[1月30日11:36.天候:曇 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]
〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、短い8両編成で参ります。ドアから離れて、お待ちください。終点まで、各駅に停車します〕
トンネルの向こうから強風と轟音が向かってくる。
京浜東北線を秋葉原駅で降りた魔道士2人は、昭和通り(国道4号線)を南下した。
そして地下鉄の駅に入った。
マリア:「ルーシーはこういうのも嫌いみたいなんだ」
稲生:「地下鉄全般が苦手なんでしょ?」
2人は電車の最後尾が止まる位置で待っていた。
マリア:「いや、こういう轟音と強風が、まるで爆風をイメージさせるんだって」
稲生:「ああ、なるほど」
そして電車がやってくる。
強風にマリアの被っていたフードやローブの裾が靡いたが、飛ばされるということはなかった。
〔4番線は各駅停車、本八幡行きです。岩本町、岩本町〕
東京都交通局所有の車両がやってきたが、JR東日本の通勤電車の設計を流用したものなので、端々にその片鱗が散見される(ドアチャイムの音色、乗降ドア上のLED表示板、乗務員室仕切りの窓やドアの配置など)。
京浜東北線よりも硬い座席に腰かけた。
〔4番線、ドアが閉まります〕
先に乗車した京浜東北線の車両と同じ音色のドアチャイムが鳴り、それでドアが閉まると同時にホームドアも閉まる。
そして、すぐに発車した。
〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuroyokoyama.Please change here for the Toei Asakusa line and the JR Sobu line.〕
都営新宿線のラインカラーはリーフ(黄緑)である為か、マリアの契約悪魔ベルフェゴールもいつの間にか姿を現し、その色の塗装の壁にもたれ掛かって立っている。
ベルフェゴールのシンボルカラーは緑である為、緑系のものと関わると呼ばれなくても自然に現れることが多い。
尚、大抵は英国紳士のコスプレをしている。
稲生:「今気づいたんですけど、エレーナが夜勤明けで寝たらどうしましょう?」
マリア:「その時は叩き起こせばいいさ。もちろん、それは私がやる。私が!」
稲生:「ケンカはダメですよ……。『仲良き事は美しき哉』ですよ……」
[同日11:50.天候:雪 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
エレーナ:「とんでもねぇ……。イリーナ先生、パねぇぜ……」
エレーナはロビーのソファにいた。
そこへエントランスのドアが開けられる。
稲生:「こんにちはー」
エレーナ:「おっ、稲生氏」
マリア:「エレーナ!てめ、この野郎!」
エレーナ:「あぁ!?文句あんのか、コラ!」
稲生:「マリアさんマリアさん!気持ちは分かりますが、ここは1つ穏便に……。エレーナもヒドいじゃないか。勝手に僕の家を他人に教えるなんて!」
エレーナ:「金貨に目が眩んでしまっただけだぜ。申し訳無いぜ」
マリア:「取りあえず、賠償金として半分寄越せ!」
エレーナ:「あぁ?なんでマリアンナに半分やんなきゃいけねーんだよっ、あぁ!?」
稲生:「でも、迷惑料くらい払ってくれるよね?」
エレーナ:「う……稲生氏には何故か逆らえねーぜ……」
エレーナは被っていたとんがり帽子を取ると、それをテーブルの上に振った。
マリア:「オマエのフケと抜け毛なんて要らねーし」
エレーナ:「アホか!」
すると、帽子の中からジャラジャラと金貨が出て来た。
稲生:「こんなもの貰ったのか」
エレーナ:「1枚辺り、日本円で10万くらいするそうだぜ」
稲生:「まあ……今の金相場だとそれくらいかなぁ……。父さんの会社に転売できるかな?」
エレーナ:「前々から気になってたんだが、稲生氏の親父さんの仕事って何だぜ?」
稲生達が何枚せしめたのかは【お察しください】。
エレーナはマリアには頑として渡すつもりは無いようだが、稲生がエレーナの目を見据えて言うと、エレーナは何故かポンポン出してしまうのだった。
エレーナ:「稲生氏、後ろにアスモデウス控えるのやめろ!」
稲生:「ええ?知らないよ」
稲生は後ろを振り向いた。
するとエレーナには見えていた白ギャル姿のアスモデウスはフッと消えた。
アスモデウスはキリスト教系“7つの大罪”の悪魔の1つで、色欲を司る者。
稲生が一人前になったら正式契約することが内定している。
内定が取れたアスモデウスとしては、辞退されぬよう、以前から外堀埋めを図っているという。
具体的には人間の女には非モテの稲生が、何故かここにいる魔女達だけは蕩けさせるのも、アスモデウスの魔力によるものだ。
エレーナ:「まだ正式契約してなくてこれだぜ。正式契約したら、絶対に門内の魔女達食いまくれるぞ?」
稲生:「僕はマリア一筋だし、第一そんなことしたらマリアに殺される」
エレーナ:「大丈夫だ。その時は私がマリアンナを半殺しにしておくから、それから私とも遊ぼうぜ」
マリア:「おい!
」
稲生:「それより僕達は、イリーナ先生から手紙を預かって来たんだ」
エレーナ:「ああ、うちの先生宛てのどーでもいー手紙な。まあ、預かっておくぜ」
稲生:「どうでもいい?」
エレーナ:「それより、これを見るんだぜ」
エレーナはロビーに設置してあるテレビを指さした。
〔「……繰り返しお伝えします。今日午前10時40分頃、ロンドンからやってきたブリティッシュ・エアーウェイズ機が成田空港に着陸しようとした所、突然エンジンが爆発し、炎上。滑走路に墜落する事故が起きました。尚、墜落機の乗員乗客の安否については不明ですが、機体の状態からしてかなり絶望的と見られ……」〕
稲生:「な、何だこれ?」
エレーナ:「イリーナ先生の魔法だぜ。きっとあの中に、イリーナ先生にとって都合の悪いヤツが乗っていたんだぜ」
稲生:「ええーっ!?」
マリア:「よっぽどマズいヤツが乗っていたんだろうなぁ……」
稲生:「そ、そんな……無関係の人達まで……」
エレーナ:「バーカ。それが魔女ってもんだぜ。ましてや、世界を股に掛ける大魔道師ともなればよ。私だってニューヨークマフィアと戦う時、だいぶ無関係な人間を巻き込んじまった。もちろん、向こうがそうしてきたという言い訳はさせてもらうけどな」
稲生:「ううっ……」
マリア:「ロンドンから来た航空機ということは、あの探偵絡みか」
エレーナ:「あの探偵の仲間とか、その上のヤツとかが乗ってたのかもな」
稲生:「世界探偵協会……」
エレーナ:「ま、何にせよ一介の人間の分際で、私ら魔道士にちょっかいを出した時が運の尽きってことだぜ。御愁傷様だぜ」
マリア:「『呪い針』では済まない相手か……。どんなヤツなのか、知りたいような知りたくないような……」
稲生:「聞いたところで、はぐらかされるだけですよ」
エレーナ:「そうだな。オマエ達に、こんなどーでもいーお使いを頼む時点ではぐらかす気マックスだぜ」
稲生:「そうなのか。交通費と昼食費までもらったから、何か意味があるのかなと思ったんだけど……」
マリア:「しょうがない。とにかく、これでミッションは終了したんだから、ランチでもして帰ろう」
エレーナ:「やったぜ!稲生氏の奢りだぜ!」
マリア:「しゃらぁーっ!」
マリアはローブの中から魔法の杖を出すと、エレーナに殴り掛かった。
稲生が必死で止めたが、結局エレーナが付いてくることとなった。
〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、短い8両編成で参ります。ドアから離れて、お待ちください。終点まで、各駅に停車します〕
トンネルの向こうから強風と轟音が向かってくる。
京浜東北線を秋葉原駅で降りた魔道士2人は、昭和通り(国道4号線)を南下した。
そして地下鉄の駅に入った。
マリア:「ルーシーはこういうのも嫌いみたいなんだ」
稲生:「地下鉄全般が苦手なんでしょ?」
2人は電車の最後尾が止まる位置で待っていた。
マリア:「いや、こういう轟音と強風が、まるで爆風をイメージさせるんだって」
稲生:「ああ、なるほど」
そして電車がやってくる。
強風にマリアの被っていたフードやローブの裾が靡いたが、飛ばされるということはなかった。
〔4番線は各駅停車、本八幡行きです。岩本町、岩本町〕
東京都交通局所有の車両がやってきたが、JR東日本の通勤電車の設計を流用したものなので、端々にその片鱗が散見される(ドアチャイムの音色、乗降ドア上のLED表示板、乗務員室仕切りの窓やドアの配置など)。
京浜東北線よりも硬い座席に腰かけた。
〔4番線、ドアが閉まります〕
先に乗車した京浜東北線の車両と同じ音色のドアチャイムが鳴り、それでドアが閉まると同時にホームドアも閉まる。
そして、すぐに発車した。
〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuroyokoyama.Please change here for the Toei Asakusa line and the JR Sobu line.〕
都営新宿線のラインカラーはリーフ(黄緑)である為か、マリアの契約悪魔ベルフェゴールもいつの間にか姿を現し、その色の塗装の壁にもたれ掛かって立っている。
ベルフェゴールのシンボルカラーは緑である為、緑系のものと関わると呼ばれなくても自然に現れることが多い。
尚、大抵は英国紳士のコスプレをしている。
稲生:「今気づいたんですけど、エレーナが夜勤明けで寝たらどうしましょう?」
マリア:「その時は叩き起こせばいいさ。もちろん、それは私がやる。私が!」
稲生:「ケンカはダメですよ……。『仲良き事は美しき哉』ですよ……」
[同日11:50.天候:雪 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
エレーナ:「とんでもねぇ……。イリーナ先生、パねぇぜ……」
エレーナはロビーのソファにいた。
そこへエントランスのドアが開けられる。
稲生:「こんにちはー」
エレーナ:「おっ、稲生氏」
マリア:「エレーナ!てめ、この野郎!」
エレーナ:「あぁ!?文句あんのか、コラ!」
稲生:「マリアさんマリアさん!気持ちは分かりますが、ここは1つ穏便に……。エレーナもヒドいじゃないか。勝手に僕の家を他人に教えるなんて!」
エレーナ:「金貨に目が眩んでしまっただけだぜ。申し訳無いぜ」
マリア:「取りあえず、賠償金として半分寄越せ!」
エレーナ:「あぁ?なんでマリアンナに半分やんなきゃいけねーんだよっ、あぁ!?」
稲生:「でも、迷惑料くらい払ってくれるよね?」
エレーナ:「う……稲生氏には何故か逆らえねーぜ……」
エレーナは被っていたとんがり帽子を取ると、それをテーブルの上に振った。
マリア:「オマエのフケと抜け毛なんて要らねーし」
エレーナ:「アホか!」
すると、帽子の中からジャラジャラと金貨が出て来た。
稲生:「こんなもの貰ったのか」
エレーナ:「1枚辺り、日本円で10万くらいするそうだぜ」
稲生:「まあ……今の金相場だとそれくらいかなぁ……。父さんの会社に転売できるかな?」
エレーナ:「前々から気になってたんだが、稲生氏の親父さんの仕事って何だぜ?」
稲生達が何枚せしめたのかは【お察しください】。
エレーナはマリアには頑として渡すつもりは無いようだが、稲生がエレーナの目を見据えて言うと、エレーナは何故かポンポン出してしまうのだった。
エレーナ:「稲生氏、後ろにアスモデウス控えるのやめろ!」
稲生:「ええ?知らないよ」
稲生は後ろを振り向いた。
するとエレーナには見えていた白ギャル姿のアスモデウスはフッと消えた。
アスモデウスはキリスト教系“7つの大罪”の悪魔の1つで、色欲を司る者。
稲生が一人前になったら正式契約することが内定している。
内定が取れたアスモデウスとしては、辞退されぬよう、以前から外堀埋めを図っているという。
具体的には人間の女には非モテの稲生が、何故かここにいる魔女達だけは蕩けさせるのも、アスモデウスの魔力によるものだ。
エレーナ:「まだ正式契約してなくてこれだぜ。正式契約したら、絶対に門内の魔女達食いまくれるぞ?」
稲生:「僕はマリア一筋だし、第一そんなことしたらマリアに殺される」
エレーナ:「大丈夫だ。その時は私がマリアンナを半殺しにしておくから、それから私とも遊ぼうぜ」
マリア:「おい!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0152.gif)
稲生:「それより僕達は、イリーナ先生から手紙を預かって来たんだ」
エレーナ:「ああ、うちの先生宛てのどーでもいー手紙な。まあ、預かっておくぜ」
稲生:「どうでもいい?」
エレーナ:「それより、これを見るんだぜ」
エレーナはロビーに設置してあるテレビを指さした。
〔「……繰り返しお伝えします。今日午前10時40分頃、ロンドンからやってきたブリティッシュ・エアーウェイズ機が成田空港に着陸しようとした所、突然エンジンが爆発し、炎上。滑走路に墜落する事故が起きました。尚、墜落機の乗員乗客の安否については不明ですが、機体の状態からしてかなり絶望的と見られ……」〕
稲生:「な、何だこれ?」
エレーナ:「イリーナ先生の魔法だぜ。きっとあの中に、イリーナ先生にとって都合の悪いヤツが乗っていたんだぜ」
稲生:「ええーっ!?」
マリア:「よっぽどマズいヤツが乗っていたんだろうなぁ……」
稲生:「そ、そんな……無関係の人達まで……」
エレーナ:「バーカ。それが魔女ってもんだぜ。ましてや、世界を股に掛ける大魔道師ともなればよ。私だってニューヨークマフィアと戦う時、だいぶ無関係な人間を巻き込んじまった。もちろん、向こうがそうしてきたという言い訳はさせてもらうけどな」
稲生:「ううっ……」
マリア:「ロンドンから来た航空機ということは、あの探偵絡みか」
エレーナ:「あの探偵の仲間とか、その上のヤツとかが乗ってたのかもな」
稲生:「世界探偵協会……」
エレーナ:「ま、何にせよ一介の人間の分際で、私ら魔道士にちょっかいを出した時が運の尽きってことだぜ。御愁傷様だぜ」
マリア:「『呪い針』では済まない相手か……。どんなヤツなのか、知りたいような知りたくないような……」
稲生:「聞いたところで、はぐらかされるだけですよ」
エレーナ:「そうだな。オマエ達に、こんなどーでもいーお使いを頼む時点ではぐらかす気マックスだぜ」
稲生:「そうなのか。交通費と昼食費までもらったから、何か意味があるのかなと思ったんだけど……」
マリア:「しょうがない。とにかく、これでミッションは終了したんだから、ランチでもして帰ろう」
エレーナ:「やったぜ!稲生氏の奢りだぜ!」
マリア:「しゃらぁーっ!」
マリアはローブの中から魔法の杖を出すと、エレーナに殴り掛かった。
稲生が必死で止めたが、結局エレーナが付いてくることとなった。