[6月25日02:00.天候:不明 某県霧生市・霧生電鉄霞台団地駅]
〔改札口は右手の方向です。1階でございます。ドアが開きます〕
駅員室の鍵と思われるものを拾った私達は、それで駅員室へ向かった。
さすがに階段を上るのも疲れてきたので、動いているエレベーターで上がった。
体力が残っているうちに、早くこの町から出ないと……。
「アー……!」
「くそっ!どっから湧いて来るんだ!」
エレベーターのドアが開くと、ゾンビが1人、呻き声を上げてやってきた。
幸い、エレベーターの真ん前にいたわけではないようで、開いたと同時に襲ってきたということは無かったが。
高橋がすぐにハンドガンを発砲して、ゾンビを射殺する。
有人改札口から改札の外に出て、そこから駅員室のドアへと向かう。
果たして、それはやはり駅員室の鍵だった。
恐らく、あの電車が事故に遭ったので、駅員が避難誘導とかしている時に落としたのかもしれない。
私達は駅員室の中に入った。
「高橋君、入ったら戸締りをしてくれよ?さっきみたいに、どこから出て来たんだか分からないゾンビにこじ開けられたりしたら大変だからな」
「はい」
高橋は事務室のドアを閉めて鍵を掛けた。
駅員室の中は電気が消えていたが、停電はしていないので、スイッチを入れたら電気が点いた。
「すいませーん?誰かいませんかー?」
駅員室の中は荒れており、慌てて避難したか何かしたのかもしれない。
或いは、ここにもゾンビが入って来たのか。
幸い、駅員室内にゾンビはいないようだった。
「先生、これを……」
「ん?」
室内のホワイトボードには、鉄道線内で何が起きたかが完結に書かれていた。
1番下には『霞台トンネル東口、土砂崩れ』とか書かれていた。
土砂崩れのようには見えなかったのだが……。
『東山公園、全員無事!』
とか、
『霧生学園前、全員無事』
とか書かれていたが、これは途中駅の駅名だ。
どうやら、ちゃんと助かっている所もあるらしい。
で、その下には、また別の文章が書かれていた。
『霞台駅は全滅だ。一緒に逃げていた長谷川に化け物の兆候が現れたので、仕方なく殺して仮眠室の風呂に沈めておいた。これで恐らく、私が1番最後の生き残りだ。もし生きてる人がこれを見たなら、休憩室まで来てください。 阿部』
「おおっ、生き残りがいるのか!」
「ですが、ヘタしたら、この阿部とかいうヤツもゾンビ化しているかもしれません」
「その時はその時だ。電車が運転できる人だといいなぁ」
「どうですかね……」
駅員室の奥には鉄扉があり、階段になっていた。
どうやら、さっきの階段と壁1つ隔てて並行しているらしい。
職員専用のバックヤードということもあってか、こちらは無機質なコンクリートの壁で、照明も薄暗かった。
「アァア……!」
「ウウウ……!」
駅員室の外には乗客か避難民のゾンビがいたが、ここは場所柄、職員のゾンビがいた。
やはりここも、安全な場所では無かったのだ。
「あっ、警察官が死んでる」
そういえば駅の外に、パトカーも止まっていた。
一応、警察が駆け付けてはいたのだ。
だが、ゾンビにやられてしまったらしい。
私は警察官が持っていた予備の銃弾を頂いた。
「あまり、弾は無駄にできんぞ」
「分かってます」
「休憩室はどこだ?」
途中に信号室とかあった。
で、仮眠室もあった。
「ここか?さっき、ゾンビ化しそうになった人を殺して沈めたってのは?」
「そのようですね」
まあ、既に阿部氏という職員が屠ってくれたようだが、油断はできない。
「高橋君、私が開けるから、キミは開けると同時に突入してくれ」
「分かりました」
「せーので行くぞ?せーのォ……」
バンッ!(ドアを思いっきり開けた音)
「!!!」
高橋は両手にハンドガンを持った状態で、仮眠室に飛び込んだ。
「……先生、何とも無いようです」
「そうか」
私が高橋の後に続いて入ると、仮眠室らしく、2段ベッドが2つあるのと、テーブルと椅子、そして奥に浴室があった。
そして、ベッドとベッドの間には職員の死体が転がっている。
これでは阿部氏も、ここに立て籠もることはできなかったようだ。
「テーブルの上に何かある」
それは一冊のノートであった。
開いてみると、どうやらここで働く駅員の日記らしい。
『6月13日 今日は同僚の鈴木、そして運転士の佐藤と公休日が合ったので、久方ぶりに街に繰り出した。昼過ぎにパチンコをやったが、鈴木だけボロ儲けしてやがる。なもんで、夕方からの飲み会では鈴木にだいぶ出させてやったw』
『6月14日 今日、前々から本社のおエラ達から頼まれていた警乗の手伝いをすることになった。大山寺駅の手前にある引き込み線から、特別列車が出るとのこと。普段は車両基地で寝ている貨物電車が動く機会に立ち会えたのは、鉄オタとして最高だ』
『6月15日 今日3時頃、仮眠を取っていたら、当直助役の島村さんに突然叩き起こされた。何でも昨日の引き込み線の先にある施設で事故が起き、貨物電車が全損したという。爆発か何か起きたのかと思ったが、事故があった事実だけを知らされ、絶対に口外するなと言われた。確か昨日、その施設から重要な何かを貨物電車に積み込んでいたから……もしかして、その事故で全部オシャカになったってオチ?』
『6月16日 終電後のトンネル点検は憂鬱だ。何であんな真っ暗なトンネルの中をモグラみたいに歩き回らなきゃいけないのかと、気が滅入る。地上駅で、しかも女子中高生の姿が毎日拝める霧生学園前に赴任した山田達が羨ましい。そしたら阿部の奴、「どうせトンネルの中なんだから、昼も夜も同じだろ?」なんて言いやがった。こういうのは気持ちの問題なんだ!昼は昼!夜は夜なんだ!例えトンネルの中であっても!』
『6月17日 トンネルの点検中、首の後ろを変な虫にカプッと噛まれた。びっくりして振り向いたら、体長30センチはあるクモだった。びっくりして大声を上げたら、クモの奴もびっくりしたのか、通気口の中に逃げて行ったけども、噛まれた所が腫れてしまって痛いし痒い。取りあえず、湿布や絆創膏を貼っておこう。明日は公休日だから、もしそれでダメなら、病院へ行っておこう』
『6月18日 病院に行ってみたら、やたら混んでいる。何でも、私のように変な虫に噛まれて腫れてしまった人もいれば、酔っ払いやホームレスに引っ掛かれたり噛まれたりして、そこが腫れたという人達なのだそうだ。中には体中を掻き毟ったり、倒れたりして処置室に運ばれたりしている人もいる。何か、ヤバそうだな。やっと私の番が来て、医者に見せたら、腫れている所に薬を塗ったガーゼを当てて、包帯を巻かれた。そして、しばらくは安静にしているようにと言われた。これで何とか大丈夫かな』
『6月19日 今日はやたら電車がオーバーランしたり、手前で止まったりして、停車位置を訂正したりしている。運転士達の中には、手に包帯を巻いていたりする人もいるから、自分と同じ目にあったりしたのだろうか?』
『6月21日 きんむ中、体中あつい かゆい 仮みん室で休けいする。具合わるいけど、はらはへった。あべの弁当、いただく』
『6月23日 かゆい かゆい さとーきたー ひどいかおなんで ころして く た。 うまか です。』
『4 かゆ うま 』
「こ、これは……!?」
「生きてる人間がゾンビ化する課程ですか!?」
バンッ!
「!?」
「ゥオオオ!」
その時、浴室のドアから、レストランのビルの屋上に現れた“赤鬼”とそっくりなヤツが飛び出してきた。
と、同時に、ベッドの下で死んでいた駅員のゾンビも呻き声を上げて、私達に向かって来た。
「風呂に沈められて死んだはずじゃ!?」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
私は“赤鬼”(後で分かったことだが、正式には「クリムゾンヘッド」というらしい)と化した、長谷川駅員に対してショットガンを発砲した。
高橋は恐らく、佐藤運転士?のゾンビに対してハンドガンを発砲する。
「くそっ!迷わず成仏してくれーっ!」
やはり、ここも地獄の一部であったか。
〔改札口は右手の方向です。1階でございます。ドアが開きます〕
駅員室の鍵と思われるものを拾った私達は、それで駅員室へ向かった。
さすがに階段を上るのも疲れてきたので、動いているエレベーターで上がった。
体力が残っているうちに、早くこの町から出ないと……。
「アー……!」
「くそっ!どっから湧いて来るんだ!」
エレベーターのドアが開くと、ゾンビが1人、呻き声を上げてやってきた。
幸い、エレベーターの真ん前にいたわけではないようで、開いたと同時に襲ってきたということは無かったが。
高橋がすぐにハンドガンを発砲して、ゾンビを射殺する。
有人改札口から改札の外に出て、そこから駅員室のドアへと向かう。
果たして、それはやはり駅員室の鍵だった。
恐らく、あの電車が事故に遭ったので、駅員が避難誘導とかしている時に落としたのかもしれない。
私達は駅員室の中に入った。
「高橋君、入ったら戸締りをしてくれよ?さっきみたいに、どこから出て来たんだか分からないゾンビにこじ開けられたりしたら大変だからな」
「はい」
高橋は事務室のドアを閉めて鍵を掛けた。
駅員室の中は電気が消えていたが、停電はしていないので、スイッチを入れたら電気が点いた。
「すいませーん?誰かいませんかー?」
駅員室の中は荒れており、慌てて避難したか何かしたのかもしれない。
或いは、ここにもゾンビが入って来たのか。
幸い、駅員室内にゾンビはいないようだった。
「先生、これを……」
「ん?」
室内のホワイトボードには、鉄道線内で何が起きたかが完結に書かれていた。
1番下には『霞台トンネル東口、土砂崩れ』とか書かれていた。
土砂崩れのようには見えなかったのだが……。
『東山公園、全員無事!』
とか、
『霧生学園前、全員無事』
とか書かれていたが、これは途中駅の駅名だ。
どうやら、ちゃんと助かっている所もあるらしい。
で、その下には、また別の文章が書かれていた。
『霞台駅は全滅だ。一緒に逃げていた長谷川に化け物の兆候が現れたので、仕方なく殺して仮眠室の風呂に沈めておいた。これで恐らく、私が1番最後の生き残りだ。もし生きてる人がこれを見たなら、休憩室まで来てください。 阿部』
「おおっ、生き残りがいるのか!」
「ですが、ヘタしたら、この阿部とかいうヤツもゾンビ化しているかもしれません」
「その時はその時だ。電車が運転できる人だといいなぁ」
「どうですかね……」
駅員室の奥には鉄扉があり、階段になっていた。
どうやら、さっきの階段と壁1つ隔てて並行しているらしい。
職員専用のバックヤードということもあってか、こちらは無機質なコンクリートの壁で、照明も薄暗かった。
「アァア……!」
「ウウウ……!」
駅員室の外には乗客か避難民のゾンビがいたが、ここは場所柄、職員のゾンビがいた。
やはりここも、安全な場所では無かったのだ。
「あっ、警察官が死んでる」
そういえば駅の外に、パトカーも止まっていた。
一応、警察が駆け付けてはいたのだ。
だが、ゾンビにやられてしまったらしい。
私は警察官が持っていた予備の銃弾を頂いた。
「あまり、弾は無駄にできんぞ」
「分かってます」
「休憩室はどこだ?」
途中に信号室とかあった。
で、仮眠室もあった。
「ここか?さっき、ゾンビ化しそうになった人を殺して沈めたってのは?」
「そのようですね」
まあ、既に阿部氏という職員が屠ってくれたようだが、油断はできない。
「高橋君、私が開けるから、キミは開けると同時に突入してくれ」
「分かりました」
「せーので行くぞ?せーのォ……」
バンッ!(ドアを思いっきり開けた音)
「!!!」
高橋は両手にハンドガンを持った状態で、仮眠室に飛び込んだ。
「……先生、何とも無いようです」
「そうか」
私が高橋の後に続いて入ると、仮眠室らしく、2段ベッドが2つあるのと、テーブルと椅子、そして奥に浴室があった。
そして、ベッドとベッドの間には職員の死体が転がっている。
これでは阿部氏も、ここに立て籠もることはできなかったようだ。
「テーブルの上に何かある」
それは一冊のノートであった。
開いてみると、どうやらここで働く駅員の日記らしい。
『6月13日 今日は同僚の鈴木、そして運転士の佐藤と公休日が合ったので、久方ぶりに街に繰り出した。昼過ぎにパチンコをやったが、鈴木だけボロ儲けしてやがる。なもんで、夕方からの飲み会では鈴木にだいぶ出させてやったw』
『6月14日 今日、前々から本社のおエラ達から頼まれていた警乗の手伝いをすることになった。大山寺駅の手前にある引き込み線から、特別列車が出るとのこと。普段は車両基地で寝ている貨物電車が動く機会に立ち会えたのは、鉄オタとして最高だ』
『6月15日 今日3時頃、仮眠を取っていたら、当直助役の島村さんに突然叩き起こされた。何でも昨日の引き込み線の先にある施設で事故が起き、貨物電車が全損したという。爆発か何か起きたのかと思ったが、事故があった事実だけを知らされ、絶対に口外するなと言われた。確か昨日、その施設から重要な何かを貨物電車に積み込んでいたから……もしかして、その事故で全部オシャカになったってオチ?』
『6月16日 終電後のトンネル点検は憂鬱だ。何であんな真っ暗なトンネルの中をモグラみたいに歩き回らなきゃいけないのかと、気が滅入る。地上駅で、しかも女子中高生の姿が毎日拝める霧生学園前に赴任した山田達が羨ましい。そしたら阿部の奴、「どうせトンネルの中なんだから、昼も夜も同じだろ?」なんて言いやがった。こういうのは気持ちの問題なんだ!昼は昼!夜は夜なんだ!例えトンネルの中であっても!』
『6月17日 トンネルの点検中、首の後ろを変な虫にカプッと噛まれた。びっくりして振り向いたら、体長30センチはあるクモだった。びっくりして大声を上げたら、クモの奴もびっくりしたのか、通気口の中に逃げて行ったけども、噛まれた所が腫れてしまって痛いし痒い。取りあえず、湿布や絆創膏を貼っておこう。明日は公休日だから、もしそれでダメなら、病院へ行っておこう』
『6月18日 病院に行ってみたら、やたら混んでいる。何でも、私のように変な虫に噛まれて腫れてしまった人もいれば、酔っ払いやホームレスに引っ掛かれたり噛まれたりして、そこが腫れたという人達なのだそうだ。中には体中を掻き毟ったり、倒れたりして処置室に運ばれたりしている人もいる。何か、ヤバそうだな。やっと私の番が来て、医者に見せたら、腫れている所に薬を塗ったガーゼを当てて、包帯を巻かれた。そして、しばらくは安静にしているようにと言われた。これで何とか大丈夫かな』
『6月19日 今日はやたら電車がオーバーランしたり、手前で止まったりして、停車位置を訂正したりしている。運転士達の中には、手に包帯を巻いていたりする人もいるから、自分と同じ目にあったりしたのだろうか?』
『6月21日 きんむ中、体中あつい かゆい 仮みん室で休けいする。具合わるいけど、はらはへった。あべの弁当、いただく』
『6月23日 かゆい かゆい さとーきたー ひどいかおなんで ころして く た。 うまか です。』
『4 かゆ うま 』
「こ、これは……!?」
「生きてる人間がゾンビ化する課程ですか!?」
バンッ!
「!?」
「ゥオオオ!」
その時、浴室のドアから、レストランのビルの屋上に現れた“赤鬼”とそっくりなヤツが飛び出してきた。
と、同時に、ベッドの下で死んでいた駅員のゾンビも呻き声を上げて、私達に向かって来た。
「風呂に沈められて死んだはずじゃ!?」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
私は“赤鬼”(後で分かったことだが、正式には「クリムゾンヘッド」というらしい)と化した、長谷川駅員に対してショットガンを発砲した。
高橋は恐らく、佐藤運転士?のゾンビに対してハンドガンを発砲する。
「くそっ!迷わず成仏してくれーっ!」
やはり、ここも地獄の一部であったか。