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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「小牛田の町の農学博士」

2021-08-09 19:59:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日16:25.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅→東北本線2547M列車1号車内]

 ホームに発車メロディが鳴り響く。
 仙台駅オリジナルのメロディで、曲名を“フォルティシモ”という。

〔2番線から、普通、小牛田行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。無理なご乗車は、おやめください〕

 2点チャイムが2回鳴ってから、ドアが閉まる。
 これでようやく冷房が効くようになるわけだ。
 運転席からハンドルを操作するガチャガチャという音が聞こえてくる。
 インバータの音を響かせて、4両編成の電車はゆっくりと走り出した。
 この701系も窓は開くのだが、この電車では窓を開けていなかった。
 宮城県は感染者数が少ないからなのかもしれない。
 また、ドア操作を半自動から自動にした代わりというのもあるだろう。

〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。16時25分発、東北本線下り、普通列車の小牛田行きです。これから先、東仙台、岩切、陸前山王、国府多賀城の順に、終点小牛田まで各駅に止まります。【中略】終点、小牛田には17時10分の到着です。【中略】次は東仙台、東仙台です」〕

 自動放送が無い電車というのも、最近では珍しくなった。
 仙台駅を出発して、ポイントを通過する時は低速で走っていた電車も、本線に出ると速度を上げた。
 座席はそこそこ埋まっていて、空席がそこそこある感じである。

 愛原:「お、伯父さんから返信来た」
 高橋:「何て感じですか?」
 愛原:「『気を付けて来い』だって」
 高橋:「当たらず障らずですね」
 愛原:「尚、『今夜は焼肉ぢゃ』とのことだ」
 リサ:「焼肉!?」
 高橋:「地元の牛ですかね?」
 愛原:「いや、どうだろう?伯父さんのことだから、地元のスーパーで買って来たんじゃない」
 高橋:「地味ですね」
 愛原:「あ、今ならネットスーパーもあるか」
 高橋:「まだ地味ですね」
 愛原:「JAの産直市場で……肉って売ってたっけ?」
 高橋:「場所にもよるんじゃないですかね」
 愛原:「まあ、とにかく、リサもこれで安心だろう」

 リサの場合、食肉であれば、安い輸入ものでも良いのだ。
 どうしても食感の硬い外国産牛肉でさえ、リサはパクパク食べてたからな。

[同日17:10.天候:晴 宮城県遠田郡美里町 JR小牛田駅]

 ロングシートの通勤電車でも、速度は変わらない。
 トンネルが断続的に続く塩釜~松島間を時速100キロほどで通過していった。
 SL時代は仙台~小牛田間を2時間ほどかけて走行したそうだが、現在は電車で45分である。

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、小牛田、小牛田です。2番線に入ります。お出口は、左側です。小牛田から“奥の細道湯けむりライン”陸羽東線、石巻線はお乗り換えです。【中略】今日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 鉄道唱歌の歌詞を思い出していると、小牛田駅に接近した。
 下り線を走行していると、進行方向左手に機関車の転車台の跡らしきものが見える。
 場内信号を過ぎると、運転席からATSの警報音が聞こえて来る。
 これは次の出発信号が赤であることを意味する。
 ここまではっきり聞こえるのは、701系の運転室が半室構造になっているからだろう(つまり、車内から見て右半分がガラ空き状態という意味)。

 愛原:「うん、ダイヤ通りに着いた。良かったな」
 高橋:「ええ、助かったっス」
 リサ:「良かったねー」

 電車がホームに着いて、ドアが開く。
 向かい側の1番線には、陸羽東線の気動車がディーゼルエンジンのアイドリング音を響かせて停車していた。
 この電車と接続しているらしく、乗客の一部はその列車に乗り換えて行った。
 大崎市の中心駅である古川駅へは、仙台駅から直通する定期列車は新幹線を除いて運行されていない。
 なので、せめて乗り換えだけでも楽にしようと、同一ホームで接続を図っているのだろう。
 尚、どうしても乗り換えが面倒で、しかも新幹線は高くて敬遠するという場合には高速バスも高頻度で運転されている。
 運賃は在来線とどっこいどっこいだが、新幹線よりは安く、乗り換えの手間も無い。

 高橋:「名誉教授は迎えに来られてるんですか?」
 愛原:「いや、軽トラで迎えは無理だろう。ここからタクシーで行くさ」
 高橋:「了解です」

 階段を上って改札口に向かう。
 ちゃんとSuica読み取り機の付いた自動改札機が並んでいた。
 そこを出る。
 尚、仙台~小牛田間の運賃は770円。
 電車で45分の距離で770円は高いと思うか安いと思うか。
 これ、消費税が無かったら700円なんだろうなと思う。

 愛原:「俺が道案内するから、高橋は後ろに乗ってくれ」
 高橋:「分かりました。名誉教授の家、何度来ても迷いますもんね」
 愛原:「それはある」

 駅前のタクシー乗り場から、タクシーに乗る。
 尚、荷物はトランクに入れておいた。

 愛原:「住所が美里町○○字○○で、実は元公民館だった所なんですけど……」
 運転手:「ンあ~、もしかして愛原先生のとこっスかわ?」
 愛原:「あ、やっぱり有名なんですね」
 運転手:「農業やってるモンは、だいたい知ってますっけね」

 この運転手が農業と関わっているかどうかは不明だ。
 とにかく、面倒な道案内が省けて何とか助かった。
 田舎の方のタクシーはクレジットカードが使えないのはもちろん、カーナビすら搭載されていない所もあるくらいだ。

 愛原:「運転手さんも農業やってる方なんですか?」
 運転手:「いンや、私は元々農協で働いてたモンで、それで知ってたんです」
 愛原:「JA関係者でしたか。じゃあ、その人が来た時、『何か胡散臭い博士が来たなぁ』って思いませんでした?」
 運転手:「あ~、最初はそんな噂でしたっけね。何かこう、宮沢賢治の作品に出て来るような……?そんな人が来たっつーて……」

 宮沢賢治の作品?
 もしかして、“グスコーブドリの伝記”かな?
 まあ、あの伯父さんなら確かにエンディングで火山爆発させそうな気はするけどね。
 ただ、役回り的には主人公のグスコーブドリというよりはクーボー博士って感じだけど。
 で、グスコーブドリのように自己犠牲はせず、自分も助かる方法で火山爆発させそうだ。

 愛原:「まあ、あの人ならエンディングで火山爆発させそうな気はしますけどねぇ……」
 運転手:「ははは!それだけ面白い先生ってことですっけ!」
 愛原:「まあ、それは確かに」
 リサ:(焼肉……焼肉……)
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“私立探偵 愛原学” 「通勤電車の旅」

2021-08-09 16:01:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日16:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 地下鉄仙台駅→JR仙台駅]

〔仙台、仙台。出入口付近の方は、開くドアにご注意ください。……〕

 実家をあとにした私は、高橋とリサを連れて再び地下鉄に乗った。
 そして再び仙台駅まで戻って来た。

〔せんだい、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 ここからJRまで乗り換えるのだが、距離が少しある。
 それを見越して歩かなければならない。

 愛原:「エスカレーターがあるから楽でいいとは思うが、リサには必要無いか?」
 リサ:「楽できるんなら使う」

 リサの荷物が1番大きくて重いのだが、リサは軽々と持っている。
 重い理由は『着替えが多いから』なのと『お土産を入れる為』らしい。

 高橋:「先生、JRはあっちらしいっス」
 愛原:「ああ。やっぱり地下を通って乗り換えさせるか」

 私はニヤッと笑った。
 この駅の地下ホームもかなり深い所にある。
 エスカレーターがあるとはいえ、その長さも相当なものだ。
 やっと地下鉄の改札口を抜けると、今度はJRの乗り換え口へと向かう。

 高橋:「地上に出ないという意味では、涼しくていいかもしれませんね?」
 愛原:「そういうことか。太陽を浴びなくていいから、日光に弱いBOWは喜びそうだ」

 冬場だと冷気に弱い為、暖房の効かない野外には出られないというBOWもいる。

 高橋:「今回は銃を使わずに済みそうですね?」
 愛原:「そういうのは、使わない方がいいの」
 リサ:「そうそう」

 私達が乗り換えに使ったルートは、エスパルの地下を通るというものだった。

 愛原:「今度の東北本線は、2番線からか」

 私は改札口の上に掲げられている発車標を見た。

 愛原:「じゃあ皆、ICカード用意してー」
 高橋:「うス」
 リサ:「うス」

 今や地方でもICカードを使えるようになったのだから便利なものだ。
 さすがにJRの方は完全にエスカレーターが設置されているわけではなく、地下道からホームへは階段を上がる。
 で、ホームに出るとさすがに暑い。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、16時25分発、普通、小牛田行きです。この列車は、4両です。……〕

 私達が上がって来たホームは少し特殊な構造をしていて、1面3線の構造になっている。
 つまり1つのホームに番線が3つ振られているというものだが、2番線はホームの西北側にある。
 ホームの西南側は切り欠き構造の3番線がある。
 そして東側には南北まるっと4番線があるという構造だ。
 切り欠き構造の3番線には車止めがあるので、仙台駅から北には行けないようになっている。
 これは仙台空港アクセス線が開通したことで、その専用ホームを造る必要があり、既存のホームを切り欠いて増設したわけである。
 もしも1番線を切り欠いて作れば、0番線ができたかもしれない。
 2番線に用事がある私達は、ホームの北側に向かうことになる。

 リサ:「ジュース欲しい」
 愛原:「買って来な」
 高橋:「今度は飲む方か」
 愛原:「まあ、この暑さじゃな。水分補給は大事だよ」
 高橋:「そうですか。じゃあ、俺も」
 愛原:「ああ」

 私は先頭車が来る当たりの位置に並んだ。
 もっとも、発車時刻までまだ時間があるせいか、電車を待つ人達の姿は疎らだ。
 それにしても、仙台駅在来線ホームも静かになったものだ。
 理由は簡単で、昔はたまにあった気動車の発着が無くなったことと、455系や717系のような抵抗制御の唸り声を上げるモーターを搭載した古い電車が完全に排除されたからだろう。
 今では全てインバータ制御の静かな電車ばかりになってしまった。
 なのでこの感覚に慣れてしまった後、札幌駅に行くと凄いやかましいことに驚かされる。

〔まもなく2番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、4両です。折り返し、16時25分発、普通、小牛田行きとなります〕

 しばらくホームに佇んでいると、ようやく接近放送が鳴り響いた。
 首都圏のJR駅とチャイムや言い回しが同じであるが、同じ管理システムが導入されているわけではない。
 仙台駅在来線ホームも、色々な行き先、編成の列車が発着する為、首都圏の放送システムを導入した方が都合が良いのである。
 下り方向からヘッドライトを灯した電車が接近してきた。
 外観からして701系だというのが分かる。
 仙台地区のそれは全てロングシートのみで構成されており、通勤・通学輸送には効率の良い輸送力が発揮されているが、いかんせん旅情の演出は全く無い為、旅情ファーストの旅行客からは敬遠されている。

〔せんだい~、仙台~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 電車が到着すると、全てのドアが一斉に開いた。
 半自動ドアの機能が搭載されている車両ではあるが、ワンマン運転ではない限り、コロナ対策による換気促進の為、その機能は休止されている。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の列車は、16時25分発、普通、小牛田行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 ここまでの乗客が降りて、今度は私達が乗り込んだ。
 ロングシート車とはいえ3ドアということもあり、座席は長く感じる。
 ドア間には11人座れる設計だ。
 先頭車に乗り込んだ私達は、ドア横に3人横になって座った。
 この場合、私がどうしても高橋やリサに挟まれるような形になる。

〔「ご案内致します。この電車は16時25分発、東北本線下り、普通列車の小牛田行きです。終点の小牛田まで、各駅に止まります。利府方面には参りませんので、ご注意ください。……」〕

 ワンマン運転ではない為、車内放送は車掌が行う。
 自動放送装置が搭載されていそうな車両だが、実際にそれを使用するのはワンマン運転の時のみである。
 世代的には209系やE217系と同じであるが、これらと比べても何故か車内が薄暗い。
 蛍光灯の数が少ないのが理由であるが、どうしてこうなったのか。
 但し、座面については長距離運用を考慮してか、首都圏の同世代車両と比べて柔らかいものとなっている。

 愛原:「一応、伯父さんにメールしておくか」

 私はスマホを取り出した。

 高橋:「名誉教授、LINEやってないんスか?」
 愛原:「やってないんだよ、これが。だから、連絡はメールだよ」
 高橋:「ヘタにahamoにできないっスね。じゃあ、Twitterやインスタもやってないわけですか」
 愛原:「うん。でも、Facebookはやってるんだ、これが」
 高橋:「マジっスか!」
 愛原:「後で見せてやるよ」
 高橋:「あざっス。ちょっと興味ありますね。とはいえ、農学博士ですから、農作物の出来がどうのこうのって話ですか?」
 愛原:「まあ、大半はそうなんだ」
 高橋:「想定内っスね」

 しかし、伯父さんのレジャー風景を見せれば、さすがの高橋も驚くだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原家」

2021-08-09 11:50:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日13:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]

 先祖の墓参りが済んだ後、私は実家に戻った。
 母親がカレーを温めてくれていたが、その前に私は裏庭に行ってみた。

 父親:「真っ先に見るだろうと思ってたよ」

 裏庭に空いていた大きな穴は塞がれ、新しい庭石が置かれていた。

 父親:「東西線のトンネルの壁に大きな穴が開けられた話は知っているだろう?あの穴も塞がれたよ」
 愛原:「だろうね。さっき電車に乗って来たけど、トンネルの壁は何ともなかったよ」
 父親:「伯父さんはまだ色々と気にしてるみたいだが、お前は……」
 愛原:「いや、俺は気にしないといけないよ、むしろ。だって仕事だし」
 父親:「立派な探偵になったかと思えば、危ない仕事を引き受けてしまったな」
 愛原:「危ない仕事を引き受けるのは、探偵として成長の段階だよ」
 父親:「そうは言ってもなぁ……」

 因みに私の後ろでは、高橋が私達親子の会話をメモに書いている。
 どうやら、私の言葉をメモしているようだ。

 リサ:「先生!カレーできたよーっ!」

 リサが呼びに来た。

 愛原:「おっ、そうか」
 父親:「じゃあ、行くか」

 皆してダイニングに向かう。

 母親:「遠慮しないで、どんどん食べてね」
 リサ:「はーい!」(^O^)/
 愛原:「そいつは本当に食うよ」
 高橋:「そいつは本当に食べますよ」

 私と高橋がほぼ同時にツッコんだ。

 リサ:「おいしーい!」
 愛原:「うん、実家に帰って来たって感じだな」
 高橋:「とろみが濃いっスね。何のルー使ってるんスか?」
 母親:「別に大した物は使ってないよ」

 私はピーンと来た。

 愛原:「高橋のヤツ、業務用のカレー粉使うからだ」
 父親:「業務用使ってんの!?」
 愛原:「店のカレーって、どちらかというと、とろみが少なく、水っぽい感じがするでしょ?あれは業務用のカレー粉を使ってるからだよ」
 父親:「キミ、わざわざ業務用のカレー粉でカレー作ってんの?」
 高橋:「はァ……。ネンショーや少刑じゃ、それでカレー作らされたもんで、その作り方しか知らないんス」
 父親:「高橋、ストーップ!あの、たまたまバイト先のカレー店で、そういう作り方に慣れたもんで、そのやり方で作ってるだけなんだ!ハハハハ!」
 父親:「ほう……」

 さすがのリサもスプーンを止めて、高橋に耳打ちした。

 リサ:「お兄ちゃん、先生の御両親に少年院とか少年刑務所に入った過去はナイショ!」
 高橋:「わ、分かったよ」
 
 食事が終わると、高橋は率先して皿洗いを始めた。

 母親:「慣れた手付きねぇ……」
 高橋:「これでもネンショ……もとい、バイトで慣れたもんで」

 私は食後のコーヒーを飲みながら……。

 父親:「そうか。今夜は伯父さんの所に泊まるのか」
 愛原:「いや、俺もコロナのことは気にしてるよ?だけど伯父さん、そういうことを気にしないみたいで……」
 父親:「あの人は昔からそうだったんだよ。多分もうワクチンなんか、既に何回も打ってるんじゃないか?」

 公一伯父さんのことだから、ファイザーとかモデルナじゃなくて、もっと別の特別なワクチンを入手して打ってるんだろうなぁ……。

 愛原:「コロナが無かったら、遠慮しないで、孤独な老人の家を賑わせようと思うんだけどね」
 父親:「まあな。で、いつ行く?」
 愛原:「向こうに夕方着く電車に乗ればいいと思う。どうせ休日で、電車も空いてるだろうし」
 父親:「そうだな。伯父さんの家が小牛田で良かったな。利府だったら、有観客のせいで電車が混んでいるかもしれない」
 愛原:「宮城スタジアムか。そうだねぇ……」

[同日15:52.天候:晴 同区木ノ下 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線電車先頭車内]

 実家をあとにした私達は、地下鉄薬師堂駅に向かった。

 高橋:「あのぶっとび名誉教授のことだから、大歓迎してくれそうですね」
 愛原:「昼はカレーだから……夜は……何だろう?」
 リサ:「すき焼き!すき焼き!」
 愛原:「いや、鍋物は冬に限るよ。夏場は何だろう?」
 リサ:「焼肉!焼肉!」
 愛原:「焼肉ねぇ……」
 高橋:「食う事ばっかだな」
 リサ:「BOWだもん!」
 愛原:「まあ、人食いされるよりはマシだ」
 高橋:「はあ……」

 地下鉄の入口から長いエスカレーターで下って駅構内に入る。

 愛原:「荷物忘れんなよ」
 高橋:「うス」

 墓参りの後でコインロッカーに預けた荷物を引き取ろうとした私達だが、どうせまた移動するのだからと、その時まで預けておくことにした。
 で、今取り出す。

 愛原:「それじゃ、行くか」
 高橋:「はい」

 バリアフリー化されているので、大きな荷物を持っていても安心だ。

〔1番線、2番線に電車が参ります〕

 どうしてもこの駅では、両方向の電車が同時入線・同時発車するダイヤになっているらしく、駅の自動放送も他駅には無いものとなっている。
 いかに電車編成が(本線を走行する電車としては)日本一短い路線とはいえ、さすがに電車が接近するとなったら、トンネルから強風が吹いてくるのは同じのようだ。
 小型車両で運転されるのも、トンネル断面を小さくすることで、なるべく工事費用を抑えるという目的がある。
 リサの肩の所で切った髪が、トンネルから吹いてくる風によってゆらゆらと揺れた。

 愛原:「今は市街地方面の方が空いてるか」

 電車に乗り込むと、ブルーの座席に腰かけた。
 座面は比較的硬い。

〔1番線、2番線の電車が発車します。ドアが閉まります〕

 ドアが閉まる。
 ホームドアがあり、それが閉まってから発車するので、実際の発車まで少しブランクがある。

 リサ:「バイオハザード……」
 愛原:「やめろよ」
 リサ:「先生の命令ならしない」
 高橋:「先生の御命令は絶対」
 リサ:「うん、絶対」

〔次は連坊、連坊、仙台一高前です〕

 本当にゲームや映画ならラスボスを張れるリサ・トレヴァーが、ここまで人間の命令を忠実に聞くのは珍しいということで、実は注目を浴びている。

 高橋:「先生、名誉教授に連絡は?」
 愛原:「家を出る時、父親がしてくれたがな。一応、JRに乗ったら俺からも連絡しておこう」
 高橋:「了解っス」

 改めてBOWに開けられた穴を確認しようとしたが、車内からでは分からないほどに修復されていた。
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