[1月28日10:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
探偵:「私のコードネームは『愛原学』。ロンドン市内で小さな探偵事務所を経営している。今日は仕事で、サイタマ・ジャパンにやってきた。この家の住人は出払ったようだ。今がチャンスである」
探偵は独り言を呟きながら、稲生家の門扉の横にあるインターホンを押した。
だが、応答する者はいない。
探偵:「『へんじがない。次は赤羽のようだ』……ん、違ったか?では、もう一回」
探偵は返事があるまでインターホンを押し続けた。
マリア:「うるせー……!」
1階奥の客間で寝ていたマリア。
来客用の折り畳みベッドの上に横になっている。
因みにイリーナ用はエアーベッド。
そのイリーナはどうやら出掛けているようだ。
また、稲生宗一郎は平日なので会社。
専業主婦としていつもは家にいる佳子も、今は出掛けているようだ。
つまり、この家にいるのはマリアだけなのである。
ドンドンドン!ドンドン!ドンッ!(玄関までやってきて、玄関のドアを何度も叩く)
探偵:「ねぇ、金髪の魔女さーん!いるんでしょ?出て来てくださいよー!」
マリア:「う~る~せぇ~……!!

」
たたでさえ生理中で気持ちが落ち着かない中、ついにマリアはキレた。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……死にさらせ……!ヅァ・キ!」
探偵:「はぐぁっ!?」
それが探偵の断末魔となった。
[同日11:30.天候:晴 稲生家]
稲生家の前に郵便局のバイクが止まる。
配達員:「えーと……稲生さん。書留だな」
配達員はインターホンを押した。
しかし、誰も出ない。
配達員:「留守か。しょうがない。再配達でも……」
ドッ……!
配達員:「ん?」
すると、門扉の向こうから何か大きな聞こえた。
配達員:「何だ?……すいませーん」
配達員は門扉の取っ手を押した。
鍵は掛かっていなかった。
配達員:「失礼しまーす……」
配達員は中に入ると、音がした方向、つまり玄関の方向に向かった。
配達員:「!!!」
するとそこに、玄関のドアノブを掴みながら崩れるように倒れている男を発見した。
配達員:「ちょっと!大丈夫ですか!?」
配達員は男に駆け寄った。
配達員:「し、死んでる!?」
[同日13:00.天候:晴 稲生家]
稲生は藤谷の車に乗せられ、家に向かっていた。
藤谷:「いやあ、すっかり話し込んじまったなぁ……」
稲生:「昼食まで御馳走してくれて、ありがとうございました」
藤谷:「なぁに、いいってことよ。それより、イリーナ先生によろしくな?」
稲生:「はい。もう家に帰って来てるといいんですけどねぇ……」
藤谷:「イリーナ先生はいつもあんな感じなのか?」
稲生:「そうですね。突然フラッと出掛けて、数日いなくなることもザラですよ」
藤谷:「魔女はいつも森の奥にいるとは限らんのだな」
稲生:「イリーナ先生の場合、魔女の存在を超えた大魔道師ですから」
藤谷:「なるほどな。……ん?」
稲生家の前に向かう路地へ行こうとしたが、通行止めになっていた。
藤谷:「何があったんだい?」
警察官(巡査):「この先の民家で変死体が発見されまして、事件性も考えられるので捜査中です。迂回にご協力ください」
稲生:「どこの家ですか?」
警察官:「あの御宅です」
稲生:「僕の家ですよ!?」
巡査:「なにっ!?」
藤谷:「ぬねの!……って、ボケてる場合じゃねぇ!あの家にいたの、マリアさんだけだよな!?」
稲生:「そ、そんな、マリアさんが……」
警察官(巡査部長):「住人の方なら結構です。……おい」
警察官(巡査):「は、はい!」
稲生:「あの、亡くなったのは誰ですか?」
警察官(巡査部長):「黒いスーツを着た外国人です」
稲生:「は?」
稲生はとにかく警察官について家に向かった。
イリーナ:「あ、勇太くーん!」
稲生:「先生!」
イリーナ:「良かったー。住人が帰って来てくれてー。危うく密入国の外国人扱いされるところだったわよ」
稲生:「先生だってロシアのパスポートくらいお持ちでしょう?」
イリーナ:「そうなんだけど、私だけビザ違いだから余計にね」
稲生:「先生なら大使館員並みの扱いをされても良いとは思いますが……」
こういう時、表の顔があると役に立つ。
イリーナは表向き、世界的に有名な占い師で通っているのだ。
日本でもそれ系の雑誌などに掲載されるほど。
たまに旅行でホテルに宿泊することがあるが、そういう時に取材を受けることが多い。
刑事:「被害者はイギリスのパスポートを持ってました。名前をスコット・ノーマンと言うそうです。何か心当たりはありますか?」
稲生:「全く無いです」
イリーナ:「私も初めて聞きますわ」
マリア:「私も初めて聞く……」
刑事:「大丈夫ですか?そちらの方……同じイギリス人のようですが、顔色が悪いですよ?」
イリーナ:「このコは今、生理中で具合が悪いんです。このコは奥で休ませてあげてもいいですか?」
刑事:「できればもう少し、お話しをお願いします。何しろ同じイギリス人ですからな、何かしら繋がりがあると思うのです」
刑事はマリアを一番疑っているようだ。
刑事:「実はここ数日の間、この近辺で不審者の情報が寄せられていまして……。調べてみると、その不審者の特徴と被害者の特徴が一致するのです。目撃情報によれば、この御宅を見ていたとのことですが、何か心当たりはありませんか?」
稲生:「あー……」
稲生は刑事の話を聞いて、心当たりを感じた。
そしてイリーナにそれを話しても良いか、チラッと見た。
イリーナは小さく頷いた。
稲生:「実は心当たりはありまして……」
稲生は鈴木や稲生佳子から聞いた不審者の話をした。
刑事:「都内のビジネスホテルに現れたと?」
稲生:「僕は鈴木君から聞いています」
刑事:「その鈴木さんとあなたとの関係は?」
稲生:「友人です。信仰関係の」
刑事:「できれば連絡先など、教えて頂ければ……」
稲生:「いいですよ」
マリア:「つ、ついでにワンスターホテルの場所も教えてやれ……」
マリアは真っ青な顔でありつつも、笑みだけは浮かべた。
エレーナにここの居場所を教えられた腹いせのつもりだろう。
刑事:「ありがとうございます。この御宅には、どのくらい滞在されるおつもりですか?」
稲生:「夜行バスのキップが31日に取れたので、それから出発するつもりです」
刑事:「失礼ですが、どちらまで?」
稲生:「長野県白馬村です」
刑事:「どうしてそんな所に?」
イリーナが目を細めたと同時に、刑事の携帯電話が鳴る。
刑事:「ちょっとすいません。……はい、もしもし?……えっ!?」
何か事件が進展したのだろう。
刑事は電話を切ると、急いで稲生家をあとにした。
稲生:「何だって、僕の家の玄関の前で死んでたんだろう?」
イリーナ:「ゴメンねぇ。マリアには後でお仕置きしておくからね」
マリア:「…………」
イリーナからのお仕置きの言葉に、マリアの蒼白した顔が更に真っ白くなった。
探偵:「私のコードネームは『愛原学』。ロンドン市内で小さな探偵事務所を経営している。今日は仕事で、サイタマ・ジャパンにやってきた。この家の住人は出払ったようだ。今がチャンスである」
探偵は独り言を呟きながら、稲生家の門扉の横にあるインターホンを押した。
だが、応答する者はいない。
探偵:「『へんじがない。次は赤羽のようだ』……ん、違ったか?では、もう一回」
探偵は返事があるまでインターホンを押し続けた。
マリア:「うるせー……!」
1階奥の客間で寝ていたマリア。
来客用の折り畳みベッドの上に横になっている。
因みにイリーナ用はエアーベッド。
そのイリーナはどうやら出掛けているようだ。
また、稲生宗一郎は平日なので会社。
専業主婦としていつもは家にいる佳子も、今は出掛けているようだ。
つまり、この家にいるのはマリアだけなのである。
ドンドンドン!ドンドン!ドンッ!(玄関までやってきて、玄関のドアを何度も叩く)
探偵:「ねぇ、金髪の魔女さーん!いるんでしょ?出て来てくださいよー!」
マリア:「う~る~せぇ~……!!



たたでさえ生理中で気持ちが落ち着かない中、ついにマリアはキレた。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……死にさらせ……!ヅァ・キ!」
探偵:「はぐぁっ!?」
それが探偵の断末魔となった。
[同日11:30.天候:晴 稲生家]
稲生家の前に郵便局のバイクが止まる。
配達員:「えーと……稲生さん。書留だな」
配達員はインターホンを押した。
しかし、誰も出ない。
配達員:「留守か。しょうがない。再配達でも……」
ドッ……!
配達員:「ん?」
すると、門扉の向こうから何か大きな聞こえた。
配達員:「何だ?……すいませーん」
配達員は門扉の取っ手を押した。
鍵は掛かっていなかった。
配達員:「失礼しまーす……」
配達員は中に入ると、音がした方向、つまり玄関の方向に向かった。
配達員:「!!!」
するとそこに、玄関のドアノブを掴みながら崩れるように倒れている男を発見した。
配達員:「ちょっと!大丈夫ですか!?」
配達員は男に駆け寄った。
配達員:「し、死んでる!?」
[同日13:00.天候:晴 稲生家]
稲生は藤谷の車に乗せられ、家に向かっていた。
藤谷:「いやあ、すっかり話し込んじまったなぁ……」
稲生:「昼食まで御馳走してくれて、ありがとうございました」
藤谷:「なぁに、いいってことよ。それより、イリーナ先生によろしくな?」
稲生:「はい。もう家に帰って来てるといいんですけどねぇ……」
藤谷:「イリーナ先生はいつもあんな感じなのか?」
稲生:「そうですね。突然フラッと出掛けて、数日いなくなることもザラですよ」
藤谷:「魔女はいつも森の奥にいるとは限らんのだな」
稲生:「イリーナ先生の場合、魔女の存在を超えた大魔道師ですから」
藤谷:「なるほどな。……ん?」
稲生家の前に向かう路地へ行こうとしたが、通行止めになっていた。
藤谷:「何があったんだい?」
警察官(巡査):「この先の民家で変死体が発見されまして、事件性も考えられるので捜査中です。迂回にご協力ください」
稲生:「どこの家ですか?」
警察官:「あの御宅です」
稲生:「僕の家ですよ!?」
巡査:「なにっ!?」
藤谷:「ぬねの!……って、ボケてる場合じゃねぇ!あの家にいたの、マリアさんだけだよな!?」
稲生:「そ、そんな、マリアさんが……」
警察官(巡査部長):「住人の方なら結構です。……おい」
警察官(巡査):「は、はい!」
稲生:「あの、亡くなったのは誰ですか?」
警察官(巡査部長):「黒いスーツを着た外国人です」
稲生:「は?」
稲生はとにかく警察官について家に向かった。
イリーナ:「あ、勇太くーん!」
稲生:「先生!」
イリーナ:「良かったー。住人が帰って来てくれてー。危うく密入国の外国人扱いされるところだったわよ」
稲生:「先生だってロシアのパスポートくらいお持ちでしょう?」
イリーナ:「そうなんだけど、私だけビザ違いだから余計にね」
稲生:「先生なら大使館員並みの扱いをされても良いとは思いますが……」
こういう時、表の顔があると役に立つ。
イリーナは表向き、世界的に有名な占い師で通っているのだ。
日本でもそれ系の雑誌などに掲載されるほど。
たまに旅行でホテルに宿泊することがあるが、そういう時に取材を受けることが多い。
刑事:「被害者はイギリスのパスポートを持ってました。名前をスコット・ノーマンと言うそうです。何か心当たりはありますか?」
稲生:「全く無いです」
イリーナ:「私も初めて聞きますわ」
マリア:「私も初めて聞く……」
刑事:「大丈夫ですか?そちらの方……同じイギリス人のようですが、顔色が悪いですよ?」
イリーナ:「このコは今、生理中で具合が悪いんです。このコは奥で休ませてあげてもいいですか?」
刑事:「できればもう少し、お話しをお願いします。何しろ同じイギリス人ですからな、何かしら繋がりがあると思うのです」
刑事はマリアを一番疑っているようだ。
刑事:「実はここ数日の間、この近辺で不審者の情報が寄せられていまして……。調べてみると、その不審者の特徴と被害者の特徴が一致するのです。目撃情報によれば、この御宅を見ていたとのことですが、何か心当たりはありませんか?」
稲生:「あー……」
稲生は刑事の話を聞いて、心当たりを感じた。
そしてイリーナにそれを話しても良いか、チラッと見た。
イリーナは小さく頷いた。
稲生:「実は心当たりはありまして……」
稲生は鈴木や稲生佳子から聞いた不審者の話をした。
刑事:「都内のビジネスホテルに現れたと?」
稲生:「僕は鈴木君から聞いています」
刑事:「その鈴木さんとあなたとの関係は?」
稲生:「友人です。信仰関係の」
刑事:「できれば連絡先など、教えて頂ければ……」
稲生:「いいですよ」
マリア:「つ、ついでにワンスターホテルの場所も教えてやれ……」
マリアは真っ青な顔でありつつも、笑みだけは浮かべた。
エレーナにここの居場所を教えられた腹いせのつもりだろう。
刑事:「ありがとうございます。この御宅には、どのくらい滞在されるおつもりですか?」
稲生:「夜行バスのキップが31日に取れたので、それから出発するつもりです」
刑事:「失礼ですが、どちらまで?」
稲生:「長野県白馬村です」
刑事:「どうしてそんな所に?」
イリーナが目を細めたと同時に、刑事の携帯電話が鳴る。
刑事:「ちょっとすいません。……はい、もしもし?……えっ!?」
何か事件が進展したのだろう。
刑事は電話を切ると、急いで稲生家をあとにした。
稲生:「何だって、僕の家の玄関の前で死んでたんだろう?」
イリーナ:「ゴメンねぇ。マリアには後でお仕置きしておくからね」
マリア:「…………」
イリーナからのお仕置きの言葉に、マリアの蒼白した顔が更に真っ白くなった。