進行』を現示していた。
「先生、早く電車に!何か、蜘蛛共が結構押し寄せている感じです」
「マジか!」
高橋が最後の一匹を倒すと、トンネルの向こうから何かがやってきた。
「な、何だ!?」
すると、新手の蜘蛛を連れてやってきたのは、それらの蜘蛛よりもっと巨大な蜘蛛だった。
これまで相手にした蜘蛛が軽自動車やコンパクトカーくらいの大きさだったのだが、その巨大なクモは大型ダンプカー並みの大きさであった。
「先生!どうやら、あれが蜘蛛のボスのようです!」
「なにぃっ!?」
「どうやら手下が俺達にやられたもんで、やってきたんですよ、多分!」
「何だと!?あれ、ショットガンで倒せるか!?」
「やってみなきゃ分かりませんよ!」
「待て、高橋!」
高橋はロッカールームで拾った猟銃(ショットガン)を手に、ボス蜘蛛に立ち向かっていった。
「阿部さん、このままこの電車で突撃……って、あれ?」
「む……ムリです……」
阿部は運転席の下にうずくまってしまった。
「“Gynoid Multitype Cindy”の敷島孝夫は、バスで殺人ロボットに特攻したんですよ!」
「ムリです……ムリです……」
こりゃダメだ。
あのボス蜘蛛を倒さないと、阿部運転士は電車を出してはくれないようだ。
私は自分のショットガンを持って、高橋の応援に行こうと思った。
だが、事態は更に悪化する。
その原因は……まあ、私だ。
「ああっ!?」
トンネル出口を塞いでいた土砂が更に崩され、そこから……。
「アァア……!」
「オォォ……!」
「ウゥウ……ッ!」
高架線を歩いて来たと思われるゾンビの集団が入ってきてしまった。
奴らは体が腐敗していることから、線路からホームに這い上がることはできない。
なのでこの電車を襲うこと自体はできないだろう。
「くそっ!」
私はボス蜘蛛ではなく、このゾンビ達を対処しなければならなくなった。
幸い、ホームの上から狙い撃ちすれば良いので、楽と言えば楽だが……。
「食らえ!殺虫スプレー!」
高橋は殺虫剤をボス蜘蛛に吹き掛けているが、果たして効いているか?
……効いてはいるようだが、巨大過ぎる為になかなか倒れてくれない。
と!
〔ポロロローン♪ まもなく2番線に、電車が参ります。危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください〕
「はあ!?」
「なにっ!?」
「!?」
反対側のホームに、どういうわけだか電車の接近放送が流れた。
で、私がトンネルの外の方に目をやると、
「ありゃ!?マジで電車が!?高橋君!何か、電車が来るぞ!ホームに上がれ!」
「!!!」
電車のヘッドライトが近づいて来た。
「な、何だ!?スピード出し過ぎだぞ!」
阿部運転士も運転席の窓から顔を出していた。
高橋が1番線ホームに上がるのと、阿部運転士がスピード出し過ぎだという電車が突入してきたのは同時だった。
一瞬だけ見えたのだが、運転席にいた運転士はゾンビ化していた。
暴走電車は線路の上を歩いていたゾンビ達や小グモを次々と轢き殺しながら、線路のど真ん中にいたボス蜘蛛に特攻した。
ボス蜘蛛はスピード出し過ぎの暴走電車から逃げることができず、まともにその攻撃を受け、体液を吐き散らしながら悶え苦しみ、やっと動かなくなった。
「電車TUEEEEEEE!!」
たまたまホームの上にいた小グモがいたが、それは残った殺虫剤を吹き掛けて殺しておいた。
「阿部さん、これで電車が出せますね!?」
「は、はい!」
私と高橋は電車に乗り込んだ。
阿部運転士は運転台のスイッチを操作して、1番前の電車のドアを閉めた。
「A線出発、進行っ!制限、35!」
阿部運転士がハンドルを操作すると、電車はVVVFインバータの音を響かせてようやく発車した。
「次の電車をお待ちください。……もう来ないけどw」
私がそう言ったのは、再びコンコースからの階段を下りて来るゾンビ達がいたからだ。
わらわらとやってきたのだが、どうやらやっと駅の入口がゾンビ達によってブチ破られたらしい。
だが、もう電車はこの通り出発だ。
電車は暗闇のトンネルの中を突き進む。
ヘッドライトの明かりだけでは、何とも心許ない。
ポイントを渡って、電車はやっと左側の線路に入ることができた。
「制限、解除!進行!」
電車は更に加速を始める。
途中で線路の周りに藁みたいなものが散乱していたのだが、これは一体何なのだろうか?
「これで大山寺まで行って、お寺の境内の裏手に向かってヘリコプターで町を脱出だな」
私は電車の座席に座って、ホッと一息ついた。
「そうですね」
高橋もその隣に座る。
「先生、これを……。駅の自販機から頂戴してきました」
「おっ、気が利くな」
私は高橋からペットボトルの水をもらって、一気に半分くらい飲んだ。
「高橋、体の方は大丈夫か?」
「はい。今のところ、痒みも熱っぽさもありません」
「よし」
とはいえ、今まで化け物達からの攻撃を受けなかったわけではない。
私は駅で頂戴した救急スプレーなどを使い、更に傷の手当を行った。
電車は何も無い暗闇のトンネルを突き進む。
私達はついにこの地獄のようなトンネルから脱出する手段を得た。
電車運転士の生き残りが、この駅に放置されている電車を使って脱出させてくれるという。
その間、私はスコップを使って、トンネルの出口を塞いでいる土砂を何とか取り除けないか掘っていた。
意外と土砂は柔らかく、なんかこのまま掘って行けば大丈夫そうな……?
「愛原さん!高橋さん!準備OKです!このまま行けそうです!」
電車の中から阿部運転士が大声を上げた。
「おおっ!?」
いつの間にか電車の連結器は切り離されている。
前方の信号機もポイントを切り替えられたおかげで、『進行』を現示していた。
「先生、早く電車に!何か、蜘蛛共が結構押し寄せている感じです」
「マジか!」
高橋が最後の一匹を倒すと、トンネルの向こうから何かがやってきた。
「な、何だ!?」
すると、新手の蜘蛛を連れてやってきたのは、それらの蜘蛛よりもっと巨大な蜘蛛だった。
これまで相手にした蜘蛛が軽自動車やコンパクトカーくらいの大きさだったのだが、その巨大なクモは大型ダンプカー並みの大きさであった。
「先生!どうやら、あれが蜘蛛のボスのようです!」
「なにぃっ!?」
「どうやら手下が俺達にやられたもんで、やってきたんですよ、多分!」
「何だと!?あれ、ショットガンで倒せるか!?」
「やってみなきゃ分かりませんよ!」
「待て、高橋!」
高橋はロッカールームで拾った猟銃(ショットガン)を手に、ボス蜘蛛に立ち向かっていった。
「阿部さん、このままこの電車で突撃……って、あれ?」
「む……ムリです……」
阿部は運転席の下にうずくまってしまった。
「“Gynoid Multitype Cindy”の敷島孝夫は、バスで殺人ロボットに特攻したんですよ!」
「ムリです……ムリです……」
こりゃダメだ。
あのボス蜘蛛を倒さないと、阿部運転士は電車を出してはくれないようだ。
私は自分のショットガンを持って、高橋の応援に行こうと思った。
だが、事態は更に悪化する。
その原因は……まあ、私だ。
「ああっ!?」
トンネル出口を塞いでいた土砂が更に崩され、そこから……。
「アァア……!」
「オォォ……!」
「ウゥウ……ッ!」
高架線を歩いて来たと思われるゾンビの集団が入ってきてしまった。
奴らは体が腐敗していることから、線路からホームに這い上がることはできない。
なのでこの電車を襲うこと自体はできないだろう。
「くそっ!」
私はボス蜘蛛ではなく、このゾンビ達を対処しなければならなくなった。
幸い、ホームの上から狙い撃ちすれば良いので、楽と言えば楽だが……。
「食らえ!殺虫スプレー!」
高橋は殺虫剤をボス蜘蛛に吹き掛けているが、果たして効いているか?
……効いてはいるようだが、巨大過ぎる為になかなか倒れてくれない。
と!
〔ポロロローン♪ まもなく2番線に、電車が参ります。危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください〕
「はあ!?」
「なにっ!?」
「!?」
反対側のホームに、どういうわけだか電車の接近放送が流れた。
で、私がトンネルの外の方に目をやると、
「ありゃ!?マジで電車が!?高橋君!何か、電車が来るぞ!ホームに上がれ!」
「!!!」
電車のヘッドライトが近づいて来た。
「な、何だ!?スピード出し過ぎだぞ!」
阿部運転士も運転席の窓から顔を出していた。
高橋が1番線ホームに上がるのと、阿部運転士がスピード出し過ぎだという電車が突入してきたのは同時だった。
一瞬だけ見えたのだが、運転席にいた運転士はゾンビ化していた。
暴走電車は線路の上を歩いていたゾンビ達や小グモを次々と轢き殺しながら、線路のど真ん中にいたボス蜘蛛に特攻した。
ボス蜘蛛はスピード出し過ぎの暴走電車から逃げることができず、まともにその攻撃を受け、体液を吐き散らしながら悶え苦しみ、やっと動かなくなった。
「電車TUEEEEEEE!!」
たまたまホームの上にいた小グモがいたが、それは残った殺虫剤を吹き掛けて殺しておいた。
「阿部さん、これで電車が出せますね!?」
「は、はい!」
私と高橋は電車に乗り込んだ。
阿部運転士は運転台のスイッチを操作して、1番前の電車のドアを閉めた。
「A線出発、進行っ!制限、35!」
阿部運転士がハンドルを操作すると、電車はVVVFインバータの音を響かせてようやく発車した。
「次の電車をお待ちください。……もう来ないけどw」
私がそう言ったのは、再びコンコースからの階段を下りて来るゾンビ達がいたからだ。
わらわらとやってきたのだが、どうやらやっと駅の入口がゾンビ達によってブチ破られたらしい。
だが、もう電車はこの通り出発だ。
電車は暗闇のトンネルの中を突き進む。
ヘッドライトの明かりだけでは、何とも心許ない。
ポイントを渡って、電車はやっと左側の線路に入ることができた。
「制限、解除!進行!」
電車は更に加速を始める。
途中で線路の周りに藁みたいなものが散乱していたのだが、これは一体何なのだろうか?
「これで大山寺まで行って、お寺の境内の裏手に向かってヘリコプターで町を脱出だな」
私は電車の座席に座って、ホッと一息ついた。
「そうですね」
高橋もその隣に座る。
「先生、これを……。駅の自販機から頂戴してきました」
「おっ、気が利くな」
私は高橋からペットボトルの水をもらって、一気に半分くらい飲んだ。
「高橋、体の方は大丈夫か?」
「はい。今のところ、痒みも熱っぽさもありません」
「よし」
とはいえ、今まで化け物達からの攻撃を受けなかったわけではない。
私は駅で頂戴した救急スプレーなどを使い、更に傷の手当を行った。
電車は何も無い暗闇のトンネルを突き進む。