報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「護国山医王院国分寺」

2021-08-08 20:57:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日12:00.宮城県仙台市若林区木ノ下 仙台市地下鉄薬師堂駅→陸奥国分寺]

〔薬師堂、薬師堂、聖和学園前。出入口付近の方は、開くドアにご注意ください〕

 私達を乗せた電車は、下車駅に近づいた。
 市街地からたったの7分で着くのだから便利な物だ。

 

 電車が停車して、ドアが開く。
 と、反対側のホームに逆方向の電車も停車していた。
 この駅で同時発車するらしい。

〔1番線、2番線の電車が発車します。ドアが閉まります〕

 因みにちょうど12時。
 駅構内には時報として、“荒城の月”のインストゥルメンタルが流れている。
 作詞者の土井晩翠は仙台市出身だからである。
 市街地には『晩翠通り』という名の通りもあるほどだ。

 愛原:「着いた」

 電車を降りて、目の前のエスカレーターに乗る。
 小型車両の4両編成に、プラス1両分の有効長があるだけのホームは短く感じた。
 仙台市よりも人口の少ないラクーンシティの地下鉄でも6両編成だったというから、やはり短い編成だというのが分かる。
 いや、ラクーンシティを引き合いに出したのは、ラスボスを張れるリサがいるからなんだけどね。

 高橋:「こっからどう行くんスか?」
 愛原:「まあ、俺に着いてこい」

 改札口を出て、地上に向かう。
 日本一新しい地下鉄路線ということもあり、駅のバリアフリーはしっかりしている。
 地上と行き来できるエレベーターは2基もあるし、全部の出入口がエスカレーターで行き来できる。

 高橋:「地上は暑いっスね」
 愛原:「熱中症になる前に急ごう」

 駅名となっている薬師堂とは、陸奥国分寺境内にある堂宇のこと。
 国の文化財にも指定されている。
 真言宗の寺で薬師堂という堂宇があることからも分かる通り、本尊は薬師如来像ということだな。

 リサ:「! 先生、あれ何?」

 リサが道すがら、仁王門を見つけて指さした。

 愛原:「あれは薬師堂の入口、仁王門だよ。金剛力士像が中にいる」
 リサ:「おー、強そう!」
 愛原:「うん。もしもアンブレラ関係者の中に、仏教の信仰者がいたら、人工的に金剛力士像を作りそうだな」

 リサが仁王門の中を覗くと、金剛力士像が門内を通る者を睨み付けるようにして立っている。

 リサ:「タイラント君、こんにちは」
 愛原&高橋:「タイラントちゃう!」

 合っているのは身長だけだ。
 多分、金剛力士像は追い掛けてこない。
 そんなことがあって、ようやく私達は境内の霊園に到着した。

 父親:「おーい、遅かったな?」
 愛原:「ゴメン。途中、仁王門を見て来たりしたからさ」
 父親:「母さんを暑い中、待たせるな」
 愛原:「ゴメンゴメン」
 高橋:「オメェの道草のせいで、先生が怒られただろうが」
 リサ:「ごめんなさい……」

 私が桶に水を汲んだ。

 リサ:「2つ持って行くね」

 リサは水が一杯になった桶を両手で軽々と持った。
 第0形態という人間と何ら変わらぬ形態に変化しても、持ち前の身体能力はそんなに変わらないらしい。

 愛原:「このお墓だな」

 何の変哲も無い『愛原家之墓』に辿り着く。
 私がお墓の掃除を始めた時だった。

 愛原:「ん?!」

 向かいの区画に、『白井家之墓』を見つけたのだ。

 愛原:「まさか!?」

 私はその墓に向かって行った。
 その墓もまた特に変哲は無い。
 だが、墓碑銘が立っていた。
 その墓碑銘には、この墓に収められている人が書かれている。
 名前を見たが、その中に白井伝三郎はいなかった。

 父親:「学!何をしてるんだ!人んちのお墓で!」
 愛原:「あ、ああ……」

 もちろん、あの白井伝三郎の親族ではないかもしれない。
 白井という名字も、そんなに珍しいものでもないからだ。
 私は父親に咎められ、その場を離れた。

 父親:「早く掃除してくれ!」
 愛原:「分かったよ」

 私は渋々墓石の掃除を始めた。
 で、きれいにした後、新しい花や供え物を置く。

 リサ:「この落雁って美味しいの!?」
 母親:「美味しいよ。……でも、あなたは食べちゃダメだよ」
 リサ:「えーっ!」
 高橋:「『えーっ!』じゃねぇ!」

 最後に線香に火を点けて備えた。

 父親:「御先祖様、学が早く結婚できるよう見守っていてください」
 母親:「見守るだけじゃなく、後押しもお願いします」
 愛原:「多分、俺の代で終わりです。諦めてください」
 リサ:「はいはーい!私!私が先生の結婚相手に立候補しまーす!」
 父親:「んん?……ああ、ハイハイ。リサちゃんは、もっと大人になってからね」
 リサ:「実年齢、アラフィフでーす!」
 高橋:「そりゃオメェが人間だったらの話だろうが!」

 リサがもしも人間のままだったら、私より10歳ほど年上だったとされている。
 妹さんが40代半ばだったから……。
 で、姪っ子さんは中学3年生だ。
 リサとは遠縁ながら血縁者である為か、どことなく今のリサとは面影があったのを覚えている。

 父親:「面白いコだね」
 母親:「というか50歳じゃ、もう子供産めないじゃない」
 リサ:「この体は15歳だから大丈夫です!」
 父親:「一体どういうことなんだ、これは?!」

 まだ両親にはリサの真相については、まだ話していない。
 これは……正直に話すべきか否か……。
 リサが生物兵器に改造されたことは黙ってておこう。
 こうして、墓参りが終わった。

 父親:「じゃあ、さっさと片付けて帰ろうか」
 愛原:「先に帰っててよ。俺達、荷物取ってくるから」

 私達は薬師堂駅のコインロッカーに、大きな荷物を置いて来たのである。

 母親:「分かったよ。お昼はカレーだから、温めておくから、早く帰って来なさいよ」
 リサ:「おー!カレー!」
 高橋:「先生のお袋さんの手作りカレーですか。是非とも、後でレシピを……」
 愛原:「いいから行くぞ」

 私達はリサと高橋を促して、再び薬師堂駅へと向かった。
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