報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「もう1人のリサ」 2

2021-08-22 20:32:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日22:30.天候:濃霧 宮城県仙台市宮城野区福室 コロナワールド仙台]

 何故か突如として現れた、もう1人のリサ。
 それはかつてリサが研究所で『制服』と称して着せられたセーラー服を着ているので、便宜上、『制服リサ』と呼ぶことにする。
 一方、そんな制服リサに導かれるようにしてホテルを出た本物のリサ。
 彼女は私服を着ているので、便宜上、『私服リサ』と呼ぶことにする。
 そんな彼女達は、レヴェナントと呼ばれるクリーチャーを回避しながら進まなければならない。
 今の私服リサには攻撃力は無いとされるが、それは誤りである。
 例え1番弱い第0形態であっても、身体能力そのものは常人を超える。
 但し、攻撃力が弱いだけだ。
 特に、レヴェナントなるクリーチャーはリサにとっては初見の敵。
 どのような攻撃をしてくるか分からない以上、回避して進むのが無難と思われた。

 レヴェナントA:「ウゥ……」
 レヴェナントB:「アァ……」
 私服リサ:「くそっ、敵が多過ぎて進めない……!」

 私服リサは駐車場に止まっている車の陰に隠れながら、コロナワールドの正面入口を目指した。
 幸いレヴェナントは普段の動きは非常に遅く、また、体のパーツが不自然なほどにメチャクチャに付いているので、歩き方もぎこちない。
 例えば右足と左足が逆に付いていたり、脇腹から足がもう一本生えていたり、首が斜め45度に傾いた状態で固定されていたりと個体によって体つきはバラバラだ。
 共通点としては顔が変な方向を向いており、首が動かせない状態の為、彼らの視界は狭く、聴覚も並みの人間程度のものと思われ、静かに移動しながら彼らの視界に入らなければ襲って来ることは無いようだ。
 また、肥満ではないのだが、体はそこそこ長身で肉付きもそれなりに良い為、車と車の間は通れないようである。
 その為、リサが隠れている車と車の陰にまで入って来ることはない。
 リサが舌打ちしたのは、正面入口の前にレヴェナントが3体も徘徊していたからだ。

 私服リサ:「ん?」

 その時、リサは車の下に何かが落ちているのが分かった。

 私服リサ:「これは……?」
 制服リサ:「おー、いいもの見つけたじゃない」

 それは発煙筒だった。
 車に積まれていたものが落ちたのだろうか。

 制服リサ:「これで奴らを撒けるかもしれないよ」
 私服リサ:「どうやって使うの?」
 制服リサ:「そこに書いてあるでしょ」
 私服リサ:「んん?」

 私服リサはキャップを外して、発煙筒を焚いた。

 レヴェナントA:「!?」

 その時、レヴェナント達がリサ達に気づいた。
 と、同時にリサはレヴェナント達に発煙筒を投げつける。
 煙がモクモク噴き出し、レヴェナント達はそれに巻き込まれた。

 制服リサ:「今のうちに行こう!」
 私服リサ:「分かった!」

 2人のリサは煙に巻かれて視界を失い、パニックになっているレヴェナント達をよそに建物の中に入った。
 だが、ホールにもレヴェナントが何匹か徘徊していた。

 私服リサ:「また発煙筒が落ちている」
 制服リサ:「それは発炎筒だね」
 私服リサ:「え???」
 制服リサ:「さっきのはただ煙をモクモク出すだけの物。でもこれは、出る煙は少ないけど、炎も出す物だよ。まあ、少し大きな花火だと思えばいい」
 私服リサ:「おー、花火!」
 レヴェナントC:「ガァーッ!」
 私服リサ:「しまった!見つかった!」

 レヴェナント数匹のうち、いつの間にかリサ達に接近していた個体がリサ達の存在に気づいて追って来た。

 制服リサ:「しょうがない。それを投げつけて、燃やしてやりなさい」
 私服リサ:「そんなことできるの!?」

 リサは発炎筒を焚いた。
 確かに先ほどの発煙筒と違い、煙よりも眩い赤い炎のの方が目立つ。

 私服リサ:「うりゃっ!」

 私服リサは焚いた発炎筒を大股で向かって来たレヴェナントCに投げつけた。
 発炎筒の炎がレヴェナントCに当たる。

 レヴェナントC:「ギャアアアアッ!!」

 するとレヴェナントCは、たちまち炎に包まれた。

 私服リサ:「凄い!よく燃える!」
 制服リサ:「ザイン島にいた奴らも火に弱かったらしいけど、ここにいる奴らも同じだったみたいだね」
 私服リサ:「ザイン島?」
 制服リサ:「こいつらが現れた外国の島のことだよ。ま、ここじゃ関係無いか。幸いここのレヴェナント達は耳も聞こえないのか、今の騒ぎでも他の奴らは気づいてないよ。今のうちに先に進みましょう」
 私服リサ:「分かった」

 リサ達はパチンコ店に入った。
 パチンコ店も驚くほど静かで、やはりここもレヴェナントが何体が徘徊していた。

 私服リサ:「一体、どこにいるんだろう?」

 パチンコ台には電源が入っているにも関わらず、全く音声が聞こえてこない。
 それどころか、店内には客も店員も誰一人いなかった。
 いるのはレヴェナントくらい。
 幸いパチンコ店はそんなに入り組んだ構造になっているわけではないので、捜すのは簡単だった。

 私服リサ:「おかしい。先生達がいない……!」
 制服リサ:「もうここにはいないのかもね」
 私服リサ:「どこに行ったんだ?」
 制服リサ:「知らないよ。それより、今度はテディベアを探しましょう」
 私服リサ:「ここにいるの?」
 制服リサ:「ここじゃなくて、隣のゲームセンターだよ。大丈夫。そっちにあのブサイク共はいないから」
 私服リサ:「……?」

 私服リサは制服リサの後をついて、ゲームセンターに移った。
 そこにも誰もいなかったが、確かにレヴェナントもいなかった。
 ゲームセンターにはクレーンゲームが何機も設置されていたが、そのうち、大型景品を扱う筐体にテディベアがあった。

 制服リサ:「これだよ。あなたに会いたがっているテディベア。さあ、早いとこ取ってあげて」
 私服リサ:「私、こんなのやっとことないよ」
 制服リサ:「大丈夫。私の言う通りにやればいいから。まずは、このボタンを押して……」
 私服リサ:「このボタン……」

 私服リサは言われた通りのボタンを押した。
 だが、突然彼女に強い眠気が襲う。

 制服リサ:「次はこのボタンだよ。……聞いてる?」
 私服リサ:「う、うん……」
 制服リサ:「ほらぁ、失敗した。もう1回やり直し。もう1度このボタンを押して……」
 私服リサ:「か、体が……動かない……」

 ついにリサは体から力が抜けて、筐体の前に倒れ込んだ。
 目の前には景品取り出し口がある。
 すると、その穴からテディベアが顔を覗かせた。
 制服リサがしゃがみこんで、そこからテディベアを取り出す。

 制服リサ:「完全体になるのは、まだまだ先のようだね」

 そこでリサは完全に意識を失ってしまった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「もう1人のリサ」

2021-08-22 16:23:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日22:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台6F客室→駐車場]

 温泉施設からホテルに戻ったリサ。
 ホテルでは、リサだけシングルである。
 リサとしては是非とも愛原達と同じ部屋で寝泊まりしたかったのだが、さすがにもう高校生になったのではと部屋を別々にされている。

 リサ:「むー……」

 寝る前に歯磨きをしており、客室の窓の前に行く。
 窓からは県道23号線(産業道路)や高速道路の仙台東部道路が見えた。
 連休中の夜だからか、そんなに交通量は無い。
 いすゞのトラックのテーマソングにある『ブレーキランプの天の川』というほど車は多くなかった。
 その高速道路の向こう側には、市街地の灯りが見える。
 と、ふと、目線を真下にやった。
 愛原と高橋が私服に着替え、隣接する仙台コロナワールドへ行こうとしていた。
 恐らく、ホール内にあるパチンコ店に向かったのだろう。

 リサ:(ズルい!私も行く!)

 パチンコ店は18歳未満入店禁止が今は徹底されている。
 作者が子供だった昭和時代はそこまで厳しくなく、店内も今ほど明るくて綺麗でもなく、店員の接客態度も今とはウソみたいに無愛想なものだった。
 そんなユルユルの風紀では子供が一緒に入っても咎められることはなく、むしろ作者の記憶では父親に連れられて代打ちをやらされた記憶がある。
 その為、今は死語になっている『平台』とか『チューリップ』の意味は今でも分かる。
 但し、昭和時代の用語は死語になっているらしく、さすがの作者もそんな用語は言わない。
 リサは急いで洗面所に行くと、口の中をすすいだ。
 それから館内着から私服に着替えて、部屋から出ようとした。

 リサ:「!!!」

 と、突然背後に気配を感じて振り向いた。

 リサ:「!?」

 そこにいたのは自分であった。
 しかし、服装は研究所にいた時に着せられていたセーラー服を着ていた。

 リサ:「な、な……!?」

 リサが驚いて変化を解こうとすると、何故か解けない。
 第0形態の人間の姿のまま、第1形態の鬼の姿に戻れなくなった。

 (便宜上)制服リサ:「何もそんなに驚くこともないでしょう?私は私なんだから」
 (便宜上)私服リサ:「い、いや、驚くに決まってるでしょ!?何さも当然のように『もう1人の自分』がそこにいるの!?」
 制服リサ:「あなたのテディベアが会いたがってるの。一緒に来てくれる?」
 私服リサ:「嫌だと言ったら?」
 制服リサ:「その時は、愛原先生達が死ぬことになる」
 私服リサ:「そう来たか。分かった。どこへ行けばいい?」
 制服リサ:「簡単だよ。愛原先生達を追えばいい。あなたなら、行き先は分かってるでしょう?」
 私服リサ:「そうだな」

 リサは部屋の外に出た。

 私服リサ:「!?」

 部屋の外は変な靄が出ていた。
 まるで火災が発生して、煙が充満しているかのようである。

 私服リサ:「これは一体……?」
 制服リサ:「気にしないで。別に火事が起きているとかじゃないから」
 私服リサ:「はあ?」

 靄が掛かっていて視界は弱くなっているが、廊下の向こうが見えない程度で、手探りでないと歩けないというほどではない。
 エレベーターまで行くと、それに乗り込んだ。

 私服リサ:「あなたはどうして現れたの?」
 制服リサ:「それは後で話してあげる。それより、下に着いたら気を付けてね」
 私服リサ:「何が?」
 制服リサ:「クリーチャーがウヨウヨいるから。で、あなたはその姿のままで、いつもの力は使えない。ザコばかりだけど、戦おうとすると手強いよ」
 私服リサ:「そんなことが……」

 エレベーターが1階に着く。
 ドアが開いて降りると、確かに変な気配を感じた。
 フロントを見ると、誰もいない。
 ロビーも誰もいないのだが、しかし何かの気配は感じる。

 制服リサ:「隠れて」
 私服リサ:「!」

 制服リサに促されて、私服リサはフロントの後ろに隠れた。

 レヴェナント:「ウゥ……」

 ロビーを1匹の化け物が徘徊していた。
 全体的に白っぽい2足方向で、一見すると人の形をしているように見えるが、そのパーツの付け方がメチャクチャだ。
 無造作に体の部位が縫い付けられているようで非常に醜悪な外見を持っている。
 確かに、普通の化け物には見えなかった。
 呻き声を上げながら、足を引きずるように徘徊している。

 私服リサ:「なるほど。ザコそうだけど、見つかったら面倒そう」
 制服リサ:「面倒どころか、今のあなたなら見つかったら殺されるよ?」
 私服リサ:「そうなんだ。あれはやり過ごせる」
 制服リサ:「顔が変な方向を向いているでしょ?首もろくに回せないでしょうから、奴らの視界に入らず、しかも物音を立てないで進めば見つからないでしょう」
 私服リサ:「なるほど。ところであなたは隠れてないけど大丈夫?」
 制服リサ:「私は大丈夫。どうせ奴らからは見えないもの」
 私服リサ:「どういうこと?」
 制服リサ:「今、あなたは自分の心配だけしていればいいの。それより、ホテルの外もあいつみたいなのがウヨウヨいると思うよ。あいつをやり過ごしたら、車の陰に隠れましょう」
 私服リサ:「分かった」

 リサはそっとフロントの陰から出た。

 レヴェナント:「ウゥ……」

 ただ単に徘徊しているからなのか、動きは非常に遅い。
 私服リサはレヴェナントの右後ろをゆっくり近づいていった。

 私服リサ:「ゾンビより気持ち悪い。何こいつ?」
 制服リサ:「こいつの名前はレヴェナント。複数の無機物や人間の身体、その一部を縫合させたものにウロボロス・ウィルスを投与して造り出されたBOWだよ」
 私服リサ:「ウロボロス・ウィルス?聞いたことあるなぁ……」

 と、そのレヴェナントが自動ドアの前で立ち止まった。
 この後、自分がどうするべきか悩んでいるかのようだ。
 と、そこへ吹き抜けの階段の上、2階から何かが倒れる音がした。

 レヴェナント:「ウォォォッ!!」

 その音に反応して、レヴェナントは雄叫びを上げ、階段を昇って行く。
 動きは遅いのだが、無駄に長い足を伸ばし、階段を2段~3段飛ばしで昇って行くので、必然的に動きが速くなったかのように見えた。
 平地でも獲物らしき物を見つけると、ああやって大股歩きで向かって行くのだろう。
 油断していると、追い付かれてしまうのは間違いない。

 私服リサ:「今のうちに出よう」

 2人のリサはホテルの外に出た。
 ホテルの外は、まるで濃霧が掛かったかのような視界になっていた。
 駐車場の全体が見通せない。
 街灯が無ければ、そこに道路があるのか分からないほどの視界だった。
 仙台東部道路に至っては、オレンジ色の街灯の灯りしか分からない。
 しかも、とても静かだった。
 いくら交通量が少ない日かつ時間帯とはいえ、幹線道路や高速道路があれば、そこを走る車の音はよく聞こえるものだ。
 少なくとも、リサ達がこのホテルに到着した時はそうだった。

 制服リサ:「早くこっちへ」

 制服リサに促されて、私服リサは駐車場の車の陰に隠れた。
 駐車場は駐車場で、多くのレヴェナントが徘徊していた。

 私服リサ:「一体何があった?」

 私服リサにはさっぱり分からなかった。
 温泉施設から戻って来るまで、その施設もホテルも全く何の異変も無かったというのに。

 制服リサ:「愛原先生達の居場所、見当は付くの?」
 私服リサ:「見当はつく。コロナワールドの中にあるパチンコ屋に行ったはずだ」
 制服リサ:「じゃあ、そこまで行ってみましょう」
 私服リサ:「テディベアとは、どう繋がる?」
 制服リサ:「慌てない慌てない。必ずあなたはテディベアと会えるから、まずは愛原先生達を捜しましょう。もちろん、その為にはあいつらに見つからないようにしないとね」
 私服リサ:「……分かったよ」

 私服リサは、もう1人の制服リサの指示に従うことにした。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする