報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「東京最後の夜」

2020-02-28 20:20:25 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[日本時間2月11日19:00.天候:曇 東京都千代田区神田淡路町 らくスパ1010]

 秋葉原で買い物を終えた稲生達は、バスタ新宿に行く前に入浴と夕食を取ることにした。

 稲生:「えーと……確かこの辺だ……。あった」
 マリア:「勇太はよくこういうの見つけるね」
 稲生:「僕も、こういうの好きなんですよ」
 マリア:「私も勇太のそういう所に付き合ったおかげで、『魔女の呪縛』は消え去った。だから付き合うよ」
 稲生:「ありがとう」

 早速館内に入る。
 因みに買い物の荷物については、御茶ノ水駅のコインロッカーに預けて来た。

 稲生:「先にお風呂入ってから、夕食にしよう」
 マリア:「その方がゆっくりできるな」

 因みにこういう公衆浴場には必ずある注意書きの内容。
 『入れ墨・タトゥーのある方の入場お断り』というもの。
 欧米人なんか、日本人よりも軽い気持ちでタトゥーを入れているイメージがあるが、マリアの場合は……。

 マリア:「勇太。今さら、こんなこと聞くのもアレなんだけど……」
 稲生:「何だい?」
 マリア:「悪魔と契約すると、ほとんどの場合タトゥーが入るんだけど、私のもアウトかな?」

 フロントに並んでいる時、マリアが稲生に聞いてきた。

 稲生:「えっ?マリアにタトゥーなんてあったっけ?」

 実はもう稲生はマリアと体を重ねている。
 マリアの裸体は隅々まで見た記憶がある稲生だが、タトゥーには全く気が付かなかった。

 マリア:「魔法を使った時、尻に現れる」
 稲生:「お尻なの!?」

 普段はショーツの中に隠れ、更に冬季の今は更にその上からストッキングで隠れ、更にその上からスカートやパンツに隠れるのだから分かるわけがない。
 ましてや、魔法を使うまでは入っていることに誰も気づかないのだから。

 稲生:「……いや、それなら大丈夫だと思うよ」
 マリア:「そうか。それで安心した」
 稲生:「すると、うちの先生も入ってるんだねぇ……。あ、いや、何かあったような気がする」
 マリア:「師匠の場合、左の太ももね。魔法を使う時、どうしても風でスカートが捲れるから、その時に太ももだと見えるかな」
 稲生:「魔道士によって違うんですねぇ……」
 マリア:「正確にはタトゥーとは言わず、スティグマと言うかな」
 稲生:「スティグマねぇ……」

 稲生達の順番が回って来たので、そこで料金体系を確認してコースを選ぶ。
 レンタルタオルも借りて、それからマリアと別れる。

 稲生:「さーて……少しゆっくりしよう」

 体を洗った後、人工炭酸泉に入る。

 稲生:「さすがにこういうのは屋敷には無いな……。入浴剤を使っても……」
 横田:「先般の魔王城大浴場新装工事における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 稲生:「ブバッ!?」

 突然のことで浴槽の床に足を滑らせ、一瞬溺れかける稲生。

 横田:「魔界共和党理事、元ケンショーグリーンの横田です」
 稲生:「横田理事!?何でいっつも僕達が大浴場に行くといるんだ!?」
 横田:「魔界共和党諜報部長をナメてはいけません」
 稲生:「え、なに?横田理事、諜報部長もしてるの!?」
 横田:「クフフフフフ……」
 稲生:「さすがはケンショーレンジャーのストーカー担当。けして変態なだけじゃないんだ」
 横田:「私はセクシャル・ハラスメントは致しません」
 稲生:「ええっ!?」
 横田:「私のはセクシャル・コミュニケーションというのです」
 稲生:「また詭弁を……」
 横田:「それをたまたま、世の女性達が『痴漢』と呼んでいるだけのことなのです」
 稲生:「ダメじゃん!」
 横田:「それより稲生君。キミはこういう大きなお風呂が大好きとのことですが、本当ですかな?」
 稲生:「う、うん。日本人なら、やっぱり温泉とか好きだもんね」
 横田:「実は魔界にも温泉は湧いているのです」
 稲生:「あー……。スーパーグレート火山があるもんね。そりゃ確かにありそうだわ」
 横田:「アルカディアシティに住む日本人達は、『魔界富士』と呼びます。私の分析によりますと、形が富士山に似ているからですね。富士山とどうやら連動しているようでして、もしも富士山が噴火しようものなら、スーパーグレート火山も噴火します」
 稲生:「えっ、そうなの!?」
 横田:「そして、それは逆もまたしかりなのです」
 稲生:「ふーん……」
 横田:「アルカディアシティには地熱発電と豊富な地下水脈を利用した水力発電でもって、電力をもたらしてくれている火山ではありますがね」
 稲生:「らしいね」
 横田:「そして次なる資源が温泉なのです」
 稲生:「それを魔王城に引こうっての?」
 横田:「我らが崇高なる女王、ルーシー・ブラッドプール陛下は日本文化に大変興味を持たれております。温泉もその1つなのです」
 稲生:「あー、何か正式に即位される前までは、安倍春明首相と一緒に御忍びで人間界に行ってたんだって?」
 横田:「ラーメン二郎の『メンカタカラメヤサイニンニクマシマシ』事件は有名です」
 稲生:「知らないよ、そんなの!え、なに!?あの女王様、ラーメン二郎行ったの!?……てか、ヴァンパイアなのに堂々と昼間に出て二郎のそれもニンニクマシマシ食べて!?」
 横田:「私の分析によりますと、陛下は人間界生まれ、人間界育ちですので、中世のドラキュラ伯爵とはまた違った吸血鬼なのでしょうな」
 稲生:「関係あるの、それ?」
 横田:「稲生君。吸血鬼が全てニンニクが弱点とは思わない方がいいですよ。確かにあの陛下にも弱点はありますがね。クフフフフフ……」
 稲生:「十字架に弱いってのは?」
 横田:「それはキミの所の魔女さんも同じでしょう?吸血鬼もまた、キリスト教会から見れば討伐の対象なのですから」
 稲生:「そういうことか。逆に顕正会や日蓮正宗に破折はされるけどね」
 横田:「私もケンショーレンジャーに所属していた時、キリスト教会に突撃したことがありましたが、いやはや彼らはとても油断ならぬものです。あとは宗門に任せます」
 稲生:「丸投げ!?」
 横田:「さて、私は今度はサウナの視察に行って参ります」
 稲生:「あ、これ視察だったの!?」
 横田:「陛下に御満足頂ける温泉施設を造る為には、綿密な視察が必要なのです。それでは……」

 横田はザバッと上がると、サウナへと入っていった。

 稲生:「ムッツリスケベの変態理事だけど、根は真面目なんだろうなぁ……」

 明らかに火病持ちで直情的に女性を襲うケンショーブルーは在日、そしてこちらのケンショーグリーンはちゃんとした日本人であることが分かる。
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“大魔道師の弟子” 「人間界へ戻る」

2020-02-28 15:09:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[日本時間2月11日15:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 魔界の病院をあとにした稲生とマリアは来た道を引き返し、再びワンスターホテルに戻って来た。

 稲生:「冥鉄に便乗できたら、そのまま白馬まで帰れそうですけどね」
 マリア:「そんな権限あるの師匠クラスだから、私達じゃ無理だな」

 そんなことを話しながら、エレベーターで魔法陣のある地下階から地上階へ上がる。

 オーナー:「おっ、これはこれはどうもお疲れさまです」
 稲生:「オーナー、エレーナは元気でしたよ」
 オーナー:「転んでもタダでは起きない性格ですからね。その辺はあまり心配してませんでしたよ」
 稲生:「でも潰れた肺が修復されるまで、もう少し時間が掛かるみたいです」
 オーナー:「そうですか。私としては、なるぺく早くエレーナに戻って来てもらいたいものです」
 稲生:「やっぱり臨時のバイトでは難しいですか」
 オーナー:「普通の仕事なら大丈夫なんですが、いかんせんカラスなので、羽は散らかるし、食い意地は張ってるで、ちょっと扱い難いんですよ」
 稲生:「カネに汚いエレーナよりは安上がりっぽそうですけど?」
 オーナー:「逆を言えば、給料プラスαで何でもやってくれるということです」
 稲生:「なるほど……」

 稲生は如何にオーナーがエレーナの扱いについて慣れているかが分かった。

[同日15:08.天候:晴 同地区内 都営地下鉄森下駅]

 23時過ぎの夜行バスが出るまで、当然まだ時間があった。
 この間どうやって時間を潰そうか稲生は迷ったが、それなら買い物に付き合って欲しいとマリアが言った。
 大きなショッピングセンターのある所に行こうとすると、どうしても電車かバスで移動しなければならなくなる。
 取りあえず秋葉原へ行くことにした。
 御徒町にはエレーナ御用達の魔法具店があるということだが、さすがに行く気にはなれなかった。
 多少興味を持てたとしても。

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。……〕

 魔界では地下鉄には乗らなかったが、向こうは湧水が流れる中を電車が走っていたりする。
 東京の地下鉄でも、雨でもないのに側溝を水が流れていたりするが、アルカディアメトロに比べればあからさまではない。

 稲生:「東京都交通局か……」

 やってきた電車は乗り入れてきた京王電鉄ではなく、東京都交通局の車両だった。
 ラインカラーが黄緑である為、車両にもその塗装が施されている。

〔1番線の電車は各駅停車、新宿行きです。森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 2人は電車に乗り込んだ。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 急行停車駅だが、停車時間は僅か。
 すぐにドアチャイムを3回鳴らして閉扉する。
 アルカディアメトロにはホームドアが一切無いのでこれですぐに発車するが、ホームドアのある森下駅では、更にそれも閉まってから発車する。

〔この電車は各駅停車、新宿行きです。次は浜町、浜町、明治座前です。お出口は、右側です〕
〔This is a local train bound for Shinjyuku.The next station is Hamacho(S10).〕

 マリア:「魔女が日の当たる所に住んではいけない、か……」
 稲生:「何が?」
 マリア:「エレーナが言ってた。だからあいつは地下室に住んでるんだと……」
 稲生:「その割には地上にあるホテルのフロントにいたり、昼間から堂々とホウキで空飛んでますけどね」
 マリア:「それだ。本当は昼間から堂々と飛ぶのはおかしいぞ。だったらまだアナスタシア先生のように、ヘリで飛べばいい」
 稲生:「エレーナも変な事言ってましたねぇ……」
 マリア:「ママに肺だけでなく、頭もやられたんだろう」
 稲生:「マリアのお母さん、どうなるんだろう?」
 マリア:「知らない。大師匠様に拷問でも処刑でも、好きなようにされればいいんだ」
 稲生:「マリアぁ……」
 マリア:「勇太の御両親は私を受け入れてくれたのに、あの毒親は……!」
 稲生:(ヤベ、まだちゃんとした紹介してなかった。いつの間にか受け入れられていたって感じだったからなぁ……)

 稲生は気を取り直して……。

 稲生:「因みにマリアのお父さんは?」
 マリア:「もっと知らない。事業に失敗して露頭にでも迷ってろってんだ」
 稲生:(もしかしてマリアさんち、家庭崩壊だったのか!?)

 “魔の者”は他の悪魔から見ても狡猾であるという。
 確かマリアの父親は事業をやっていて、それが個人商店から企業へと発展できるか否かの状態になっていた。
 家庭より事業を優先したあまり、マリアが“壮絶な迫害を受けた際にも全く無関心であったとされている。

[同日15:13.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→秋葉原]

〔1番線の電車は各駅停車、新宿行きです。岩本町、岩本町〕

 稲生達はここで電車を降りた。
 名前は秋葉原ではないが、そこへは歩いて行ける所にある。
 JR秋葉原駅と神田駅の間の場所と言えば分かるだろうか。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 各駅停車が急行の通過待ちをすることもある駅だが、稲生達が乗って来た電車はそうせず、本線ホームに停車して、すぐに発車して行った。

 稲生:「何が買いたいですか?」
 マリア:「うーん……色々」
 稲生:「時間はたっぷりあるから、ゆっくり見て回って大丈夫」
 マリア:「分かった」

 地上に出ると、そこは昭和通り(国道4号線)の前。
 そこを北に向かって歩くと秋葉原駅に着く。

 稲生:「コロナウィルスとか大丈夫かな?」
 マリア:「師匠は何も言って無かったからね。ただ、うちの門内でも日本行きを取りやめる組も出たらしいから、現時点では何とも言えない」
 稲生:「それはマリアのお母さんの件では?」
 マリア:「表向きはね」
 稲生:「“魔の者”の揺さぶりですかね?」
 マリア:「どうだろう……。もちろん悪魔の中には、疫病を振り撒くヤツもいる。その度に教会が動いて悪魔祓いとか、魔女狩りとかやったわけだよ」
 稲生:「ただのデマなのにねぇ……」
 マリア:「仏教では?仏教ではウィルスの蔓延について、ブッダの話は無いのか?」
 稲生:「あー……十羅刹女の話とか?」
 マリア:「ジューラセツニョ?」
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