報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「潜入!バァル城」

2020-02-20 19:40:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間2月1日08:00.天候:晴 魔界某所 バァル城]

 門番A:「止まれ。何の用だ?」

 2足歩行で鎧を着ているものの、明らかに緑色の鱗を持った魔族の門番が止める。

 エレーナ:「ちぃーっス!NHKの方から来ました!テレビあるんでしょ?契約してくださーい」
 門番A:「あぁ?何言ってんだ?うちにはテレビは無ェよ。帰った帰った」
 エレーナ:「そうっスか?そちらの大魔王様は、勧誘に負けて契約されたみたいですがねェ?」
 門番B:「貴様!悪魔に対する悪質訪問勧誘で契約を持ち掛ける魔道士か!?」
 エレーナ:「ヅァ・ルァ・キ!」
 門番A:「うぎゃあああああっ!!」
 門番B:「うぉぉぉぉぉっ!?」
 稲生:「エレーナ、『ザラキ』できるの!?」
 エレーナ:「私の方がマリアンナより魔力が強いんだからな?」

 即死魔法を掛けられ、のたうち回る門番達。
 Aは魔界から冥界へと旅立った。
 そして、Bも……。

 門番B:「そんなに入りたいなら……わしらの禁止に背いて……入るがいい……。だが……わしらは下っ端だ……。中にいる者達は……わしらなどより……もっと……恐ろしい……」

 という警告の言葉を言って息絶えた。

 稲生:「ていうか僕達、悪魔からは悪質契約で訴えられてるんだ?」
 エレーナ:「これだから下級悪魔は……。私はちゃんと契約に沿って対価は払ってるぜ。なぁ、マモン?」
 マモン:「え、ええ……」

 何故かシルクハットを深く被り直しながら、曖昧に答えるエレーナの契約悪魔マモン。

 稲生:「それより、城内が騒がしいよ?」
 エレーナ:「どうやら私達に気付いたみたいだな。さっさと入ろうぜ」
 稲生:「中は最強の悪魔がウジャウジャ……」

 バンッとエントラスの大きなドアを勢い良く開けて飛び出してくる魔族達。

 魔族A:「あれ、いない!?」
 魔族B:「侵入者はどこだ!?」
 魔族C:「上だ!」

 エレーナは稲生を乗せてホウキで上昇した。

 エレーナ:「バーカ。玄関から堂々と『お邪魔しまーす』なんて入るわけねーだろ!」
 稲生:「でも、上は!」

 ガーゴイルの群れが現れた。

 稲生:「どうするんだ!?」
 エレーナ:「任せろ」

 エレーナはローブのポケットの中から銀貨をばら撒いた。

 エレーナ:「オラ!入場料だ!受け取れ!」

 ガーゴイル達が上空にばら撒かれた銀貨を取ろうと必死に飛び回る。
 誰もエレーナ達を阻止しようとはしなくなった。

 稲生:「そ、そりゃアルカディアシティの魔王城も、『ガーゴイルの口にコインを与えてドアを開けさせる』なんてギミックがあるけどさぁ……」
 エレーナ:「その魔王城のドアマンをクビになった団体だぜ!哀れな連中だぜ!」

 エレーナ、魔王城の屋上から城内に侵入した。
 その後はもうムチャクチャ。

 エレーナ:「火事だ!火事だ!火事だーっ!メラメラだぜ!」
 稲生:「油撒きながら『メラ』唱えるな!」
 魔族D:「いたぞ、放火魔!」
 稲生:「す、すいません!今、火ィ消しますんで!」

 稲生、手近にあった消火器を噴射する。
 魔界に消火器なんて変だと思うかもしれないが、何故かあったのだ。
 気にしないで頂きたい。

 魔族D:「ば、バカッ!こっちに向かって……ゲホッ!ゲホッ!」
 魔族E:「ま、前が見えん!」
 魔族F:「落ち着け!同士討ちになる!」
 エレーナ:「さすが稲生氏!いい煙幕だぜ!」
 稲生:「いや、そんなつもりは……」
 エレーナ:「ムェ・ルァ・ミ!」

 消火器煙幕の中、ブブブと飛ぶ等身大のグロテスクな虫。
 虫は火に弱い。
 エレーナは火炎魔法で容易く倒した。

 エレーナ:「さすがだぜ。今の虫モンスター、カメレオンみたいに擬態して隠れるんだぜ。で、知らずに近づくと即死攻撃されるんだ。危なかったぜ」

 さしもの擬態妖虫も、煙幕の中では擬態できなかったらしい。

 稲生:「け、結果オーライか……」

 他の階層に行くと……。

 稲生:「あれ?さっきの火事でスプリンクラーが作動して……ええっ?」

 RPGではザコモンスターの代表格、スライムがここではそれなりに強いモンスターなのだが、スプリンクラーの水で全個体が排水溝に流されていた。
 また別の場所に行くと……。

 エレーナ:「防火シャッターが閉まったせいで、向こう側にいた魔族達がこっちにいる私達を襲えないっていうなw」
 稲生:「この城、消防法しっかり守ってるんだねぇ……」

 マリアが捕らわれている部屋のあるフロアに行くと、外から魔界に似つかわしくないヘリコプターや銃声の音がした。
 窓から稲生が覗くと、やはり武装ヘリが何機も飛んでいた。

 エレーナ:「ありゃアナスタシア組だぜ?今頃来たのかよ……」
 稲生:「ファンタジーの世界がメチャクチャだ」

 すると、アナスタシアが魔法で2人の頭にメッセージを送信して来る。

 アナスタシア:「外から援護射撃するから、あなた達は早いとこマリアンナを見つけなさい!」
 エレーナ:「へいへい!しっかしアナスタシア先生、御大層な乗り物をお持ちで!」
 アナスタシア:「これが現代魔女が乗るホウキよ!」
 エレーナ:「私のは時代遅れの古臭いホウキで申し訳無いっスねぇ……」
 アナスタシア:「そうは言ってないでしょ!いいから早く探しなさい!さすがにバァルのお爺さんが黙ってないわよ!」
 エレーナ:「おーっとと!そうだったぜ!稲生氏、アンタの『愛の勘』で当てるんだぜ!」
 稲生:「ええっ!?えーっとぉ……。じゃあ、あのドアだ!」

 稲生は奥から3番目のドアを指さした。

 エレーナ:「各々方、討ち入りでござる!だぜ」
 稲生:「何でやねん!」

 そんなやり取りをしながらドアを開けると……。

 ケルベロス:「ガウ?」
 稲生:「……あ、サーセン、間違えました」
 エレーナ:「チャス……」

 何事も無かったかのようにドアを閉める稲生達。
 だが……。

 ケルベロス:「ガウウウウウッ!!」

 当然ながら無かった事にできるわけが無く、ケルベロスがドアをブチ破って追い掛けて来た。

 エレーナ:「何が『愛の勘』だぜ!?思いっきり違うじゃねーか!」
 稲生:「そりゃいきなり当てられるわけないだろ!」

 2人の魔道士は慌てて逃げ出した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「アレクサ戦」

2020-02-20 15:54:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[日本時間2月1日07:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 稲生:「こんな朝っぱらから……」
 イリーナ:「向こうは8時間遅くて、1月31日の23時よ」
 稲生:「高速バスのチケット、無駄になっちゃいましたねぇ……」
 イリーナ:「やっぱり新幹線の方がいいかもね」
 稲生:「はあ……」

 イリーナが一計を案じたのは、マリアを悪魔の召喚術式を応用したもので呼び戻せないかというものだった。
 それまでは元・魔界大帝バァルの強力過ぎる魔力により、大魔道師のイリーナの力を持ってしても不可能であった。
 だが、大師匠ダンテの圧力……もとい、説得により、ダンテの力を弱らせることに成功した。

 ダンテ:「やりたまえ、イリーナ」
 イリーナ:「先生!?」
 稲生:「大師匠様!」

 ダンテがいつの間かイリーナと稲生の背後に現れた。

 ダンテ:「我が魔法門に対しての挑戦だ。徹底的にやりなさい。但し、マリアンナにあっては無傷であることが条件だ。いいね?」
 イリーナ:「分かりました」

 イリーナは稲生家の裏庭に魔法陣を描いた。

 イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」
 ダンテ:「イノウ君、イリーナの魔法陣が赤く光りだしたら、『どこから召喚するのか?』を『入力』する必要がある。その時、ここに書いてある住所を言うんだ。いいね?」
 稲生:「分かりました」

 そうしている間に魔法陣が赤く光り出す。
 そして、稲生は英語で書かれている住所を魔法陣に向かって言った。
 言い終わると、イリーナがこの魔法の名前を言った。
 しかし稲生には、よく聞こえなかった。
 恐らく、ラテン語の一種であろうが。
 魔法陣の光が更に強くなり、その中央から人影が現れる。

 稲生:「マリアさん!」

 光に包まれた人影、その光が弱くなって行く。
 そこに現れたのは……。

 アレクサ:「Hi.」
 イリーナ:「アレクサ!?」
 ダンテ:「離れろ、2人とも!」

 直後、大きな爆発が起きる。

 稲生:「い、家が……!」

 稲生は無事であった。
 何故なら……。

 エレーナ:「ったく、世話が焼けるぜ」

 エレーナがホウキで稲生家上空を旋回しており、それで稲生は高く上空に上がったからだった。

 稲生:「エレーナ、いつの間に!?」
 エレーナ:「ダンテ一門の情報屋、ナメんなよ。大師匠様がここに来られるって聞いたんで、急いで来てみたら凄ェぜ」
 稲生:「冗談じゃない!僕の家が……」
 エレーナ:「中には誰かいるのか?」
 稲生:「こんなこともあろうかとってことで、先生が両親を旅行に送り出してるよ」
 エレーナ:「こういうことには気が利くのに、あれはダメだったか」
 稲生:「ダンテ先生が魔法の杖持ってる!」
 エレーナ:「こりゃガチのジジババ戦争だぜ。私ら若者は退散するぜ」
 稲生:「ええーっ!?で、でも……」

 しかし更に大爆発が起きた。

 エレーナ:「あらよっと!」

 上空にも爆風が飛んで来たが、エレーナはそれを器用に交わした。

 エレーナ:「な?どうせ地上にいたって、私ら役立たずだぜ。それより、私らはこれに乗じてマリアンナを助けに行く方が得策だぜ」
 稲生:「どうやってイギリスまで行くの?」
 エレーナ:「バカだな。イリーナ先生の魔法でマリアンナを助けるはずが、あのマッドマミーが来たんだぜ?イギリスにいねぇってことだぜ!」
 稲生:「何だってー!?」
 エレーナ:「急ぐぞ!あのクソババァにバレる前に!」

 エレーナは稲生をホウキの後ろに座らせると、飛行速度を上げた。
 そして、目の前に青い魔法陣が現れる。

 エレーナ:「ルゥ・ラ!」

 2人の魔法陣の中に突入した。

[魔界時間08:00.天候:雷 魔界某所 バァル城]

 マリア:「見損なったぞ、バァル大帝。まさか、あんたがこんな下らないことに関わっていたなんて……」
 バァル:「それについてはダンテからも言われた。この哀れな年寄りをあまりイジめないでくれ」
 マリア:「何か哀れな年寄りだよ!」

 マリアはバァル城の窓から外を見た。
 城の大きさは魔界王国アルカディアの王都アルカディアシティにある魔王城には及ばないが、それでも城の内外には多くの魔族が闊歩している。
 未だに新王国に馴染めず、そこを飛び出してバァルの元に身を寄せる魔族はそれなりに多いのだ。

 マリア:「いざとなったら、またブラッドプール女王に攻め入る準備をしているくせに!」
 バァル:「私としては是非ともそうしたいところだが、ダンテの手前なぁ……」

 未だにダンテとバァルのことはよく知られていない。
 どちらも『世を忍ぶ仮の姿』として、ダンテは本名でダンテ・アリギーエリとして人間界に名を馳せ、バァルはウェルギリウスとして存在したことがあるというくらいだ。

 マリア:(もしかしてこの2人、勇太とイブキのような仲なのか?)

 それだとしっくり来るような気がした。

 マリア:「私は人質というわけか」
 バァル:「すまんな。ただ、これはダンテの作戦でもある。もし汝がダンテを信用することができれば、この城から無事に出られよう。しかし、私も契約相手がいる。その手前、汝を我が城に『監禁』という形を取らせて頂いた。汝も知っている通り、私を頼って身を寄せた者共は魔道士を快く思っておらん。私の命令が無ければ……いや、もとい、私の命令無くしてもこの城にいる以上、汝を八つ裂きにしようとするだろう。もちろんそれは私が禁止している。だが、この城から勝手に抜け出そうとしたならば、その禁止令は例外とされる。さて、状況は理解してもらえたかな?」
 マリア:「理解ならした。あんたはやはりクソジジィで、ママもうちの師匠達のような『愛嬌のある魔道士』ではなく、『愛嬌の無い魔女』だということだ」
 バァル:「全く。……ダンテの抱える弟子達は、何故こうも口が悪いのか……」
 マリア:「私達の口を悪くする奴らしか現れてくれないんだ」
 バァル:「まあ良い。この部屋でおとなしくしている分には、我が下僕達も何もせんことを保証する。では、汝の同門の士達の健闘を祈ることだな」

 バァルは一しきり笑うと、西洋風の座敷牢のような部屋から出て行った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする