[6月28日00:00.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター]
私と高橋は、何やら人影のようなものが映ったモニタを確認し、現場に向かってみた。
それは4階の女子トイレ。
エレベーターを起動させた私達は、それで4階へ上がった。
因みにこのエレベーターで5階にも行けるが、あいにくとエレベーターは防火シャッターの内側(つまり、外に出られない方)にある為、結局はシャッターを開ける方法を探さないといけない。
「ん?」
エレベーターのボタンを押したが、ボタンのランプが点かなかった。
そんなバカな。
さっき、警備室で起動したのに……。
「先生、ここにカードを当てないと動かないのでは?」
「おっ、そうか」
やけに厳重なエレベーターだ。
私は警備室で手に入れたカードキーを読取機に当てた。
すると、モニタに何かが表示された。
『日蓮正宗の教義として、欠かせないものは何?』
「はあ!?それ何!?さっきの新日蓮宗と違うの!?」
『1:三大秘法 2:進化の秘宝 3:インカの秘法 4:ヨルレリホー』
「常識的に考えれば、1だろう」
大丈夫か、作者?
後で武闘派に怒られても知らんぞ。
正解だったようで、エレベーターのドアが開いた。
「急げ!4階だ!」
「はい!」
私達はエレベーターに乗り込むと、4階のボタンを押した。
荷物運搬の用途も兼ねているらしく、少し大きめのエレベーターだ。
そして4階に着いた。
だが、ドアが開かない。
「先生、またですよ?」
「ええっ?」
エレベーターの中にもモニタがあって、そこにまたクイズが表示される。
『日蓮正宗の三大秘法。本門の本尊、本門の戒壇と、あと1つは?』
「ここは何なんだ!?」
「日蓮正宗の研究所……じゃないですよね?」
『1:本門の僧侶 2:本門の革命 3:本門の経文 4:本門の題目 5:実は2つしかない』
エレベーターのボタンが全部点灯した。
要はエレベーターのボタンを押して、答えろということらしい。
「だーっ!どれだ!?」
「大抵のゲームでは、5はハズレですね。どうします?」
「俺達は4階に来たんだから4!」
「大丈夫ですかね?」
私は4を押した。
ピンポーン♪
ガラガラガラガラ……。(←ドアが開く音)
「あ、当たった……みたい、ですね?」
「ここは“クイズマジックアカデミー”か!」
私は憤慨した様子でエレベーターを降りた。
全く。
緊張感が無くなってしまった。
4階にもゾンビやハンターなどの姿は無い。
「ここがトイレですね」
「モニタに映ったのはこの辺だな?」
「はい」
しかし、ここにはトイレ以外に隠れる場所が無かった。
「トイレの中か?」
「先生。敵かもしれませんから、油断しないでくださいよ」
「分かってるって」
私は男子トイレのドアをそっと開け、中に入った。
さすがにトイレの中にまでカメラは無いから、ここに化け物が潜んでいても何ら不思議は無い。
「……パッと見、誰もいないな?」
もちろん、天井も見る。
しかし、リッカーが天井を張っているということもなかった。
男子トイレには小便器が4つ、個室が3つある。
パッと見、個室が4つあるように見えるが、1番手前は掃除用具入れになっていた。
近代的な造りの研究所。
もちろんトイレも、どこかのオフィスビルのトイレであるかのようにメタリックな内装になっている。
「個室を探してみよう」
「はい」
このトイレの個室のドアは変わっている。
普通、使用していない時はドアを開けている状態であろう?
それで入った時に、パッと見て使用状況が分かるというものだ。
ここのトイレは、使用していなくてもドアが閉まっている状態だった。
しかも、珍しいのは全て横引き戸であること。
どうしてこんな構造になっているのか?
私は高橋に銃を構えさせ、ドアを開けた。
もし中に化け物がいたり、飛び出してくるようなら、すぐに高橋のマグナムの餌食になることだろう。
ガラガラガラと引き戸を開けたが、中にはウォシュレットの便器があるだけで、他には何も無かった。
引き戸になっている理由は、それだけ個室が広めに作られていたからだった。
つまり、全ての個室が車椅子対応ということである。
「次、行くぞ」
「はい」
私は真ん中の個室を開けた。
「……何もありません」
「そうか」
と、その時だった!
バシューッ!
「!!!」
「!?」
びっくりした!
一瞬、何の音かと思ったが、小便器から水が出て来る音だった。
最新のセンサー式の小便器は、配管の汚れや臭いを防止する為と称して、長時間利用が無い場合、勝手に水が流れる仕組みになっているのである。
便器にも脇の方とかに、その旨が小さく書かれていることがある。
それがまた何の予告も無く、しかもそれというのが勢い良く水が出て来る為に、分かっていてもびっくりさせられることがある。
今回はまあ、完全に不意打ちだったが。
「驚かせやがって……。さあ、あとは最後の個室だ」
「先生。今思ったんですが……」
「何だ?」
「もし中に誰かいれば、この時点で勝手に中から出て来そうなものですが……」
「……あ。それもそうだな」
こんな状況だ。
暢気に便器で踏ん張っているとは思えない。
もし仮に化け物だったら、ドアをブチ破って襲って来るだろう。
「じゃ、開けるぞ」
「はい」
今度はだいぶ軽い気持ちでドアを開けた。
B級ホラー映画だったら、こういう時こそ実は化け物が潜んでいて、飛び出してきた化け物に高橋が食われるような展開なのだろうが、そんなことは無かった。
やっぱり、中には誰もいなかった。
「んん?」
で、持っていたマスターキーで掃除用具入れの中を開けてみたが、もちろん鍵が掛かっていた時点で隠れられるわけが無く、当然やっぱり誰もいなかった。
「先生?」
「えー?じゃあ、女子トイレかぁ?」
「生存者は女性なのでしょうか?」
「化け物だったとしたら、トイレの男女なんて関係無いだろうしな。たまたま飛び込んだのが女子トイレというだけだろうし」
「じゃあ、行きますか」
「待て待て。もし生存者だったら、男2人が行ったら、余計警戒されるぞ。せっかく高野さんという女性がいるんだから、彼女に頼んでみよう」
「……先生がそう仰るのでしたら」
私は無線機を取って、彼女に呼び掛けた。
「あー、こちら愛原です。高野さん、応答願います」
{「はい、高野です」}
普通に応答してきたということは、研究室エリアにも何も無かったということか。
「こちらは何の収穫も無しです。そちらはどうですか?」
{「色々と面白いものを見つけたよ。……でね、どうやらこの研究所でワクチンが作れそうなの」}
「ワクチン?どんな?」
{「もちろん、あの抗ウィルス剤よりも強いワクチンだよ。抗ウィルス剤はゾンビ化の進行を抑えるだけの薬だったけど、ワクチンは文字通り、ウィルスを死滅させてくれる上、抗体も作ってくれるから、もうゾンビ化の心配は無くなる薬だよ」}
「その作り方が分かったと?」
{「そう。……ていうか、今製造中。もうすぐできるってよ」}
「マジか!さすがだな!よし、じゃあ俺達もすぐ行く!高橋君、女子トイレは後回しだ。急いで3階の研究室へ行こう!」
「はい!」
私達は自分のゾンビ化を恐れながら進んでいる。
それが完全に無くなるだけでも、大きな前進だ。
私達は男子トイレを飛び出した。
と、その時!
ザザー!
「……えっ?」
女子トイレの中から、水の流れる音がした。
「先生!」
な、何だ?
やっぱり、誰かがいるのは女子トイレだったのか!?
気になるが、しかし、ワクチンを一刻も早く接種したい。
私の頭の中に選択肢が現れた。
さて、どうしよう?
1:女子トイレを先に調べる。
2:先に研究室に向かう。
3:高橋に女子トイレを調べさせ、自分は研究室に向かう。
4:自分が女子トイレを調べ、高橋は研究室に向かわせる。
次回へ続く!
私と高橋は、何やら人影のようなものが映ったモニタを確認し、現場に向かってみた。
それは4階の女子トイレ。
エレベーターを起動させた私達は、それで4階へ上がった。
因みにこのエレベーターで5階にも行けるが、あいにくとエレベーターは防火シャッターの内側(つまり、外に出られない方)にある為、結局はシャッターを開ける方法を探さないといけない。
「ん?」
エレベーターのボタンを押したが、ボタンのランプが点かなかった。
そんなバカな。
さっき、警備室で起動したのに……。
「先生、ここにカードを当てないと動かないのでは?」
「おっ、そうか」
やけに厳重なエレベーターだ。
私は警備室で手に入れたカードキーを読取機に当てた。
すると、モニタに何かが表示された。
『日蓮正宗の教義として、欠かせないものは何?』
「はあ!?それ何!?さっきの新日蓮宗と違うの!?」
『1:三大秘法 2:進化の秘宝 3:インカの秘法 4:ヨルレリホー』
「常識的に考えれば、1だろう」
大丈夫か、作者?
後で武闘派に怒られても知らんぞ。
正解だったようで、エレベーターのドアが開いた。
「急げ!4階だ!」
「はい!」
私達はエレベーターに乗り込むと、4階のボタンを押した。
荷物運搬の用途も兼ねているらしく、少し大きめのエレベーターだ。
そして4階に着いた。
だが、ドアが開かない。
「先生、またですよ?」
「ええっ?」
エレベーターの中にもモニタがあって、そこにまたクイズが表示される。
『日蓮正宗の三大秘法。本門の本尊、本門の戒壇と、あと1つは?』
「ここは何なんだ!?」
「日蓮正宗の研究所……じゃないですよね?」
『1:本門の僧侶 2:本門の革命 3:本門の経文 4:本門の題目 5:実は2つしかない』
エレベーターのボタンが全部点灯した。
要はエレベーターのボタンを押して、答えろということらしい。
「だーっ!どれだ!?」
「大抵のゲームでは、5はハズレですね。どうします?」
「俺達は4階に来たんだから4!」
「大丈夫ですかね?」
私は4を押した。
ピンポーン♪
ガラガラガラガラ……。(←ドアが開く音)
「あ、当たった……みたい、ですね?」
「ここは“クイズマジックアカデミー”か!」
私は憤慨した様子でエレベーターを降りた。
全く。
緊張感が無くなってしまった。
4階にもゾンビやハンターなどの姿は無い。
「ここがトイレですね」
「モニタに映ったのはこの辺だな?」
「はい」
しかし、ここにはトイレ以外に隠れる場所が無かった。
「トイレの中か?」
「先生。敵かもしれませんから、油断しないでくださいよ」
「分かってるって」
私は男子トイレのドアをそっと開け、中に入った。
さすがにトイレの中にまでカメラは無いから、ここに化け物が潜んでいても何ら不思議は無い。
「……パッと見、誰もいないな?」
もちろん、天井も見る。
しかし、リッカーが天井を張っているということもなかった。
男子トイレには小便器が4つ、個室が3つある。
パッと見、個室が4つあるように見えるが、1番手前は掃除用具入れになっていた。
近代的な造りの研究所。
もちろんトイレも、どこかのオフィスビルのトイレであるかのようにメタリックな内装になっている。
「個室を探してみよう」
「はい」
このトイレの個室のドアは変わっている。
普通、使用していない時はドアを開けている状態であろう?
それで入った時に、パッと見て使用状況が分かるというものだ。
ここのトイレは、使用していなくてもドアが閉まっている状態だった。
しかも、珍しいのは全て横引き戸であること。
どうしてこんな構造になっているのか?
私は高橋に銃を構えさせ、ドアを開けた。
もし中に化け物がいたり、飛び出してくるようなら、すぐに高橋のマグナムの餌食になることだろう。
ガラガラガラと引き戸を開けたが、中にはウォシュレットの便器があるだけで、他には何も無かった。
引き戸になっている理由は、それだけ個室が広めに作られていたからだった。
つまり、全ての個室が車椅子対応ということである。
「次、行くぞ」
「はい」
私は真ん中の個室を開けた。
「……何もありません」
「そうか」
と、その時だった!
バシューッ!
「!!!」
「!?」
びっくりした!
一瞬、何の音かと思ったが、小便器から水が出て来る音だった。
最新のセンサー式の小便器は、配管の汚れや臭いを防止する為と称して、長時間利用が無い場合、勝手に水が流れる仕組みになっているのである。
便器にも脇の方とかに、その旨が小さく書かれていることがある。
それがまた何の予告も無く、しかもそれというのが勢い良く水が出て来る為に、分かっていてもびっくりさせられることがある。
今回はまあ、完全に不意打ちだったが。
「驚かせやがって……。さあ、あとは最後の個室だ」
「先生。今思ったんですが……」
「何だ?」
「もし中に誰かいれば、この時点で勝手に中から出て来そうなものですが……」
「……あ。それもそうだな」
こんな状況だ。
暢気に便器で踏ん張っているとは思えない。
もし仮に化け物だったら、ドアをブチ破って襲って来るだろう。
「じゃ、開けるぞ」
「はい」
今度はだいぶ軽い気持ちでドアを開けた。
B級ホラー映画だったら、こういう時こそ実は化け物が潜んでいて、飛び出してきた化け物に高橋が食われるような展開なのだろうが、そんなことは無かった。
やっぱり、中には誰もいなかった。
「んん?」
で、持っていたマスターキーで掃除用具入れの中を開けてみたが、もちろん鍵が掛かっていた時点で隠れられるわけが無く、当然やっぱり誰もいなかった。
「先生?」
「えー?じゃあ、女子トイレかぁ?」
「生存者は女性なのでしょうか?」
「化け物だったとしたら、トイレの男女なんて関係無いだろうしな。たまたま飛び込んだのが女子トイレというだけだろうし」
「じゃあ、行きますか」
「待て待て。もし生存者だったら、男2人が行ったら、余計警戒されるぞ。せっかく高野さんという女性がいるんだから、彼女に頼んでみよう」
「……先生がそう仰るのでしたら」
私は無線機を取って、彼女に呼び掛けた。
「あー、こちら愛原です。高野さん、応答願います」
{「はい、高野です」}
普通に応答してきたということは、研究室エリアにも何も無かったということか。
「こちらは何の収穫も無しです。そちらはどうですか?」
{「色々と面白いものを見つけたよ。……でね、どうやらこの研究所でワクチンが作れそうなの」}
「ワクチン?どんな?」
{「もちろん、あの抗ウィルス剤よりも強いワクチンだよ。抗ウィルス剤はゾンビ化の進行を抑えるだけの薬だったけど、ワクチンは文字通り、ウィルスを死滅させてくれる上、抗体も作ってくれるから、もうゾンビ化の心配は無くなる薬だよ」}
「その作り方が分かったと?」
{「そう。……ていうか、今製造中。もうすぐできるってよ」}
「マジか!さすがだな!よし、じゃあ俺達もすぐ行く!高橋君、女子トイレは後回しだ。急いで3階の研究室へ行こう!」
「はい!」
私達は自分のゾンビ化を恐れながら進んでいる。
それが完全に無くなるだけでも、大きな前進だ。
私達は男子トイレを飛び出した。
と、その時!
ザザー!
「……えっ?」
女子トイレの中から、水の流れる音がした。
「先生!」
な、何だ?
やっぱり、誰かがいるのは女子トイレだったのか!?
気になるが、しかし、ワクチンを一刻も早く接種したい。
私の頭の中に選択肢が現れた。
さて、どうしよう?
1:女子トイレを先に調べる。
2:先に研究室に向かう。
3:高橋に女子トイレを調べさせ、自分は研究室に向かう。
4:自分が女子トイレを調べ、高橋は研究室に向かわせる。
次回へ続く!