報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「後日談」 2

2020-02-24 15:04:26 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[2月11日11:40.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 稲生とマリアは魔界への出入口があるワンスターホテルまで向かった。

 藤谷:「ここでいいかい?」
 稲生:「おー、ありがとうございます」

 ここまで藤谷に送ってもらった。

 藤谷:「色々忙しいと思うけど、たまにお寺に来いよ?春季総登山会とか彼岸会とかあるから」
 稲生:「ええ、分かりました」

 稲生とマリアは車を降りると、ホテルの中に入った。

 オーナー:「おや、いらっしゃい」
 稲生:「こんにちは。エレーナが入院中は大変ですね」
 オーナー:「まあ、元々夫婦で切り盛りしていたわけですし、時々アルバイトが来てくれるので……」
 稲生:「バイト雇ったんですか?」
 オーナー:「ええ……」

 オーナーはテナントで入居しているレストランの方を指さした。
 ホテルの中から自由に行き来ができる。

 マリア:「キャサリン師の使い魔のカラス達か……」

 雌のカラスしかいない為、人外萌えを地で行く、美女に変化してやってくる。
 背中に黒い翼が生えている以外は。

 オーナー:「魔界に行かれるんですね?」
 稲生:「ええ。うちの先生のお見舞いに……」
 オーナー:「かしこまりました。それでは……」

 オーナーが地下に行く為にエレベーターを起動させた。

 オーナー:「どうぞ」
 稲生:「ありがとうございます」

 稲生とマリアはエレベーターに乗り込んだ。

 マリア:「カラスなんか接客できるのか?」
 稲生:「レストランの方では上手くできているらしいけどね」

 地下1階でエレベーターを降り、その奥へ向かう。
 途中にエレーナの部屋があるが当然誰もいないし、ドアにも鍵が掛かっている。

 マリア:「……開かないな」
 稲生:「そりゃそうだよ」

 奥へ向かうと、魔法陣が描かれている部分があった。

 マリア:「よし、行こう」

 マリアは魔法陣の真ん中に自分の魔法の杖を刺した。

 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。嗚呼、神への復讐よ。嗚呼、何ということだ。……」

 魔法陣が光り出すと、入口が開いた合図。
 そこに入ると、光が2人を包む。
 そして2人は人間界から消えた。

[魔界時間2月11日12:00.天候:曇 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ魔王城]

 魔王城の中にダンテ一門専用魔法陣がある。
 今回は魔王城に用は無い。
 途中に警備兵などがいるが、彼らとエンカウントすることはない。

 兵士A:「あいつら、いつでも出入り自由だから、いきなり現れるとびっくりするんだよな……」
 兵士B:「ザル警備だな……」

 今回は魔王城に用は無いので、そのまま外に出る。

 マリア:「49番街まではどうやって行けって?」

 アルカディアシティに自動車交通は無い。
 あるのは高架鉄道、地下鉄道、併用軌道である。
 それ以外の道路交通では辻馬車(馬車タクシー)がある。

 稲生:「路面電車で行けるようです」

 魔王城の近くには1番街駅があり、これが日本で言う東京駅になる。
 そこは路面電車のターミナルもあり、そこから路面電車に乗ることができる。

 稲生:「……あった!49番街経由!」

 ターミナルの発車標を確認し、49番街へ向かう電車の乗り場に向かう。
 その前に、ターミナルの案内所にて乗車券を購入する。
 途中から乗る場合、乗務員に運賃を払うことになるが、このようにターミナルから乗る場合は案内所で乗車券の購入も可。

 稲生:「あの電車かな?」

 案内所で購入したキップを手に、目的の電車を探す。
 するとその中に、『G49』と書かれた電車を発見した。
 昭和時代の日本の路面電車の中古車といった感じ。
 GとはGroundの略で、日本語訳すると『49番街循環』という意味である。

 稲生:「49番街までお願いします」
 運転士:「はい、毎度」

 運転士は一見して人間のような姿をしていたが、浅く被った制帽の先からは一本角が見え隠れしていた。
 運行会社であるアルカディアメトロは、路線によって全く雰囲気が違う。
 軌道線にあっては乗務員は人間と魔族が半々、乗客の客層も半々である。
 人魔一体となった王国ならではである。
 一応、アルカディアメトロの運営会社、魔界高速電鉄は現王権には協力的で、ルーシー・ブラッドプール一世が即位した時、高架鉄道と地下鉄道は全ての電車に専用のヘッドマークを掲げてお祝いしたし、路面電車にあってはパレードに使用したくらいである。

 係員:「4番乗り場からG49電車、発車しまーす!」

 黒人の係員が大きく手を上げると、運転士はドアを閉めた。
 そして、チンチーンと電鈴が鳴って発車する。
 この軌道線、ワンマン電車とツーマン電車が混在している。
 多くは1両単行がワンマン、2両以上でツーマンとしている場合が多い。
 この電車は1両だけだった。
 因みに路面電車はターミナル以外、決まった電停は無く、大抵は高架鉄道や地下鉄道の駅前、或いは交差点で止まった時に乗客が乗車または降車の意思表示をして乗降することが多い。

 稲生:「馬が単独で走ってると思ったら、セントールだった」
 マリア:「セントールは郵便配達をしていることが多い。馬車を引くことは無いな。それは『本当の馬車馬がやることだ』と思っているみたいだから」

 騎馬や馬車が車道を走るので、セントールも車道を走ることは多い。
 アルカディアシティにおいて、道路交通における優先度は路面電車が高めになっている。
 さしものセントールも、後ろから路面電車が来たら道を譲らざるを得ないというわけだ。
 プァンと運転士が軽く警笛を鳴らし、挙手をしながらセントールを追い抜いた。
 こんな光景が見られるのはアルカディアシティだけである。
 人間界で言うなら、郵便の自転車を路面電車が追い抜くシーンといったところか。
 広島辺りで見られるかな?

 稲生:「先生へのお土産、カステラでいいんですかね?」
 マリア:「いいと思うよ。肝臓やられたんだから、まさかワインやウォッカを持って行くわけにはいかないだろう」
 稲生:「それもそうですね」
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“大魔道師の弟子” 「後日談」

2020-02-24 11:36:14 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[日本時間2月11日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 パレスホテル大宮]

 アレクサとの戦いの後は大変だった。
 稲生家はアレクサの攻撃で全壊し、その周辺にも多大な影響が出た。
 これについては『第2次世界大戦絡み、地中に埋められた爆弾が暴発した』とか、『地中に溜まった天然ガスが爆発した』などが報道された。
 恐らくこれはダンテがそういう風にしたのだろう。
 さび付いた第二次大戦中の爆弾の欠片や、爆弾があったことを示す文献まで偽造する徹底ぶりだ。
 その一方、ダンテは稲生家に対し、見舞金と称して、金貨をカジノの勝負師のように積み上げた。
 稲生の両親が度肝を抜かれたことは言うまでもない。
 ますます御坊亀光である。
 そもそも家自体が保険に入っていたので、その保険金が下りるのと、戦時中の爆弾の暴発だとか天然ガスの爆発とかは災害になるので、自治体からも金は出るらしい。
 で、さすがの稲生の両親も、カジノの勝負師のように積み上げられた金貨を全部もらうのは気が引けた。
 恐らくエレーナが探偵からもらった金貨と同様、1枚10万円くらいの価値のあるものだろう。
 どうせ保険金が下りるからと断った稲生の父親、宗一郎であったが、代わりにダンテは新しく家が再建されるまでの間の仮住まいとして近隣のホテルを用意した。
 その宿泊代を見舞金とすることで合意した。

 フロントマン:「ご利用ありがとうございました」
 稲生:「どうもお世話さまでした」

 因みに最終日は稲生とマリアも宿泊した。
 この日の夜行バスで屋敷に帰る。

 稲生宗一郎:「イリーナ先生が爆発に巻き込まれてしまったから、むしろ私達の方がお見舞いに行かなければならないのに……」

 ロビーまで迎えに来てくれた宗一郎が言った。
 今日は祝日なので会社も休みである。

 稲生勇太:「魔道師の先生達は、一般人と考えることが違うんだよ」

 宗一郎の言ったことは既にダンテにも伝えられた。
 しかしダンテは、イリーナの不運が招いたことだからとの一点張りであった。
 魔女というのは自分はおろか、周囲にも不幸をもたらす存在であることは自認している。
 そういった意味で教会が攻撃してくるのは致し方ないという考え方ではあるが、だからといってその攻撃を甘んじて受けるつもりもないということだ。

 勇太:「それじゃ、僕達は先生のお見舞いがあるから」
 宗一郎:「先生によろしく伝えてくれよ」
 勇太:「分かった」

 ホテルを出て、ソニックシティビルの地下駐車場に向かう。

 藤谷:「よお、お2人さん」
 勇太:「班長、おはようございます」
 マリア:「Hi.」
 藤谷:「約束通り、魔界まで乗せてってあげよう」
 マリア:「魔界までは行けないよ」
 勇太:「ワンスターホテルまでで結構です」
 藤谷:「はっはっはー。分かってるよ。さ、乗った乗った」
 勇太:「もう……」

 勇太とマリアは藤谷のベンツGクラスのリアシートに乗り込んだ。
 身長180cmを超え、体重も100キロはある大柄な体の藤谷にはこのような車がよく似合う。
 かつてはセダンタイプのEクラスに乗っていた。

 藤谷:「じゃ、発車の合図頼むぜ」
 稲生:「発車オーライ」

 チンチーン!(←よくフロントデスクやレジカウンターの上に置いてある店員呼び出し用のベル)

 藤谷:「発車!」
 稲生:「……何ですか、これ?」
 藤谷:「作者の字数稼ぎ」
 マリア:「Huh?」
 藤谷:「いや、何でも無い。ナッシング」

 藤谷は車を走らせると、地下駐車場を出た。

 藤谷:「それじゃ、高速使って行くか」
 稲生:「よろしくお願いします」

 まずは最寄りの首都高出入口、『新都心西』へ向かう。

 藤谷:「イリーナ先生の具合はどうだって?」
 稲生:「意識はあるんですけど、しばらくは絶対安静です。何しろ肝臓を潰されたので……」
 藤谷:「それ大丈夫なのか!?てか、何で爆発に巻き込まれて肝臓!?」
 稲生:「あの爆発には裏があるということですよ。あの大先生がやられるくらいですからね、班長なら分かるでしょう?北海道の戦いと言い……」
 藤谷:「なるほど。あれ絡みか……」

 “魔の者”のことは藤谷も知っている。
 本当は知る立場に無かったのだが、北海道での戦いの際は否応無しに巻き込まれてしまった為。
 本来はそれでも魔道士の秘密を知ってしまったことから『処分』の対象になるのだが、あの時は藤谷の活躍が評価され、『協力者』となることで『処分』は免れた。

 藤谷:「しばらくは競馬も休止だな。あの先生のおかげで勝ててるようなものだから」
 稲生:「その方がいいと思います」

[同日10:30.天候:晴 東京都板橋区前野町 首都高速5号池袋線・志村パーキングエリア]

 首都高の上にあるパーキングエリアに止まる藤谷。
 マリアがトイレに行きたいと言ったので、ここに止まった。
 首都高のパーキングエリアということもあって規模は小さく、大型車の進入が禁止されているほどである。
 ついでに稲生も行っておく。
 藤谷は外にある喫煙所でタバコに火を点けた。
 エレーナと違い、従来の紙巻タイプ。

 藤谷:「……あれはヤーさんだな」

 藤谷は喫煙所でタバコを吸いながら出て行く車を見た。
 黒塗りのアルファードで、リアシートは完全にスモークである。
 しかし助手席とかはそういう風にするわけにはいかないので、乗っている者の顔は見ることできる。
 藤谷はそれを見てそう判断した。
 しばらくすると、稲生がトイレから出て来た。

 稲生:「ついでに飲み物を……」
 藤谷:「今日は寒いから、温かいのでも飲めばどうだ?そこの“コーヒールンバ”が流れるヤツとかな」
 稲生:「あー、いいですねぇ……。(てか、あのメロディ、“コーヒールンバ”って言うんだ……)」
 マリア:「お待たせ」

 マリアも出て来た。

 藤谷:「おー」
 稲生:「マリアさん、コーヒーでも飲みます?」
 マリア:「水でいいよ。コーヒーならホテルで飲んだし」
 稲生:「それもそうか」

 因みに“コーヒールンバ”が流れる自販機でコーヒーを買ったのは藤谷の方だった。
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