報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「埼京大回り」

2020-02-03 19:52:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月28日14:40.天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区 大宮駅東口バス停→JR大宮駅構内]

〔♪♪♪♪。大宮駅東口、大宮駅東口。終点でございます。お忘れ物の無いよう、ご注意願います。ご乗車、ありがとうございました〕

 バスは大宮駅東口の降車専用停留所に停車する。
 大宮高島屋の前である。
 ここにも屋根は無いので、降りる時に傘を差さなくてはならない。
 心なしか雨足が強まり、風も出てきたように思う。

 稲生:「急いで帰った方がいいかもしれませんね」
 マリア:「そうだな」

 しかしその前に、マリアは買いたいものがあるという。
 駅構内に入り、エスカレーターで2階に上がった。
 改札外のNEWDAYSは3つある。

 稲生:「真ん中にある店が1番広いですよ」
 マリア:「そこにする」

 駅構内で案内されている運行情報を見る限り、さすがに埼京線も京浜東北線も運転再開はしたようである。
 但し、その煽りを受けてか、並走する湘南新宿ラインや上野東京ラインにも遅れが出ているとのことだ。
 確かに駅構内に入る前、タクシー乗り場の横を通ったが、元々景気が回復しており、雨が降っているだけで需要があるのに、ましてやダイヤ乱れを嫌がった利用者がタクシーに流れたこともあって、プール内には1台もタクシーがいない状態だった。
 大宮駅東口のタクシー乗り場は駅の規模、需要に対して待機台数が少ない為、条件が重なると需要が逼迫するという欠点がある。
 実は近くに第二待機場があって、第一待機場のタクシーが無くなると、そこから向かってくるシステムになっているのだが、いかんせんここまで来るのに渋滞にハマりやすいという欠点がある。
 場合によっては西口から乗った方が早い場合もある。
 東方面に向かう場合、遠回りとなって料金がかさむ恐れは高いが。

 稲生:「僕もついでに何か買うか……」

 マリアはそそくさと生理用品やら替えのストッキングやら物色しに行ったので、ここだけ一瞬別行動になる。

 稲生:「…………」

 マリアがこっそりと生理用品を選ぶ中、稲生は1つ向こう隣の棚でコンドームを手にしている。
 この2人はもう、そういう仲なのだが、いやちょっと待って欲しい。
 いや、別にダンテ門内の掟では恋愛・結婚は自由とされている。
 というより、性的トラウマが酷かったり、いわゆる恋愛弱者などもいるので、あえて禁止にする必要が無いのだろう。
 できる人はどうぞご勝手に、といった所だ。
 なので、別に稲生やマリアが掟に違反しているわけではない。
 では、何が問題か。
 稲生はマリアとヤりたくてコンドームを入手しようとしているわけだが、マリアはナプキンとか買ってるんだよ?
 これが何を意味してるか分かるかな?

 稲生:(久しぶりにマリアを部屋に誘ってみるか……)
 マリア:(そろそろ来そうだから、今のうちに補充しておこう。日本製は質が高いからなぁ……)

 で、この様子を水晶玉で見ていた他の魔女達……。

 イリーナ:(あらあら。でも、タイミングがズレそうねぇ……)
 エレーナ:(あ、これ稲生氏がヤりたがろうとすると、マリアンナがムリぽになるパティーンだぜ。しょーがねぇな。ここは1つ、出の多くなってヤれねーマリアンナに代わって、1つ私が一肌脱いでやらんでもねーぜ)
 ルーシー:(お、覚えたてのルゥ・ラを使って、日本へ飛べばマリアンナの代わりに私が……)
 アンナ:(マリアンナを出し抜くチャンス!)
 リリアンヌ:(フ、フヒヒヒヒ……。え、ええ、エレーナ先輩のお、お手を煩わせることもありません……。こ、ここ、ここはひひ、1つわらひが……)
 マリア:「消えろ、オメーラ!

 尚、マリアはすぐに気づいて水晶玉に向かって一斉送信、即時一喝したという。

 稲生:「どうしました、マリアさん?」
 マリア:「何でもない。早く行こう」
 稲生:「はい」

 今度はマリアが稲生の腕を取る。

 マリア:「勇太、モテ期が来ても、絶対によそ見しないでね?」
 稲生:「大丈夫ですって。僕なんかが来るわけないですもん。僕はマリアさんが一番好きですよ」

 当の本人が1番自覚が無い。

[同日15:20.天候:雨 大宮駅西口バス停→丸建自動車けんちゃんバス車内]

 1番最初に乗った小型バスに乗り込む。

 稲生:「何とかスタート地点に戻れそうですね」
 マリア:「本当に半日掛かりだったね」
 稲生:「ええ」

 1番後ろの座席に座った。

 稲生:「体のむず痒さとかは?」
 マリア:「いや、無い」
 稲生:「そうですか。それは良かった……」

 発車の時間になり、ブザーが鳴って外吊りタイプのドアが閉まった。
 小型のバスなので戸袋が設置できず、外側に開くタイプが採用されたのだろう。

〔発車します。ご注意ください〕

 バスはゆっくりと一方通行の狭い道を走り出した。

〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。ご乗車ありがとうございます。このバスは与野本町先回り、大宮西口循環線でございます。次はあおぞら保育園、あおぞら保育園でございます〕

 T字路交差点を左折する際、左角に“いきなりステーキ”がある。

 マリア:「……やっぱり日本の肉は脂分が多いな」
 稲生:「霜降り肉が喜ばれますからね。まあ、僕もそれが柔らかくて好きなんですけど」
 マリア:「そうか……」
 稲生:「マリアさんは赤身肉の方がいいですか?」
 マリア:「まあ、食べ慣れてるからね」
 稲生:「僕には少し硬いんですよね……」

 今でこそ稲生には脂分の多い肉を出してくれるようになったが、マリアの屋敷に住み込みを始めた時は欧州人に合わせて赤身肉のウェルダンが出されて、稲生の顎が疲弊してしまったことがある。
 さすがにイリーナの顎に合わせて焼き加減は手加減されるようになり、いつしか稲生には脂分の多い肉が出されるようになったが、あれには参ったと本人は記憶していた。

 マリア:「ソールズベリー(ハンバーグ)ステーキなら柔らかいでしょ?」
 稲生:「そうですね……」

 で、肉の話をしていたものだから……。

 稲生:「何だかお腹空いて来ましたね」
 マリア:「HAHAHA...今日のディナーは何だろう?」
 稲生:「母さんのメールからして、鍋にするらしいですよ。多分、すき焼きか何かじゃないですか」
 マリア:「おっ、出た。日本料理」
 稲生:「出ましたねぇ」

 バスは雨の中、時折突風のような風が吹く中、中央区に向かって進んだ。
 
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“大魔道師の弟子” 「縦移動」

2020-02-03 15:41:50 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月28日13:34.天候:雨 埼玉県川口市 埼玉高速鉄道鳩ケ谷駅→埼玉スタジアム線1236S電車1号車内]

 稲生:「あ、来た来た。あの電車です」

 ホームで電車を待っていると、浦和美園行き電車がやってきた。
 埼玉高速鉄道の駅のホームは、天井まで完全に覆うタイプのホームドアが設置されている。
 その為、さすがに人身事故は発生していなかった。

〔はとがや、鳩ケ谷。……〕

 この駅でぞろぞろと乗客が降りてきた。
 乗り込んだ先頭車は、それでだいぶ空いた感がある。
 座席に座ると、発車メロディが鳴ってドアが閉まる。
 埼玉高速鉄道はワンマン運転なので、ドアが閉まるとすぐに発車する。

〔次は新井宿、新井宿です〕
〔The next station is Araijuku.SR23.〕

 マリア:「う……」

 マリアは目まいを感じ、稲生に寄り掛かった。

 稲生:「どうしました?」
 マリア:「あの、嫌な感じ……。出発した時の……むず痒い感じがまた……」
 稲生:「ええっ?それってもしかして、マリアさんの予知能力じゃ?あの、第六感とか『虫の知らせ』的な……」
 マリア:「そうかもしれない」
 稲生:「この電車に乗ってちゃマズいということですか?」
 マリア:「分からないけど……。他にルートは無いんでしょ?」
 稲生:「さすがにもう人身事故は復旧したでしょうから、もう一度バスに乗って蕨駅に戻るという手もあるにはありますが……」
 マリア:「いや、いい。このまま乗ってても……」
 稲生:「本当ですか?」
 マリア:「もし危険なら、師匠が何かしら教えてくれるはずだから」
 稲生:「な、なるほど……。あんな感じのホームドアで、人が飛び込んで来るとは思えないし……」

[同日13:43.天候:雨 同県同市内 東川口駅→同電車]

 探偵:「京浜東北線まで止まるとは……!さすが、魔女は周囲に不幸を振り撒く悪魔の手先と言われるだけのことはあるな……。まあいい。さすがにこの地下鉄は動いているみたいだから、これでさいたま市に戻ればいい」

 どうやら武蔵野線で迂回して来たようである。
 そして、電車がやってくる。

 探偵:「Huh!?」

 ホームドアに隠れて見えなかったが、探偵は一瞬、ローブを着た金髪の者を見たような気がした。

〔ひがしかわぐち、東川口。……〕

 探偵は急いで前から2両目に乗り込んだ。
 すぐにドアが閉まって発車する。

〔次は終点、浦和美園、浦和美園。『浦和美園と共に歩む埼玉りそな銀行最寄駅』です〕
〔The next station is Urawa-misono.SR26.The final station.〕

 探偵:「うーむ……」

 探偵は1号車と2号車の間の連結器のドア越しに、1号車を覗いた。
 対象の金髪の魔女らしき者は、運転室のすぐ近くの座席に座っているようだ。
 その隣に寄り添うように、日本人の男が座っている。

 探偵:(金髪の魔女は日本人の男と一緒だという。あれがそうかもしれない)

 確信が取れなかったのは、その魔女がフードを深く被っている為、肝心の髪の色がよく見えなかったからである。
 しかしあの黒いローブは、正しく魔女の象徴とも言える。

 探偵:(もう少し注意深く見るとするか……)

 幸い電車は空いていて、すぐに誰か分かる状態……。

 黒服A:「おい」

 と、そこへ探偵と似たような恰好をした屈強な男が探偵の肩を叩いた。

 探偵:「Huh?」
 黒服A:「は?じゃねぇ。うちの御嬢様に何か用か?」
 探偵:「ええっ?御嬢様?」
 黒服B:「ばっくれるねぇ!斎藤組の江恋御嬢様の『初めてのおつかい』を知ったボストンマフィアのシモンズ一家の鉄砲玉だろ、あぁ!?」
 探偵:「い、いや、何のことやら……」

 確かに1号車には、きれいな服を着たローティーンの少女が1人で乗っている。

 黒服A:「ちょっと来い、ゴルァッ!」
 黒服C:「ああ、ワシや。御嬢様を狙って、うちの組の国際ルートを妨害しちょる例のシモンズ一家の鉄砲玉ぁ捕まえたんや。今、後ろの車両に連れて行くけん、あとは頼むけんな……」(←スマホで仲間と連絡を取っている)
 探偵:「あ~れ~……」

 ズルズルと後ろの車両に引きずられる探偵だった。

 稲生:「? ……何か後ろの車両が騒がしいような……?」
 マリア:「大したこと無いだろ。それより、少し気分良くなった」
 稲生:「あ、それは良かったですね」

[同日14:02.天候:雨 埼玉県さいたま市緑区 埼玉高速鉄道浦和美園駅西口→国際興業バス大01系統車内]

 無事に浦和美園駅に到着した稲生とマリア。
 西口バスプールに向かい、そこからバスへ。
 尚、『御嬢様』は東口に向かった。
 恐らく、イオンモールにて『はじめてのおつかい』をするのかと思われる。
 『御嬢様』を守る為、黒服の男達が買い物客を圧迫する……。

 稲生:「これで何とか帰れそうです」
 マリア:「うん。今度は何とも無い。多分、大丈夫」

 バスにエンジンが掛かる。
 そして、ドアチャイムが鳴って引き戸式の中扉が閉まった。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 バスは定刻に発車した。

 探偵:「く、くそ……あのヤクザマフィアめ……。おおーい……待ってくれぇ……!」

 アメリカンマフィアのメンバーと勘違いされ、ボコボコにされた探偵、足を引きずってバスを追うも乗れず。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは野田宝永、片柳支所、西中野経由、大宮駅東口行きです。途中お降りの方は、お近くのボタンを押してお知らせ願います。次は玄蕃新田、玄蕃新田でございます〕

 マリア:「師匠にはこのバスで帰ると言っておいた」
 稲生:「ありがとうございます」
 マリア:「半日掛かりのコースになったね」
 稲生:「せっかくだから、大宮駅に寄って行きます?そこから更にバスに乗り換えようとすると、少し時間調整が必要なんですけど……」
 マリア:「うーん……。少し買い物だけして、あとはタクシーで帰ろう」
 稲生:「分かりました」
 マリア:「買いたいものはあるけど、多分ほとんどコンビニで調達できると思うから」
 稲生:「駅中のNEWDAYSでいいですかね」
 マリア:「あー、多分大丈夫」
 稲生:「了解です」

 で、その頃、駅前に取り残された探偵は……。

 探偵:「こ、こうなったら……大枚はたくが、タクシーで……」

 足を引きずってタクシー乗り場に向かう。
 そこに止まっているタクシーは1台だけ……。

 御嬢様:「テヘッ、降りる駅間違えちゃったw」
 黒服A;「ドンマイです、御嬢様」
 黒服B:「ここは編集でカットしておきますので、親分……もとい、御父上のことはどうぞ御心配なさらず」
 黒服C:「ほな、取りあえず、タクシーで戻りましょう」

 で、バッタリ探偵と遭遇。

 黒服A:「御嬢様が乗られるんじゃ、ボケェ!」

 バキィッ!(黒服Aのパンチが探偵の顔面にクリティカルヒット)

 探偵:「あ~れ~……」

 やはり、魔女は周囲に不幸を振り撒くというのは本当なのかもしれない。
 尚、信仰者にあっても『罪障消滅』という名の不運を周囲に振り撒く者がいるので注意だ(私もその1人)。
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