報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台最後の夜」

2021-08-27 20:14:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日21:00.天候:雨 宮城県仙台市青葉区中央 スーパーホテル仙台・広瀬通り]

 夕食会が終わり、ホテルに戻る途中でコンビニに立ち寄っていたら雨が降って来た。

 愛原:「危ねぇ!間に合った!」
 高橋:「いや、でも、ちょっと濡れちゃったっスね」
 リサ:「お菓子は濡れてない」
 愛原:「そりゃ良かったな。よし、着替えて温泉入ろう」

 部屋のドアは鍵でもカードキー式でもなく、暗証番号式である。
 エレベーターに乗って、私達の泊まっている客室に向かった。
 それから部屋に入る。
 因みに、リサも一緒に入った。
 リサは隣の部屋なのだが、実は一緒に入っても大丈夫なのである。
 何故なら……。

 高橋:「3人は狭ェから、オマエは隣の部屋に行け」
 リサ:「いいじゃん、別にぃ」
 愛原:「ま、とにかく着替えるから、リサも隣の部屋に行って着替えろ」
 リサ:「分かったよ」

 リサはそう言って、部屋の中から隣の部屋に向かった。
 実は私達の泊まっている部屋はコネクティングルームと言って、隣の部屋同士が室内から行き来できる構造になっているのである。
 もちろん、途中にはドアが2つある。
 それぞれのドアには内鍵が付いていて、それぞれが室内から鍵を開けない限り、両方のドアが開くことはない。
 高橋はそれを確認すると、私達の部屋側からそのドアを閉めて鍵を掛けた。

 高橋:「先生、化け物は排除しましたぜ?」
 愛原:「オマエ、ラスボスクラスをナメんじゃねぇぞ?」

 私は急いでドアを開けた。
 すると、そのドアの向こうでは、第一形態に戻ったリサが険しい顔をして右手を変化させようとしているところだった。
 ラスボスクラスどころか、大ボスクラスであっても、ドアを閉めればそれでOKなんてことはない。
 そのドアをブチ破ったり、壁をブチ破ったりして追い掛けて来ることなんて朝飯前なのだ。

 リサ:「お兄ちゃん……!」
 愛原:「分かった分かった。もうドアは閉めないから」
 高橋:「ちっ、俺と先生の夜の一時を……」
 リサ:「私だけ除け者にしたら許さないから」
 愛原:「分かったから早く着替えろ。……っと、善場主任からメールだ。ちょっと待っててくれ」

 リサは再び隣の部屋に向かった。
 今度はドアを閉められないよう、警戒しながら……。

 高橋:「善場の姉ちゃん、何ですって?」
 愛原:「山形での協力ありがとうだって」
 高橋:「ありがとうって、俺達ドライブしかしてないっスよ?」
 愛原:「リサが寝惚けて変化してくれたせいで、BSAAが出動しただろ?」
 高橋:「あー、そうっスね」
 愛原:「元々はBSAA極東支部日本地区本部が自衛隊と共同訓練を行う予定だったらしいんだ。リサが暴走したという想定で」
 高橋:「その訓練台ってことですか」
 愛原:「そう。奇しくもリサが寝惚けて第2形態まで変化してくれたおかげで、BSAAの持つBOW探知機の精度確認と、出動訓練ができたってことで、その御礼」
 高橋:「元々はどんな訓練だったんスか?」
 愛原:「バイオテロ組織がリサを浚って逃走したので、その追跡作戦の模擬訓練だって」
 高橋:「そんなこと聞いてないっスよ!?」
 愛原:「事前に教えたら、俺達が不自然な動きをするんじゃないかって。バイオテロ組織は、まだBSAAに追跡されているということは知らないテイだから」
 高橋:「今度からは自衛隊の駐屯地近くを通る時も要注意っスね」
 愛原:「別に自衛隊の駐屯地に、いつもBSAAがいるってわけじゃないよ。むしろカテゴリー的には国連軍のようなものだから、どちらかというと米軍基地にいることが多い」
 高橋:「後で謝礼とかあるんスか?」
 愛原:「取りあえず、レンタカーの延滞料金分は出してくれるってさ」
 高橋:「何スか、それ……」

 私達も着替えて、それから大浴場に向かった。
 その前に、汚れ物の洗濯に当たる。
 幸いこのホテルにはコインランドリーがある為、それを利用した。
 リサのヤツ、服はともかく、下着とかも私には隠さずそのまま袋から出して洗濯機に入れている。
 リサの下着も黒系が多い。
 これは私や高橋が、シャツやパンツは黒系を着ることが多いので、リサも真似したらしい。
 なので私は、私達には気にせず、もっと明るい色の下着を着けた方が良いと言ったことがある。
 学校に行く時はそうしているみたいだが、旅行の時は黒系が多い。

 愛原:「洗濯の後で乾燥機にも掛けないとな。少し時間が掛かるみたいだ。まあ、当たり前か。また後で来よう」
 高橋:「これで帰った後で、洗濯とかしなくて済みます」
 愛原:「そうだな」

 コインランドリーから出ると、今度は大浴場に向かう。

 高橋:「先生!この不肖の弟子、高橋正義が先生の御背中を流して差し上げます!」
 愛原:「あー、分かった分かった。じゃあ、頼むよ」
 高橋:「お任せください!」

 こういう所に来ると、高橋は必ず私の背中を流したがる。

 愛原:「ふー……これだな」

 背中を流してもらうと、私達は湯船に浸かった。
 ホテルの大浴場なので、そんなに内装は派手なものではないし、露天風呂があるわけでもないが、それでも足が伸ばせる天然温泉があるのは素晴らしい。
 仙台市街では、ホテルにこういった大浴場を設けることは珍しくない。
 ビジネスホテルではこのスーパーホテルやドーミーインがそうだし、天然温泉ではないようだが、三井ガーデンホテルにもある。
 シティホテルだと、ホテルモントレ仙台もそう。
 元々は温泉施設を造るつもりはなかったそうだが、建設工事中に偶然温泉を掘り当ててしまい、急きょ他のホテルモントレには無いスパ施設を造ったという逸話がある。

 高橋:「いやー、これっスね」
 愛原:「また、風呂上がりのビールが格別なんだな、これが」
 高橋:「もちろん、買って来て冷蔵庫に入れてあります。おつまみもありますんで」
 愛原:「よしよし。それじゃ、温まったところで上がるか」
 高橋:「はい。ところで先生」
 愛原:「ん?」
 高橋:「先生はサウナには入られないんですね」
 愛原:「そうだな。高橋、俺は夏の暑い時期に、わざわざ辛い物を食べて汗をかこうってヤツの気がしれないんだ」
 高橋:「はあ」
 愛原:「そういうヤツは、『夏の暑い時期に、わざわざクソ暑い部屋に入って汗をかこうってヤツの気がしれない』わけだよ」
 高橋:「これも名探偵の格言ですね!メモっておきます!」
 愛原:「……せんでいい」

 もっとも、『だったら夏の暑い時期に、熱い温泉に入って汗をかこうってヤツの気がしれない』とツッコまれても、私は反論できないのだがw
 とにかく私達は温泉から出ると、体を拭いて浴衣を着ることにした。
 さすがに脱衣所はエアコンが効いていて、そこでしばらく汗を退かせようと思っていたのだが、大浴場の外でリサが待っていると思い、早めに出ることにした。

 リサ:「待ってたよ。早く部屋に戻って、晩酌しよう!」

 本当に大浴場の外では、浴衣姿のリサが待っていた。

 愛原:「オマエは飲めないぞ。それより、今度は洗濯機から乾燥機に入れないと」
 リサ:「おっ、そうだった」

 再びコインロッカーに行き、洗濯機から乾燥機へと洗濯物を移し替える。
 もちろんそのまま入れるのではなく、一着ずつ伸ばして入れるのだが、やはりリサは私達の前では下着も平気で目の前で伸ばして入れているのである。
 もちろん家族だからそこまで気を使わなくてもいいのだろうが、しかし恥じらいの無さに少し心配することがあるのは……。

 リサ:「私の『旦那様』だからだね!?分かる分かる!」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 愛原:「『親心』だよ」(・д・)チッ
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“私立探偵 愛原学” 「最後の夕食会」

2021-08-27 16:06:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日18:00.天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅3F“すし通り”]

 ホテルに荷物を置いて来た私達は、再び仙台駅に向かった。
 そこで実家からやってきた両親と合流する。

 父親:「夕食を奢ってくれると聞いたが、寿司か。オマエも豪勢になったな」
 愛原:「コロナのせいで、しばらく帰って来れなくなるかもしれないでしょ?仕事も軌道に乗り出してきているから、今のうちに親孝行」
 母親:「本当の親孝行は、結婚して孫の顔を見せてくれることなんだけどねぇ……」

 この毒親め!

 リサ:「はーい!わたしわたし!私がお孫さん産んでみせます!」
 高橋:「今のまま孕んだら、どんな化け物が産まれてくるか分かんねーぞ」

 親は見た目は人間だったのに、実は特異菌まみれの体のせいで、やっぱり見た目は普通の人間なのに中身は化け物ってのがヨーロッパで生まれたと聞いたが……。
 ま、遠く離れた日本では関係ないか。

 母親:「リサちゃんは大人になってからね」
 高橋:「あと、人間に戻ってからな」

 そんなことを話しながら、仙台駅3Fの“牛たん通り”と“すし通り”を歩く。
 ここは宮城県内の牛タンや寿司の名店を集めて出店させたエリアである。
 駅ナカとはいえ、改札外にあるので、電車に乗らなくても気軽に立ち寄れる。
 牛タンなら先日食べたばかりだというのに、リサの目は寿司よりも牛タンの方を向いていた。

 愛原:「ここにしよう」

 私達は“すし通り”の一角にある寿司店に入った。
 5名なのでカウンター席ではなく、テーブル席へ通される。
 コロナ禍でアルコールの提供は停止となっている。
 仕方がないので、ノンアルビールやウーロン茶で乾杯することになる。

 愛原:「遠慮しないで、好きなもの頼んでよ」
 母親:「そうねぇ……。孫は女の子が1人、男の子が1人でいいわ」
 リサ:「はい、かしこまりました。女の子が1人、男の子が1人ですね」

 リサはスマホを取り出して、真剣な顔でメモをしている。

 リサ:「女の子は先にお作りしますか?」
 母親:「一姫二太郎っていうからねぇ……」
 父親:「おい、それ意味違うぞ」
 愛原:「なに飲食店で注文するノリで言ってんの!」
 高橋:「先生の御両親、パネェっスね」

 取りあえずノンアルビールの瓶を3本注文し、リサにはウーロン茶を注文した。

 リサ:「おおっ、鯨のベーコン!」
 愛原:「食べたかったらいいよ」
 リサ:「天ぷら盛り合わせ!」
 愛原:「寿司屋の天ぷらもなかなか美味いからな」
 高橋:「そば屋のカレー的なヤツですか?」
 愛原:「そうだな」
 父親:「明日帰るのか?」
 愛原:「そう。明日の昼くらいには出発するよ」
 父親:「そうか。向こうは感染者が多いから気をつけろよな」
 愛原:「ああ、分かってるよ」

 こっちにはリサのTウィルスとGウィルスという、ワクチンより確実に新型コロナウィルスを殺せる物があるから……。

[同日20:00.天候:曇 JR仙台駅→仙台市地下鉄仙台駅]

 リサ:「あー、美味しかった!ごちそうさま!」
 父親:「キミ、相変わらずいい食べっぷりだねぇ……」
 母親:「ホント。これなら、元気な孫を産んでもらえそうねぇ」
 リサ:「任せてください!」
 高橋:「いや、今の状態で産ませたら、確実にBSAAや“青いアンブレラ”が出動しますぜ?」
 父親:「ルーマニアの事件みたいにかい?」
 高橋:「ルーマニア?……っスか?」
 父親:「今年の2月辺り、ルーマニアの片田舎で国連軍や国際対バイオテロ組織の何とかって所が出動したって聞いたが……」
 高橋:「それがBSAAと“青いアンブレラ”ッスよ!何があったんスか?」
 父親:「詳しくは知らないが……」

 仙台駅西口の1階まで向かう。
 そこのタクシー乗り場で、両親を見送った。

 愛原:「じゃ、俺達もホテルに戻ろうか。疲れたし」
 高橋:「先生の大好きな温泉っスね。お供します!」
 愛原:「背中流してくれれば、それでいいよ」
 リサ:「はい!わたしも!」
 愛原:「混浴じゃねーっての」
 高橋:「そうだそうだ」
 リサ:「ぶー……!」

 地下鉄の入口から地下道に降りる。
 多くの人が行き交っているのだが、それでも都内の地下道と比べれば余裕はあるか。
 また、平日ではなく休日だからというのもある。
 で、この地下道はオリンピック関係の導線にもなっているのか、ボランティアが立って何だか看板を持っていた。
 私達はそれを横目に、改札口を目指す。

[同日20:11.天候:不明 地下鉄仙台駅→南北線電車先頭車内]

〔2番線に、泉中央行き電車が到着します〕

 愛原:「何とか雨は持ちそうだな」
 高橋:「そうですね」
 愛原:「で、やはり酒が無いのは物足りないな」
 高橋:「そうですね」
 愛原:「途中のコンビニで、酒でも買っていくか」
 高橋:「いいっスね」
 リサ:「ジュースとお菓子もいい!?」
 愛原:「分かったから、そんなにがっつくな」

 電車が入線してくる。
 東西線と違い、1両20メートルのフル規格サイズだ。

〔仙台、仙台。東西線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 乗降客数が仙台市地下鉄でもトップの駅ということもあり、この駅でぞろぞろ降りて来る。
 で、逆に乗車客数も多い。
 一区間だけなので、私達はドア付近に立っていた。
 ワンマン運転と言えども、ターミナル駅では、運転士も立って直接ホーム監視をしている。

〔2番線から、泉中央行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 発車サイン音は短めのもの。
 かつては電子電鈴だった。

〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 かつては気の抜けるような音のドアブザーだったが、今はドアチャイムに変わっている。
 東西線のものとは比較的静かな音色のドアチャイムが鳴って、ドアが閉まった。
 そして、電車が走り出す。

〔次は広瀬通、広瀬通。一番町・中央通りは、こちらです〕
〔The next stop is Hirose-dori station.〕
〔日蓮正宗日浄寺へは北仙台で、日蓮正宗妙遍寺へは八乙女でお降りください〕

 高橋:「明日の昼ですか?帰りは」
 愛原:「そう。明日は楽して帰るぞ」
 高橋:「行きも比較的楽だったような気がしますが……」
 愛原:「行きとは明らかに違うルートだよ」
 高橋:「ええっ?」
 愛原:「まあ、俺に任せとけ。後悔はさせないよ」
 高橋:「は、はい。よろしくオナシャス」
コメント (2)
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