報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「ぐるっ都・仙台」

2021-08-18 20:22:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日16:50.天候:晴 宮城県柴田郡村田町菅生 東北自動車道・菅生パーキングエリア]

 山形道の山間部でゲリラ豪雨の待ち伏せを受けた私達だったが、何とか切り抜けて村田ジャンクションに差し掛かった。
 ここから東北自動車道の下り線に入る。
 そこから仙台市を目指す途中に、菅生パーキングエリアがある。
 ガソリンスタンドが併設されていることから、まるでサービスエリアを連想させるが、パーキングエリアである。

 

 建物はリニューアルされて、正面入口のエントランスには、伊達政宗の兜の飾りをあしらったモニュメントが設置されている。

 愛原:「最後の休憩だな」
 高橋:「タバコ吸って来ます」
 愛原:「行ってらっしゃい」
 リサ:「この中で牛タン食べれる……」
 愛原:「ここではジュースくらいにしときな。牛タンは後で食べるから」
 リサ:「あ、食べるの!?」
 愛原:「一応そのつもりだから」
 リサ:「わぁい!」

 本館内部はレストランの他に、土産物店がある。
 車で来た客が仙台圏内の土産を買えるようになっている。
 が、何故か“萩の月”は見当たらなかった。

 愛原:「色々なものがあるなぁ……。ぶっちゃけ、斉藤社長へお土産をここから送りたいくらいだ」
 リサ:「お中元?」
 愛原:「そうそう、御中元。7月15日は過ぎたから、8月15日になるのか……」
 リサ:「別にいいんじゃない?」
 愛原:「別にいいかなぁ……。まあ、明日にしよう。どうせ休みは明後日までだし。仙台からなら、午前中発送すれば、次の日には届く流通システムだし」
 リサ:「ねぇ、先生。あの笹かまぼこ、食べていい?」
 愛原:「かまぼこ食べたいのか?」

 笹かまぼこが1枚からの単品で売っていることがある。
 ここもそうだった。

 愛原:「しょうがないな。1枚だけだぞ」
 リサ:「分かったー」

 リサが選んだのは至ってシンプルな、しかし大判サイズのものだった。

 リサ:「じゃあ、これ」
 愛原:「案外、フツーなの選んだな」

 それから飲み物を購入したり、トイレに行ったり……。

 愛原:「よし、最後の休憩終わり。そろそろ次の目的地に行こう」
 高橋:「はい」

 菅生パーキングエリアを出て、再び東北道下り線に入る。

 愛原:「夕食は牛タン定食にしよう。それからホテルへゴーだ。いいかな?」
 高橋:「御意!」
 リサ:「先生の仰せのままに!」

 私はナビに行き先をセットした。

[同日17:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区六丁の目北町 伊達の牛たん本舗]

 仙台と言えば伊達政宗なのだろう。
 仙台市に入る時の看板に描かれていたのは、馬に乗った伊達政宗の絵であった。
 東北自動車道の仙台市内区間は、終日時速80キロ規制が敷かれている。
 これは別に騒音対策ではなく、線形が悪い為に規制されているのだ。
 この辺りは用地取得が困難だったのか、高速道路にしては嫌というくらいS字カーブとアップダウンが続く。
 中央高速では線形が改良されて真っ直ぐ走れるようになったらしいが、東北道はこの点まだ遅れている。
 そんな線形の悪い所に仙台南インターが存在する。
 そこから仙台南部道路に入る。
 今でこそ『E48』という山形道と通しの番号が付与されているが、かつては宮城県道路公社が管理する宮城県道としての有料道路だった。
 今でも有料道路だった頃の名残で、路肩が狭かったり、暫定二車線区間が長くあったりする。
 暫定二車線区間は、尾花沢新庄道路と同様、時速70キロ規制になっている。

 リサ:「あっ、電車が止まってる」
 愛原:「あれは地下鉄の富沢車両基地だよ」

 仙台市地下鉄南北線の車両基地。
 今はまだ開業当時の1000系電車しか見られないが、2024年度以降、3000系なる新型車両が順次導入されるという。
 そこを過ぎて東進すると、今度はJRのガード下を潜る。
 更に東へ進むと、仙台東部道路との若林ジャンクションに差し掛かる。
 その下り線へと入る。
 仙台東部道路は『E6』の番号が付与されており、常磐道の一部という認識でいてもおかしくはない。
 盛り土構造であることから、東日本大震災では大津波を食い止めたことで有名であり、津波から逃れてきた被災者がこの盛り土をよじ登って高速道路上に避難し、無事に津波をやり過ごせたというエピソードもある。
 その一方で、名取川に架かる橋では地震による大きな揺れで走行中の車が弾き飛ばされ、怪我人を出すということもあった。
 今回はその橋は渡らないが、しかし津波を食い止めた盛り土区間は走行している。
 そして、最初のインターである仙台東インターで高速を降りた。
 インターを降りると、県道23号線の交差点に差し掛かる。
 これは通称『産業道路』と呼ばれ、片側3車線の道路である。
 なので仙台市民が埼玉県に行き、そこの『産業道路』を紹介されると、大抵そのショボさに驚く。
 同じ県道なのだか……。


〔この交差点を直進した後、次の交差点を左です〕

 愛原:「反対側にあるから、グルッと回れということだな」
 高橋:「なるほど……」

 大きな交差点を直進する。

〔ここを左です〕

 高橋:「はい、左」

 2車線も無いような路地を入る。

〔目的地周辺です。ルート案内を終了します〕

 リサ:「……落ちれば良かったのに」
 愛原:「山道を走っているわけじゃないからな、リサ」
 リサ:「ちぇっ……」
 高橋:「あ、ありました、駐車場」
 愛原:「あった?」

 高橋はハンドルを左に切って、駐車場に乗り入れた。

 愛原:「はい、到着ぅ~!」
 リサ:「わぁ!やっと食べれる!」

 リサ、思わず第一形態に戻ってしまう。

 高橋:「くぉらっ!角と牙と爪と耳を隠せ!」
 愛原:「適格な指摘」
 高橋:「あざっす!!」

 こうして私達は、ようやく夕食にありついた。
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“私立探偵 愛原学” 「ゲリラ豪雨の後で」

2021-08-18 16:04:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日15:30.天候:雷雨 山形県天童市 道の駅天童温泉→宮城県川崎町 山形自動車道・笹谷インター付近]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 そんな探偵が、今は道の駅で足止めを食らっている。
 というのは……。

 高橋:「正に滝のような雨っスね」
 愛原:「うーん……。まさか、ここでゲリラ豪雨と当たるなんてなぁ……」

 私達は道の駅の中にあるレストランにいる。
 仕方ないから、ここでコーヒーでも飲んで時間を潰している。
 尚、リサはソフトクリームを食べていた。

 高橋:「山の方はガチヤバイってことですかね?」
 愛原:「……と、思うよ。まあ、宮城の方に出れば大丈夫だと思うけどな」
 高橋:「そうですか」
 愛原:「奥羽山脈に阻まれて、ゲリラ豪雨の雲も宮城側には行けないだろう」
 高橋:「ということは、宮城側は安全ですか」
 愛原:「……と、思うんだけどね。ただ、いかんせん、このゲリラ豪雨が止んでくれないことにはどうしようもないんで……」
 高橋:「そうっスね」
 リサ:「泊まるのはどこなの?」
 愛原:「仙台に戻ってからだよ。遊ぶ所もあって、温泉もあって、泊まれる所さ。もっとも、この分だと、今日は温泉入って寝るだけになりそうだけどな」
 リサ:「ほおほお」
 愛原:「明日の夜は、両親と夕食会だ。家じゃなくて、外な」
 高橋:「さすが先生、太っ腹っスね」
 愛原:「親孝行だよ」
 リサ:「親孝行か……」
 高橋:「親孝行ですか……」
 愛原:「何でオマエら、遠い目するんだよ。リサは分かるけどさ」

 ゲリラ豪雨は凡そ1時間降り続けた。
 道の駅を出られたのは、16時くらいになってから。
 雨が小降りになった時点で、私達は車に急いで戻った。

 愛原:「よし、今のうちに行こう」
 高橋:「はい!」

 ようやく空には晴れ間も見え、日が差すようになっていた。
 だが、まだ所々に黒い雲が浮かんでいる。
 しかも奥羽山脈の方を見ると、しっかり黒い雲が山頂付近を覆っていた。

 愛原:「国道13号を上って、それから山形道の山形北インターに入る。このルートで行こう」
 高橋:「はい」

 天童市内には東北中央道が通っており、それが山形道とも繋がってはいるのだが、道の駅からわざわざ天童インターまで行くよりは、素直に国道のバイパスを上って行った方が早いということを、車のナビは伝えていた。
 車は国道13号線山形バイパスに入る。
 さすがに県庁所在地に向かうということもあり、車も多くなって来たが、渋滞になる前に山形北インターに入ることができた。

 愛原:「しかし、ここまで走って、途中給油一回もしなくていいんなんて、燃費いいね」
 高橋:「フィットは大体リッター20~30キロは走れますから。昔乗ってたチェイサーとは大違いっと」
 愛原:「チェイサーはナンボだ?」
 高橋:「ツアラーVで、リッター7~8キロってとこっス」
 愛原:「燃費悪ィな。しかもそれ、ハイオクだろ?」
 高橋:「そうです」
 愛原:「走り屋も、金持ちのボンボンの趣味っぽいなー」
 高橋:「先生、そりゃヒドイっス」
 愛原:「あー、悪い悪い」

 山形蔵王インターを過ぎると、風景は山間に一遍する。
 で、途中にある道路情報の看板を見ると……。

 愛原:「関沢~宮城川崎 雨注意だって」
 高橋:「因みにこの場合、雨とは大雨全般を指します」
 愛原:「だな」

 宮城川崎とは、宮城県川崎町にあるインターのことである。
 東名高速の東名川崎と区別する為、宮城川崎と名乗っているのだろう。
 で、実際は関沢インターを通過する前から、雨が降り出して来た。

 愛原:「これは何かのフラグかな?」
 高橋:「これから洋館か何かを探索する時、こういう雨だと盛り上がりますよねぇ……」

 あえて天気が良く、満月がきれいに出ている状態で開始するのもアリだと思う。
 関沢インターを過ぎると、山形道のハイライト、笹谷トンネルに入った。
 宮城県との県境のトンネルで、旧トンネル(上り線用)と新トンネル(下り線用)とに分かれている。
 まだこのトンネルが暫定二車線だった頃、旧トンネルの長さは3385メートルであった。
 お分かり頂けただろうか?
 笹谷(ささや)トンネルの旧トンネルの長さは、338(ささや)5メートルなのである。
 今から思えばつまらないダジャレであるが、笹谷トンネルが旧トンネルしか無かった頃の仙台市の小学生は、社会科の授業でその語呂合わせで覚えさせられたものである。
 その為、新トンネル開通時に改良されたことで、旧トンネルの長さは3411mメートルに延長されたが、今でも改良前の長さで覚えている者は多い。
 因みに旧トンネルと称してはいるが、今でも上り線用として現役である。
 で、この旧トンネル、暫定二車線だった頃の名残がある。
 今では封鎖されているものの、右車線側に非常駐車帯や非常口があったのが分かるようになっている。
 これは暫定二車線時代、右車線が対向の下り車線だった頃の名残だ。
 笹谷トンネルは当初、並行して走る国道286号線のバイパス用トンネルとして供用されたのが始まりで、山形県側の出入口部分には料金所が設置されていた跡地が見える。
 また、トンネルの前後にあったはずの国道とのアクセスルートについては、もう名残も見えなくなっている。
 インターチェンジが設置された際、取り潰されたのだろう。
 で、トンネルの途中、県境を表す壁画が描かれている。

 愛原:「やっと宮城県まで戻って来たな」
 高橋:「(国道)347号と比べると、随分と大仰ッスね」
 愛原:「トンネルで県を越えるということが、それだけ珍しかった時代なんだろう」

 他にも宮城県と秋田県の県境を通る国道108号線の仙秋鬼首トンネルなんてのもあるが、こちらは高速道路ではない。
 で、笹谷トンネルを出ると……。

 愛原:「おわっ!?」

 いきなり豪雨に見舞われた。
 高橋は急いでワイパーを作動させる。

 高橋:「道の駅にやってきた、あのゲリラ豪雨っスよね?」
 愛原:「多分な」
 高橋:「先回りされましたね」
 愛原:「リサ・トレヴァーか!」
 リサ:「呼んだ?」
 愛原:「いや、オマエのことじゃない!」
 リサ:「……オリジナルの大先輩ねぇ、あれは警察隊の人達よりも施設の構造を知り尽くしていたから、先回りができたんだと思うよ」
 愛原:「そうだろうな」

 豪雨に霞む笹谷インターを通過すると、今度はセントメリースキー場の下を潜って行く。
 もちろん夏なので、スキー場としては営業していない。
 日本広しと言えど、高速道路の上をゲレンデコース(コース名:スターライト)とリフトが跨ぐスキー場は全国でここだけだという。

 愛原:「せっかくだから、高速のパーキングエリアも少し寄って行こう。そうだな……。東北道の菅生にしよう。さすがにあそこまで行けば、雨も止むだろう」
 高橋:「分かりました」

 しかし、これだけの雨でも80キロ規制で済むんだから凄い。
 それより厳しい50キロ規制というのは、雪深くなる冬の時季や台風が直撃した時くらいに行われるのだろう(工事や事故は除く)。

 高橋:「“ハイウェイ・ウォーカー”でもパクるんスか?」
 愛原:「フリーペーパーだからいいの」
 リサ:「あめあめあーめ♪あめあーめ♪」
コメント (1)
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