[7月15日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
愛原:「いよいよ、あと1週間か……」
高橋:「オリンピックっスか?」
愛原:「違う。帰省だよ」
高橋:「ああ、先生の御実家へ」
愛原:「さすがに祖父母の墓参りしていなかったから、そろそろ行かないとなって」
高橋:「お供します!」
愛原:「それはいいんだが、緊急事態宣言がな……」
高橋:「オリンピックやるんだから、そんなの全部無視してスルースルーでいいんじゃないスか?」
愛原:「さすがにお盆は自粛ってことになったよ。お盆については、向こうの家族・親族だけでやることになった。で、まだオリンピックが始まって感染が酷くなる前に墓参りしておこうって魂胆だ」
高橋:「さすが先生です」
愛原:「幸い今年はオリンピック絡みで4連休だからな。それを利用することにした」
高橋:「計画的ですね」
愛原:「問題は斉藤社長からの依頼だ。また絵恋さんを旅行に連れて行って欲しいという依頼があるかもしれない。そうなると、そっち優先になるからな。それに備えておかないと……」
高橋:「そうなると、せっかく買ったキップもキャンセルですか……」
愛原:「そうなる。もっとも、斉藤社長も計画的な方だから、そんな急に大事な娘さんを『旅行に連れてけ』なんてことは無いと思うんだ」
高橋:「……ですね」
と、そこへ電話が掛かって来た。
ナンバーディスプレイを見ると、斉藤社長からだった。
噂をすれば何とやらだ。
愛原:「おはようございます。愛原です」
斉藤秀樹:「『私だ』と言いたいところですが、もうあなたには正体を明かしましたからね。斉藤です」
そうなのだ。
先日、『ボス』の正体は斉藤社長であると本人がカミングアウトした。
世界探偵協会日本支部の顧問も務めており、それら顧問が持ち回りで『ボス』を名乗っていたのだ。
しかし、私に連絡していた『ボス』は斉藤社長だけであったという。
愛原:「いつもお世話になっております」
秀樹:「いえいえ。愛原さんもそろそろ準備されるかと思い、先に連絡しておこうと思いまして」
愛原:「娘さんの御旅行の件ですか?」
秀樹:「そうです。今夏は旅行を自粛しようと思っております」
愛原:「そうですか。それは残念です」
秀樹:「愛原さんはそういった御予定はあるんですか?」
愛原:「一応、来週の4連休を使って実家に行こうと思っています。ここ最近、墓参りをしていなかったので」
秀樹:「そうですか」
愛原:「今も感染者は多いですが、オリンピックが始まったら間違いなく増えると思いまして、その前にと……」
秀樹:「比較的賢明な判断です。例年通り、お盆に行かれるべきではないかと」
愛原:「やはりそうですか」
秀樹:「ええ。オリンピック期間中は、間違いなく感染拡大するでしょう。私の見立てでは、開催前の10倍は下らないかと」
愛原:「そんなにですか」
秀樹:「そうなんです。それと……愛原さん達に1つだけアドバイスを」
愛原:「何ですか?」
秀樹:「ファイザーやモデルナ等のワクチンはオススメしません」
愛原:「……ネットでは聞きますが、やはり社長もそう思われますか」
秀樹:「はい」
愛原:「それは……大日本製薬でもワクチンを開発されるので、それを打てということですか?」
秀樹:「もちろん、弊社でも特効薬の開発は進めています。それができたら、是非それはオススメします。ですが……恐らく簡単には行きますまい」
愛原:「やはり開発は難しいですか」
秀樹:「いえ、開発の問題ではありません。これ以上はちょっと……お話しできません。とにかく今、流通しているワクチンにつきましては、私はオススメしません。乱暴なことを言うならば、まだリサさんのウィルスに感染した方が良いくらいです」
愛原:「ええっ!?」
秀樹:「政府ですら、リサのウィルスを使ってワクチンを開発しようとして失敗した……のはウソですよ」
愛原:「はい!?」
秀樹:「本当はできていますよ。政府高官達が打ったワクチンはそれです」
愛原:「それをどうして流通させないんですか?」
秀樹:「安心して流通させるルートが無いんじゃないでしょうか?日本にはスパイ活動防止法が無いので、そこかしこに産業スパイがいますから。リサ・トレヴァーのウィルスは、ややもすれば生物兵器として海外に高く売れますからね。それが中国や北朝鮮に流れてご覧なさい。どうなるか、火を見るよりも明らかでしょう?もっとも、Cウィルスくらいなら、香港のバイオテロで中国政府も入手済みでしょうがね」
愛原:「何だか難しくなりましたな」
秀樹:「愛原さんなら、ツテで政府高官達が打ったワクチンを打てるんじゃないですか?」
愛原:「そんな話、全く来ませんでしたけどね。まあ、後で善場主任に確認してみますよ」
私は電話を切った。
愛原:「夏休みの仕事の依頼は無しだ。あと、ファイザーとかモデルナのワクチンは打つなってさ」
高橋:「ああ、あれですか。俺もあれは胡散臭いと思ってたんスよ」
愛原:「まだリサのウィルスの方が安全だってさ」
高橋:「リサのウィルスで安全なんスか!?……ていうかそれなら、地味に俺達感染してません?」
愛原:「感染してるだろうな。だけどリサのおかげで、無症状のままだ」
高橋:「リサのウィルスの方が、コロナより強いんスよね?」
愛原:「らしいな。ていうか、今の『風邪』が旧型コロナウィルスなわけだから、そりゃリサのゾンビウィルスの方が強いに決まってるよ」
高橋:「……ですね」
愛原:「とにかく、そういうことだ。今のところはまだ小さな仕事しか無いが、そのうちまた大きな仕事が転がり込んで来るだろう。それまでの辛抱だ」
高橋:「はい」
今のところ、白井伝三郎を追うという仕事は続行中だしな。
そういうヤツこそ、コロナに感染してくたばって欲しいものだが、しぶとく生き残るんだよな。
愛原:「まあ、来週の準備でもしておこうや」
高橋:「了解です」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
愛原:「いよいよ、あと1週間か……」
高橋:「オリンピックっスか?」
愛原:「違う。帰省だよ」
高橋:「ああ、先生の御実家へ」
愛原:「さすがに祖父母の墓参りしていなかったから、そろそろ行かないとなって」
高橋:「お供します!」
愛原:「それはいいんだが、緊急事態宣言がな……」
高橋:「オリンピックやるんだから、そんなの全部無視してスルースルーでいいんじゃないスか?」
愛原:「さすがにお盆は自粛ってことになったよ。お盆については、向こうの家族・親族だけでやることになった。で、まだオリンピックが始まって感染が酷くなる前に墓参りしておこうって魂胆だ」
高橋:「さすが先生です」
愛原:「幸い今年はオリンピック絡みで4連休だからな。それを利用することにした」
高橋:「計画的ですね」
愛原:「問題は斉藤社長からの依頼だ。また絵恋さんを旅行に連れて行って欲しいという依頼があるかもしれない。そうなると、そっち優先になるからな。それに備えておかないと……」
高橋:「そうなると、せっかく買ったキップもキャンセルですか……」
愛原:「そうなる。もっとも、斉藤社長も計画的な方だから、そんな急に大事な娘さんを『旅行に連れてけ』なんてことは無いと思うんだ」
高橋:「……ですね」
と、そこへ電話が掛かって来た。
ナンバーディスプレイを見ると、斉藤社長からだった。
噂をすれば何とやらだ。
愛原:「おはようございます。愛原です」
斉藤秀樹:「『私だ』と言いたいところですが、もうあなたには正体を明かしましたからね。斉藤です」
そうなのだ。
先日、『ボス』の正体は斉藤社長であると本人がカミングアウトした。
世界探偵協会日本支部の顧問も務めており、それら顧問が持ち回りで『ボス』を名乗っていたのだ。
しかし、私に連絡していた『ボス』は斉藤社長だけであったという。
愛原:「いつもお世話になっております」
秀樹:「いえいえ。愛原さんもそろそろ準備されるかと思い、先に連絡しておこうと思いまして」
愛原:「娘さんの御旅行の件ですか?」
秀樹:「そうです。今夏は旅行を自粛しようと思っております」
愛原:「そうですか。それは残念です」
秀樹:「愛原さんはそういった御予定はあるんですか?」
愛原:「一応、来週の4連休を使って実家に行こうと思っています。ここ最近、墓参りをしていなかったので」
秀樹:「そうですか」
愛原:「今も感染者は多いですが、オリンピックが始まったら間違いなく増えると思いまして、その前にと……」
秀樹:「比較的賢明な判断です。例年通り、お盆に行かれるべきではないかと」
愛原:「やはりそうですか」
秀樹:「ええ。オリンピック期間中は、間違いなく感染拡大するでしょう。私の見立てでは、開催前の10倍は下らないかと」
愛原:「そんなにですか」
秀樹:「そうなんです。それと……愛原さん達に1つだけアドバイスを」
愛原:「何ですか?」
秀樹:「ファイザーやモデルナ等のワクチンはオススメしません」
愛原:「……ネットでは聞きますが、やはり社長もそう思われますか」
秀樹:「はい」
愛原:「それは……大日本製薬でもワクチンを開発されるので、それを打てということですか?」
秀樹:「もちろん、弊社でも特効薬の開発は進めています。それができたら、是非それはオススメします。ですが……恐らく簡単には行きますまい」
愛原:「やはり開発は難しいですか」
秀樹:「いえ、開発の問題ではありません。これ以上はちょっと……お話しできません。とにかく今、流通しているワクチンにつきましては、私はオススメしません。乱暴なことを言うならば、まだリサさんのウィルスに感染した方が良いくらいです」
愛原:「ええっ!?」
秀樹:「政府ですら、リサのウィルスを使ってワクチンを開発しようとして失敗した……のはウソですよ」
愛原:「はい!?」
秀樹:「本当はできていますよ。政府高官達が打ったワクチンはそれです」
愛原:「それをどうして流通させないんですか?」
秀樹:「安心して流通させるルートが無いんじゃないでしょうか?日本にはスパイ活動防止法が無いので、そこかしこに産業スパイがいますから。リサ・トレヴァーのウィルスは、ややもすれば生物兵器として海外に高く売れますからね。それが中国や北朝鮮に流れてご覧なさい。どうなるか、火を見るよりも明らかでしょう?もっとも、Cウィルスくらいなら、香港のバイオテロで中国政府も入手済みでしょうがね」
愛原:「何だか難しくなりましたな」
秀樹:「愛原さんなら、ツテで政府高官達が打ったワクチンを打てるんじゃないですか?」
愛原:「そんな話、全く来ませんでしたけどね。まあ、後で善場主任に確認してみますよ」
私は電話を切った。
愛原:「夏休みの仕事の依頼は無しだ。あと、ファイザーとかモデルナのワクチンは打つなってさ」
高橋:「ああ、あれですか。俺もあれは胡散臭いと思ってたんスよ」
愛原:「まだリサのウィルスの方が安全だってさ」
高橋:「リサのウィルスで安全なんスか!?……ていうかそれなら、地味に俺達感染してません?」
愛原:「感染してるだろうな。だけどリサのおかげで、無症状のままだ」
高橋:「リサのウィルスの方が、コロナより強いんスよね?」
愛原:「らしいな。ていうか、今の『風邪』が旧型コロナウィルスなわけだから、そりゃリサのゾンビウィルスの方が強いに決まってるよ」
高橋:「……ですね」
愛原:「とにかく、そういうことだ。今のところはまだ小さな仕事しか無いが、そのうちまた大きな仕事が転がり込んで来るだろう。それまでの辛抱だ」
高橋:「はい」
今のところ、白井伝三郎を追うという仕事は続行中だしな。
そういうヤツこそ、コロナに感染してくたばって欲しいものだが、しぶとく生き残るんだよな。
愛原:「まあ、来週の準備でもしておこうや」
高橋:「了解です」