報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「小牛田での一夜」 2

2021-08-11 20:15:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日01:30.天候:晴 宮城県遠田郡美里町某所 愛原公一の家]

 リサ:「うへへへ……!そんなことしてぇ……先生のヘンタイ……!オシッコプレイ好きなのぉ……?」

 リサはどうやら愛原と【ぴー】する夢を見ているようだ。
 さすがに愛原や高橋とは、襖1つ隔てた隣の間で寝ている。

 リサ:「ん……?」

 だが、いいところで目が覚めてしまった。

 リサ:「何だ……夢か……。オシッコプレイ、いい所だったのに……」

 これで小さな子供ならオネショでもしているところだが、さすがに肉体年齢15歳のリサではそのようなことはない。

 リサ:「……本当にトイレ行きたくなってきた」

 というわけでリサは布団から出るとトイレに向かった。
 廊下は消灯されていて真っ暗である。
 だが第一形態に戻っているリサは、持ち前の暗視能力で、廊下の照明も点けずにトイレに向かった。
 恐らく知らない者が見たら、『鬼娘』の接近に絶叫を上げ、特殊部隊の者は手持ちの銃火器を発砲することだろう。
 そんなリサでも、全く照明の点いていないトイレは不気味に思ったらしく、それは点灯させた。

 リサ:「眩しい……」

 元公民館の集会所だったトイレということもあってか、公一1人で住むには広いものとなっている。
 元々は男女別に分かれていたそうだが、さすがに公一1人で住むのにそんなにトイレの数は必要ではなく、女子トイレの部分は改築の際に閉鎖されてしまった。
 その為、男子トイレが共用トイレとなっている。
 蛍光灯の灯りが煌々と光る中、リサは個室に入って用を足した。
 田舎の公民館のトイレだと、和式便器がまだまだ現役だろうが、改築の際に洋式便器に交換された。
 これは公一のような老人は、逆に和式便器は使いにくいからである。
 その為、小便器は昔ながらの朝顔タイプでありながら、個室だけやたら新しいタイプの洋式便器というアンバランスなものだった。

 リサ:「ふっ……」

 リサは男子用小便器を見て、あることを思い出した。
 リサ・トレヴァーが軟禁されていたアンブレラの研究施設には、リサ・トレヴァー達が使うトイレがあった。
 それは通常の便器ではなく、『女性用小便器』であった。
 これは1971年までTOTOで製造されていたもので、1964年の東京オリンピックで会場となった国立競技場にも設置されていたという。
 これは便座に腰かけなくても、女性が中腰で小用を足せるような設計になっていたという。
 1964年のオリンピック会場に設置されたのは、女性選手がいちいちユニフォームを脱ぎ着する手間を省けさせる為だという。
 しかし男性目線で設置されたものであった為、当の女性達には不評であったらしく、全国に普及することはなく、1971年に製造中止となっている(女性がトイレの個室を必要とするのは、何も用を足すだけではないでしょう?当時の男性開発者は、そういう着眼点が不足していたようである)。
 しかし1971年までは製造されていたわけなので、少なくとも20世紀最後まで存在していた所は存在していたようである。
 これは作者が幼少の頃(1980年代半ば)の話だが、母親に連れられて、とある仙台市内の百貨店に行った。
 母親がトイレに行ったので、作者も一緒に行った。
 まだ作者が幼稚園くらいの頃の話なので、そんな幼児が一緒に女子トイレに行っても別に問題は無かった。
 その時、とても奇妙な便器がトイレの奥に鎮座していたのを覚えている。
 女性客は誰もその便器を使用しておらず、他の普通の便器は個室になっているのに、その便器だけカーテンで仕切られているだけであった。
 幼児用の便器は別に存在していたので、それ用でもない。
 今から思えば、あれは女性用の小便器だったのではないか。
 母親にあれは何かと聞いた記憶はあったが、母親はまともに答えてくれなかったと思う。
 本当に知らなかったのか、本当は知っていたが幼児に下品な答えをしたくなかったのか、それは分からない。
 尚、それから何十年か経って母親に同じ質問をしてみたが、そんな便器があったことは覚えていないという。
 その百貨店はあの後、何度か経営者が変わっているが、建物の内装自体はそんなに変わっていない……ので、まさか今でも存在しているとは思えないが……。
 男子トイレにはかような便器が1つも存在していないのは、この目で現認している。

 リサ:「ん?」

 用を足し終えたリサがトイレットペーパーで後処理をしようとした時だった。
 壁の向こうから、何か機械が作動するような音が聞こえた。
 トイレ内に響く機械音は、換気扇の音だけだ。
 それとは別に、機械が動く音がしたのだ。
 何かモーターが動くような音だった。

 リサ:「何だろう?」

 用を足し終えてトイレから出ると、リサは音がした方に向かった。
 まず、隣にあるのは潰された女子トイレ。
 完全に扉がコンクリートで塗り込められて、言われないとそこにもトイレがあったことは分からないようになっている。
 で、更に廊下を進むと、次にあるのが仏間だった。
 今、仏間には公一で寝泊まりしているはずだ。
 しかし、その部屋からは機械の音がしなかった。
 長くて尖った耳は人間の耳よりも聴力が優れているが、中から聞こえてくるのは扇風機の音くらいである。
 この辺りは夏の夜は涼しいのか、気温も23度前後である。
 その為、愛原と高橋も窓を開けて(網戸は閉めている)扇風機を点けていた。
 それと同じことを公一もしているのだろう。
 しかし、トイレの壁から聞こえて来たような機械の音はしなかった。

 リサ:「ん?」

 襖の隙間から仏間を覗くと、仏壇の下の地袋から公一が出て来た。
 そして、観音扉となっている地袋を閉めると、あのナンバーロック式の鍵を閉めている。

 リサ:(こんな夜中にどうしたんだろう?)

 リサは首を傾げながら、自分の部屋に戻った。
 これがマンガやアニメなら予期せず大きな音を立ててしまい、中の者に気づかれて襲われるなんて展開があったりするものだが、ベタ過ぎる展開はさすがにどうかと思うので、今回はそのような展開はしないこととする。
 リサは普通に部屋に戻ると、再び布団に潜り込んだ。
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“愛原リサの日常” 「小牛田の一夜」

2021-08-11 14:51:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日17:30.天候:晴 宮城県遠田郡美里町某所 愛原公一の家]

 小牛田駅からタクシーに乗ったリサ達。

 愛原学:「あ、そこを左に入って下さい」
 運転手:「左ですね」

 タクシーは左ウィンカーを上げ、小川の上に掛かる小さな石橋を渡った。
 橋の袂には、朽ちた石柱が立っていて、微かに『小牛田町○×公民館○×集会所』という文字が何とか読めるほどだった。
 今、小牛田町という自治体は無く、正に合併前には現役の公民館として機能していたのだと思われる。
 小さな橋を渡ると、数メートル登った。
 これは入口にある小川は台風などの時に氾濫することがあり、避難所にもなる公民館が水没しないよう、かさ上げをしたからなのだという。

 リサ:「あっ、ジョンだ!」

 平屋建ての元集会所の横に犬小屋があり、そこに柴犬のジョンがいた。
 リサ達を見つけて、はしゃぎながらワンワン吠えている。

 高橋:「相変わらずうるさいイッヌですね」
 学:「まだ3歳にもなっていないんだろ?だったらそういうもんだよ」

 助手席に座っている愛原が料金を払う。
 その間、高橋とリサはトランクから荷物を降ろした。

 リサ:「ジョン!」

 リサを見つけると、尻尾を大きく振ってリサにすり寄る。
 尚、高橋と愛原には塩対応をするので、ジョンは本能的にこの3人の中で、誰に従うのが1番良いかが分かるらしい。

 リサ:「全然美味しそうに太ってないじゃん!これじゃ食べれないよ」
 ジョン:「キャン?!」
 高橋:「犬を食おうとするな」
 リサ:「感染させてゾンビ犬に……」
 愛原:「せんでいい」

 料金を払って、タクシーを最後に降りて来た愛原がリサにツッコんだ。

 学:「一応、明日の迎えについても予約しておいたよ」
 高橋:「あ、そうか。明日はここから駅まで戻らないといけませんしね」
 愛原:「そうそう」

 愛原達は引き戸式の玄関を開けると、中に入った。

 学:「お邪魔しまーす」

 台所からいい匂いがすることから、今は伯父さんが夕食の支度をしてくれているようだ。
 伯母さんが亡くなってから、案外1人で気楽に生きているものだ。

 公一:「おー、来たかー!待ってな。今、夕食作ってる最中ぢゃ」
 高橋:「俺、手伝いますよ?」
 公一:「客人はおとなしく茶の間で待っとれ。……と、言いたいところじゃが、取りあえずホットプレートとか運ぶのだけはお願いしようかの」
 高橋:「うっス」
 リサ:「ホットプレート。ということは……」
 公一:「うむ。今日の夕食は焼肉じゃ」

 公一は冷蔵庫から、スーパーのパックに入った生肉を取り出した。

 学:「予想通り、スーパーの肉か」
 公一:「最近は牛を飼ってる農家が無くての、残念じゃのう……」
 学:「そりゃあ……ねぇ……」

 愛原が子供の頃、公一に連れられて訪れた農家では牛を飼っていたそうだが、今では酪農家でも無いのに牛を飼っている農家など皆無に等しいだろう。
 茶の間のテーブルの上にホットプレートを置いたり、麦茶やビールなどを持って行く。

 公一:「これは仏壇へのお供え物ぢゃ」
 学:「御仏壇なんてあったんだ」

 元は公民館の集会所だが、公一の住みやすいように改築されている。

 公一:「学が早く結婚できるように、ワシから願掛けぢゃ」
 学:「何で申し合わせたかのように、そういう圧を掛けて来るの?」
 リサ:「はいはーい!私!私が先生のお嫁さんに立候補しまーす!」
 公一:「ワシの祈り、早くも叶ったの。見たか!ワシの信心!」
 学:「実家ではしれっと反対されたけどね」
 公一:「なに、本当か?よし、ワシから言っといてやる。学は安心してこのコと結婚せい」
 学:「BOWとの結婚は、相当ヤバいと思いますが?」
 公一:「人間に戻れたらな。ワシも確かに生物学上、BOWのままでは危険じゃと思っとる」
 学:「リサ、そういうことだぞ。やっぱり人間に戻る努力をしなきゃ」
 リサ:「私はいいけど、具体的に戻れる方法を見つけなきゃ。先生を犠牲になんてしたくない」
 公一:「ん?オマエの犠牲で、このコが人間に戻れる方法があるのか?」
 学:「そうらしいんです」
 公一:「それは本末転倒だな。学が犠牲にならずに、このコが人間に戻れる方法を模索せんと」
 学:「それが難しいから、みんな苦労してるんですよ」
 公一:「まあ、それはそれとして、まずは夕飯を食おうかの」
 学:「それもそうですな」

 愛原達は仏間から茶の間へと向かった。
 ……その時、リサはどうしてもこの仏間に何か違和感を禁じ得なかった。
 元々はただの集会室としての和室を仏間に改築したものだから、それなりの不自然さはあるだろう。
 しかし、それを抜きにしても何か変な感じなのだ。
 公一くらいの歳(凡そ80歳)ともなれば、立派な仏壇を構えて先祖供養なんてのは珍しくない。
 仏壇の下には地袋があって、それは観音開きタイプなのだが、ナンバーロック式の南京錠が取り付けてあった。

 リサ:「ねえ、先生の伯父さん。どうして、仏壇の下に鍵が付いてるの?」
 公一:「あれは仏具をしまっておくスペースなんじゃが、仏具ってのは案外高いものなんじゃ。盗難に遭わぬよう、他の貴重品と併せてあそこに入れておる。それで鍵を付けているんじゃ」
 愛原:「確かに地袋の中に金庫とか入れてある家とかありますもんね」
 公一:「さすがに金庫は入れておらんが、似たようなものじゃな」
 リサ:(それが違和感の原因かぁ……)

 茶の間に行き、夕食を食べ始める。

 公一:「ほれほれ。肉はどんどん焼いて食べていいぞ」
 リサ:「わぁい」

 元の姿に戻って夕食を楽しむリサだった。

 公一:「明日はどうするのかね?」
 学:「一度仙台に戻って、レンタカーでも借りようかと。どうしても鉄道では不便な所もあるしね」
 公一:「まあ、それはそうじゃの」

 リサは空腹と、少しずつ満たされて来る満腹感で、先ほどの仏間で感じた違和感についてはすっかり忘れてしまった。
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