報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ザキ」

2020-02-04 19:46:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月28日10:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 探偵:「私のコードネームは『愛原学』。ロンドン市内で小さな探偵事務所を経営している。今日は仕事で、サイタマ・ジャパンにやってきた。この家の住人は出払ったようだ。今がチャンスである」

 探偵は独り言を呟きながら、稲生家の門扉の横にあるインターホンを押した。
 だが、応答する者はいない。

 探偵:「『へんじがない。次は赤羽のようだ』……ん、違ったか?では、もう一回」

 探偵は返事があるまでインターホンを押し続けた。

 マリア:「うるせー……!」

 1階奥の客間で寝ていたマリア。
 来客用の折り畳みベッドの上に横になっている。
 因みにイリーナ用はエアーベッド。
 そのイリーナはどうやら出掛けているようだ。
 また、稲生宗一郎は平日なので会社。
 専業主婦としていつもは家にいる佳子も、今は出掛けているようだ。
 つまり、この家にいるのはマリアだけなのである。

 ドンドンドン!ドンドン!ドンッ!(玄関までやってきて、玄関のドアを何度も叩く)

 探偵:「ねぇ、金髪の魔女さーん!いるんでしょ?出て来てくださいよー!」

 マリア:「う~る~せぇ~……!!

 たたでさえ生理中で気持ちが落ち着かない中、ついにマリアはキレた。

 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……死にさらせ……!ヅァ・キ!」

 探偵:「はぐぁっ!?」

 それが探偵の断末魔となった。

[同日11:30.天候:晴 稲生家]

 稲生家の前に郵便局のバイクが止まる。

 配達員:「えーと……稲生さん。書留だな」

 配達員はインターホンを押した。
 しかし、誰も出ない。

 配達員:「留守か。しょうがない。再配達でも……」

 ドッ……!

 配達員:「ん?」

 すると、門扉の向こうから何か大きな聞こえた。

 配達員:「何だ?……すいませーん」

 配達員は門扉の取っ手を押した。
 鍵は掛かっていなかった。

 配達員:「失礼しまーす……」

 配達員は中に入ると、音がした方向、つまり玄関の方向に向かった。

 配達員:「!!!」

 するとそこに、玄関のドアノブを掴みながら崩れるように倒れている男を発見した。

 配達員:「ちょっと!大丈夫ですか!?」

 配達員は男に駆け寄った。

 配達員:「し、死んでる!?」

[同日13:00.天候:晴 稲生家]

 稲生は藤谷の車に乗せられ、家に向かっていた。

 藤谷:「いやあ、すっかり話し込んじまったなぁ……」
 稲生:「昼食まで御馳走してくれて、ありがとうございました」
 藤谷:「なぁに、いいってことよ。それより、イリーナ先生によろしくな?」
 稲生:「はい。もう家に帰って来てるといいんですけどねぇ……」
 藤谷:「イリーナ先生はいつもあんな感じなのか?」
 稲生:「そうですね。突然フラッと出掛けて、数日いなくなることもザラですよ」
 藤谷:「魔女はいつも森の奥にいるとは限らんのだな」
 稲生:「イリーナ先生の場合、魔女の存在を超えた大魔道師ですから」
 藤谷:「なるほどな。……ん?」

 稲生家の前に向かう路地へ行こうとしたが、通行止めになっていた。

 藤谷:「何があったんだい?」
 警察官(巡査):「この先の民家で変死体が発見されまして、事件性も考えられるので捜査中です。迂回にご協力ください」
 稲生:「どこの家ですか?」
 警察官:「あの御宅です」
 稲生:「僕の家ですよ!?」
 巡査:「なにっ!?」
 藤谷:「ぬねの!……って、ボケてる場合じゃねぇ!あの家にいたの、マリアさんだけだよな!?」
 稲生:「そ、そんな、マリアさんが……」
 警察官(巡査部長):「住人の方なら結構です。……おい」
 警察官(巡査):「は、はい!」
 稲生:「あの、亡くなったのは誰ですか?」
 警察官(巡査部長):「黒いスーツを着た外国人です」
 稲生:「は?」

 稲生はとにかく警察官について家に向かった。

 イリーナ:「あ、勇太くーん!」
 稲生:「先生!」
 イリーナ:「良かったー。住人が帰って来てくれてー。危うく密入国の外国人扱いされるところだったわよ」
 稲生:「先生だってロシアのパスポートくらいお持ちでしょう?」
 イリーナ:「そうなんだけど、私だけビザ違いだから余計にね」
 稲生:「先生なら大使館員並みの扱いをされても良いとは思いますが……」

 こういう時、表の顔があると役に立つ。
 イリーナは表向き、世界的に有名な占い師で通っているのだ。
 日本でもそれ系の雑誌などに掲載されるほど。
 たまに旅行でホテルに宿泊することがあるが、そういう時に取材を受けることが多い。

 刑事:「被害者はイギリスのパスポートを持ってました。名前をスコット・ノーマンと言うそうです。何か心当たりはありますか?」
 稲生:「全く無いです」
 イリーナ:「私も初めて聞きますわ」
 マリア:「私も初めて聞く……」
 刑事:「大丈夫ですか?そちらの方……同じイギリス人のようですが、顔色が悪いですよ?」
 イリーナ:「このコは今、生理中で具合が悪いんです。このコは奥で休ませてあげてもいいですか?」
 刑事:「できればもう少し、お話しをお願いします。何しろ同じイギリス人ですからな、何かしら繋がりがあると思うのです」

 刑事はマリアを一番疑っているようだ。

 刑事:「実はここ数日の間、この近辺で不審者の情報が寄せられていまして……。調べてみると、その不審者の特徴と被害者の特徴が一致するのです。目撃情報によれば、この御宅を見ていたとのことですが、何か心当たりはありませんか?」
 稲生:「あー……」

 稲生は刑事の話を聞いて、心当たりを感じた。
 そしてイリーナにそれを話しても良いか、チラッと見た。
 イリーナは小さく頷いた。

 稲生:「実は心当たりはありまして……」

 稲生は鈴木や稲生佳子から聞いた不審者の話をした。

 刑事:「都内のビジネスホテルに現れたと?」
 稲生:「僕は鈴木君から聞いています」
 刑事:「その鈴木さんとあなたとの関係は?」
 稲生:「友人です。信仰関係の」
 刑事:「できれば連絡先など、教えて頂ければ……」
 稲生:「いいですよ」
 マリア:「つ、ついでにワンスターホテルの場所も教えてやれ……」

 マリアは真っ青な顔でありつつも、笑みだけは浮かべた。
 エレーナにここの居場所を教えられた腹いせのつもりだろう。

 刑事:「ありがとうございます。この御宅には、どのくらい滞在されるおつもりですか?」
 稲生:「夜行バスのキップが31日に取れたので、それから出発するつもりです」
 刑事:「失礼ですが、どちらまで?」
 稲生:「長野県白馬村です」
 刑事:「どうしてそんな所に?」

 イリーナが目を細めたと同時に、刑事の携帯電話が鳴る。

 刑事:「ちょっとすいません。……はい、もしもし?……えっ!?」

 何か事件が進展したのだろう。
 刑事は電話を切ると、急いで稲生家をあとにした。

 稲生:「何だって、僕の家の玄関の前で死んでたんだろう?」
 イリーナ:「ゴメンねぇ。マリアには後でお仕置きしておくからね」
 マリア:「…………」

 イリーナからのお仕置きの言葉に、マリアの蒼白した顔が更に真っ白くなった。
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“大魔道師の弟子” 「何度も申し上げる通り、“私立探偵 愛原学”ではありません」

2020-02-04 11:42:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月28日21:00.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 パチンコガーデン北与野店・屋上駐車場]

 探偵:「私のコードネームは“愛原学”、ロンドンのベイカー街で小さな探偵事務所を経営している。……うん、この出だしもカッコいいな」

 探偵は屋上駐車場から双眼鏡を持って、稲生家の監視に当たった。

 探偵:「まさか近所に、このようなジャパニーズ・カジノがあったとは……。盲点だったな。ここでこうして、最初から監視に当たっていれば良かったのだ」

 店舗によっては、コリアン・カジノかもしれない(マル○ンとか、パラデ○ソとか……)。

 探偵:「雨で視界が悪いのが気になるが、しかし監視に支障を来すほどではない」
 警備員:「もしもし、お客さん」
 探偵:「はうっ!?」
 警備員:「ここで何をなさっているのですか?」
 探偵:「ば、バードウォッチングだ。何か問題かね?」
 警備員:「ほお、バードウォッチングですか」

 カラス:「カァー、カァー」

 警備員:「雨の中、カラスがカァーカァー言いながら飛んでるだけのようですが?」
 探偵:「それがいいのだ!それもまた風情なのだ!キミは分かるかね?」
 警備員:「すいませんが、バードウォッチングには興味がございませんでしてねぇ……」
 探偵:「そ、それより何か用かね?」
 警備員:「最近ご近所から、『パチンコ屋の立体駐車場から双眼鏡で家を覗かれている』という苦情が相次いでおりましてね、警戒を強化しているところなんですよ」
 探偵:「はうっ!?わ、私は知らん!さっきも言ったように、星空を観ていただけだ!」
 警備員:「あれれー?さっきバードウォッチングって言ってませんでした?」
 探偵:「ワタシ、イギリス人。ニッポンゴ分カラナイアルヨ」
 警備員:「中国系イギリス人?とにかく、警察がこっちに来るから……」
 探偵:「わはははは!さらばだ!」

 探偵、屋上から飛び降りる。

 警備員:「あっ、待たんか、こらーっ!」

 確かパチンコガーデン北与野店の屋上駐車場は、ビルの5階だか6階くらいの高さに位置しているはずだが、そこから飛び降りるとは命知らずな……。

 ドサッ!(探偵、たまたま店の前を通り掛かったトラックの荷台に着地する)

 探偵:「私は運がいい!たまたま柔らかい工事資材を運搬中の大型トラックが通り掛かるとは!しばらく便乗させてもらおう。……それにしても、このトラックはどこへ向かうんだ?」

 トラックは大宮駅方向に走っていたが、途中の広い県道を左折する。
 そして、すぐに新都心西出入口から首都高さいたま新都心線に入った。

 運転手:「新潟から来たサトーだぜぇ!あ?これからよー、高速でよー、新潟へよー、帰るからよー、あとは頼んます!」
 探偵:「ケンショーブルー運送?変わった社名だな。地方の零細企業だな、こりゃ」
 運転手:「ヒャッハー!夜通し爆走だぜぇ!トラックと功徳が止まらな~い!」

 こうして探偵は埼玉県から排除された。

[1月29日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 稲生家の前に停車する1台のベンツGクラス。
 そこから出てきたのは大きな外車に似つかわしい体形をした藤谷春彦だった。

 稲生佳子:「あら、藤谷さん。いらっしゃい」
 藤谷:「チャス。稲生勇太君がここに帰省してると聞いたもんで……」
 佳子:「どうぞどうぞ」
 藤谷:「お邪魔します」

 その様子を今度は別のマンションの屋上から監視している探偵。

 探偵:「くそっ!あの在日ドライバーめ!新潟まで休憩無しで走るバカがどこにいやがるんだ!後で北朝鮮に強制送還だ!」

 多分、サトー様は日本国籍は取得されているものと思われる。

 探偵:「それにしても、誰なんだ、あの男は?まさか、あれもヤクザマフィアじゃなかろうな。こんなの報告に無かったぞ……」
 管理人:「ちょっとあんた、何してんの?」
 探偵:「はうっ!?」

 再びマンションから逃げ出す探偵のことなど露知らず、稲生勇太は藤谷とリビングで再会した。

 藤谷:「訪問折伏に参上~!」
 勇太:「折伏は門外に対してでしょ!」
 藤谷:「ハハハ、ツッコミありがとう。もちろん、冗談だ。本当は訪問激励だよ」
 勇太:「顕正会なら『訪問指導』なんですけどね」
 藤谷:「在家信徒に『指導』の権限は無いからな」
 勇太:「何か御用ですか?」
 藤谷:「キミが帰省していることを鈴木君から聞いてね。で、仕事でたまたまこの近くを通ったもんで、寄ってみたわけよ」
 勇太:「そうだったんですか。でも良かったですよ。昨日は出掛けてましたからね」
 藤谷:「あの雨ん中?で、今日は天気が回復したのに家にいるんだ?」
 勇太:「本当は今日も出掛けたかったんですけど、マリアさんの具合が悪くて……」

 勇太はそう言いながら自分の下半身を指さした。

 藤谷:「ああ、なるほど。女は大変だな」
 勇太:「幸いダンテ一門の特権で、そういう生理の症状を抑える薬をイリーナ先生からもらったんで、比較的早めに収まりそうなんですが、今日はダメみたいですね」
 藤谷:「そんな特効薬あるのか」
 勇太:「そこは魔女の多い魔法使いの一門の特権なんでしょうね」
 藤谷:「なるほど。生理痛に悩むうちの支部の女子部員に高く売りつけられそうだ」
 勇太:「エレーナみたいなこと言って……」
 藤谷:「ま、俺も商売人だからな。考えることは似るのかもしれねぇ」
 勇太:「なるほど」
 藤谷:「で、俺が来た用なんだけど、鈴木君から気になることを聞いたんで、心配して来てみたってわけ」
 勇太:「あー、不審者のことですか」
 藤谷:「一体、何なんだ?マリアさんを狙っているとのことだが……」
 勇太:「いや、僕もよく分からないんですよ。まだ遭遇してないんで。いや、むしろ長野に帰るまでその方がいいんですけど……」
 藤谷:「鈴木君の話じゃ、ゴッドファーザーのコスプレおじさんらしいが……」
 勇太:「そうなんですか!?ぶっちゃけ、藤谷班長みたいな?」
 藤谷:「いや、仕事だからスーツ着てるだけだよ。やっぱ黒い方がシックに決まるからな」
 勇太:「それ着て御登山する度に、妙観講員に間違えられるんですけど……」
 藤谷:「誰が妙観講黒服隊だ!」
 勇太:「だから誤解されるんですって!」

 と、そこへリビングのドアが開けられる。

 マリア:「ちょっと、静かにしてくれる……?」

 マリアはTシャツに短パンをはいていた。
 いつもならワンピース型の寝間着を着用するのだが、生理中の時はなるべくもっと下半身を覆う為にこのような恰好をする。

 勇太:「あっ、すいません!」
 藤谷:「こ、こりゃ申し訳無ェ!……って、凄い顔色悪いよ!?」
 マリア:「薬の効き目……強すぎ……」
 勇太:「あ、それ、薬の効果なんですね?」
 マリア:「うん……。早く症状を終わらせる為に、その分今日と明日はいつもよりキツくなるんだって……」
 勇太:「そ、そりゃ大変だ。分かりましたから、早く寝てください」
 藤谷:「稲生君、外で話そう。どうせ俺はこの町での仕事は終わって、後は都内へ帰るだけだから」
 勇太:「は、はい」
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