[1月30日15:20.天候:雪 埼玉県さいたま市中央区]
降りしきる雪の中、稲生とマリアを乗せたタクシーが稲生家に近づく。
稲生:「あ、すいません。そこの信号、左に曲がってください」
運転手:「はい、左ですね」
運転手が左ウィンカーを上げる。
が、タイミング悪く信号が赤になってしまった。
タクシーは信号の手前で止まった。
マリア:「!」
その時、マリアの水晶玉が赤く鈍く点滅した。
稲生:「マリアさん!?」
この水晶玉は近くにいる魔道士からの緊急アラームも受信できる。
この近くにいる魔道士といったら、1人しかいない。
運転手:「どうかしましたか?」
マリア:「Go straight!Don’t turn!」
運転手:「え?は?」
稲生:「このまま真っ直ぐ行ってください!」
運転手:「ま、真っ直ぐですか?!」
信号が青に変わり、運転手はウィンカーを戻して曲がらなかった。
本来曲がるはずだった道を見ると、稲生の家が見えるのだが、そこにイリーナがいた。
イリーナともう1人、見たことの無いデザインのローブを着た魔道士が対峙している。
運転手:「もうそこがパチンコガーデンですが……」
稲生:「あ、えーと……」
稲生はマリアを見たが、マリアは水晶玉に向かってイリーナと交信しようとしているので忙しい。
稲生:「と、取りあえず北与野駅に向かってください!」
運転手:「北与野駅ですか!?は、はい!」
ついにマリア!
マリア:「Mayday!Mayday!Mayday!This is a class of Irina,Marianna Belphgor Scarlet!Emergency call number 999!」(メーデー!メーデー!メーデー!こちらイリーナ組、マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット!救援要請番号999!」
と、門内全部に向かって救援要請を行う。
稲生:「ま、マリアさん!?」
稲生は一瞬それは大げさではないかと思ったが、そうではないことをすぐに知った。
マリア:「One more time!Mayday!Mayday!M……」
ドーン!
稲生:「うわっ!?」
後ろからまるで別の車に追突されたかのような衝撃を受けた。
運転手が急いで急ブレーキを踏む。
が、それが効かなかった。
それどころか、車がちょうど運転席と助手席の間で真っ二つにきれいに裂かれていた。
レーザーカッターで切ったかのように、真っ直ぐきれいに。
運転手:「わーっ!」
そのことでブレーキが効かず、コントロールを失った車は対向車線に飛び出してしまい……。
稲生:「!!!」
やってきた大型トラックと正面衝突した。
マリア:「Yuta!」
一方、助手席の後ろに乗っていたマリアの方は左に逸れ、歩道との間にある植栽に車体を擦りつけながらようやく止まった。
マリア:「勇太!ちくしょう!」
マリアは締めていたシートベルトを外して外に出ようとした。
幸い、マリアの方はケガはしていない。
と、そこへマリアの前に立ちはだかる者がいた。
それは大魔道師が着るローブに近いデザインのそれを着た魔女だった。
フードを目深に被っているので、それが誰かは分からない。
しかし、イリーナでないことは確かだった。
???:「やっと見つけたわ。マリー……」
マリア:「ま、マリーだって?」
それはマリアが普通の人間だった頃に呼ばれたことのあるニックネーム。
日本では短縮形で呼ばれる為、イリーナもそれに合わせて「マリア」と呼ばれているが、英語圏ではマリアンナをニックネームで呼ぼうとするとマリーになる。
だからマリアンナを愛称で呼ぶ場合、本来は「マリー」が正しい。
マリア:「あ、あなたは一体……?」
???:「こんな所にいないで、早く帰りましょ」
フードの中にあった顔を見たマリアは息を呑んだ。
マリア:「ま……ママ……!?」
次の瞬間、目撃者達はパニックを起こすことになる。
エキゾチックな占い師のような姿をした者と、それよりは控えめなデザインのローブを着た金髪の少女が同時に消えたのだから……。
[同日15:30.天候:雪 同地区内上空]
エレーナ:「先生!こちら稲生氏の家の上空です!イリーナ先生、ものの見事にやられてます!」
エレーナはホウキに跨って稲生家の上空を旋回した。
ポーリン:「すぐにイリーナとイノウ・ユウタの状況を確認せい!」
エレーナ:「かしこまりました」
稲生家の前に降下して着陸する。
エレーナ:「イリーナ先生、大丈夫ですか!?」
イリーナ:「痛ってぇ……!頭殴られたー……よ。クラクラする……」
ポーリン:「この愚か者!自分より強い敵とは戦うなと言われただろうが!」
空間に魔法陣が浮かび上がったかと思うと、そこからポーリンが現れた。
普段は魔力の節約の為に80代ほどの老婆の姿をしているが、今回はイリーナと同じ30代くらいまで若返っている。
イリーナ:「ね、姉さん……さ、サーセン……。ガチ……頭痛いです……」
イリーナの頭からは血が出ていた。
ポーリン:「エレーナ!周辺を捜索しろ!イリーナは私が面倒看ておくから、イノウ・ユウタとマリアンナ・スカーレットを捜すのだ!」
エレーナ:「は、はい」
エレーナはホウキを持ったまま与野中央通りに出た。
幸いマリアが一斉送信した救援要請信号が発せられた場所を、手持ちの水晶玉で特定できる。
それによるとこの近くである。
ルーシー:「こちらベイカー組のルーシー!現在地、ロンドン市郊外!マリアンナ、どうしたの!?何かあった!?」
ナディア:「ウラジオストクからナディアです。イリーナ先生、マリアンナから緊急信号が出ましたが、状況を!」
アンナ:「サンクトペテルブルクに展開中のアナスタシア組アンナ!マリアンナ、状況報告を!」
魔女A:「サンフランシスコからレベッカ!緊急信号受信!状況を教えてください!」
魔女B:「ブダペストからエンドレ組!受信に失敗!再送信願います!」
エレーナ:「……都合よく日本にいる奴いねーのかよ」
エレーナは舌打ちをしながら現場に向かった。
エレーナ:「な、何たるちゃあ……!」
そして真っ二つにされたタクシーが起こした事故現場に辿り着き、今度はエレーナが一斉送信することとなった。
エレーナ:「ポーリン組エレーナより現場の状況をお知らせします。現在地は日本国埼玉県さいたま市中央区……」
エレーナの状況報告を聞いたダンテ一門の魔道士達は、いくら1期生の中でも弱小とはいえ大魔道師クラスのイリーナが簡単にやられたことに浮足立つこととなった。
降りしきる雪の中、稲生とマリアを乗せたタクシーが稲生家に近づく。
稲生:「あ、すいません。そこの信号、左に曲がってください」
運転手:「はい、左ですね」
運転手が左ウィンカーを上げる。
が、タイミング悪く信号が赤になってしまった。
タクシーは信号の手前で止まった。
マリア:「!」
その時、マリアの水晶玉が赤く鈍く点滅した。
稲生:「マリアさん!?」
この水晶玉は近くにいる魔道士からの緊急アラームも受信できる。
この近くにいる魔道士といったら、1人しかいない。
運転手:「どうかしましたか?」
マリア:「Go straight!Don’t turn!」
運転手:「え?は?」
稲生:「このまま真っ直ぐ行ってください!」
運転手:「ま、真っ直ぐですか?!」
信号が青に変わり、運転手はウィンカーを戻して曲がらなかった。
本来曲がるはずだった道を見ると、稲生の家が見えるのだが、そこにイリーナがいた。
イリーナともう1人、見たことの無いデザインのローブを着た魔道士が対峙している。
運転手:「もうそこがパチンコガーデンですが……」
稲生:「あ、えーと……」
稲生はマリアを見たが、マリアは水晶玉に向かってイリーナと交信しようとしているので忙しい。
稲生:「と、取りあえず北与野駅に向かってください!」
運転手:「北与野駅ですか!?は、はい!」
ついにマリア!
マリア:「Mayday!Mayday!Mayday!This is a class of Irina,Marianna Belphgor Scarlet!Emergency call number 999!」(メーデー!メーデー!メーデー!こちらイリーナ組、マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット!救援要請番号999!」
と、門内全部に向かって救援要請を行う。
稲生:「ま、マリアさん!?」
稲生は一瞬それは大げさではないかと思ったが、そうではないことをすぐに知った。
マリア:「One more time!Mayday!Mayday!M……」
ドーン!
稲生:「うわっ!?」
後ろからまるで別の車に追突されたかのような衝撃を受けた。
運転手が急いで急ブレーキを踏む。
が、それが効かなかった。
それどころか、車がちょうど運転席と助手席の間で真っ二つにきれいに裂かれていた。
レーザーカッターで切ったかのように、真っ直ぐきれいに。
運転手:「わーっ!」
そのことでブレーキが効かず、コントロールを失った車は対向車線に飛び出してしまい……。
稲生:「!!!」
やってきた大型トラックと正面衝突した。
マリア:「Yuta!」
一方、助手席の後ろに乗っていたマリアの方は左に逸れ、歩道との間にある植栽に車体を擦りつけながらようやく止まった。
マリア:「勇太!ちくしょう!」
マリアは締めていたシートベルトを外して外に出ようとした。
幸い、マリアの方はケガはしていない。
と、そこへマリアの前に立ちはだかる者がいた。
それは大魔道師が着るローブに近いデザインのそれを着た魔女だった。
フードを目深に被っているので、それが誰かは分からない。
しかし、イリーナでないことは確かだった。
???:「やっと見つけたわ。マリー……」
マリア:「ま、マリーだって?」
それはマリアが普通の人間だった頃に呼ばれたことのあるニックネーム。
日本では短縮形で呼ばれる為、イリーナもそれに合わせて「マリア」と呼ばれているが、英語圏ではマリアンナをニックネームで呼ぼうとするとマリーになる。
だからマリアンナを愛称で呼ぶ場合、本来は「マリー」が正しい。
マリア:「あ、あなたは一体……?」
???:「こんな所にいないで、早く帰りましょ」
フードの中にあった顔を見たマリアは息を呑んだ。
マリア:「ま……ママ……!?」
次の瞬間、目撃者達はパニックを起こすことになる。
エキゾチックな占い師のような姿をした者と、それよりは控えめなデザインのローブを着た金髪の少女が同時に消えたのだから……。
[同日15:30.天候:雪 同地区内上空]
エレーナ:「先生!こちら稲生氏の家の上空です!イリーナ先生、ものの見事にやられてます!」
エレーナはホウキに跨って稲生家の上空を旋回した。
ポーリン:「すぐにイリーナとイノウ・ユウタの状況を確認せい!」
エレーナ:「かしこまりました」
稲生家の前に降下して着陸する。
エレーナ:「イリーナ先生、大丈夫ですか!?」
イリーナ:「痛ってぇ……!頭殴られたー……よ。クラクラする……」
ポーリン:「この愚か者!自分より強い敵とは戦うなと言われただろうが!」
空間に魔法陣が浮かび上がったかと思うと、そこからポーリンが現れた。
普段は魔力の節約の為に80代ほどの老婆の姿をしているが、今回はイリーナと同じ30代くらいまで若返っている。
イリーナ:「ね、姉さん……さ、サーセン……。ガチ……頭痛いです……」
イリーナの頭からは血が出ていた。
ポーリン:「エレーナ!周辺を捜索しろ!イリーナは私が面倒看ておくから、イノウ・ユウタとマリアンナ・スカーレットを捜すのだ!」
エレーナ:「は、はい」
エレーナはホウキを持ったまま与野中央通りに出た。
幸いマリアが一斉送信した救援要請信号が発せられた場所を、手持ちの水晶玉で特定できる。
それによるとこの近くである。
ルーシー:「こちらベイカー組のルーシー!現在地、ロンドン市郊外!マリアンナ、どうしたの!?何かあった!?」
ナディア:「ウラジオストクからナディアです。イリーナ先生、マリアンナから緊急信号が出ましたが、状況を!」
アンナ:「サンクトペテルブルクに展開中のアナスタシア組アンナ!マリアンナ、状況報告を!」
魔女A:「サンフランシスコからレベッカ!緊急信号受信!状況を教えてください!」
魔女B:「ブダペストからエンドレ組!受信に失敗!再送信願います!」
エレーナ:「……都合よく日本にいる奴いねーのかよ」
エレーナは舌打ちをしながら現場に向かった。
エレーナ:「な、何たるちゃあ……!」
そして真っ二つにされたタクシーが起こした事故現場に辿り着き、今度はエレーナが一斉送信することとなった。
エレーナ:「ポーリン組エレーナより現場の状況をお知らせします。現在地は日本国埼玉県さいたま市中央区……」
エレーナの状況報告を聞いたダンテ一門の魔道士達は、いくら1期生の中でも弱小とはいえ大魔道師クラスのイリーナが簡単にやられたことに浮足立つこととなった。