[1月29日07:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
マリア:「おはようございます」
マリアが眠い目を擦りながら1階の客間に行くと、既にイリーナはいなかった。
夜着が片付けられているところを見ると、既に起きているらしい。
その足でダイニングに行くと、確かにそこにイリーナはいた。
因みにキッチンにいるのは、マリアのメイド人形のミカエラ。
イリーナ:「おはよう。昨夜は勇太君に慰めてもらった?」
マリア:「はい……沢山……」
イリーナ:「そう。そりゃ良かった。今日は勇太君のお母様が退院なさるから、あなたも行って来なさい」
マリア:「はい……」
イリーナ:「勇太君は……部屋で勤行中か」
マリア:「……です」
マリアがイリーナとそのような話をしていると、ミカエラが紅茶を入れて来た。
マリア:「ありがとう」
イリーナ:「幸いこっちの警察には、あの探偵のことはバレてないみたいだから、死因はきっと『心臓発作』とかそんな感じで取り扱われるでしょうね」
マリア:「はい」
マリアは勝手知ったる稲生の家といった感じでテレビを点けたが、どの番組も新型肺炎のことで持ち切りだった。
イリーナ:「東アジア魔道団がやらかしたみたいね。きっと、クライアントの中国政府と折り合いが付かなかったのでしょう」
マリア:「それでもチャイナは私達に依頼しないんですね」
イリーナ:「ナスっちが営業したみたいだけど、『自らの欲望を満たす為には一部の隙も無く無駄が無い。クソッタレ欧米人の発想には反吐が出る』と負い返されたみたいよ」
マリア:「むしろ褒め言葉のような気がしますが?」
イリーナ:「ナスっちも激おこプンプンで帰ったみたいだから、ロシア政府高官を焚き付けて、中国に何かするように仕向けるかもね」
マリアが起こした不始末に対するお仕置きは厳しいものだったが、今のイリーナはいつも通りであった。
弟子が熱心に魔法を学ぶのは師匠として喜ばしいことだが、その弟子が今の力で身に付けるには不相応な禁忌の魔法もある。
興味を持つこと自体はけして悪いことではないのだが、危険性を認識しない状態で覚えてしまうと、後で大変なことになる。
その為、弟子が先走ってそのようなことをしないように注意するのも師匠の役目なのである。
イリーナ:「お尻の痛みは引いた?」
マリア:「ええ、まあ……」
イリーナ:「ちょっとお尻見せてみて?」
マリア:「は?まさか師匠、変な趣味が?」
イリーナ:「あのね!腫れ具合が心配だって言ってんの!」
マリア:「自分で30発も引っ叩いといて……」
マリアはボヤきながらスカートを捲り上げた。
今度は普通のショーツをはいている。
元々タンポンをよく使用する欧米人女性は、本来あまりサニタリーショーツは使用しないという。
それでもマリアは着用するのは、長い日本での生活で付けた知恵によるものだろうか。
イリーナ:「あー……ちょっと痣が残っちゃってるわねぇ……」
ショーツも半脱ぎすると、イリーナは鞭の痕を指でなぞりながら言った。
マリア:「だから……。てか、変な触り方しないでください」
イリーナ:「回復魔法を掛けてあげるわ。パペ、サタン、ハペ、サタン、アレッペ……」
そこへガチャとダイニングのドアが開けられた。
稲生:「おはようございま……っ!な、な……!?」
マリア:「出てけ、この野郎!」
マリアは顔を赤らめて紅茶を稲生にぶっ掛けた。
稲生:「あぢゃーっ!?」
稲生は慌てて出て行った。
稲生:「はて……?僕達は昨夜、裸の付き合いをしたはずだ……?」
熱い紅茶が掛かって火傷した部分を洗面所の水で冷やしながら、稲生は首を傾げた。
裸の付き合いを何度かした仲、たかだか半ケツくらいどうってことないと思うのだが、というのが稲生の主張だ。
[同日09:16.天候:晴 同区内 与野切敷川バス停→国際興業バス新都01系統社内]
マリア:「だから、セックスした後でも恥ずかしいものは恥ずかしいの!」
稲生:「ま、マリア、そんな大声で……」
マリア:「分からないみたいだから、さっきから大声で説明してるの!分かる!?」
稲生:「分かった。分かりました」
稲生は辟易した様子で手を振った。
そんなことしているうちにバスがやってくる。
朝ラッシュのピークは過ぎているはずだが、稲生とマリアは吊り革と手すりに掴まった。
おおかた、途中のイオンモール与野でぞろぞろ降りて行くだろう。
〔♪♪♪♪。次は小村田、小村田でございます〕
稲生:「このバス一本で行けますから。でも、帰りはタクシーになるでしょう」
マリア:「私は謝った方がいい?」
稲生:「いや、しなくていいでしょう。むしろ藪蛇になる恐れがあるので、しない方がいいです。あくまで不審者がたまたま家にやってきて、そこで急死しただけのことです」
マリア:「…………」
稲生:「別に気にすることはないよ。マリアだって、まさかあの魔法が効くとは思わなかったんでしょう?」
マリア:「うん、まあ……。ただ、効いたらいいなとは思った。だから、その……」
稲生:「未必の故意ってヤツですか。それでも効かなかったらそれで終わってた話ですから、効いたということは、やはりあの探偵は運が悪かったんですよ」
マリア:「やはり私は魔女だ。自分の不運を周りに振りまく」
稲生:「僕は幸せだけどね、マリアと一緒になれて……」
そう言って稲生はマリアの手を握った。
昔のマリアからすれば、男と手を繋ぐなど有り得ないことだった。
稲生:「昨日は……皆して運が悪かったんだよ。電車は2本も止まるし」
マリア:「うん……」
稲生:「今日はいいことあるようにって、勤行で御祈念してみたから」
マリア:「そうだといいな」
尚、電車の人身事故には巻き込まれた稲生とマリアだったが、代替手段で乗った路線バスにあっては、何のトラブルにも巻き込まれていない。
マリア:「おはようございます」
マリアが眠い目を擦りながら1階の客間に行くと、既にイリーナはいなかった。
夜着が片付けられているところを見ると、既に起きているらしい。
その足でダイニングに行くと、確かにそこにイリーナはいた。
因みにキッチンにいるのは、マリアのメイド人形のミカエラ。
イリーナ:「おはよう。昨夜は勇太君に慰めてもらった?」
マリア:「はい……沢山……」
イリーナ:「そう。そりゃ良かった。今日は勇太君のお母様が退院なさるから、あなたも行って来なさい」
マリア:「はい……」
イリーナ:「勇太君は……部屋で勤行中か」
マリア:「……です」
マリアがイリーナとそのような話をしていると、ミカエラが紅茶を入れて来た。
マリア:「ありがとう」
イリーナ:「幸いこっちの警察には、あの探偵のことはバレてないみたいだから、死因はきっと『心臓発作』とかそんな感じで取り扱われるでしょうね」
マリア:「はい」
マリアは勝手知ったる稲生の家といった感じでテレビを点けたが、どの番組も新型肺炎のことで持ち切りだった。
イリーナ:「東アジア魔道団がやらかしたみたいね。きっと、クライアントの中国政府と折り合いが付かなかったのでしょう」
マリア:「それでもチャイナは私達に依頼しないんですね」
イリーナ:「ナスっちが営業したみたいだけど、『自らの欲望を満たす為には一部の隙も無く無駄が無い。クソッタレ欧米人の発想には反吐が出る』と負い返されたみたいよ」
マリア:「むしろ褒め言葉のような気がしますが?」
イリーナ:「ナスっちも激おこプンプンで帰ったみたいだから、ロシア政府高官を焚き付けて、中国に何かするように仕向けるかもね」
マリアが起こした不始末に対するお仕置きは厳しいものだったが、今のイリーナはいつも通りであった。
弟子が熱心に魔法を学ぶのは師匠として喜ばしいことだが、その弟子が今の力で身に付けるには不相応な禁忌の魔法もある。
興味を持つこと自体はけして悪いことではないのだが、危険性を認識しない状態で覚えてしまうと、後で大変なことになる。
その為、弟子が先走ってそのようなことをしないように注意するのも師匠の役目なのである。
イリーナ:「お尻の痛みは引いた?」
マリア:「ええ、まあ……」
イリーナ:「ちょっとお尻見せてみて?」
マリア:「は?まさか師匠、変な趣味が?」
イリーナ:「あのね!腫れ具合が心配だって言ってんの!」
マリア:「自分で30発も引っ叩いといて……」
マリアはボヤきながらスカートを捲り上げた。
今度は普通のショーツをはいている。
元々タンポンをよく使用する欧米人女性は、本来あまりサニタリーショーツは使用しないという。
それでもマリアは着用するのは、長い日本での生活で付けた知恵によるものだろうか。
イリーナ:「あー……ちょっと痣が残っちゃってるわねぇ……」
ショーツも半脱ぎすると、イリーナは鞭の痕を指でなぞりながら言った。
マリア:「だから……。てか、変な触り方しないでください」
イリーナ:「回復魔法を掛けてあげるわ。パペ、サタン、ハペ、サタン、アレッペ……」
そこへガチャとダイニングのドアが開けられた。
稲生:「おはようございま……っ!な、な……!?」
マリア:「出てけ、この野郎!」
マリアは顔を赤らめて紅茶を稲生にぶっ掛けた。
稲生:「あぢゃーっ!?」
稲生は慌てて出て行った。
稲生:「はて……?僕達は昨夜、裸の付き合いをしたはずだ……?」
熱い紅茶が掛かって火傷した部分を洗面所の水で冷やしながら、稲生は首を傾げた。
裸の付き合いを何度かした仲、たかだか半ケツくらいどうってことないと思うのだが、というのが稲生の主張だ。
[同日09:16.天候:晴 同区内 与野切敷川バス停→国際興業バス新都01系統社内]
マリア:「だから、セックスした後でも恥ずかしいものは恥ずかしいの!」
稲生:「ま、マリア、そんな大声で……」
マリア:「分からないみたいだから、さっきから大声で説明してるの!分かる!?」
稲生:「分かった。分かりました」
稲生は辟易した様子で手を振った。
そんなことしているうちにバスがやってくる。
朝ラッシュのピークは過ぎているはずだが、稲生とマリアは吊り革と手すりに掴まった。
おおかた、途中のイオンモール与野でぞろぞろ降りて行くだろう。
〔♪♪♪♪。次は小村田、小村田でございます〕
稲生:「このバス一本で行けますから。でも、帰りはタクシーになるでしょう」
マリア:「私は謝った方がいい?」
稲生:「いや、しなくていいでしょう。むしろ藪蛇になる恐れがあるので、しない方がいいです。あくまで不審者がたまたま家にやってきて、そこで急死しただけのことです」
マリア:「…………」
稲生:「別に気にすることはないよ。マリアだって、まさかあの魔法が効くとは思わなかったんでしょう?」
マリア:「うん、まあ……。ただ、効いたらいいなとは思った。だから、その……」
稲生:「未必の故意ってヤツですか。それでも効かなかったらそれで終わってた話ですから、効いたということは、やはりあの探偵は運が悪かったんですよ」
マリア:「やはり私は魔女だ。自分の不運を周りに振りまく」
稲生:「僕は幸せだけどね、マリアと一緒になれて……」
そう言って稲生はマリアの手を握った。
昔のマリアからすれば、男と手を繋ぐなど有り得ないことだった。
稲生:「昨日は……皆して運が悪かったんだよ。電車は2本も止まるし」
マリア:「うん……」
稲生:「今日はいいことあるようにって、勤行で御祈念してみたから」
マリア:「そうだといいな」
尚、電車の人身事故には巻き込まれた稲生とマリアだったが、代替手段で乗った路線バスにあっては、何のトラブルにも巻き込まれていない。