報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休みの計画」

2021-08-01 20:19:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月15日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「いよいよ、あと1週間か……」
 高橋:「オリンピックっスか?」
 愛原:「違う。帰省だよ」
 高橋:「ああ、先生の御実家へ」
 愛原:「さすがに祖父母の墓参りしていなかったから、そろそろ行かないとなって」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「それはいいんだが、緊急事態宣言がな……」
 高橋:「オリンピックやるんだから、そんなの全部無視してスルースルーでいいんじゃないスか?」
 愛原:「さすがにお盆は自粛ってことになったよ。お盆については、向こうの家族・親族だけでやることになった。で、まだオリンピックが始まって感染が酷くなる前に墓参りしておこうって魂胆だ」
 高橋:「さすが先生です」
 愛原:「幸い今年はオリンピック絡みで4連休だからな。それを利用することにした」
 高橋:「計画的ですね」
 愛原:「問題は斉藤社長からの依頼だ。また絵恋さんを旅行に連れて行って欲しいという依頼があるかもしれない。そうなると、そっち優先になるからな。それに備えておかないと……」
 高橋:「そうなると、せっかく買ったキップもキャンセルですか……」
 愛原:「そうなる。もっとも、斉藤社長も計画的な方だから、そんな急に大事な娘さんを『旅行に連れてけ』なんてことは無いと思うんだ」
 高橋:「……ですね」

 と、そこへ電話が掛かって来た。
 ナンバーディスプレイを見ると、斉藤社長からだった。
 噂をすれば何とやらだ。

 愛原:「おはようございます。愛原です」
 斉藤秀樹:「『私だ』と言いたいところですが、もうあなたには正体を明かしましたからね。斉藤です」

 そうなのだ。
 先日、『ボス』の正体は斉藤社長であると本人がカミングアウトした。
 世界探偵協会日本支部の顧問も務めており、それら顧問が持ち回りで『ボス』を名乗っていたのだ。
 しかし、私に連絡していた『ボス』は斉藤社長だけであったという。

 愛原:「いつもお世話になっております」
 秀樹:「いえいえ。愛原さんもそろそろ準備されるかと思い、先に連絡しておこうと思いまして」
 愛原:「娘さんの御旅行の件ですか?」
 秀樹:「そうです。今夏は旅行を自粛しようと思っております」
 愛原:「そうですか。それは残念です」
 秀樹:「愛原さんはそういった御予定はあるんですか?」
 愛原:「一応、来週の4連休を使って実家に行こうと思っています。ここ最近、墓参りをしていなかったので」
 秀樹:「そうですか」
 愛原:「今も感染者は多いですが、オリンピックが始まったら間違いなく増えると思いまして、その前にと……」
 秀樹:「比較的賢明な判断です。例年通り、お盆に行かれるべきではないかと」
 愛原:「やはりそうですか」
 秀樹:「ええ。オリンピック期間中は、間違いなく感染拡大するでしょう。私の見立てでは、開催前の10倍は下らないかと」
 愛原:「そんなにですか」
 秀樹:「そうなんです。それと……愛原さん達に1つだけアドバイスを」
 愛原:「何ですか?」
 秀樹:「ファイザーやモデルナ等のワクチンはオススメしません」
 愛原:「……ネットでは聞きますが、やはり社長もそう思われますか」
 秀樹:「はい」
 愛原:「それは……大日本製薬でもワクチンを開発されるので、それを打てということですか?」
 秀樹:「もちろん、弊社でも特効薬の開発は進めています。それができたら、是非それはオススメします。ですが……恐らく簡単には行きますまい」
 愛原:「やはり開発は難しいですか」
 秀樹:「いえ、開発の問題ではありません。これ以上はちょっと……お話しできません。とにかく今、流通しているワクチンにつきましては、私はオススメしません。乱暴なことを言うならば、まだリサさんのウィルスに感染した方が良いくらいです」
 愛原:「ええっ!?」
 秀樹:「政府ですら、リサのウィルスを使ってワクチンを開発しようとして失敗した……のはウソですよ」
 愛原:「はい!?」
 秀樹:「本当はできていますよ。政府高官達が打ったワクチンはそれです」
 愛原:「それをどうして流通させないんですか?」
 秀樹:「安心して流通させるルートが無いんじゃないでしょうか?日本にはスパイ活動防止法が無いので、そこかしこに産業スパイがいますから。リサ・トレヴァーのウィルスは、ややもすれば生物兵器として海外に高く売れますからね。それが中国や北朝鮮に流れてご覧なさい。どうなるか、火を見るよりも明らかでしょう?もっとも、Cウィルスくらいなら、香港のバイオテロで中国政府も入手済みでしょうがね」
 愛原:「何だか難しくなりましたな」
 秀樹:「愛原さんなら、ツテで政府高官達が打ったワクチンを打てるんじゃないですか?」
 愛原:「そんな話、全く来ませんでしたけどね。まあ、後で善場主任に確認してみますよ」

 私は電話を切った。

 愛原:「夏休みの仕事の依頼は無しだ。あと、ファイザーとかモデルナのワクチンは打つなってさ」
 高橋:「ああ、あれですか。俺もあれは胡散臭いと思ってたんスよ」
 愛原:「まだリサのウィルスの方が安全だってさ」
 高橋:「リサのウィルスで安全なんスか!?……ていうかそれなら、地味に俺達感染してません?」
 愛原:「感染してるだろうな。だけどリサのおかげで、無症状のままだ」
 高橋:「リサのウィルスの方が、コロナより強いんスよね?」
 愛原:「らしいな。ていうか、今の『風邪』が旧型コロナウィルスなわけだから、そりゃリサのゾンビウィルスの方が強いに決まってるよ」
 高橋:「……ですね」
 愛原:「とにかく、そういうことだ。今のところはまだ小さな仕事しか無いが、そのうちまた大きな仕事が転がり込んで来るだろう。それまでの辛抱だ」
 高橋:「はい」

 今のところ、白井伝三郎を追うという仕事は続行中だしな。
 そういうヤツこそ、コロナに感染してくたばって欲しいものだが、しぶとく生き残るんだよな。

 愛原:「まあ、来週の準備でもしておこうや」
 高橋:「了解です」
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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 首無し幽霊 2

2021-08-01 16:24:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日19:00.天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 神田:(キミが選んだそいつを、俺は殺そう……!)
 リサ:(“花子さん”と同じ気配がする……!やはり、こいつは幽霊?私では勝てない……!?)

 リサは動けないでいた。

 神田:(さあ、早く選べ……!選べないと言うのなら、全員殺す……!)
 リサ:(くそ……!)

 栗原は気絶したままだ。

 田口:「死にたくない……死にたくない……!」
 リサ:「! (そうだ!)」

 リサは田口の体に植え付けた自分のウィルスを一時的に活性化させた。

 田口:「う゛っ!?ブフォーッ!!」

 突然、田口の口から大量の胃の内容物が吐き散らされ、それが神田の体に掛かった。

 神田:(な、な……!?)
 リサ:「狙い通り!」

 そして、神田の体がシュワシュワ言いながら溶け出して行く。

 神田:(な、何だこれは?!)
 リサ:(タグチに感染させたウィルスを、今度はオマエに感染させた!100%活性化させる!)
 神田:(気配が違うと思ったら……オマエも……化け物……!?)
 リサ:「誰が化け物だぁーっ!!」

 化け物だと言われてもしょうがないとは思いつつ、本当に言われたら言われたでキレるリサだった。
 幸い、変化が解けることは無かったが。

 リサ:「今だ!全員総攻撃!!」
 古堂:「お、おう!」

 田口の胃液が掛かった所が焼けただれ、怯んでいる神田に対し、語り部達がリンチしていく。
 古堂は拳だし、石上はカッターで何度も斬り付けたし、太田は体当たりで、笠間はパイプ椅子を叩きつけた。
 新井は何もせず、ただ傍観。

 リサ:「タグチ、ゴメン!利用させてもらった!」
 田口:「そういうことだったの……」
 リサ:「栗原先輩も起きて!」
 栗原:「いててて……!何があったの?」
 リサ:「取りあえずあの幽霊、総攻撃で倒しているところ」
 栗原:「ええっ!?」

 神田の首無し幽霊は、語り部達のリンチにより血だらけになり、ようやく床に倒れた。

 神田:(この学校に化け物がいるという噂は本当だったのか……!絶対に許さないぞ……!せめて……最後に犯人を……!)

 直後、校舎に落雷があった。
 と、同時に校内が停電する。

 リサ:「え……?」

 リサの背後で何とも言えない音が響き渡った。
 しかしリサは、その音に聞き覚えがあった。
 日本版リサ・トレヴァー『2番』として、まだ日本アンブレラの秘密研究所にいた頃だ。
 他のリサ・トレヴァーが、機密を漏洩しようとした元社員を本当に捕食する時に聞いた音だ。
 そのリサ・トレヴァーは、獲物の元社員に対し、生きたまま首を捩じり切った。
 あの時の音とそっくりだった。

 田口:「きゃあああああっ!!」

 田口はリサの背後で起きた惨劇を見て絶叫を上げ、気絶した。

 リサ:「……!!」

 リサが後ろを振り向くと、血だらけの神田が太田の生首を持って立っていた。

 神田:(ははは……!これでやっと俺の首ができたよ……。これでやっと救われる……)

 そう言って神田は、太田の生首を自分の首の上に乗せた。
 だが、すぐにポイッと捨てる。

 神田:(ダメだ。いくら俺を殺した奴でも、こんなブタ野郎の首じゃ、俺は救われない)
 リサ:「太田さんが犯人だったの!?」

 だがその時、太田の目がカッと見開かれた。
 そして、まるでボールのように飛び跳ねると、神田の首の上に無理やり乗っかった。

 太田:「僕の首のどこが気に入らないと言うんだい?失礼なこと言わないでくれよ」
 神田:(や、やめろ!俺はこんなブタじゃない!離れろ!こんなんじゃ、俺は……!俺はーーーーっ!!)

 神田はもがき苦しむように抵抗すると、本当に消えて行った。
 そして、太田の首がボトッと床に落ちる。

 太田:「僕が犯人だってバレてしまったね。でも、もう僕は死んじゃったから、別にどうでもいいよ。でも、気をつけることだね。この学校には神田さん以上に恐ろしい幽霊が他にもいるし、それに……化け物もいる」
 リサ:「……!!」

 太田は頭と胴体が離れている状態で喋っていた。
 これにはさすがの石上も腰を抜かし、カッターナイフを床に落としている。

 太田:「それじゃ、さようなら」

 太田の首無し死体が起き上がると、床に落ちていた頭を拾い、そのまま部室の外に出て行ってしまった。

 リサ:(タグチの吐いた胃液が床にも落ちている。太田さんの首は床に落ちた時、その胃液に触れていた。太田さんは私のウィルスに感染した。だけど、私は太田さんに何もしていない。私は生きてる人間にしか感染させたことが無いから、死体に感染させたらどうなるかは知らない……)

 あれ以来、太田は行方不明のままである。

[7月15日08:00.天候:晴 同学園1F掲示板]

 夏休み前の学校新聞が掲示された。
 そこにはリサを含む語り部達が語った怪談が紹介されていた。
 しかし、7話目についてはこう書かれていた。

 『この学園では7話目を知ると不幸が発生すると言われています。現に、まだ6話分なのにも関わらず、語り部の太田友治君が行方不明となりました。過去に7話目を知ったが為に、語り部全員が不幸な目に遭った回もあったそうです。従いまして、今回は6話分のみ紹介させて頂くことにします』
 と。
 実際は7話目を聞いた。
 だから、部室内にいた全員が恐怖に叩き落とされた。
 死亡者が1人出たこの回は、グッドエンドと言えるのだろうか。

 リサ:(7話目を知っているのはあの時、部室にいた私達だけ。さすがの私も、7話目を話す気にはなれない……)
 斉藤絵恋:「リサさーん!あの“花子さん”の話をしたんだね!“花子さん”に許可は取ったの!?」
 リサ:「『事実をありのままに話す分には構わない』ということだった」
 斉藤:「そうなんだ」

 あの集まりの後、リサは“花子さん”には打ち明けた。
 すると“花子さん”は、素っ気なかった。

 花子さん:「私の今のテリトリーは、この校舎だけだから。向こう(新校舎)で何が起ころうが、私は一切関与しない」

 と。

 花子さん:「この学園の警告は分かり易い。『学園の七不思議を全て知ると不幸が起こる』。正しく、その通りだったじゃないか。言い伝えの通り、7話目を聞いた途端、不幸が起きた。それだけのことさ」
 リサ:「来年も……『七不思議』やるのかなぁ……?」
 花子さん:「オススメはしないがな」
 リサ:「花子さん。今日、命日だったね。はい」

 リサは“花子さん”に菊の花束と線香を持って来た。

 リサ:「あと、栗原先輩が……エコー?とかしてくれるって」
 花子さん:「エコー?ああ、回向か。私にとってはただの気休めにしか過ぎないが、それはありがとう。気持ちは受け取っておくよ」

 白い仮面の向こうの“花子さん”は、ニッコリと笑った。
 やはりこの幽霊は、白井伝三郎に復讐しないと成仏できないようである。
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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 首無し幽霊

2021-08-01 11:26:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日18:30.天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F部室]

 部室のドアがノックされた。
 室内にいる全員が息を呑む。

 栗原蓮華:「ほら、来た。神田さんが来ましたよ」

 蓮華はそう言うと、鞄の中から日蓮正宗の数珠を取り出して手に巻いた。

 古堂:「来ましたよ、じゃねぇ!オメェ何とかしろよ!刀持ってんだろ!?」
 蓮華:「刀で斬れるかどうか分かりませんよ。石上さんがそう言ってたじゃありませんか」
 笠間:「鍵掛けろ、鍵!」

 もちろん、鍵は既に掛かっている。
 また、ドアがノックされた。
 今度はさっきよりも強めに。

 笠間:「ボクは先に脱出させてもらうぞ!」

 笠間は激しい雷雨の雨粒が当たる窓を開けようとした。
 だが、窓が開かない。

 笠間:「何てこった!窓が開かないぞ!くそ!」

 笠間はパイプ椅子を手に、窓ガラスを叩き割ろうとした。
 だが、まるで強化ガラスであるかのようにビクともしない。

 蓮華:「無駄だよ。神田さんの恨みは強い。どうして彼がここに来たか分かる?この中に神田さんを殺した犯人がいるからだよ。自殺なんかじゃないよ。この中の誰かに殺されたんだ」
 古堂:「オメェが殺したんだろ、石上!オメェが責任取って犠牲になるべきなんじゃねぇのか、あァ!?」
 石上:「証拠は?私が殺した証拠があるの?証拠もないくせに勝手なこと言ってると、殺すからね?」

 石上は静かに言い返した。
 しかしその冷たさには、殺意を感じた。
 そして、田口も黙っていない。
 田口は田口で、太田に言う。

 田口:「あんたね!あんたが、私の神田さんを殺したんだ!私のことを好きなんて言って、私と神田さんがつき合うことに反対だったんでしょ!?だから、神田さんが憎くて殺したんだよ!責任取ってよ!」

 そんなことを言われた太田は、今にも泣き出しそうな顔になった。

 太田:「……田口さん、そんなこと言わないで。君は、神田なんて男のこと好きなっちゃいけないんだから。君は、僕の女神様なんだから。僕はね、別に田口さんとつき合いたいとかそういうことを言ってるんじゃないんだよ。見てるだけでいいんだから。遠くから、君のことを見て想像するだけで幸せなんだからさぁ……!」

 ついに太田が感極まって泣き出した。

 リサ:(一体何なの、この人達……。そりゃ、私だって化け物と言われてもしょうがないけどさぁ……。人間の癖に異常者だらけじゃん……)

 リサは眉を潜めて、これらのやり取りを見ていた。
 と、またドアが激しくノックされる。
 まるで、ドアを壊さんばかりの強さだ。

 蓮華:「ほら、神田さんが怒ってるよ。どうする?このままだったら、神田さんが部室に入ってきちゃうよ。そうしたら、みんな殺されちゃうかもしれない」

 蓮華がそう言った時には遅かった。
 ドアが超常的な力でこじ開けられ、そこに1人の男が立っていた。

 リサ:(これが神田さん?)

 リサは首を傾げた。
 というのは、もちろんリサ自身が神田拓郎のことを知らないからというのもあるが、それ以前にその男の首から上が無かったからだ。
 頭を持たない制服姿の男子生徒がそこには立っていた。
 夏服なのは、死んだのが3週間前ということで、その頃には既に衣替えで夏服になっていたからだろう。

 笠間:「俺じゃない!俺が石上にちょっかいを出したことは謝る!でも、お前を殺したのは俺じゃないだろ!?」

 笠間は卑屈なまでに土下座し、許しを請うた。

 古堂:「お、俺は悪くない。俺がお前にしたのは、ちょっとした悪ふざけだ。お前をいじめたつもりはないんだ。……あ、あれは、ちょっとしたお遊びなんだよ!」

 古堂は逃げ腰になり、震える声で必死に謝った。

 田口:「……か、神田さん。あれはちょっとした冗談だったの。あんまり石上さんがあなたとの仲を見せつけるから、横取りしてやろうと思っただけなの。別に、振るつもりはなかったの。ごめんね、ごめんね……私のこと殺さないで!」

 田口は顔をくしゃくしゃにして、手を合わせ祈っている。

 太田:「……ぼ、僕じゃないことは知ってますよね?僕は関係無いんだ。そりゃあ、田口さんを奪ったあなたのことが憎くて、階段から突き飛ばしたり、靴の中に画びょうを入れたりしたけど、そんなことで死なないでしょ?僕じゃ、ないですよ」

 太田は部屋の片隅に身体を押し込むようにして、少しでも遠くに逃げようとしている。

 新井:「いえ、階段から突き飛ばしはやり過ぎだと思いますが?」
 リサ:「同じく」

 全く無関係の2人は太田にツッコむことしかできなかった。

 石上:「……あんたなんか、殺されて当然だわ。誰が殺したっておかしくないもの。誰もが、あんたのことを殺したいと思っていたんじゃないかしら?私が憎い?私が殺したと思っているの?……だったら、私を殺せば?」

 石上は逃げようともせず、椅子に座ったまま、神田のことを睨みつけた。

 蓮華:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」

 蓮華は数珠を手に掛け、合掌して唱題を繰り返している。
 リサはこの状況を理解しようとした。

 リサ:(……それにしても、新井先輩や栗原先輩を除いて、誰が神田さんのことを殺していてもおかしくない状況だ。例え神田さんが自殺だったにせよ、誰かのしたことが、その引き金になっていてもおかしくない。……一体、誰が?こういう時、愛原先生がいてくれたらなぁ!)

 その時、ついに神田が動いた。

 蓮華:「きゃっ!」

 蓮華の数珠が切れ、珠が部室内に飛び散る。
 そして、蓮華の体が吹き飛び、壁に叩き付けられた。

 リサ:「栗原先輩!?」
 蓮華:「うう……!」

 リサが蓮華に駆け寄ろうとした時だった。

 神田:(そこのキミ。誰を殺せばいい?誰を殺せば、俺は救われる? ……この中の誰か1人。キミが決めてくれ)

 リサは部室の中を見回した。
 しかし、声に聞き覚えは無い上、今の声が聞こえているのはリサだけだったようだ。
 そして、その声が神田のものであるとリサは直感的に悟った。
 実際、神田の体はリサの方を向いている。
 神田はリサに犠牲者を決めさせようとしている。
 一体、誰にしろというのか?

 リサ:(『イヤだ』と、言ったら?)
 神田:(ここにいる全員を殺す……!もちろん、キミもだ……!)

 誰を選ぼうというのか?

 1:石上暮美
 2:笠間亘
 3:古堂真
 4:太田友治
 5:新井譲二
 6:田口真由美
 7:愛原リサ
 8:栗原蓮華
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