報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京駅での一時」 

2021-08-05 20:09:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日09:30.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅構内]

 夏の暑い日差しが照り付ける中、東京駅に到着した私達。
 まずは在来線コンコースに入り、そこから新幹線改札口を目指していると、意外な人物達と会った。

 栗原蓮華:「あれ?」
 愛原:「おや?」

 東京中央学園の制服に身を包んだ栗原蓮華と愛里の姉妹だった。
 冬制服だとブレザーの型で高等部か中等部かが分かるのだが、夏服だと分からない。
 一応、胸ポケットのワッペンのデザインで区別できるようになっているようだが。
 姉の蓮華さんは学園盛夏服として取り入れられているポロシャツを着ていた。

 蓮華:「愛原先生」
 愛原:「はは、よう。偶然だな」
 蓮華:「そうですね」

 蓮華さんは身長170cmくらいあるので、私よりも高い。
 もっとも、180cmある高橋よりは低いが。

 リサ:「栗原先輩、こんにちは。この前の七不思議、ありがとうございました」
 蓮華:「あれは……ちょっと想定外だったねぇ……」
 愛原:「本当にあった話なのか?」
 蓮華:「本当ですよ。太田君の首と胴体が切り離された死体が隅田川に浮かんでたってニュース、見たじゃないですか。しかも何故かポケットに、神田先輩を殺した旨の遺書まで入ってたとか……」
 愛原:「キミ達の高校はどうなってるんだい?」
 蓮華:「ミステリー・ハイスクールですよ。中等部でも小さな怪奇現象はあるみたいですが、高校はその何倍以上もの規模です。そんな所に妹を通わせて大丈夫なのかという不安はあるのですが」
 リサ:「私みたいなヤツに、一口で食われてしまうかもね?」
 愛里:「ひぃっ?!」
 愛原:「リサ、やめなさい」
 蓮華:「笑いごとじゃなく、実際にそういう化け物の目撃情報が昔あったのも事実です。多分犯人は、先生達が追っているアンブレラの関係者でしょうが」
 愛原:「白井か……」
 蓮華:「それより先生達はこれからどちらへ?」
 愛原:「実家の仙台に帰省さ。まだ墓参りをしていなかったものでね。本当はお盆にやりたかったんだが、オリンピック期間中は感染爆発してそれどころじゃないって噂だから、今のうちにと思ってね」
 蓮華:「そうでしたか。奇遇ですね。私達もです」
 愛原:「キミ達も仙台なの?」
 蓮華:「いえ、私達は大石寺です。感染爆発したら、なかなか御登山も難しくなると思うので」
 リサ:「なるほど。すると、キミ達は東海道新幹線か」
 蓮華:「そうです」

 本所吾妻橋から浅草駅までは歩いて行き、そこから地下鉄銀座線で神田駅まで移動した後、山手線に乗り換えてここまで来たらしい。

 蓮華:「もっとも、今日は親戚の家に前泊して、御開扉は明日ですけどね」
 愛原:「そうか。キミ達も泊まり掛けか。向こうも暑いだろうけど、気をつけて」
 蓮華:「先生達も。仙台も30度を超えるそうですから」
 愛原:「ああ、そうだな」

 私達は緑色の改札口へ向かい、栗原姉妹は青い改札口へ向かった。

 高橋:「先生。あの姉貴、カチコミに行くみたいな感じでしたね」
 愛原:「ああ、刀か。ちゃんと袋に入れているし、特別な許可があるというから大丈夫なんだろう」
 高橋:「あの姉貴が乗っている新幹線でテロリストが現れても、何だか一刀両断で終わらせそうですね」
 愛原:「テロリスト?」
 高橋:「イスラムの自爆テロじゃなく、ナイフ振り回したり、焼身自殺のことですよ」
 愛原:「ああ、あれか」
 高橋:「あれはもうテロです、テロ」
 愛原:「まあ、そうだな」

 そんなことを話しながら、私達は新幹線コンコースに入る。
 旧国鉄時代は東北新幹線も東海道新幹線も、同じコンコースだったのかもしれない。
 しかしJRで分けられた今となっては、コンコースも別々になっている。

 リサ:「先生、それより駅弁、駅弁!」
 愛原:「そうだったな。それじゃ、ホームに上がろう」

 私の偏見だろうか。
 それとも、入った改札口にもよるのだろうが、あまり東北新幹線などのコンコースで駅弁を売っているイメージは無い。
 在来線や東海道新幹線のコンコースなら売っているが(しかも東海道新幹線は、ホームでも売っている)。
 その代わり、東北新幹線ではホームで売っているイメージである。
 エスカレーターに乗って、ホームへ上がる。

 高橋:「先生、これは1番端の車両ですか?」

 高橋がキップを見て言った。

 愛原:「そうだ。BSAAとの取り決めじゃ、仕方無いだろう」

 私達が乗車する車両は1号車。
 下りだと最後尾である。
 リサが列車に乗る場合、基本的には先頭車か最後尾に乗らなくてはならないことになっている。
 これは仮にリサが車内で暴走した場合、BSAAが外から攻撃する時に目標を定めやすくする為だ。
 もしどうしても中間車に乗らなくてはならない場合は、事前に善場主任を通してBSAAに申告しなければならない。
 善場主任の所属するNPO法人デイライトは、日本国内におけるBSAAの窓口になっている(自衛隊や在日米軍ではない。BSAAはそれらの軍隊とは完全に独立している)。

 愛原:「それに、お前にとっては1号車で良いこともあるぞ?」
 高橋:「えっ、何スか?」
 愛原:「喫煙所に1番近い車両」
 高橋:「マジっスか」
 愛原:「今のうちに吸い溜めしておけ。東北新幹線は、東海道新幹線と違って車内で喫煙できないから」
 高橋:「あざっス!」

 JR東日本の新幹線ホームには喫煙所が2ヶ所ずつあるのに対し、東海道新幹線ホームは1ヶ所ずつしか無い。
 多分これは、車内喫煙が可能か否かというのもあるのだろう。

 斉藤絵恋:「リサさん!」
 リサ:「サイトー!?」

 ホームに上がると、また意外な人物達と会った。

 斉藤秀樹:「これはこれは愛原さん。奇遇ですな」
 愛原:「斉藤社長、これから御旅行ですか?」
 秀樹:「ええ。那須の別荘です。これくらいなら、この連休でも行けると思いまして」
 愛原:「そうですか。いいですなぁ……」
 秀樹:「本当は愛原さん達もお誘いしたかったのですが、何ぶんこの感染状況ですので……」
 愛原:「当然ですよ。親子水入らずですね」
 秀樹:「愛原さん達は、確かお墓参りでしたな?」
 愛原:「そうです。ここ何年も行ってなかったので」
 秀樹:「賢明な判断です。恐らくお盆期間中は……無理になるかと」
 愛原:「やはりそうですか」
 秀樹:「もっとも、BOWリサ・トレヴァーを手懐けている愛原さんは新型コロナウィルスも手懐けそうですが」
 愛原:「ご、御冗談を!」
 リサ:「さすがはサイトーのお父さん。分かってる」
 絵恋:「そりゃそうでしょ?日本一の製薬会社の社長ですもの!」
 リサ:「ふーん……」
 絵恋:「な、なに?」
 リサ:「別に」
 愛原:「私達は“はやぶさ”15号に乗ります。社長方は?」
 秀樹:「私達はその次の“やまびこ”207号ですな。那須塩原で降りますので」
 愛原:「那須の別荘ですと、そうなりますよね。でも、東京駅から乗られるなんて珍しいですね?」
 秀樹:「仕事の関係で、昨日は帰りが遅くなりましてね。昨夜は都内のホテルに泊まりました。で、今朝娘と一緒に出発ですよ。娘は娘で、都内のマンションに泊まりましたから」
 絵恋:「リサさんと東京駅で会える気がしたの!どう?私の愛の力?」
 リサ:「ん?呪いの力?」
 絵恋:「愛!あ・い!」
 リサ:「分かった分かった」
 絵恋:「ねえ、お父さん!リサさん達の方が先に出発するんですって。お見送りしていいでしょ?」
 秀樹:「いいだろう。乗り遅れるなよ?」
 絵恋:「分かってるよ。リサさんは何号車?」
 リサ:「1号車。1番後ろ」
 高橋:「先生、俺はタバコ吸ってきます」
 愛原:「ああ、行ってこい。社長、私が見ておきますから」
 秀樹:「ああ、すいませんね。報酬は後でお支払いします」
 愛原:「あ、いや、こんなのサービスでいいですよ」
 リサ:「駅弁買うー」
 絵恋:「売店あっちにあったよー!」
 愛原:「あ、こら、待ちなさい」

 全く、子供は落ち着きが無いな。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「リサと夏休み」 

2021-08-05 15:10:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日08:46.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前停留所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから、仙台にある私の実家に帰省する予定だ。
 過去に帰省自体はしていたものの、肝心の墓参りをしていなかった為、今回はそれがメインである。
 ……というのは表向き。
 実は善場主任からの密命も一応帯びている。
 民間の探偵なので、できることは限られているが。
 松田優作主演の“探偵物語”のようにはいかないのだよ。

 愛原:「それにしても……」

 バス停に並ぶリサを私は見た。
 この中でリサが1番荷物が大きい。
 中高生が合宿で使うようなバッグが1つだ。

 愛原:「少し荷物多くないか?」
 リサ:「そうかな。まあ私、着替えとか多いから」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「あとはお土産を入れる用」
 愛原:「クラスにいたなぁ……。旅行の土産を全員に配るヤツ……」

 そんなことを話していると、バスがやってきた。
 オーソドックスな、いすゞ・エルガのノンステップバスである。

〔門前仲町、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます〕

 普段は1時間に1本しか運転されていないローカル線ということもあり、バスは空いていた。
 大型車に、先客が7~8人ほどしか乗っていない。
 前乗り先払い式なので、先にPasmoやSuicaで運賃を払う。
 ふとリサのPasmoを見ると、残額が少なくなっているのが分かった。

 愛原:「リサ、残り少なったな。後でチャージしといてやるよ」
 リサ:「うん。ありがとう」

 運賃を払うと、後ろの席に座る。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは乗客を乗せると、走り出した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは門前仲町、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きです。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕

 愛原:「梅雨も明けると、さすがに暑いなぁ……」
 高橋:「あっという間の梅雨でしたね」
 リサ:「はい、クーラー」

 窓側に座るリサが手を伸ばし、クーラーの吹き出し口を私に向けた。

 リサ:「ああ、ありがとう」
 高橋:「先生も、もう少し涼しいカッコにするといいんじゃないスか?」
 愛原:「いや、俺はこれでいいよ」

 高橋がTシャツにジーンズというラフな格好に対し、私はカジュアルシャツにチノパンを穿いている。
 リサはノースリーブの白いTシャツに、デニムのショートパンツを穿いている。
 その上から半袖のフード付きパーカーを羽織っていた。
 変化した時、どうしても長くて尖った耳や角を隠す必要が出て来るかもしれないからである。
 恐らくバッグの中にも、あの白い仮面を入れているのではないだろうか。

 高橋:「善場の姉ちゃんから、何か連絡ありましたか?」
 愛原:「いや、無い。だから、変更は無いってことだ。車の運転とかは任せたぞ」
 高橋:「はい。それはお任せください。アツい走りをお見せしますよ」
 愛原:「いや、フツーに走ってくれればいいから」

 現地では車が必要になるかもしれない。
 そんな時、元走り屋の高橋は役に立つ。

 高橋:「でも、今日は墓参りだけで終わりですよね?」
 愛原:「多分な。お寺さんには行く必要無いし」

 それはお盆の時であって、今月ではない。
 あいにくとそれは、私を含む首都圏在住以外の親族が行うことになる。
 コロナ禍の為だ。
 早く、普通に帰省とか旅行とかできるようになるといいな。

[同日09:15.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございました。次は終点、東京駅丸の内北口、東京駅丸の内北口でございます。どなた様もお忘れ物の無いように、お支度ください。東京駅からJR線、東京メトロ丸ノ内線をご利用のお客様は、お乗り換えでございます。……〕

 いくらバスの窓ガラスにはUVカットシートが貼られているとはいえ、夏の太陽の直射日光はさすがに暑い。
 特にコロナ禍で、窓を開けた状態で走っているので尚更だ。
 今のバスは開口部が小さくなっているが、昔の上下に開く窓だった場合、どの程度開けられるのだろう。
 やはり上1段、下1段といったところだろうか。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、東京駅丸の内北口です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います」〕

 バスは高層ビルの立ち並ぶ丸の内側の広場に停車した。

 リサ:「高層ビルでバイオハザードも面白そう……」

 中扉から降りたリサがそんな高層ビルを見上げて言った。

 愛原:「BSAAに殺されたくなかったらやめなさい」

 私はさらりと突っ込んだ。

 愛原:「それより早く行くぞ。さすがに直射日光はキツい」
 リサ:「焼け死ぬ?」
 愛原:「吸血鬼じゃないんだから……」
 リサ:「体が青白いヤツとかは日光に弱いから、そこが狙い目だね」
 愛原:「『6番』のことか?」

 日本版リサ・トレヴァーの中には太陽に弱い者もいた。
 天長会的に言う『最も危ない12人の巫女たち』の中、それは結局1人だけだった。
 確かに今から思えば、ここにいる『2番』のリサを含む他のリサ・トレヴァー達の中で、肌の色が青白かったような気がする。
 そして、吸血鬼の肌色も確かに青白いというイメージがある。

 リサ:「で、私は弱くない」
 愛原:「多分、弱い方が欠陥なんだろうな」

 そんなことを話しながら駅構内に入る。

 リサ:「ふふ……。オリジナルの大先輩が歩いていそうな吹き抜け……」
 愛原:「山奥の洋館じゃないんだから……」

 リニューアルされた東京駅丸の内側には、ちょっとしたオペラハウスのような吹き抜けがある。
 リサはそれを見てあのように呟いた。

 愛原:「どれ、忘れないうちにチャージしといてやる」
 リサ:「ありがとう」

 私はキップ売り場に行くと、リサからPasmoを預かった。
 それで、1万円ほどチャージしておく。

 リサ:「今月のお小遣い?」
 愛原:「それもあるし、今回の旅行の諸経費もある。無駄遣いするなよ?」
 リサ:「分かったー」
 愛原:「それじゃ、キップは1人ずつ持とう」

 私は下りの新幹線のキップを取り出した。
 新幹線指定席券と乗車券が1枚にまとまったタイプだ。

 リサ:「私、窓側がいい」
 高橋:「俺は先生のお隣でオナシャス!」
 愛原:「必然的に俺がB席になるわけだ」

 新幹線の普通車には3人席があるからこれで丸く収まるが、2人席しか無い在来線とかはどうしよう?
 今はコロナ禍で、座席を向かい合わせにすることもお断り状態となっている。

 愛原:「それじゃ、行こうや」
 高橋:「うス!」
 リサ:「はーい」

 私達は自動改札機にキップを通して、ラチ内……もとい、改札内に入った。

 リサ:「駅弁~、駅弁ー」
 愛原:「ああ、分かった。新幹線ラチ内に入ってから買おう」

 その時、私達はとある人物と偶然出会った。
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