報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「マリアの謝罪行脚」

2020-02-26 19:51:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間2月11日14:00.天候:曇 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ49番街 国立病院]

 他の病室に見舞い……というより謝罪に向かったマリアは、更なる受難を受けることとなった。

 魔女A:「マリアンナッ!きさま、よくも私の先生を!!」
 魔女B:「グレタ、やめろ!……私が代わりに殴るから」
 稲生:「ちょっと!暴力はやめてくださいよ!」
 魔女B:「『流血の惨を見る事、必至であります』」
 稲生:「それは妙信講の脅迫文兼作者の座右の銘!」

 たまたま見舞いに来ていた他の魔道士からの怒りの矛先を受けたり……。

 魔女C:「人殺し!私の先生返してよぉ!!わぁぁぁぁぁぁっ!!」
 マリア:「いや、死んでないから!アンタが殺してどうする!」

 メンヘラ魔女に泣きつかれたり……。

 エレーナ:「あぁ?マリアンナ、てめぇ、どのツラ下げて来たよ?あぁ?もし謝罪する気があるのなら、前に渡した金貨全部返せ」
 マリア:「アホか!元はと言えばオマエの情報漏洩のせいだろうが!」
 エレーナ:「それで手ェ打ってやるってんだから、ありがたく思え!」
 マリア:「思うか、ドアホ!!」
 稲生:「まあまあまあ!」

 あくまでも金銭に拘るエレーナに絡まれたりした。

 ルーシー:「マリアンナのママ、凄かったね。『執念の魔女』って感じ」
 マリア:「いや、本当申し訳ない」

 マリアはもう一度謝罪した後で、ルーシーの手を取った。

 マリア:「あっさり許してくれたの、ルーシーだけだよ!」
 ルーシー:「あー……うん。周りの部屋が騒がしかったから、何となく分かる」
 稲生:「ベイカー先生は大丈夫なのかい?」
 ルーシー:「うちの先生は早めに離脱したからね。本当は私もそうしろと言われたんだけど、最後まで見届けたかったから。そしたら、このザマよ。まあ、私の場合は自業自得の部分もあるから、それで私はマリアンナを責める権利は無いのね」
 稲生:「さすがベイカー先生。1期生の古株」
 ルーシー:「先生からも、『マリアンナは悪くないから責めるな』とも言われてるし……」
 マリア:「そうか……」
 ルーシー:「あ、でも、どうしてもお詫びしてくれるのなら、今度また新幹線に乗せて欲しいかな」
 稲生:「うん、そうだね」

 生真面目な性格のルーシーだが、日本の新幹線が好きで、それに乗る時にはテンションが物凄く上がる。

 ルーシー:「“シンカリオン”人気だね」
 稲生:「ここじゃ観れないでしょ?」
 ルーシー:「観れるのが魔道士の特権」
 稲生:「んんっ!?」

 ベッドの横の棚にはタブレットが置かれていた。
 時々、現代人間界の科学をも魔法具として使うダンテ一門。

 ルーシー:「屋敷にはどうやって帰るの?」
 稲生:「こ、高速バス」
 ルーシー:「なーんだ……」
 稲生:「先生が入院してらっしゃるので、経費節減……」

 イリーナとしては敗北に値するので。
 ゲームオーバーになったら所持金が減る法則。
 ルーシーの見舞を最後に、稲生達は病院をあとにしようとした。

 エレーナ:「待て」

 そこへエレーナに呼び止められた。

 マリア:「何だ、守銭奴。そんなに金貨が惜しいのか?」
 エレーナ:「いや、それは情報料としてそっちに渡しておくぜ」
 稲生:「情報料?」
 エレーナ:「オマエのママとの最後の戦いの時、何があったか教えてくれ。私が戦闘不能になって、どうしてアナスタシア先生が勝ったのか知りたいんだ」
 稲生:「んん?」

 稲生は首を傾げた。

 エレーナ:「下の食堂で話そう。飯まだなんだろ?何だったら、私が出すぜ」
 稲生:「そりゃ凄い。だけど、エレーナは食べていいの?下の食堂は一般用みたいだけど……」
 エレーナ:「私はお茶だけでいい」
 稲生:「まあいいや。付き合おう」

 エレーナの話とは、アナスタシアがアレクサに対して銃を使った時の位置関係だった。

 エレーナ:「アナスタシア先生が使ったのはトカレフだ。それは知ってる。私もアンナから、アナスタシア先生の愛用はトカレフだって聞いてるからな。問題はアナスタシア先生が、どうしてアレクサに気付かれずに撃てたかなんだ」

 エレーナは白い紙にペンで位置関係を書き出した。

 エレーナ:「ヘリがここに堕ちたとする。そして、大師匠様やイリーナ先生、うちのポーリン先生がこの辺りに倒れていらしただろ?他の先生達については、この際どうでもいい。私は先に倒れてしまったから、その後のことが分からない。稲生氏とマリアンナは最後まで生き残っただろ?私が倒れた後、何があったか……ぶっちゃけ、どうしてアナスタシア先生だけが1人勝ちできたか教えてくれ。……どうした、2人とも?」
 稲生:「……こんな戦い、あったか?」
 エレーナ:「は?」
 マリア:「こういう戦いがあって、ママが皆に迷惑を掛けたって聞いたから謝罪に来たんだ。エレーナこそ何言ってる?」
 エレーナ:「いや、オマエら、バァル城からアナスタシア先生のヘリで脱出しただろ?」
 稲生:「それは知ってる。だけど急に眠くなって、気がついたら大宮のパレスホテルのベッドの上だったんだ。どうやら、大師匠様が全てを解決してくれたみたいだね」
 マリア:「結局私は、何の役にも立たなかったってわけだ」
 エレーナ:("゚д゚)ポカーン
 稲生:「というわけでエレーナ、申し訳ない。僕達もその場にいなかったんで、知らないんだ。他、当たってくれないか」
 エレーナ:「いやいやいやいや!いただろ!オマエら何言ってんだぜ!?私がアレクサの魔法をモロに受けて、血ヘド吐いて倒れたのを見ただろ!?」
 稲生:「マリアさん?」
 マリア:「私はアナスタシア先生からそう聞いただけで、直接は見ていない。エレーナこそ、何を言ってるんだ?記憶操作でもされたのか?
 エレーナ:「記憶操作されたの、オマエらだぜ!?……一体誰が?」

 
(エレーナの脳裏に浮かぶアナスタシア)

 エレーナ:「くっ、やっぱりそうか!何か調べられたらマズいことでもあるんだな……!」
 稲生:「何だか気味悪くなってきた。マリアさん、そろそろ行きましょう」
 マリア:「そ、そうだな」
 エレーナ:「くっそー!……ゲホッゲホッ!ガハッ!!」
 マリア:「おい、大丈夫か?肺をやられたんだろ?部屋に戻って寝てろ」

 エレーナは悔しそうに部屋に戻り、稲生とマリアは足早に病院を出た。

 

 アナスタシア:「気づいた観点については高得点だけど、まだまだ甘いわね。ポーリンに代わって採点してあげるわ。ふふふふ……」
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“大魔道師の弟子” 「イリーナの見舞い」

2020-02-26 15:47:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間2月11日12:30.天候:霧 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ49番街 国立病院]

 稲生:「すいません、あの病院の前で降ろしてください」
 運転士:「はいよ」

 アルカディアシティの路面電車は、ターミナル以外に決まった電停が無いので、乗客は降りたい所で降りる。
 大抵は交差点などで止まったタイミングで降りるが、あえて止まって欲しい場合、ワンマン運転の場合は運転士に、ツーマン運転の場合は車掌に申し出る。
 この場合は前者だった。
 よほど変な所でも無い限りは、大抵停車してくれる。
 稲生だけでなく、他にも降車希望者がいたり、逆に病院の前から乗車する者もいた。

 マリア:「だから私も同業者だっつの!飴要らないっての!」
 老魔女:「ヒェッヘッヘッヘッ!お嬢ちゃん、またよろしく頼むよ~」

 因みに外国、特に途上国の公共交通機関では『車内販売』が実施されることがある。
 もちろんそれは運行当局には無断だ。
 しかし大らかな国柄の場合、乗務員らは禁止することをしない。
 このアルカディア王国もそうだった。

 マリア:「たまに落ちぶれたヤツが物乞いとか、変な物売り付けたりするんだった」
 稲生:「大変ですねぇ……」

 電車を降りて病院に入る。

 稲生:「ああいう魔女の御婆さんが、我流者の成れの果てなんですか?」
 マリア:「ダンテ一門に限らず、所属していた魔法門を除名されたりした者の成れの果てだな。除名を食らった者を拾う魔法門なんて、他に無いからね。だから皆、怖いんだよ。仲間外れにされて、最後には除名されるの……」
 稲生:「ダンテ一門の綱領第一に、『仲良き事は美しき哉』とありますが、急に重みを感じる言葉ですね」
 マリア:「そういうこと」

 病院の中に入り、入院患者のいる病棟へ向かう。
 中はまるで19世紀の病院のようだ。
 いや、アルカディアシティ自体が18世紀か19世紀のような雰囲気。
 たまに電車で20世紀ものが入っていたりするものがあるだけで、中には更に過去に戻ったかのように、RPGの世界から出て来たと見紛うほどの冒険者達も歩いたりする。
 さっきも路面電車が、ビキニアーマーの女戦士の横を通って行った。

 マリア:「師匠の部屋はここだ」
 稲生:「こんにちは。イリーナ先生、稲生入ります」
 マリア:「マリアンナです。生きてますかー?」
 ゾンビ:「グワァーッ!!」
 稲生:「わあーっ!?」

 いきなりドアの陰からゾンビが襲い掛かって来た!

 マリア:「師匠!変な冗談はやめください!」
 ゾンビ:「バレた?」

 すると、ゾンビが見る見るうちにイリーナの姿に変わって行く。
 どうやらイリーナが、魔法でゾンビに変身していただけのようだ。

 稲生:「『モシャス』!?」

 因みにドラクエシリーズの変身魔法モシャスの語源は、相手の姿を『模写す』るからとのこと。

 マリア:「私もびっくりした。でも師匠、体の具合は良さそうですね。良かったです」

 するとイリーナ、フラフラっとベッドに戻る。

 イリーナ:「うんにゃ、薬の副作用で熱が39度もあるんよ……」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「具合悪いならおとなしく寝とれーっ!」

 イリーナ、ベッドに潜り込む。

 稲生:「あ、あの、今は食欲無いかもですが、これ、もし宜しかったらお見舞いのカステラで……」
 イリーナ:「おお~、スッパスィーバ!後で頂くよ~」
 マリア:「……本当に具合悪いんですか?」
 イリーナ:「あなたのママに肝臓潰されたからね。おかげで治るまで禁酒よ。具合が悪いのはそのせいね」
 稲生:(肝臓潰されたことはスルーしていいんだ!?)

 だが稲生、かつて妖狐の威吹邪甲と共に行動をしていた時、敵対妖怪の攻撃で威吹が大ダメージを食らったことがある。
 その際、腹に穴を開けられたのだが、翌日にはケロッとしていた。
 そのことを思い出した。

 稲生:(僕も臓器1つ無くなったくらいでは平気なまでになるのかなぁ……)

 もっとも、普通の人間であっても腎臓なら1つ無くても大丈夫らしいがw
 2つあるといい。

 マリア:「うちの毒親が本っ当すいません!!」

 さすがにマリア、そこは娘として全力で謝った。

 イリーナ:「いやあ、所詮は我流者と思って見くびっていたんだけど、まさかバァルのクソジジィと契約してたとはねぇ……」
 マリア:「ほんと、あれだけはマジで卑怯だと思います」

 正々堂々と真正面から戦い、卑怯行為を嫌う戦士に対し、『勝てば官軍負ければ賊軍』思考が一般的な魔道士は、そんな戦士から見れば卑怯の対象に当たる行為も平然と行う。
 トチロ~さんが前者で、作者は後者であるから、この辺で対立するかもねw
 ま、そこは体育会系と文科系の違いってことでw

 で、そんな魔道士から見ても更に『卑怯』と非難されることをアレクサはしたということだ。

 イリーナ:「あの爺さんへの抗議として、今年の敬老の日は全部無視してスルースルーと行きましょう」
 稲生:「日本の敬老の日、あと半年以上もありますけど?」
 マリア:「勇太。師匠もお年を召されているんだから、時間の感覚が私達と違うの」
 稲生:「あ、そうか。……あ、すいません!昨年の敬老の日、先生に何も差し上げてませんでした!申し訳ありませんでした!」
 イリーナ:「社交辞令でも本気でも、後でお説教ね」
 稲生:「ええっ!?」Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
 マリア:「退院祝いでもあげればいいよ」
 稲生:「そ、そうですか」
 イリーナ:「勇太君も、マリアの影響を多大に受けているようねぇ……」
 稲生:「そ、そりゃまあ、いつも一緒ですから……」
 イリーナ:「いつも一緒ねぇ……」

 イリーナはクスッと笑った。
 稲生の失言でこめかみに怒筋を浮かべたイリーナだったが、やっとその怒筋が消えた。

 イリーナ:「『仲良き事は美しき哉』というし、今後とも2人は仲良くおやり」
 稲生:「は、はい!」
 マリア:「それはもちろん」

 イリーナへの見舞は終わったのだが、稲生達は病院からしばらく出られなかった。
 他の病室に入院している同門の士に対し、アレクサの悪行を娘のマリアが謝罪しに回ったからである。
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