[7月22日16:25.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅→東北本線2547M列車1号車内]
ホームに発車メロディが鳴り響く。
仙台駅オリジナルのメロディで、曲名を“フォルティシモ”という。
〔2番線から、普通、小牛田行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。無理なご乗車は、おやめください〕
2点チャイムが2回鳴ってから、ドアが閉まる。
これでようやく冷房が効くようになるわけだ。
運転席からハンドルを操作するガチャガチャという音が聞こえてくる。
インバータの音を響かせて、4両編成の電車はゆっくりと走り出した。
この701系も窓は開くのだが、この電車では窓を開けていなかった。
宮城県は感染者数が少ないからなのかもしれない。
また、ドア操作を半自動から自動にした代わりというのもあるだろう。
〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。16時25分発、東北本線下り、普通列車の小牛田行きです。これから先、東仙台、岩切、陸前山王、国府多賀城の順に、終点小牛田まで各駅に止まります。【中略】終点、小牛田には17時10分の到着です。【中略】次は東仙台、東仙台です」〕
自動放送が無い電車というのも、最近では珍しくなった。
仙台駅を出発して、ポイントを通過する時は低速で走っていた電車も、本線に出ると速度を上げた。
座席はそこそこ埋まっていて、空席がそこそこある感じである。
愛原:「お、伯父さんから返信来た」
高橋:「何て感じですか?」
愛原:「『気を付けて来い』だって」
高橋:「当たらず障らずですね」
愛原:「尚、『今夜は焼肉ぢゃ
』とのことだ」
リサ:「焼肉!?」
高橋:「地元の牛ですかね?」
愛原:「いや、どうだろう?伯父さんのことだから、地元のスーパーで買って来たんじゃない」
高橋:「地味ですね」
愛原:「あ、今ならネットスーパーもあるか」
高橋:「まだ地味ですね」
愛原:「JAの産直市場で……肉って売ってたっけ?」
高橋:「場所にもよるんじゃないですかね」
愛原:「まあ、とにかく、リサもこれで安心だろう」
リサの場合、食肉であれば、安い輸入ものでも良いのだ。
どうしても食感の硬い外国産牛肉でさえ、リサはパクパク食べてたからな。
[同日17:10.天候:晴 宮城県遠田郡美里町 JR小牛田駅]
ロングシートの通勤電車でも、速度は変わらない。
トンネルが断続的に続く塩釜~松島間を時速100キロほどで通過していった。
SL時代は仙台~小牛田間を2時間ほどかけて走行したそうだが、現在は電車で45分である。
〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、小牛田、小牛田です。2番線に入ります。お出口は、左側です。小牛田から“奥の細道湯けむりライン”陸羽東線、石巻線はお乗り換えです。【中略】今日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕
鉄道唱歌の歌詞を思い出していると、小牛田駅に接近した。
下り線を走行していると、進行方向左手に機関車の転車台の跡らしきものが見える。
場内信号を過ぎると、運転席からATSの警報音が聞こえて来る。
これは次の出発信号が赤であることを意味する。
ここまではっきり聞こえるのは、701系の運転室が半室構造になっているからだろう(つまり、車内から見て右半分がガラ空き状態という意味)。
愛原:「うん、ダイヤ通りに着いた。良かったな」
高橋:「ええ、助かったっス」
リサ:「良かったねー」
電車がホームに着いて、ドアが開く。
向かい側の1番線には、陸羽東線の気動車がディーゼルエンジンのアイドリング音を響かせて停車していた。
この電車と接続しているらしく、乗客の一部はその列車に乗り換えて行った。
大崎市の中心駅である古川駅へは、仙台駅から直通する定期列車は新幹線を除いて運行されていない。
なので、せめて乗り換えだけでも楽にしようと、同一ホームで接続を図っているのだろう。
尚、どうしても乗り換えが面倒で、しかも新幹線は高くて敬遠するという場合には高速バスも高頻度で運転されている。
運賃は在来線とどっこいどっこいだが、新幹線よりは安く、乗り換えの手間も無い。
高橋:「名誉教授は迎えに来られてるんですか?」
愛原:「いや、軽トラで迎えは無理だろう。ここからタクシーで行くさ」
高橋:「了解です」
階段を上って改札口に向かう。
ちゃんとSuica読み取り機の付いた自動改札機が並んでいた。
そこを出る。
尚、仙台~小牛田間の運賃は770円。
電車で45分の距離で770円は高いと思うか安いと思うか。
これ、消費税が無かったら700円なんだろうなと思う。
愛原:「俺が道案内するから、高橋は後ろに乗ってくれ」
高橋:「分かりました。名誉教授の家、何度来ても迷いますもんね」
愛原:「それはある」
駅前のタクシー乗り場から、タクシーに乗る。
尚、荷物はトランクに入れておいた。
愛原:「住所が美里町○○字○○で、実は元公民館だった所なんですけど……」
運転手:「ンあ~、もしかして愛原先生のとこっスかわ?」
愛原:「あ、やっぱり有名なんですね」
運転手:「農業やってるモンは、だいたい知ってますっけね」
この運転手が農業と関わっているかどうかは不明だ。
とにかく、面倒な道案内が省けて何とか助かった。
田舎の方のタクシーはクレジットカードが使えないのはもちろん、カーナビすら搭載されていない所もあるくらいだ。
愛原:「運転手さんも農業やってる方なんですか?」
運転手:「いンや、私は元々農協で働いてたモンで、それで知ってたんです」
愛原:「JA関係者でしたか。じゃあ、その人が来た時、『何か胡散臭い博士が来たなぁ』って思いませんでした?」
運転手:「あ~、最初はそんな噂でしたっけね。何かこう、宮沢賢治の作品に出て来るような……?そんな人が来たっつーて……」
宮沢賢治の作品?
もしかして、“グスコーブドリの伝記”かな?
まあ、あの伯父さんなら確かにエンディングで火山爆発させそうな気はするけどね。
ただ、役回り的には主人公のグスコーブドリというよりはクーボー博士って感じだけど。
で、グスコーブドリのように自己犠牲はせず、自分も助かる方法で火山爆発させそうだ。
愛原:「まあ、あの人ならエンディングで火山爆発させそうな気はしますけどねぇ……」
運転手:「ははは!それだけ面白い先生ってことですっけ!」
愛原:「まあ、それは確かに」
リサ:(焼肉……焼肉……)
ホームに発車メロディが鳴り響く。
仙台駅オリジナルのメロディで、曲名を“フォルティシモ”という。
〔2番線から、普通、小牛田行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。無理なご乗車は、おやめください〕
2点チャイムが2回鳴ってから、ドアが閉まる。
これでようやく冷房が効くようになるわけだ。
運転席からハンドルを操作するガチャガチャという音が聞こえてくる。
インバータの音を響かせて、4両編成の電車はゆっくりと走り出した。
この701系も窓は開くのだが、この電車では窓を開けていなかった。
宮城県は感染者数が少ないからなのかもしれない。
また、ドア操作を半自動から自動にした代わりというのもあるだろう。
〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。16時25分発、東北本線下り、普通列車の小牛田行きです。これから先、東仙台、岩切、陸前山王、国府多賀城の順に、終点小牛田まで各駅に止まります。【中略】終点、小牛田には17時10分の到着です。【中略】次は東仙台、東仙台です」〕
自動放送が無い電車というのも、最近では珍しくなった。
仙台駅を出発して、ポイントを通過する時は低速で走っていた電車も、本線に出ると速度を上げた。
座席はそこそこ埋まっていて、空席がそこそこある感じである。
愛原:「お、伯父さんから返信来た」
高橋:「何て感じですか?」
愛原:「『気を付けて来い』だって」
高橋:「当たらず障らずですね」
愛原:「尚、『今夜は焼肉ぢゃ

リサ:「焼肉!?」

高橋:「地元の牛ですかね?」
愛原:「いや、どうだろう?伯父さんのことだから、地元のスーパーで買って来たんじゃない」
高橋:「地味ですね」
愛原:「あ、今ならネットスーパーもあるか」
高橋:「まだ地味ですね」
愛原:「JAの産直市場で……肉って売ってたっけ?」
高橋:「場所にもよるんじゃないですかね」
愛原:「まあ、とにかく、リサもこれで安心だろう」
リサの場合、食肉であれば、安い輸入ものでも良いのだ。
どうしても食感の硬い外国産牛肉でさえ、リサはパクパク食べてたからな。
[同日17:10.天候:晴 宮城県遠田郡美里町 JR小牛田駅]
ロングシートの通勤電車でも、速度は変わらない。
トンネルが断続的に続く塩釜~松島間を時速100キロほどで通過していった。
SL時代は仙台~小牛田間を2時間ほどかけて走行したそうだが、現在は電車で45分である。
〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、小牛田、小牛田です。2番線に入ります。お出口は、左側です。小牛田から“奥の細道湯けむりライン”陸羽東線、石巻線はお乗り換えです。【中略】今日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕
鉄道唱歌の歌詞を思い出していると、小牛田駅に接近した。
下り線を走行していると、進行方向左手に機関車の転車台の跡らしきものが見える。
場内信号を過ぎると、運転席からATSの警報音が聞こえて来る。
これは次の出発信号が赤であることを意味する。
ここまではっきり聞こえるのは、701系の運転室が半室構造になっているからだろう(つまり、車内から見て右半分がガラ空き状態という意味)。
愛原:「うん、ダイヤ通りに着いた。良かったな」
高橋:「ええ、助かったっス」
リサ:「良かったねー」
電車がホームに着いて、ドアが開く。
向かい側の1番線には、陸羽東線の気動車がディーゼルエンジンのアイドリング音を響かせて停車していた。
この電車と接続しているらしく、乗客の一部はその列車に乗り換えて行った。
大崎市の中心駅である古川駅へは、仙台駅から直通する定期列車は新幹線を除いて運行されていない。
なので、せめて乗り換えだけでも楽にしようと、同一ホームで接続を図っているのだろう。
尚、どうしても乗り換えが面倒で、しかも新幹線は高くて敬遠するという場合には高速バスも高頻度で運転されている。
運賃は在来線とどっこいどっこいだが、新幹線よりは安く、乗り換えの手間も無い。
高橋:「名誉教授は迎えに来られてるんですか?」
愛原:「いや、軽トラで迎えは無理だろう。ここからタクシーで行くさ」
高橋:「了解です」
階段を上って改札口に向かう。
ちゃんとSuica読み取り機の付いた自動改札機が並んでいた。
そこを出る。
尚、仙台~小牛田間の運賃は770円。
電車で45分の距離で770円は高いと思うか安いと思うか。
これ、消費税が無かったら700円なんだろうなと思う。
愛原:「俺が道案内するから、高橋は後ろに乗ってくれ」
高橋:「分かりました。名誉教授の家、何度来ても迷いますもんね」
愛原:「それはある」
駅前のタクシー乗り場から、タクシーに乗る。
尚、荷物はトランクに入れておいた。
愛原:「住所が美里町○○字○○で、実は元公民館だった所なんですけど……」
運転手:「ンあ~、もしかして愛原先生のとこっスかわ?」
愛原:「あ、やっぱり有名なんですね」
運転手:「農業やってるモンは、だいたい知ってますっけね」
この運転手が農業と関わっているかどうかは不明だ。
とにかく、面倒な道案内が省けて何とか助かった。
田舎の方のタクシーはクレジットカードが使えないのはもちろん、カーナビすら搭載されていない所もあるくらいだ。
愛原:「運転手さんも農業やってる方なんですか?」
運転手:「いンや、私は元々農協で働いてたモンで、それで知ってたんです」
愛原:「JA関係者でしたか。じゃあ、その人が来た時、『何か胡散臭い博士が来たなぁ』って思いませんでした?」
運転手:「あ~、最初はそんな噂でしたっけね。何かこう、宮沢賢治の作品に出て来るような……?そんな人が来たっつーて……」
宮沢賢治の作品?
もしかして、“グスコーブドリの伝記”かな?
まあ、あの伯父さんなら確かにエンディングで火山爆発させそうな気はするけどね。
ただ、役回り的には主人公のグスコーブドリというよりはクーボー博士って感じだけど。
で、グスコーブドリのように自己犠牲はせず、自分も助かる方法で火山爆発させそうだ。
愛原:「まあ、あの人ならエンディングで火山爆発させそうな気はしますけどねぇ……」
運転手:「ははは!それだけ面白い先生ってことですっけ!」
愛原:「まあ、それは確かに」
リサ:(焼肉……焼肉……)