[6月25日06:30.天候:雨 某県霧生市 新日蓮宗大本山・大山寺]
さっきまで霧雨だった空模様も、本格的な雨になった。
空はどんよりとした黒い雲に覆われており、今日1日は雨のようだ。
このままずぶ濡れになるのはあれだったので、私と高橋は増田氏より、警備用のレインコートを借りた。
よく駐車場などで、雨の時に警備員が着ている、あの白いレインコートだ。
それを着込んで外に飛び出す。
「アァア……!」
「オォオ……!」
大講堂の外に出ると、早速ゾンビが待ち受けていた。
大講堂に入り込まれたらヤバいので、私達はその近くにいたゾンビ達は倒しておいた。
そして、残酷なことだが、とどめに頭も撃ち抜いておく。
最近になって気づいたのだが、頭を撃ち抜かれたゾンビは、“赤鬼”(クリムゾンヘッド)に変化することはなかったからである。
他に生存者がいないのなら、まあいいのだが、今は増田氏という生存者がいる。
せっかくの生存者を危険に晒したくはなかった。
尚、頭を撃ち抜かれなくても、倒されたゾンビが全員“赤鬼”になるというわけではない。
どのゾンビがそうなるのかは、今のところ、見分けがつかない。
「高橋君、私はあっちを探す。キミは向こうを探してくれ」
「分かりました」
私と高橋は大講堂の前で一旦別れた。
私は大本堂方面に向かってみることにした。
増田氏はああ言っていたが、もしかしたら土砂崩れの衝撃で、大本堂への侵入経路が確保されているかもしれない。
途中の参道にも避難者なのか信徒なのか分からない、一般人の恰好をしたゾンビや、ボロボロになった僧衣を来たゾンビもいた。
せっかく出家したのに、生きたままゾンビになるとは……。
因みに“赤鬼”は、普通(?)のゾンビがそのままそれに変化することは無いようで、あえて倒さずやり過ごすことで、その出現を抑えるという方法もある。
高齢者のゾンビは若年者のそれよりも更に動きが遅い為、あえて倒さない方針にしていた。
弾薬にも限りがあるので、あまりバンバン撃って、必要な時に無いと困るからな。
いくつかの宿坊の前を通り過ぎ、大山寺の北端に大本堂はある。
なるほど。
寺宝を保管しているというだけあって、どの堂宇よりも荘厳で立派な造りだ。
よく拝観料を取らないものだと思ったが、『御内拝は事前に内拝券をお持ちの御信徒のみとなり、それ以外の方の立ち入りは一切できません』と書かれていた。
なるほどなぁ……。
入口の門扉は固く閉ざされていたが、横の通用口はカードキーで開いた。
どうやら、手持ちの鍵で開けられないのはその先の扉らしい。
建物を回り込んでみると、『↑ヘリポート』という看板が見えた。
そして、その看板の通りに行ってみると、砂利道があったのだが、確かに途中で道が塞がれていた。
「何たるちゃあ……」
土砂は大本堂を囲む塀の上にまで達しており、それはつまりその敷地内にまで流れ込んでいるというわけだから……。
「かー……なるほど」
こりゃ確かに、大本堂の中を通らないとダメっぽい。
私は一旦諦めて、他の建物を探すことにした。
再び宿坊の連なる参道を歩いていると、警備室から無線が入った。
{「あー、こちら、警備室。愛原さん、応答できるかの?」}
「あ、はい。愛原です」
私はすぐに応答した。
{「実はちょっと確かめてもらいたいことがあるのだが……」}
「確かめてもらいたいこと?」
{「愛原さんが今いる所の近くに、『大恩坊』という名の宿坊がある。さっきカメラで見ていたら、人影が見えたのだ。ちょっと確認してもらえますかのぅ?」}
「分かりました」
一瞬どうせゾンビではないかと思ったのだが、いやいや予断は禁物だ。
私は詳しい場所を増田氏から聞いて、その大恩坊なる宿坊に向かった。
「! これは……!」
大恩坊の入口の門には、ゾンビが3人ほどたむしていた。
中に入ろうとしていたのだが、私の姿を見ると、呻き声を上げて向かって来た。
こういう時、ショットガンだと弾が分散して飛んでくれるので、まとめてゾンビを倒すことができる。
弾なら、途中にまた特殊部隊員と思しき恰好をした者が倒れていたので、そこから弾薬を頂戴することができた。
あいにくと、既に死んでいたが。
それにしても、身分を証明するようなものを持ち合わせていなかった。
一体、彼らは何なのだろう?
……おっと!こうしている場合ではない。
ゾンビ達が侵入しようとしていたということは、やっぱりこの中に生存者がいるということだ。
門の中から入ってみると、左手にその本堂と思しき建物があり、そのまま真っ直ぐ向かうと玄関がある。
その玄関の引き戸がブチ破られていた。
まさか、ここからゾンビが侵入したのか?
私は手持ちのショットガンに弾薬をリロードし、薄暗い建物の中へと入った。
ゾンビが待ち受けているかもしれないので、私は銃を構えながら慎重に奥へと進む。
すると!
「!?」
若い女性の叫び声が聞こえて来た。
それと同時に、ゾンビ達の喚く声。
女子トイレから聞こえて来た。
「大丈夫ですか!?」
私が飛び込むと、そこにはゾンビが4人もいた。
トイレの奥の窓際に追い詰められている女性が1人。
「こっちだ!ゾンビども!!」
私は1番後ろにいたゾンビにショットガンを発砲した。
「ゥオオオ……!」
ゾンビ達は私の侵入に気づき、後ろにいた者とその前にいた2人が私の所に向かって来た。
だが、残りの2人は相変わらず女性の方に目が行っている。
このままではまずい!
ところが、
「ふんっ!!」
ゾンビの1人が、ついに女性に掴みかかった。
だが、その女性は武道の心得があるのか、そのゾンビを振り払った。
「ねぇ、ちょっと!もし銃が余ってたら貸して!」
「はあっ!?」
「早く!」
「は、はい!」
私は使用していないハンドガンを取り出すと、女性に向かって投げた。
「安全装置は外してませんよ!」
「分かってる!」
「アオオオ!」
「掴むな、このやろ!!」
私は再びショットガンを発砲し、何とか2人は屠った。
残る2人のうち、1人は女性によって頭を撃ち抜かれたし、もう1人は、
「ふんっ!」
やはり女性の掴み技で、ゾンビはトイレの窓ガラスに頭から突っ込まされ、動かなくなった。
「はー、危なかった……」
「お、お見事な腕前で……」
女性は20代後半から30歳くらいといったところ。
ゾンビ達を倒すと、その場にへたり込んだ。
いやいや、ハンドガンの使い方といい、掴み技といい、私より強そうだ。
「もしかして、警察の方だったりします?」
と、私は女性に手を貸しながら聞いた。
「まさか。ただの新聞記者ですよ。そういうあなたも警察?」
「いや、東京から来た探偵事務所の者です」
「ふーん……」
「アァア……!」
「ウゥウ……!」
すると、玄関の方で、またゾンビの呻き声が聞こえて来た。
「しまった!もう新手が!?」
「安全な場所を探してるの!どこか目ぼしい所、無い!?」
と、女性が聞いて来た。
「それなら、大講堂の警備室ですよ!一緒に行きましょう!」
「お願い」
私はゾンビが頭から血を流しているトイレの窓を開け、そこから外に出た。
そして裏口を回って、何とか参道に出ることができ、そこから大講堂へと向かった。
さっきまで霧雨だった空模様も、本格的な雨になった。
空はどんよりとした黒い雲に覆われており、今日1日は雨のようだ。
このままずぶ濡れになるのはあれだったので、私と高橋は増田氏より、警備用のレインコートを借りた。
よく駐車場などで、雨の時に警備員が着ている、あの白いレインコートだ。
それを着込んで外に飛び出す。
「アァア……!」
「オォオ……!」
大講堂の外に出ると、早速ゾンビが待ち受けていた。
大講堂に入り込まれたらヤバいので、私達はその近くにいたゾンビ達は倒しておいた。
そして、残酷なことだが、とどめに頭も撃ち抜いておく。
最近になって気づいたのだが、頭を撃ち抜かれたゾンビは、“赤鬼”(クリムゾンヘッド)に変化することはなかったからである。
他に生存者がいないのなら、まあいいのだが、今は増田氏という生存者がいる。
せっかくの生存者を危険に晒したくはなかった。
尚、頭を撃ち抜かれなくても、倒されたゾンビが全員“赤鬼”になるというわけではない。
どのゾンビがそうなるのかは、今のところ、見分けがつかない。
「高橋君、私はあっちを探す。キミは向こうを探してくれ」
「分かりました」
私と高橋は大講堂の前で一旦別れた。
私は大本堂方面に向かってみることにした。
増田氏はああ言っていたが、もしかしたら土砂崩れの衝撃で、大本堂への侵入経路が確保されているかもしれない。
途中の参道にも避難者なのか信徒なのか分からない、一般人の恰好をしたゾンビや、ボロボロになった僧衣を来たゾンビもいた。
せっかく出家したのに、生きたままゾンビになるとは……。
因みに“赤鬼”は、普通(?)のゾンビがそのままそれに変化することは無いようで、あえて倒さずやり過ごすことで、その出現を抑えるという方法もある。
高齢者のゾンビは若年者のそれよりも更に動きが遅い為、あえて倒さない方針にしていた。
弾薬にも限りがあるので、あまりバンバン撃って、必要な時に無いと困るからな。
いくつかの宿坊の前を通り過ぎ、大山寺の北端に大本堂はある。
なるほど。
寺宝を保管しているというだけあって、どの堂宇よりも荘厳で立派な造りだ。
よく拝観料を取らないものだと思ったが、『御内拝は事前に内拝券をお持ちの御信徒のみとなり、それ以外の方の立ち入りは一切できません』と書かれていた。
なるほどなぁ……。
入口の門扉は固く閉ざされていたが、横の通用口はカードキーで開いた。
どうやら、手持ちの鍵で開けられないのはその先の扉らしい。
建物を回り込んでみると、『↑ヘリポート』という看板が見えた。
そして、その看板の通りに行ってみると、砂利道があったのだが、確かに途中で道が塞がれていた。
「何たるちゃあ……」
土砂は大本堂を囲む塀の上にまで達しており、それはつまりその敷地内にまで流れ込んでいるというわけだから……。
「かー……なるほど」
こりゃ確かに、大本堂の中を通らないとダメっぽい。
私は一旦諦めて、他の建物を探すことにした。
再び宿坊の連なる参道を歩いていると、警備室から無線が入った。
{「あー、こちら、警備室。愛原さん、応答できるかの?」}
「あ、はい。愛原です」
私はすぐに応答した。
{「実はちょっと確かめてもらいたいことがあるのだが……」}
「確かめてもらいたいこと?」
{「愛原さんが今いる所の近くに、『大恩坊』という名の宿坊がある。さっきカメラで見ていたら、人影が見えたのだ。ちょっと確認してもらえますかのぅ?」}
「分かりました」
一瞬どうせゾンビではないかと思ったのだが、いやいや予断は禁物だ。
私は詳しい場所を増田氏から聞いて、その大恩坊なる宿坊に向かった。
「! これは……!」
大恩坊の入口の門には、ゾンビが3人ほどたむしていた。
中に入ろうとしていたのだが、私の姿を見ると、呻き声を上げて向かって来た。
こういう時、ショットガンだと弾が分散して飛んでくれるので、まとめてゾンビを倒すことができる。
弾なら、途中にまた特殊部隊員と思しき恰好をした者が倒れていたので、そこから弾薬を頂戴することができた。
あいにくと、既に死んでいたが。
それにしても、身分を証明するようなものを持ち合わせていなかった。
一体、彼らは何なのだろう?
……おっと!こうしている場合ではない。
ゾンビ達が侵入しようとしていたということは、やっぱりこの中に生存者がいるということだ。
門の中から入ってみると、左手にその本堂と思しき建物があり、そのまま真っ直ぐ向かうと玄関がある。
その玄関の引き戸がブチ破られていた。
まさか、ここからゾンビが侵入したのか?
私は手持ちのショットガンに弾薬をリロードし、薄暗い建物の中へと入った。
ゾンビが待ち受けているかもしれないので、私は銃を構えながら慎重に奥へと進む。
すると!
「!?」
若い女性の叫び声が聞こえて来た。
それと同時に、ゾンビ達の喚く声。
女子トイレから聞こえて来た。
「大丈夫ですか!?」
私が飛び込むと、そこにはゾンビが4人もいた。
トイレの奥の窓際に追い詰められている女性が1人。
「こっちだ!ゾンビども!!」
私は1番後ろにいたゾンビにショットガンを発砲した。
「ゥオオオ……!」
ゾンビ達は私の侵入に気づき、後ろにいた者とその前にいた2人が私の所に向かって来た。
だが、残りの2人は相変わらず女性の方に目が行っている。
このままではまずい!
ところが、
「ふんっ!!」
ゾンビの1人が、ついに女性に掴みかかった。
だが、その女性は武道の心得があるのか、そのゾンビを振り払った。
「ねぇ、ちょっと!もし銃が余ってたら貸して!」
「はあっ!?」
「早く!」
「は、はい!」
私は使用していないハンドガンを取り出すと、女性に向かって投げた。
「安全装置は外してませんよ!」
「分かってる!」
「アオオオ!」
「掴むな、このやろ!!」
私は再びショットガンを発砲し、何とか2人は屠った。
残る2人のうち、1人は女性によって頭を撃ち抜かれたし、もう1人は、
「ふんっ!」
やはり女性の掴み技で、ゾンビはトイレの窓ガラスに頭から突っ込まされ、動かなくなった。
「はー、危なかった……」
「お、お見事な腕前で……」
女性は20代後半から30歳くらいといったところ。
ゾンビ達を倒すと、その場にへたり込んだ。
いやいや、ハンドガンの使い方といい、掴み技といい、私より強そうだ。
「もしかして、警察の方だったりします?」
と、私は女性に手を貸しながら聞いた。
「まさか。ただの新聞記者ですよ。そういうあなたも警察?」
「いや、東京から来た探偵事務所の者です」
「ふーん……」
「アァア……!」
「ウゥウ……!」
すると、玄関の方で、またゾンビの呻き声が聞こえて来た。
「しまった!もう新手が!?」
「安全な場所を探してるの!どこか目ぼしい所、無い!?」
と、女性が聞いて来た。
「それなら、大講堂の警備室ですよ!一緒に行きましょう!」
「お願い」
私はゾンビが頭から血を流しているトイレの窓を開け、そこから外に出た。
そして裏口を回って、何とか参道に出ることができ、そこから大講堂へと向かった。