報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「再び市街地へ」

2021-08-25 19:50:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日16:33.天候:曇 宮城県仙台市宮城野区苦竹 JR苦竹駅→仙石線1672S列車先頭車内]

 昼食を取った後は再びラウンドワンに戻り、今度はゲームに興じた。
 さすがにクレーンゲームはやらなかったが、そこでもリサは熱中したあまり……。

 リサ:「暑い暑い」

 クーラーの効いた店内にも関わらず、汗をかいていた。

 愛原:「どうだ?少しは気分転換できたか?」
 リサ:「うん、できた」

 もっとも、リサが見た不思議な夢については後で善場主任に報告しなくてはならないだろう。

 

 愛原:「それじゃ、一旦戻るか。戻ってホテルにチェックインしよう。荷物もその時、置いて行けばいいだろう」
 高橋:「そうですね」

〔ピンポーン♪ まもなく2番線に、上り列車が参ります。黄色い線の内側まで、お下がりください〕

 ここでも接近放送は簡易的なものである。
 ホームの屋根は一部にしか掛かっておらず、吹き曝しのホームに強い風が吹く。

 高橋:「先生。何だか雲行きが怪しいですよ?」
 愛原:「うーん……。こりゃ、ガチでゲリラ豪雨降るかなぁ……」
 リサ:「学校で夏休み前の怪談をやった時に似てる……」

 HIDの眩い前照灯を点けて、4両編成の電車がやってくる。
 隣の小鶴新田駅始発の電車ということもあり、車内は空いていた。
 今度は先頭車に乗り込み、空いている座席に座った。
 発車ベルもメロディも無く、遠くから微かに車掌の笛の音が聞こえてきて、それからドアが閉まる。
 因みに仙石線用に改造されてから、ドアチャイムも鳴るようになった(音色は首都圏のJR車内で流れる運行情報のチャイムに酷似している)。
 電車が走り出す。
 コロナ対策として、一段下降式の窓も少し開けられており、そこから生暖かい風が吹き込んで来る。
 まだ風が生暖かいうちは、ゲリラ豪雨の心配は無いか?
 これが冷たくなると、ゲリラ豪雨に注意である。

〔「次は陸前原ノ町、陸前原ノ町です。お出口は、左側です」〕

 ところで、私が少しリサのことで気になることがある。
 リサはボウリングや体感ゲームなどで運動したことで汗をかいた。
 その汗が匂うのである。
 いや、他の人にはどう匂うかは分からない。
 だが、私にはリサの汗の匂いがフェロモンたっぷりの『女の匂い』に感じて仕方がなかった。

 愛原:「リサ、だいぶ汗かいただろ」
 リサ:「うん。学校の体育以外で、こんなに運動して汗かいたの、久しぶり」
 愛原:「そうか。夏休みになったことだし、運動不足になならないよう、少しは外に出て運動した方がいいのかもな」
 リサ:「私もそう思う。学校のプールはコロナ対策で使えなくなっちゃったし……」
 愛原:「そうなのか……」
 リサ:「まあ、サイトーんちのプールに入らせてもらえばいいことだけど」
 愛原:「そうだよなぁ……。せっかく夏なんだから、プールとかには入りたかったよな。今度考えておくよ」
 リサ:「! おー!」
 愛原:「それとリサ、ホテルに着いたら風呂入って着替えろよ」
 リサ:「えっ?」
 高橋:「あー、そうですね。オマエ、汗臭いぞ」
 リサ:「ええっ?!」
 愛原:「いや、まあ、臭くはないけど、気になる人は気になるから着替えた方がいいな」
 リサ:「先生、私の匂い、嫌い?」
 愛原:「いや、嫌いじゃないけどさ……」
 リサ:「えへへ……ありがとう」

 これが人喰いをしたヤツらだと、もっと体臭がキツい。
 恐らくリサ・トレヴァーなどの人間からの改造BOWは、体臭がしやすい体質になるのだろう。
 それが尚、人喰いをしていると尚更というわけだ。
 うちのリサは人喰いをしたことがないので、そこまで匂うわけではない。

[同日16:42.天候:曇 仙台市青葉区中央 JRあおば通駅]

〔「まもなく終点、あおば通、あおば通です。お出口は、変わりまして左側です。仙台市地下鉄南北線は、お乗り換えです。お降りの際、車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。今日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 終点のあおば通駅に差し掛かる。
 尚、隣の仙台駅とは500メートルほどしか離れていない。
 ポイントを渡る関係で、電車が大きく揺れた。

 リサ:「着替えがあと一着しかない」
 愛原:「そうなのか。ホテルにコインランドリーがあるから、後で洗濯すればいいさ」
 リサ:「分かった」

 電車が到着してドアが開く。

 高橋:「ここから歩いて行けるんですか?」
 愛原:「一応な」

 地下ホームであるが、地下鉄のホームと違って、そんなに深い所にあるわけではない。
 改札口を出ると、今度は地上の出口へ向かった。
 エスカレーターとエレベーターはあるのだが、エスカレーターは途中までしか無い。
 行きと違って荷物の増えたリサだが、それでも難無く担いで怪談を昇った。

 愛原:「で、ここが青葉通。ホテルは広瀬通にあるから、この道を通って行こう」

 幸いまだ雨は降っておらず、強めの風が吹いているだけであった。
 しかしスマホの天気予報を見る限り、夜には降って来るようである。

 高橋:「先生、夕食会は何を食べる予定で?」
 愛原:「寿司にしようと思う。一応回らない寿司だけど、あまり高い予算にならないようにな」
 高橋:「てことはあれですね。リサにはセーブしてもらわないとってとこですね」
 愛原:「そういうことだ」
 リサ:「後でスイーツ出る?」
 愛原:「……まあ、前向きに善処します」

 政治家がこれを言うと、【お察しください】。

 高橋:「俺は先生と一緒に食事ができるなら何でもいいです」
 愛原:「そうか。……何だか雨が降りそうだ。少し急ごう」

 今年の夏の天気は、予報そのものがころころ変わる年のようだ。
コメント (2)
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“私立探偵 愛原学” 「体を動かす」

2021-08-25 15:17:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日11:36.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅→仙石線1141S列車最後尾車内]

 駅レンタカーで車を返却した私達は駅に向かい、そこから電車に乗ることにした。

〔ピンポーン♪ まもなく10番線に、列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕

 仙台駅在来線の地下ホームに行くと、そこは仙石線のホームである。
 地上の在来線ホームは詳細な案内放送が流れるが、こちらは簡易的な接近放送しか鳴らない。
 しばらくして、隣のあおば通駅方向から轟音と強風を伴って電車が接近してきた。
 JRなのだが、まるで地下鉄のようである。

 

 高橋:「東塩釜……。海にでも行くんスか?今から」
 愛原:「夕食会が無かったら、それでも良かったんだがな。リサが体を動かしたいっていうから、そこまでは行かんよ」

 私達は1番後ろの車両に乗り込んだ。
 元は山手線や埼京線を走行していた205系電車を改造したものであるが、内装は大して変わっていない。
 せいぜい、吊り革の持ち手の形が丸から三角へ変わっただけだ。
 発車ベルが鳴る。
 地上のホームはメロディだが、仙石線ホームだけはベルである。
 車掌が吹く笛の音が地下ホームに響いた。
 仙石線も古くから半自動で車両のドア扱いをしているのだが、昨今のコロナ禍による換気促進の為、自動ドア扱いになっている。
 ドアが閉まると、電車がすぐに発車した。
 車両は205系で統一されているものの、ホームドアが設置されているということはない。

〔「本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。仙石線普通列車の東塩釜行きです。次は榴ヶ岡、榴ヶ岡です。お出口は、右側です」〕

 仙台市内のトンネルは『仙台トンネル』と言う。
 地下鉄のトンネルというよりは、東京の京葉線のトンネルにイメージは近い。
 仙台市地下鉄のトンネルと違うのは、その断面は大きく、地下鉄の規格ではない車両でも走行できる(見た目で言えば貫通扉が無くても良い)。

 高橋:「一体、どこまで行くんスか?」
 愛原:「このトンネルの出口までだよ」

 SuicaなどのICカードが普及した今の時代ならではの会話。
 キップだと目的地まで買うのが当たり前なので、今の会話は不自然である。

 リサ:「出口ねぇ……」

 リサは後部乗務員室越しに後方を見た。

 愛原:「何だ?」
 リサ:「さすがにネメシスは追って来ないか」
 愛原:「こんな大都市のど真ん中にそんなのがいたら、パニックどころじゃないぞ」
 リサ:「まあ、そうだね」

[同日11:44.天候:晴 仙台市宮城野区苦竹(にがたけ) JR苦竹駅→ラウンドワン]

〔「まもなく苦竹、苦竹です。お出口は、左側です。電車とホームの間が広く空いている所がありますので、足元にご注意ください」〕

 仙台トンネルを出た電車は一気に坂を駆け登り、高架線に入った。
 それからカーブの途中にあるホームに滑り込む。

 高橋:「トンネルを出ましたが……?」
 愛原:「もちろん、ここで降りるよ」

 電車のドアが開いてホームに降りる。
 今日は少し風が強い。
 もしかしたら、夜はゲリラ豪雨でも降るのかもしれない。

 

 愛原:「すぐそこだから」

 改札口を出ると、目の前は国道45号線である。
 特にこの辺りは車線減少などがある為、渋滞が起こりやすいポイントとしても有名な場所だ。

 愛原:「はい、ここ」
 高橋:「ここって、ラウンドワンじゃないスか」
 愛原:「ボウリングで汗流せるだろ?」
 高橋:「そういうことですか」
 愛原:「リサはボウリングやったことあるか?」
 リサ:「投げたことはないなぁ……」
 愛原:「投げたこと?」
 高橋:「ってことは、やったことないってことだろ?」
 リサ:「んーとね……。昔、『4番』がボウリングのボールを“獲物”に投げつけて殺すっていう所は見たことがある」
 愛原:「こらぁ!」
 高橋:「こいつらにとっては、球技も殺人スポーツなんスね」
 愛原:「取りあえず、フツーにプレイしたことは無いってことだな。よしよし、いい経験だ。俺達が教えてやろう」
 高橋:「うっス。先生の御指導・御鞭撻、しっかり聞けよ」
 リサ:「分かったー」

[同日13:30.天候:曇 同区 ラウンドワン→ココイチ]

 リサのBOWの怪力で投げようものなら、ボウリングのピンが壊れてしまう。
 そこで力をセーブして投げるように言ったのだが、それでも勢いはあるようだ。
 スピードがある為に、基本ボールは真っ直ぐ進む。
 当たり方によってはパッカーンと良い音がして、きれいにストライクが決まる。
 しかし当たり方が悪いと7番ピンと10番ピンが残ってしまい(スネークアイまたはベッドポッド)、スプリットを狙わなくてはならないのだが、初心者のリサではまだ無理であった。
 7番ピンか10番ピンのどちらかを倒し、一本残して終わるというのがセオリーだった。
 変に曲がったりしないので、ガター(レーンの横の溝を『ガーター』と呼ぶことがあるが、英語的には間違い)に落ちることは無かった。
 しかもリサのヤツ、1番重い16ポンドのボールを難無く使っている。
 あんなに細い腕をしているのに……。

 リサ:「あー、楽しかった!」
 愛原:「さようで。あててて……」
 高橋:「大丈夫ですか、先生?」
 愛原:「久しぶりに手を動かしたら、すぐこれだ。俺もトシかな……。明日は筋肉痛かもしれない」
 高橋:「明日まで休みですから、明日はゆっくりしましょう」
 愛原:「てか、明日はもう帰るけどな」
 高橋:「確かに」

 私達はボウリング場を出ると、ココイチに移動した。

 リサ:「お腹空いたよー」
 愛原:「だろうな。何にする?」
 リサ:「ビーフカレー400グラム、辛さは普通で。あと……ロースカツ、トッピングしていい?」
 愛原:「カツカレーか。いいよ。俺は普通の量でいいけど……あー、俺もトンカツ乗っけるか」
 高橋:「俺も先生のと同じので。辛さは5辛でオナシャス」
 愛原:「5辛か!?大丈夫なのか?」
 高橋:「大丈夫っス」
 愛原:「はー……、まあいいけど」

 リサはとにかく量、高橋はとにかく辛さで選んだ。
 私もそんなに辛いのが得意というわけではないので、普通の中辛で良い。

 愛原:「リサも辛いのは苦手か?」
 リサ:「うん。それと、皆の安全の為」
 愛原:「どういうことだ?」
 リサ:「変化した時に辛いの食べさせられたことがあって、直後に火を噴いた」
 愛原:「サラマンダーか!」
 高橋:「最悪、ドラゴンに変化したりして?」
 愛原:「そこまで変化されたら、ハリアー出撃してもらわないとなぁ……」

 そこまで考えて、私は“バイオハザード”よりも、“ゴジラ”を思い出してしまった。
 ん?ていうか、元人間の怪獣ってそのシリーズに出なかったっけ?
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