[6月25日02:30.天候:不明 某県霧生市・霧生電鉄霞台駅 関係者専用エリア]
「グオオオオ!」
「アアア……!」
「一体、どうなってるんだ!?」
私はショットガンを、高橋はハンドガンを2丁両手に持って、駅員ゾンビと運転士ゾンビに応戦した。
特に、運転士だった者は“赤鬼”のような風体に変化していた。
「先生!」
“赤鬼”(正式名称はクリムゾンヘッド)は前方にいる普通のゾンビを邪魔だとばかりに、殴り飛ばした。
頭を殴られ、壁に叩き付けられたゾンビはフラフラとしながらも倒れなかった。
「逆に好都合!」
私は洗面台の上にあった、誰のとも分からぬヘアスプレーを取り、床に落ちていたライターを拾い上げた。
そして……。
「ギャアアアッ!!」
即席火炎放射器だ。
オイルライターの火を点け、その後ろからゾンビ達に向かってヘアスプレーを噴射する。
確か、こういうゾンビ達を特殊部隊が火炎放射器で焼き払ってやるシーンを映画で見たことがある。
映画の中だけの話だけかと思ったが、どうやら歩く死体なだけに、本当に火に弱いらしい。
“赤鬼”など、頭部が松明のように燃え上がった。
まるで、全身が燃料だ。
ゾンビ達はついに全身火だるまになり、床をのたうち回った。
そして、それぞれ一介の焼死体と化したのである。
さすがに腐乱死体で歩くことはできても、焼死体となっては歩くことはできないようだ。
「こんなに簡単に片付くなんて……」
「先生、さすがです!」
「ショットガンの弾が切れた。どこかで補充できないかな?」
「サツもハンドガンの弾くらいしか無いですからね」
「と、とにかく、奥を探してみよう」
それにしても、腐った死体が放つ腐臭だけでも相当なものなのに、それが焼死体となったら、それはもう【お察しください】。
私はハンカチで鼻を押さえながら、“赤鬼”が沈められていた浴室へ入ってみた。
アパートのそれみたいに、セパレートタイプのユニットバスがあった。
沈められていたという浴槽には赤黒い汚水が溜まっていた。
試しに、私は水を抜いてみた。
「!?」
すると、浴槽の底に鍵が落ちているのが分かった。
「これは、どこの鍵だろう?」
「分かりませんが、何か重要そうな鍵ですね」
「一応、持っておこう」
少なくとも、アパートや車のキーでは無さそうだ。
私達は思わぬ“中ボス戦”を繰り広げた仮眠室をあとにした。
次に入ってみたのがロッカー室。
ここにゾンビはいなかった。
「おいおい、マジかよー」
私は思わず吹き出しそうになった。
何故ならロッカー室内の掲示板に、
『吉川君へ。私物の散弾銃をいつまでもロッカーに入れておかないで持ち帰ること。管理が悪いと、銃の所持許可も剥奪されるのではなかったか? 島村』
というメモが貼り付けられていたからだ。
この吉川という駅員は、猟友会にでも入っているのか?
メモ書きからして、違法に持っているというわけではないようだ。
島村というのは、あの“かゆうま日記”を書いた駅員のそれの中に出て来た当直助役のことだろう。
「探せ!」
「はい!」
もちろん、ロッカーにはそれぞれ名前が書いてある。
私は吉川駅員のロッカーを見つけて、そのドアを開けた。
「…………」
「…………」
私は目が点になった。
もしかしたら、ロッカーの中にいる『本人』も何が何だか分からなかっただろう。
「先生、どうしました?」
「……ちわ」
「グオオオオッ!」
「だーっ!一体、何なんだ、この駅わっ!?」
ここにも“赤鬼”がいた。
「くっ!」
ロッカーの上にも色々と物が置かれていたので、高橋はその上を探していた。
どういうわけだか、その上にあった殺虫スプレーを取り出した高橋は、同じくロッカーの中で見つけたオイルライターを手にした。
「こっちだ、化け物!!」
高橋がロッカーをガンガンと叩く。
すると、“赤鬼”が今度は私から高橋の方に関心を向けた。
「高橋君!」
元は同じゾンビだとは思えないほどの跳躍力。
“赤鬼”は高橋が乗っかっているロッカーの上にジャンプしてこようとした。
「食らえっ!」
そこを高橋もまた、即席の火炎放射器を放つ。
「ゥオオオオオッ!!」
私もヤツの後ろから同じ攻撃をする。
再び火だるまになる“赤鬼”。
こりゃ、チート級のアイテムだな。
普通のゾンビが来ても、もうこれでいいんじゃないか?
「いや、ダメです、先生!」
火だるまになった“赤鬼”がのたうち回ったもんだから、それが燃えやすい物に燃え移り、何だかロッカールーム内に煙が充満してきた。
「高橋君!何か、火事になったっぽい!早く出よう!」
「はい!」
もっとも、吉川駅員が潜んでいたロッカーの中にあった散弾銃と、箱で保管してあった銃弾をちゃんと頂いてきた。
私と高橋が部屋の外に出ると、スプリンクラーが作動したらしい。
地下階の場合は水没を防ぐ為、水スプリンクラーではなく、泡スプリンクラーが噴き出ることが多い。
ここもそうなのだろうか?
開けて確認する気にはなれないが、少なくとも駅全体が火事になる恐れは無くなった。
何ぼチート級アイテムとはいえ、短所はしっかりあったか。
「高橋君、あんまり何度も使えんよ?」
「すいません」
高橋は背負っているリュックの中に、ロッカー室から持ち出した殺虫スプレーを2個ほど入れていた。
他にもスプレーが見えるのは、救急スプレーか。
そしてようやく、休憩室に辿り着く。
だが、鍵が掛かっていた。
「う、マジか。まあ、当たり前か。こんな所に立て籠もっているくらいだからな」
因みに、浴室で拾った鍵では開かなかった。
私はドアをノックした。
「すいませーん!東京から来た探偵の者ですが、阿部さん、中にいますかー?」
だが、中から返事は無い。
「先生、もしかしたら、既に死体に……」
「どこかに鍵は無いかな?」
「駅員室の中を探せばあるかもですね」
「しょうがない。探しに行くか」
「ちょっと待ってください、先生」
高橋はポケットの中からキーピックを取り出すと、それで何やらガチャガチャやりだし……。
「はい、開きました」
「お、おまっ……!えー?」
「何か?」
「……もしかして、この前の事件、都合良く納戸の鍵が開いてたのも、もしかしてキミ?」
「はい」
「……クライアントさんにはナイショな?」
「はい」
私は早速、開錠されたドアを開けた。
「先生、絶対ゾンビ化してますって」
「シッ!」
果たして、ここに立て籠もっているという阿部氏は無事なのだろうか。
「グオオオオ!」
「アアア……!」
「一体、どうなってるんだ!?」
私はショットガンを、高橋はハンドガンを2丁両手に持って、駅員ゾンビと運転士ゾンビに応戦した。
特に、運転士だった者は“赤鬼”のような風体に変化していた。
「先生!」
“赤鬼”(正式名称はクリムゾンヘッド)は前方にいる普通のゾンビを邪魔だとばかりに、殴り飛ばした。
頭を殴られ、壁に叩き付けられたゾンビはフラフラとしながらも倒れなかった。
「逆に好都合!」
私は洗面台の上にあった、誰のとも分からぬヘアスプレーを取り、床に落ちていたライターを拾い上げた。
そして……。
「ギャアアアッ!!」
即席火炎放射器だ。
オイルライターの火を点け、その後ろからゾンビ達に向かってヘアスプレーを噴射する。
確か、こういうゾンビ達を特殊部隊が火炎放射器で焼き払ってやるシーンを映画で見たことがある。
映画の中だけの話だけかと思ったが、どうやら歩く死体なだけに、本当に火に弱いらしい。
“赤鬼”など、頭部が松明のように燃え上がった。
まるで、全身が燃料だ。
ゾンビ達はついに全身火だるまになり、床をのたうち回った。
そして、それぞれ一介の焼死体と化したのである。
さすがに腐乱死体で歩くことはできても、焼死体となっては歩くことはできないようだ。
「こんなに簡単に片付くなんて……」
「先生、さすがです!」
「ショットガンの弾が切れた。どこかで補充できないかな?」
「サツもハンドガンの弾くらいしか無いですからね」
「と、とにかく、奥を探してみよう」
それにしても、腐った死体が放つ腐臭だけでも相当なものなのに、それが焼死体となったら、それはもう【お察しください】。
私はハンカチで鼻を押さえながら、“赤鬼”が沈められていた浴室へ入ってみた。
アパートのそれみたいに、セパレートタイプのユニットバスがあった。
沈められていたという浴槽には赤黒い汚水が溜まっていた。
試しに、私は水を抜いてみた。
「!?」
すると、浴槽の底に鍵が落ちているのが分かった。
「これは、どこの鍵だろう?」
「分かりませんが、何か重要そうな鍵ですね」
「一応、持っておこう」
少なくとも、アパートや車のキーでは無さそうだ。
私達は思わぬ“中ボス戦”を繰り広げた仮眠室をあとにした。
次に入ってみたのがロッカー室。
ここにゾンビはいなかった。
「おいおい、マジかよー」
私は思わず吹き出しそうになった。
何故ならロッカー室内の掲示板に、
『吉川君へ。私物の散弾銃をいつまでもロッカーに入れておかないで持ち帰ること。管理が悪いと、銃の所持許可も剥奪されるのではなかったか? 島村』
というメモが貼り付けられていたからだ。
この吉川という駅員は、猟友会にでも入っているのか?
メモ書きからして、違法に持っているというわけではないようだ。
島村というのは、あの“かゆうま日記”を書いた駅員のそれの中に出て来た当直助役のことだろう。
「探せ!」
「はい!」
もちろん、ロッカーにはそれぞれ名前が書いてある。
私は吉川駅員のロッカーを見つけて、そのドアを開けた。
「…………」
「…………」
私は目が点になった。
もしかしたら、ロッカーの中にいる『本人』も何が何だか分からなかっただろう。
「先生、どうしました?」
「……ちわ」
「グオオオオッ!」
「だーっ!一体、何なんだ、この駅わっ!?」
ここにも“赤鬼”がいた。
「くっ!」
ロッカーの上にも色々と物が置かれていたので、高橋はその上を探していた。
どういうわけだか、その上にあった殺虫スプレーを取り出した高橋は、同じくロッカーの中で見つけたオイルライターを手にした。
「こっちだ、化け物!!」
高橋がロッカーをガンガンと叩く。
すると、“赤鬼”が今度は私から高橋の方に関心を向けた。
「高橋君!」
元は同じゾンビだとは思えないほどの跳躍力。
“赤鬼”は高橋が乗っかっているロッカーの上にジャンプしてこようとした。
「食らえっ!」
そこを高橋もまた、即席の火炎放射器を放つ。
「ゥオオオオオッ!!」
私もヤツの後ろから同じ攻撃をする。
再び火だるまになる“赤鬼”。
こりゃ、チート級のアイテムだな。
普通のゾンビが来ても、もうこれでいいんじゃないか?
「いや、ダメです、先生!」
火だるまになった“赤鬼”がのたうち回ったもんだから、それが燃えやすい物に燃え移り、何だかロッカールーム内に煙が充満してきた。
「高橋君!何か、火事になったっぽい!早く出よう!」
「はい!」
もっとも、吉川駅員が潜んでいたロッカーの中にあった散弾銃と、箱で保管してあった銃弾をちゃんと頂いてきた。
私と高橋が部屋の外に出ると、スプリンクラーが作動したらしい。
地下階の場合は水没を防ぐ為、水スプリンクラーではなく、泡スプリンクラーが噴き出ることが多い。
ここもそうなのだろうか?
開けて確認する気にはなれないが、少なくとも駅全体が火事になる恐れは無くなった。
何ぼチート級アイテムとはいえ、短所はしっかりあったか。
「高橋君、あんまり何度も使えんよ?」
「すいません」
高橋は背負っているリュックの中に、ロッカー室から持ち出した殺虫スプレーを2個ほど入れていた。
他にもスプレーが見えるのは、救急スプレーか。
そしてようやく、休憩室に辿り着く。
だが、鍵が掛かっていた。
「う、マジか。まあ、当たり前か。こんな所に立て籠もっているくらいだからな」
因みに、浴室で拾った鍵では開かなかった。
私はドアをノックした。
「すいませーん!東京から来た探偵の者ですが、阿部さん、中にいますかー?」
だが、中から返事は無い。
「先生、もしかしたら、既に死体に……」
「どこかに鍵は無いかな?」
「駅員室の中を探せばあるかもですね」
「しょうがない。探しに行くか」
「ちょっと待ってください、先生」
高橋はポケットの中からキーピックを取り出すと、それで何やらガチャガチャやりだし……。
「はい、開きました」
「お、おまっ……!えー?」
「何か?」
「……もしかして、この前の事件、都合良く納戸の鍵が開いてたのも、もしかしてキミ?」
「はい」
「……クライアントさんにはナイショな?」
「はい」
私は早速、開錠されたドアを開けた。
「先生、絶対ゾンビ化してますって」
「シッ!」
果たして、ここに立て籠もっているという阿部氏は無事なのだろうか。