報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「エレーナの動き」

2020-02-11 17:03:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月29日14:00.天候:曇.東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 オーナー:「い、いいのかい、エレーナ?今日は非番でいいんだよ?」
 エレーナ:「休日出勤手当は頂きます。そこは東京都の最低賃金でいいです」
 オーナー:「それはそうだが、働き方改革は外国籍にも適用されるんだよ」
 エレーナ:「これが終わったら、代わりに休暇を頂きますので、オーナーは奥へ『避難』してください」
 オーナー:「別にあれ以来、変な電話は掛かってこなかったけどねぇ……」

 エレーナは本来今日は夜勤明けであった。
 本来ならまだ部屋で寝ている時間なのだが、そこは薬師系の魔女。
 眠気を吹っ飛ばす薬を調達するなど、お手の物である。
 と、そこへ電話が掛かって来る。

 エレーナ:「私が出ます!」
 オーナー:「ああ、あとは頼むよ」

 エレーナは電話に出た。

 エレーナ:「お電話ありがとうございます。ワンスターホテルでございます」
 オヤジ:「あー、こちら森下三丁目の玉田だけどね、出前頼まァ。チャシューメン1つとギョーザ定食1つに……」
 エレーナ:「あの、うちホテルですけど?」

 またもやグランドマスタークラスの大魔道師が『呪い針』攻撃を仕掛けて来たかと思い、緊張していたエレーナだったが、近所のオヤジの間違い電話によってその糸は切れた。

 エレーナ:「全く。この辺りは下町ック過ぎるぜ」

 今度は水晶玉が光る。

 エレーナ:「はい、ポーリン先生。エレーナです」

 ポーリンはエレーナが師事する大魔道師。

 ポーリン:「午前中、エレーナに向けて放たれた『呪い針』の出所が分かったぞ」
 エレーナ:「どこですか?」
 ポーリン:「ウェールズ地方の片田舎だ」
 エレーナ:「イギリスですか!?」
 ポーリン:「種類は【以下略】。このタイプはダンテ門内で使われているものではない」
 エレーナ:「では他門からの宣戦布告……!?」
 ポーリン:「一発だけなら誤射かもしれんのぅ……」
 エレーナ:「なに日本の政治家みたいに能天気なこと仰ってるんですか。私がいち早く気づかなければ『協力者』は死んでたんですよ」
 ポーリン:「分かっておる。どうやらイリーナが動いたみたいじゃ」
 エレーナ:「イリーナ先生が?」
 ポーリン:「『呪い針』といい、こことは無関係のイリーナが動いたことといい、どうやらそちらのホテルを訪ねて来たという自称探偵の男絡みかもしれんのう……」
 エレーナ:「なるほど。あの男はマリアンナを捜していました。そしてそいつは稲生氏の家で死んでいます。あの『呪い針』を放ったのは、その男のバックボーンですか」
 ポーリン:「その可能性がある。従って、そのホテルはもう安全じゃ。何せ矛先がイリーナ達に向けられたからのう……」
 エレーナ:「分かりました。ありがとうございます。具体的にイリーナ先生は何をされたのでしょう?」
 ポーリン:「物臭魔女のやることじゃ。横着してすぐ大技を使うのは、弟子達への育成にも良くない。……と、私はいつも言っておるのじゃが」
 エレーナ:「(敵に対して何か大技を使った……?)他に、こちらとして何か気をつけることはありますか?」
 ポーリン:「明日か明後日、成田空港には近づかんことじゃ。あと、その間はホウキに乗ることはせんように。オマエもなかなか福運に恵まれないコじゃからのう……」
 エレーナ:「はあ、すいません……。(福運に恵まれてる魔女なんていねーだろ。ていうか、飛行機がヤベェってことか)」

 だから運には頼らず、それは自分で生み出すものという考えが門内に浸透している。
 その最たるものが魔法なのだろう。

 エレーナ:「それでは失礼します」

 エレーナは通信を切った。
 と、そこへエントランスのドアが開けられる。

 鈴木:「こんにち……あれ?」
 エレーナ:「よう、鈴木。今日は部屋は満室だぜ?」
 鈴木:「エレーナ、今日は非番じゃ?」
 エレーナ:「オマエと違って私は働き者なんだぜ。休日出勤手当、稼がせてもらうぜ」
 鈴木:「なーんだ、残念。せっかく夕食でも御馳走してあげようと思って来たのに……」
 エレーナ:「タダ飯にタダ酒だと?また後日乗らせてもらうぜ」
 鈴木:「一体、どうしたんだ?オーナーさん、倒れたのか?」
 エレーナ:「だから、自主的に稼いでいるんだって」
 鈴木:「んん?」
 エレーナ:「もうすぐチェックインの時間だから、邪魔するなら帰るんだぜ」
 鈴木:「へいへい。じゃ、明日に備えて帰るか」
 エレーナ:「学校か?」
 鈴木:「海外弘通に出かけておられたうちの講頭さんが帰って来る日だから、迎えに行こうと思って。俺んちの車、ベンツVクラスだから、迎えに行くのにちょうどいい」
 エレーナ:「オマエ、死にたくなかったら成田空港へは行くなよ?」
 鈴木:「ええっ?……いや多分、羽田空港だと思うけど」
 エレーナ:「それならいい」
 鈴木:「何かあるのかよ?」
 エレーナ:「私の占いじゃ、お笑いテロ組織“ヤング・ホーク団”がハイジャックをするぜ」
 鈴木:「それ、別の作品じゃね?……ていうかエレーナ、俺の心配してくれるんだ?」
 エレーナ:「オマエは私にとって金づる……っておい!」

 鈴木、エレーナの手を握る。

 鈴木:「こんな金髪美人魔女に心配してもらえて功徳~~~~~~~!!」
 エレーナ:「オマエなぁ!自惚れもいい加減にしろよ!?」
 鈴木:「じゃ、羽田空港なら安全ってことで」
 エレーナ:「安全宣言は出してねーけどな、あとの責任は取らねーぜ」

 鈴木はルンルン気分でホテルを出て行った。

 エレーナ:「全くもう……」

 とはいうものの、鈴木に握られた手を洗うことはしなかったエレーナだった。
 表向きには、

 宿泊客:「すいません」

 すぐに宿泊客が来て、その対応に迫られたからとしている。

 エレーナ:「はい、1名様で御予約の移住院十智郎様ですね。それでは、こちらのカードに御記入を……」
コメント (1)
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