報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「イリーナの大魔法発動」

2020-02-12 20:04:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月30日11:36.天候:曇 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、短い8両編成で参ります。ドアから離れて、お待ちください。終点まで、各駅に停車します〕

 トンネルの向こうから強風と轟音が向かってくる。
 京浜東北線を秋葉原駅で降りた魔道士2人は、昭和通り(国道4号線)を南下した。
 そして地下鉄の駅に入った。

 マリア:「ルーシーはこういうのも嫌いみたいなんだ」
 稲生:「地下鉄全般が苦手なんでしょ?」

 2人は電車の最後尾が止まる位置で待っていた。

 マリア:「いや、こういう轟音と強風が、まるで爆風をイメージさせるんだって」
 稲生:「ああ、なるほど」

 そして電車がやってくる。
 強風にマリアの被っていたフードやローブの裾が靡いたが、飛ばされるということはなかった。

〔4番線は各駅停車、本八幡行きです。岩本町、岩本町〕

 東京都交通局所有の車両がやってきたが、JR東日本の通勤電車の設計を流用したものなので、端々にその片鱗が散見される(ドアチャイムの音色、乗降ドア上のLED表示板、乗務員室仕切りの窓やドアの配置など)。

 京浜東北線よりも硬い座席に腰かけた。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 先に乗車した京浜東北線の車両と同じ音色のドアチャイムが鳴り、それでドアが閉まると同時にホームドアも閉まる。
 そして、すぐに発車した。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuroyokoyama.Please change here for the Toei Asakusa line and the JR Sobu line.〕

 都営新宿線のラインカラーはリーフ(黄緑)である為か、マリアの契約悪魔ベルフェゴールもいつの間にか姿を現し、その色の塗装の壁にもたれ掛かって立っている。
 ベルフェゴールのシンボルカラーは緑である為、緑系のものと関わると呼ばれなくても自然に現れることが多い。
 尚、大抵は英国紳士のコスプレをしている。

 稲生:「今気づいたんですけど、エレーナが夜勤明けで寝たらどうしましょう?」
 マリア:「その時は叩き起こせばいいさ。もちろん、それは私がやる。私が!」
 稲生:「ケンカはダメですよ……。『仲良き事は美しき哉』ですよ……」

[同日11:50.天候:雪 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 エレーナ:「とんでもねぇ……。イリーナ先生、パねぇぜ……」

 エレーナはロビーのソファにいた。
 そこへエントランスのドアが開けられる。

 稲生:「こんにちはー」
 エレーナ:「おっ、稲生氏」
 マリア:「エレーナ!てめ、この野郎!」
 エレーナ:「あぁ!?文句あんのか、コラ!」
 稲生:「マリアさんマリアさん!気持ちは分かりますが、ここは1つ穏便に……。エレーナもヒドいじゃないか。勝手に僕の家を他人に教えるなんて!」
 エレーナ:「金貨に目が眩んでしまっただけだぜ。申し訳無いぜ」
 マリア:「取りあえず、賠償金として半分寄越せ!」
 エレーナ:「あぁ?なんでマリアンナに半分やんなきゃいけねーんだよっ、あぁ!?」
 稲生:「でも、迷惑料くらい払ってくれるよね?」
 エレーナ:「う……稲生氏には何故か逆らえねーぜ……」

 エレーナは被っていたとんがり帽子を取ると、それをテーブルの上に振った。

 マリア:「オマエのフケと抜け毛なんて要らねーし」
 エレーナ:「アホか!」

 すると、帽子の中からジャラジャラと金貨が出て来た。

 稲生:「こんなもの貰ったのか」
 エレーナ:「1枚辺り、日本円で10万くらいするそうだぜ」
 稲生:「まあ……今の金相場だとそれくらいかなぁ……。父さんの会社に転売できるかな?」
 エレーナ:「前々から気になってたんだが、稲生氏の親父さんの仕事って何だぜ?」

 稲生達が何枚せしめたのかは【お察しください】。
 エレーナはマリアには頑として渡すつもりは無いようだが、稲生がエレーナの目を見据えて言うと、エレーナは何故かポンポン出してしまうのだった。

 エレーナ:「稲生氏、後ろにアスモデウス控えるのやめろ!」
 稲生:「ええ?知らないよ」

 稲生は後ろを振り向いた。
 するとエレーナには見えていた白ギャル姿のアスモデウスはフッと消えた。
 アスモデウスはキリスト教系“7つの大罪”の悪魔の1つで、色欲を司る者。
 稲生が一人前になったら正式契約することが内定している。
 内定が取れたアスモデウスとしては、辞退されぬよう、以前から外堀埋めを図っているという。
 具体的には人間の女には非モテの稲生が、何故かここにいる魔女達だけは蕩けさせるのも、アスモデウスの魔力によるものだ。

 エレーナ:「まだ正式契約してなくてこれだぜ。正式契約したら、絶対に門内の魔女達食いまくれるぞ?」
 稲生:「僕はマリア一筋だし、第一そんなことしたらマリアに殺される」
 エレーナ:「大丈夫だ。その時は私がマリアンナを半殺しにしておくから、それから私とも遊ぼうぜ」
 マリア:「おい!
 稲生:「それより僕達は、イリーナ先生から手紙を預かって来たんだ」
 エレーナ:「ああ、うちの先生宛てのどーでもいー手紙な。まあ、預かっておくぜ」
 稲生:「どうでもいい?」
 エレーナ:「それより、これを見るんだぜ」

 エレーナはロビーに設置してあるテレビを指さした。

〔「……繰り返しお伝えします。今日午前10時40分頃、ロンドンからやってきたブリティッシュ・エアーウェイズ機が成田空港に着陸しようとした所、突然エンジンが爆発し、炎上。滑走路に墜落する事故が起きました。尚、墜落機の乗員乗客の安否については不明ですが、機体の状態からしてかなり絶望的と見られ……」〕

 稲生:「な、何だこれ?」
 エレーナ:「イリーナ先生の魔法だぜ。きっとあの中に、イリーナ先生にとって都合の悪いヤツが乗っていたんだぜ」
 稲生:「ええーっ!?」
 マリア:「よっぽどマズいヤツが乗っていたんだろうなぁ……」
 稲生:「そ、そんな……無関係の人達まで……」
 エレーナ:「バーカ。それが魔女ってもんだぜ。ましてや、世界を股に掛ける大魔道師ともなればよ。私だってニューヨークマフィアと戦う時、だいぶ無関係な人間を巻き込んじまった。もちろん、向こうがそうしてきたという言い訳はさせてもらうけどな」
 稲生:「ううっ……」
 マリア:「ロンドンから来た航空機ということは、あの探偵絡みか」
 エレーナ:「あの探偵の仲間とか、その上のヤツとかが乗ってたのかもな」
 稲生:「世界探偵協会……」
 エレーナ:「ま、何にせよ一介の人間の分際で、私ら魔道士にちょっかいを出した時が運の尽きってことだぜ。御愁傷様だぜ」
 マリア:「『呪い針』では済まない相手か……。どんなヤツなのか、知りたいような知りたくないような……」
 稲生:「聞いたところで、はぐらかされるだけですよ」
 エレーナ:「そうだな。オマエ達に、こんなどーでもいーお使いを頼む時点ではぐらかす気マックスだぜ」
 稲生:「そうなのか。交通費と昼食費までもらったから、何か意味があるのかなと思ったんだけど……」
 マリア:「しょうがない。とにかく、これでミッションは終了したんだから、ランチでもして帰ろう」
 エレーナ:「やったぜ!稲生氏の奢りだぜ!」
 マリア:「しゃらぁーっ!」

 マリアはローブの中から魔法の杖を出すと、エレーナに殴り掛かった。
 稲生が必死で止めたが、結局エレーナが付いてくることとなった。
コメント (1)
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“大魔道師の弟子” 「イリーナ組の動き」

2020-02-12 16:25:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月30日10:00.天候:雪 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 ※実際には埼玉県南部には雪は降っていませんが、あくまでもこれはフィクションです。

 稲生:「雪が降って来たなぁ……。積もらないといいけど……」
 マリア:「子供の頃は、早く積もれなんて願っていただろうに……」
 稲生:「まあ、そうなんですけど。大人になったら、やれ『電車が止まらないか』『道路が通行止めにならないか』を優先するようになります」
 マリア:「降ったり止んだりの天気みたいだから、積もることはないと思うよ。問題は、屋敷の方だけどね」
 稲生:「屋敷の方は、さすがに雪が積もってるでしょうねぇ……」

 そのイリーナは裏庭にいた。
 積もる恐れは無いが、降りしきる雪の中、魔法陣を描いてその前に立っている。

 イリーナ:「バペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……『我が門に入らんとする汝、一切の望みを捨てよ』『嗚呼、神への復讐よ』『嗚呼、何ということだ』『彼らは其々哀しい墓場に辿り付く』……」

 イリーナの魔法陣が禍々しい黒色と紫色を混ぜたような色を放つ。

 イリーナ:「……汝、一切の望みを捨てよ」

 イリーナは普段は細めている目をカッと見開いていた。
 イリーナは大魔道師の中でも、とても『ステータス』が分かりやすいとされている。
 それが目だ。
 目が開いていると、感情が高ぶっていることがすぐに分かる。
 『ステータス異常』だとそもそも動きたがらないので……。

 イリーナ:「ふう……」

 イリーナはローブに付いた粉雪を払い落しながら家に戻って来た。

 稲生:「お疲れさまです、先生」
 イリーナ:「あいよ」
 稲生:「今のは何の魔法なんですか?また、『呪い針』とか?」
 イリーナ:「そうねぇ……。ま、それに似たようなものかな」
 マリア:「勇太、『呪い針』なら水晶玉から送れる。わざわざ魔法陣を使うくらいだから、大規模テロレベルだぞ?」
 稲生:「先生のお怒りを買うような組織が現れましたか?」

 するとイリーナ、細めかけた目をまた見開いた。

 稲生:「す、すいません!お気に障りましたか!?」
 イリーナ:「いや……。確かに勇太君の言う通りかもしれないね。もしかしたら、背後に何か組織が関わってるかもしれない。調べておく必要がありそうね」
 マリア:「一体、何の話ですか?」
 イリーナ:「こっちのことだから、マリアは何も心配しなくていいのよ。あのクソ探偵はマリアに呪殺されたし、まさか日本の警察もマリアが魔法で呪殺したなんて信じるわけがないから、あいつは心臓発作とかか何かで死んだことになった。証拠は無いわ」
 マリア:「魔法を使ったことを証拠として告発できるのは、同じ魔法使いだけですからね」

 ごくごく一部に霊力の強い聖職者もいることはいるが、日本にはいないようである。
 日蓮大聖人なら有り得るが、そもそも大聖人御在世の時に欧州の魔道師が日本いた証拠は今のところ無い。

 イリーナ:「それじゃ、勇太君達にはお使いを頼もうかね。先生として」
 稲生:「どうぞ。何でしょうか?」
 イリーナ:「ワンスターホテルに行き、エレーナにこの手紙を渡して来ること」

 イリーナはローブの中から白い封筒を渡した。
 しかし宛先はポーリンになっている。
 ポーリンはイリーナの1つ上の姉弟子であり(但し、同じダンテの直弟子であるので1期生である)、エレーナはポーリンの直弟子である(つまり2期生)。

 稲生:「分かりました」
 イリーナ:「ちょうど今、雪も止んだから今のうちでしょ」
 マリア:「まあ、後でまた降って来るでしょうけどねぇ……」

[同日10:42.天候:雪 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅→京浜東北線1017B電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、10時42分発、快速、大船行きです。次は、さいたま新都心に止まります〕

 稲生とマリアはローブを羽織りながら最後尾に乗り込んだ。
 大宮駅を発車する京浜東北線は、先頭車から混んで来る。
 これは最初の乗換駅である南浦和駅は、階段やエスカレーターが南方に偏っている為である。
 南浦和駅での乗換客は、その為に前の車両に固まりやすい。
 それは北浦和駅や蕨駅も似たようなものである。
 なので、大宮駅の時点で後ろの車両は空いているわけだ。

 稲生:「何だか寒いですねぇ……」

 稲生とマリアはブルーの座席に腰かけた。

 マリア:「そりゃ外は雪だし」

 普段はあまりローブを着ない稲生も、この時は着用している。
 何だかんだ言って魔法の力を帯びたローブは防寒性に優れているので、こういう時は稲生も着用する。

〔この電車は京浜東北線、快速、大船行きです〕
〔This is the Keihin-Tohoku line rapid service train for Ofuna.〕
〔「10時42分発、京浜東北線快速、大船行きです。まもなく発車致します」〕

 ホームに発車メロディが響き渡る。
 大宮アルディージャの応援歌をアレンジしたものだ。
 始発駅なのでフルコーラスが流れやすい。
 途中駅なのでなかなかそうならない浦和駅とは対照的だ(浦和駅は浦和レッズの応援歌のアレンジが流れる)。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 ドアが閉まると、ようやく車内に冷気が入って来なくなった。
 車内は暖房が入っていて、座席の下からジンジン温まる。
 発車すると電車は下りホームに入っている為、ポイントを渡って上り本線に入る。
 この時、ATC信号の速度制限ギリギリの速度で走っているとガクンと揺れる。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は京浜東北線、快速、大船行きです。停車駅は田端までの各駅と、上野、秋葉原、神田、東京、浜松町、浜松町からの各駅です。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕
〔This is the Keihin-Tohoku line rapid service train for Ofuna.The next station is Saitama-shintoshin.The doors on the right side will open.〕

 マリア:「怪しい」
 稲生:「え?何がですか?」
 マリア:「この手紙だよ」
 稲生:「何の変哲もない封筒ですが……」
 マリア:「師匠がエレーナを呼んで渡せばいいだろうに、それをしないことだよ」
 稲生:「あー……。雪だからホウキで飛べないんですかね?」
 マリア:「そんなことない。特にあいつは金さえもらえれば、上空をミサイルが飛んでたって飛ぶようなヤツだよ」
 稲生:「つまり、僕達をお使いに出す理由ですか。うーん……今、家には先生がお1人です。父は仕事に行きましたし、母さんは通院です。通院ならタクシーでいいですし」
 マリア:「1人、家でグデーッとしたいだけか?」
 稲生:「だいぶ強い魔法を使われたようなので、お疲れでしょうしね。家にはセコムが入ってますから、それで居留守は使えます。家の電話も留守電にしておきまたし」
 マリア:「うん……」

 それでも腑に落ちないマリアだった。
 そして今、成田空港では大変なことが起きていた。
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