報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 5

2016-07-20 21:11:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日01:00.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター]

 私達はモニタに人影が映った4階のトイレを確かめた。
 だが男子トイレには、誰もいなかった。
 そんな時、高野氏からゾンビウィルスを浄化し、しかも抗体まで作ってくれるというワクチンの製造法が分かったとの報告が入った。
 私達が3階の研究室に行こうとした時、誰もいないと思われた女子トイレから水の流れる音がした。
「先生、女子トイレに誰かいるようですが?」
「……後で行こう」
「いいんですか?」
「いずれにせよ、高野さんに来てもらわないと話にならん。もし元気な生存者だったら、この時点で俺達の存在に気づいて助けを呼ぶだろうからな」
「なるほど」
「俺達がゾンビ化したら元も子も無いから、早いとこ、ワクチンを打ちに行こう」
「はい」
 変なクイズを出してくるエレベーターには乗りたくなかったので、私達は階段から行こうとした。
 だが、いつの間にか4階にも防火シャッターが下ろされており、その脇のドアを通ろうとするには、またカードキーが必要だということが分かった。
 で、カードを当てると……。
「やっぱり……」
 モニタにクイズが表示された。
 何だ何だ?ここの研究所は、普段からクイズ大会でもやってたのか?

『“Gynoid Multitype Cindy”で、マルチタイプのオリジナルナンバーは何機存在した?但し、現在も稼働しているかどうかは不問とする』

「は!?」

『1:5機 2:6機 3:7機 4:8機 5:現在も尚、調査中』

「な、何だこれ!?」
「先生、確か8号機のアルエットというのがいるので、8機ですよ」
「そ、そうか!」
 私は4を押した。

 ブブーッ!(ハズレ音のブザー)

「ありゃ!?」

 バンッ!(すぐ近くのドアが破られた音)

「キィィィィィッ!」
「キィエエエエエッ!」
 ハンターが2体、私達に向かってきた。
「ハズレるとハンターの罰ゲームかよ!?何なんだ、ここはァ!?」
 私と高橋はすぐさま銃を構え、緑のジャイアン……もとい、ハンターに向かって発砲した。
 ダッダッダッと走る時は両手を前足のように使って、4足歩行で向かってくる。
 この場合、当然ながら手を使った攻撃を奴等はできないため、走って来る時も隙があるのである。
 が、たまに、
「うわっ、避けやがった!」
 発砲すると、持ち前の素早さから弾を避けることもある。
 それでも何とか倒すことができた。
「何だよ、もう!せめてブリキの金ダライが落ちて来る程度にしてくれよ!」
「……先生、いつの時代の話ですか?」
「とにかく、迂闊に間違ったら、ハンターの罰ゲームだということが分かった」
 だが、一応は本物のセキュリティカードを当てているからだろう。
 ハンターを倒すと、鍵が開くようである。
 で、ちゃんとモニタには解答と解説が書かれていた。

『正解は3。オリジナルタイプはキリスト教の“七つの大罪”をモチーフにされた為、7機製造された。8号機のアルエットはそんな彼らのモデルチェンジ版であり、オリジナルモデルではない』

 3階に下りると、研究室の入口で高野氏が手招きしていた。
「遅いじゃない。何してたの?」
「ハンターと格闘」
「うそ!?ハンターがいたの!?」
「……まあな。それで、ワクチンができたんだって?」
「うん。これだよ」
 それは3本の注射器に入った白い液体だった。
「この研究員の研究ノートを見ると、“デイライト”って言うんだって」
「デイライト?」
「要するに、『日の光(デイライト)があれば、雨傘(アンブレラ)は要らない』という意味なんだって」
「うまい!高橋君、研究員さんに座布団2枚!」
「はい、かしこまりました!……って、先生!?」
「冗談だよ。だけど、会社に盾突くようなネーミングだな。いいのか?」
「元々、町をこんな目に遭わせたウィルスというのは、アメリカの本社から隠蔽用に持ち込まれたものらしいね」
「隠蔽用?」
「昔、アメリカでも、この霧生市みたいな事件が起きたって話は知ってる?」
「いや、知らない」
「名前をラクーンシティって言うんだけどね。表向き、アメリカ軍が核実験に失敗して放射能汚染になったからという理由で封鎖された町ね。でも実際は、アンブレラがウィルスを漏洩させて汚染させたのが真実だよ」
「アメリカの本体は研究所における事故を何度も起こして、それが防げなかったから、企業としての信用が失墜して潰れたらしいな。日本法人は独立して、辛うじて生き残ったけれども……」
「きっと、アメリカと同じことが起きたと思うよ」
「その証拠がこの研究室にあるというのか?」
「あいにくと、証拠は持ち出されたみたい」
「マジか!……とにかく、ワクチンを打とう」
 私達はワクチンの入った注射器を装置にセットした。
 まるで自動血圧測定器のような穴に腕を入れると、自動的にセットした注射器が注射してくれるという仕組みだ。
「……大人になっても、注射は痛いものですね」
「それゃそうさ。これで、俺達はゾンビ化しないで済むのか?」
「このノートに書いてあることが本当ならね」
「嘘は書いていないだろうな」
「よし。そのノートは証拠だ。持って行こう」
「もちろんだよ」
「あとは脱出する手段だな。何とか、5階のシャッターを開ける方法が無いか……」
「もう1度、警備室に戻ってみる?もしかしたら、何か分かるかもよ」
「あ、そうだ。それより、高野さんに1つ見てもらいたいものがあるんだ」
「なに?」
 私は4階のトイレの状況を話した。
「何だか不気味な話だね」
「だけど、もし生存者がいるようだったら、助けたい。大丈夫。高野さんに先に入ってはもらうけども、後から俺が付いていくから」
「先生、俺は!?」
「高橋君はトイレの入口で待っててくれ」
「はあ……」

 私達は再び4階に戻った。
 が、
「またクイズ!いい加減にしてくれ!」
 階段側からフロアに入る際も、クイズに答えるパターンらしい。

『“大魔道師の弟子”の主人公、稲生勇太が所属している日蓮正宗寺院名は何?』
『1:正証寺 2:法道院 3:報恩坊 4:理境坊 5:特に名前は明かされていない』

 尚、ここではリッカーと勝負したことを告白しよう。
 果たして、トイレで待ち受けていたものとは……?
コメント
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