報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏の東北も暑い」

2021-08-06 20:09:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日11:39.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市営地下鉄南北線と仙台市営地下鉄東西線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 大宮から時速320キロで走行した“はやぶさ”も、仙台駅が近づくにつれてぐんぐん速度を落としていった。
 田んぼの中を走っていたかと思うと、どんどん建物が多くなり、今ではビルとビルの間を走り抜けている。

 愛原:「“はやぶさ”だと、あっという間だな」
 高橋:「1時間35分っスからね。マジパネェっす」
 愛原:「さすがの追跡BOWも、新幹線には追い付けまい」
 リサ:「うん。そうだね。でも、どんな早く遠くまで逃げても、必ず追い付くよ。だから『追跡者』にロックオンされたら、殺すまで倒さないと」
 愛原:「タイラントやネメシス、時代が下ってもっと恐ろしい『追跡者』が現れているか」
 リサ:「タイラント君くらいなら、私が何とかするけどね」
 愛原:「東北にはいないことを願うよ」

 列車はポイントを通過して、下り副線の11番線に入線した。
 恐らく列車はこの後回送となり、利府の車両基地に向かうはずである。
 尚、山陽新幹線の末端部分と違い、車両基地までの回送線を旅客輸送する列車は存在しない(博多南線と違って、こちらには東北本線の支線がある為)。

〔ドアが開きます〕

 愛原:「忘れ物は無いな?」
 高橋:「OKっス!」
 リサ:「OKっス!」
 愛原:「じゃ、降りるか」

 列車を降りると、東京と大して変わらない熱気が私達を襲った。

 愛原:「こりゃ暑いな」
 高橋:「あ、でも、暑さの方向性が違いますよ、これ」
 愛原:「何だよ、暑さの方向性ってw」
 高橋:「確かに暑いですけど、何かカラッとした暑さじゃありません?」
 愛原:「……言われてみればそうだな」

 東京のようなジメッとした暑さではない。
 仙台だってゲリラ豪雨くらい降るが、その頻度や降り方は東京ほどではないのだろう。
 実際、梅雨が無い北海道も、最近の夏は暑いが、カラッとした暑さであるという。
 これは日陰に入ったり、日が暮れれば涼しくなることを意味する。

 愛原:「とはいえ、ジッとしたら熱中症になることは間違いない。さっさと移動するぞ」
 高橋:「いきなり先生の御実家ですか?」
 愛原:「いや、お寺さんだ。そこで両親も待ってる」
 高橋:「なるほど」
 リサ:「先生、お昼はー?」
 高橋:「オマエ、新幹線ん中で駅弁食っただろー!?」
 リサ:「あれは朝ごはんの延長だよ~!」
 愛原:「墓参りが終わってからな。母さんが家で用意しているらしいから」
 高橋:「ありがたいっスねぇ!」
 愛原:「……そうだな」

 それより私は、未だに会えない高橋の肉親達の方が気になるのだが。

[同日11:53.天候:晴 同地区内 仙台地下鉄仙台駅東西線ホーム→東西線電車先頭車内]

 高架の新幹線ホームから地下深い地下鉄のホームまで向かう。
 こう書くだけで、乗り換えが結構不便なことが想像できるだろうか(駅の外に出ずに乗り換えすることは可能であるが、在来線ホームを通る必要があるのと、やっぱり地下鉄ホームまで行くのが遠い)。

 愛原:「Suicaが使えるのがいいな」
 リサ:「Pasmoも?」
 愛原:「そう」

 連れて行くのは私だが、公共交通機関の運賃に関しては高橋とリサが自腹で払ってもらうことにしている。

 高橋:「初乗り210円ってボッたくりじゃないスか?」
 リサ:「うぇっ!?210円!?都営バスと同じ!」
 愛原:「都営地下鉄やバスと同じにしてやるな。地方の鉄道は、どこも厳しいんだ」

 そして、バスはもっと厳しい。
 それにしても、さすがに埼玉高速鉄道は高過ぎるのではないだろうか。

〔3番線に、荒井行き電車が到着します〕

 ホームにやっと辿り着くと、ちょうど電車が来るところであった。

 愛原:「おっ、いいタイミング。これを逃すと、次は8分後だからな」
 高橋:「急行が通過した後ですか?」
 愛原:「いや、だから都営新宿線じゃねぇ」

 本数が多いように見える都営地下鉄だが、優等列車が運転されている路線で、しかも各駅停車しか止まらない駅だと、高橋の言うような現象が起きることがある。

〔仙台、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 4両編成の電車がやってきた。
 南北線も4両編成だが、そこがフル規格の20メートル車なのに対し、東西線は都営大江戸線や大阪メトロ長堀鶴見緑地線のような小型の車両で運転されている。
 それがたったの4両なのだから、もっと短く見える。
 フル規格の3両編成分ではなかろうか。

 高橋:「先生は座っててください」
 愛原:「あ、ああ。ありがとう」

 それでも仙台駅は1番乗降客数の多い駅である。
 空いているブルーの座席に私だけ座らせてもらい、高橋とリサは開かないドアの前に立った。

〔3番線から、荒井行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車サイン音がホームに鳴り響くと、

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 という自動放送が車内でも流れ、それからホームドアと車両のドアが閉まる。
 仙台地下鉄はワンマン運転となっているが、さすがにターミナル駅では運転士も運転席に座ったままではなく、席を立って直接ホーム監視を行う。
 ドアが閉まると、電車は走り出した。

〔次は宮城野通、宮城野通、ユアテック本社前です〕

 私はスマホを取り出すと、地下鉄に乗り換えた旨を両親にメールした。
 返信はすぐにあり、了解した旨が書かれていた。

 高橋:「地下鉄とBOWか……。腕が鳴りそうなシチュエーションだ」
 リサ:「私がウィルスをばら撒けば、お兄ちゃんの妄想が実現するよ」
 高橋:「そんで実現させたオマエと、話を持ち掛けた俺がクビになるというオチだな」
 愛原:「よく分かっているじゃないか、高橋よ!」
 高橋:「あざっす!つーわけでリサ、分かってんな?」
 リサ:「分かってるよ。むしろ私、エブリンは見つけ次第ぶっ飛ばそうと思っているから」
 高橋:「おー、分かってんじゃねーか!」

 リサが大嫌いなエブリンだが、どうもBSAAでは逆に治療薬として特異菌が使えるんじゃないかって危ない報告をしているらしいぞ?
 どこまで本当なんだか……。
コメント (2)
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“私立探偵 愛原学” 「東北新幹線“はやぶさ”15号」

2021-08-06 15:20:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日09:49.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東北新幹線ホーム→東北新幹線1015B列車1号車内]

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 20番線に、10時4分発、“はやぶさ”15号、仙台行きが17両編成で参ります。この電車は上野、大宮、終点仙台の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、11号車です。尚、全車両禁煙です。まもなく20番線に、“はやぶさ”15号、仙台行きが参ります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 リサが所望した駅弁は、やはり肉系であった。
 私が牛肉弁当とお茶を買ってやると、リサはホクホク顔で売店を出た。

 リサ:「先生は駅弁いいの?」
 愛原:「俺はいいよ。どうせ仙台に着いたら、昼飯だし。ていうかオマエ、これとは別に昼飯食うのか?」
 リサ:「もちろん!」

 リサは大きく頷いた。
 大食であるが、体は大きくない。
 いわゆる、ロリ体型と呼ばれる感じである。
 身長も斉藤絵恋さんの方が高い。
 大食であるのにそれはどうしてかというと、BOWとしてのエネルギーに栄養を持って行かれるからだとされる。
 BOWに限らず、ゾンビウィルスの感染者や保有者は概して食欲が増大するのはこの為である。
 リサもまた今は第0形態に化けているが、どうしても変化の時に膨大なエネルギーを必要とする為、体の成長に栄養が行きにくいという欠点がある。
 リサもそこは気にしているようなのだが……。

〔お待たせ致しました。20番線に到着の電車は、10時4分発、“はやぶさ”15号、仙台行きです。……〕

 私達の乗る列車が入線してきた。
 但し、折り返し運転の為、車内清掃がある。
 その為、すぐに乗ることはできない。
 高橋はまだ喫煙所に入り浸っているようだ。
 私とリサは、先に列に並んでおくことにした。
 とはいうものの、夏休み入って間もない時期だというのに、そんなに混みそうな感じがしない。
 オリンピックが関係しているのか、それともコロナ禍によるものなのか。
 1番ピークなのは8月のお盆なのは分かっている。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 21番線に、10時12分発、“やまびこ”207号、仙台行きが10両編成で参ります。この電車は、福島までの各駅と、終点仙台に止まります。グリーン車は、9号車。自由席は、1号車から5号車です。尚、全車両禁煙です。まもなく21番線に、“やまびこ”207号、仙台行きが参ります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 斉藤親子が乗る列車も、隣のホームに入線しようとしていた。
 この通り、車両の規格も編成もバラバラの列車が入り混じって運転されているJR東日本の新幹線では、ホームドアが設置できるわけがない。
 東海道新幹線のように、編成と車両が統一化されて初めてホームドアが設置できるのだ。

 リサ:「サイトーの家は金持ちだから、グランクラス乗れるでしょ?」
 絵恋:「それがグリーン車なのよ」

 それでもグリーン車なのだ。

〔お待たせ致しました。21番線に到着の電車は、10時12分発、“やまびこ”207号、仙台行きです。……〕

 今なら山形新幹線の併結相手になっているE2系が入線してきた。
 確かにあれは、グリーン車しか連結されていない車両である。

 絵恋:「ていうかリサさん、あっちの列車に乗ったら?あれでも仙台に行けるし、お父さんに頼んでグリーン車に乗せてあげるよ?あっちの列車の方が空いてるでしょ?」
 リサ:「その代わり遅い」
 愛原:「気持ちはありがたいんだけど、そんな厚かましいお願いはできないよ」
 リサ:「そうそう。先生の決めた事は絶対」

 リサはドヤ顔で頷いた。

 愛原:「悪いな、絵恋さん」

〔「お待たせ致しました。20番線、まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください」〕

 私達の乗る列車の車内清掃が終わった。
 そして、ドアが開く。

〔「お待たせ致しました。どうぞ、ご乗車ください」〕

 1号車はE5系車両特有のロングノーズ構造の為、座席定員が少ない。
 ましてや、トイレや洗面所もあるくらいだ。
 10号車は少しでも収入を稼ぐ為に、グリーン車より高いグランクラスを設定したのも頷ける(が、コロナ禍で閑古鳥らしい)。

 愛原:「えーと……俺達はここだな」
 リサ:「おー、1番後ろ」

 リサはヒョイと自分の荷物を荷棚に上げた。
 一瞬手が伸びたような気がするが、気のせいということにしておこう。
 あまりにもしれっとやった為に、他の乗客も気づいていない。

 絵恋:「私が一緒に乗って行こうかな」
 リサ:「この列車、大宮から仙台までノンストップ。なに?通過中、列車から飛び下りるって?おー!是非やってみて」
 絵恋:「り、リサさんの命令なら、新幹線からでも飛び降りるわ」
 愛原:「フツーに死ねるからやめなさい。というかその前に、新幹線のダイヤが乱れて迷惑だからやめなさい」

[同日10:04.天候:晴 JR東北新幹線1015B列車1号車内]

〔「お待たせ致しました。10時4分発、東北新幹線“はやぶさ”15号、仙台行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 高橋:「ただいま戻りましたっス」

 喫煙所にいた高橋が戻って来た。

 愛原:「吸い溜めしてきたか?」
 高橋:「はい。これで仙台まで持たせます」
 愛原:「よし。それならいい。絵恋さんは、さっさと列車から降りような?」
 絵恋:「ええッ!?」(;゚Д゚)
 リサ:「『ええっ』じゃない。さっさと降りる」

 リサは絵恋さんを列車の外に追い出した。
 ホームに発車ベルが鳴り響く。
 東海道新幹線なら発車メロディだが、こちらは未だに電子音のベルのままだ。

〔20番線から、“はやぶさ”15号、仙台行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 ベルが鳴り終わると、甲高い客終合図のブザーが鳴り響く。
 そして、ドアが閉まった。
 東海道新幹線と違って比較的静かなのは、放送が少ないからだろう。
 で、何か……。

〔「1号車付近のお客様、列車から離れてください!危険です!」〕

 絵恋さんが窓にベッタリ張り付いて、離れないのだが。
 斉藤社長がやってきて、娘さんを引きはがし、列車は発車した。

 高橋:「本当に傍迷惑なビアンガキですね」
 愛原:「ますますリサへの愛は深まるばかりだな」
 リサ:「それは食べごろってこと?」
 愛原:「どっちの意味かなぁ……?」
 リサ:「お察しくださいw」

 リサはそう言って、駅弁に箸を付けた。
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