報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「善場からの手紙」

2021-08-31 20:20:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日08:15.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 スーパーホテル仙台・広瀬通り1Fフロント→6F客室]

 朝食を終えて部屋に戻ろうとすると、フロントにいた支配人に呼び止められた。

 支配人:「あっ、愛原様。ちょっとよろしいでしょうか?」
 愛原:「はい?」

 何だろう?
 もしや今朝方のリサの変化がバレてしまったのだろうか?
 それとも、バイキング朝食の食べ過ぎで別料金徴収とか?

 支配人:「愛原様に宅配便が届いてございます」
 愛原:「私に?」

 受け取って見ると、それは善場主任からだった。
 伝票を見ると、通常の宅配便ではなく、かなり急ぎのサービスで送られて来たのが分かる。
 昨日に出して、今日の1番早い時間に届けるサービスがあるだろう?
 あれだ。
 1番早い時間で8時ぐらいだったから、正にそれで到着したのだろう。
 もちろん、その分、料金は割高である。
 そこまでして送って寄越したものって、何だろう?
 茶封筒で届いたので、書類か何かのようだが……。

 高橋:「何ですかね、先生?」
 愛原:「さあ……」

 取りあえず私はそれを受け取って、一旦部屋に戻ることにした。

 愛原:「何が入っているだろう?」

 開けてみると、それはANAの航空券だった。

 愛原:「!?」

 3人分あり、路線は仙台から成田となっている。
 私は急いで善場主任に電話した。

 愛原:「もしもし、善場主任ですか?」
 善場:「愛原所長、おはようございます」
 愛原:「おはようございます。今、荷物を受け取りました。これって、どういうことですか?」
 善場:「所長方はまだ仙台市内にいますね?」
 愛原:「まだホテルの中です」
 善場:「ヴェルトロの下請け組織のアジトが摘発されたことは御存知だと思います」
 愛原:「ええ。今朝方、ホテルのテレビで観ました」
 善場:「その後の捜索で、ヴェルトロがリサを狙っているのが分かりました」
 愛原:「リサを!?」
 善場:「想定はしていました。リサは世界中で希少な、『持続的制御可能な上級BOW』なのです。分かりますか?テロ組織では高値で取引されるほどなのですよ」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「今回の下請け組織は、ヴェルトロからリサの強奪を依頼されていたようです。愛原所長達が東北地方へ行くことを突き止め、隣県にアジトを構えたと見ています」
 愛原:「でも、その下請け組織……ヤング・ホーク団でしたっけ?そいつらは捕まったんじゃ?」
 善場:「ヴェルトロはそれを見越して、いくつかのテロ組織に協力依頼していたようです。たまたま捕まったのは、そのうちの1つに過ぎません」
 愛原:「それと、この航空チケットと何の関係があるんですか?」
 善場:「押収した資料には、ヴェルトロは所長方の本日の動きを想定していて、特に『陸路を押さえろ』と指令を出しています。確かに通常、仙台から帰京するに当たっては、鉄道や高速道路を利用するのが一般的でしょう」
 愛原:「確かに帰りは新幹線にしようと思っていました。コロナ禍でそんなに新幹線も混んでいないですし、仙台始発の新幹線なら自由席でも座れるだろうと思っていましたので……」
 善場:「それを読まれたようですよ。あとは高速バスですね」
 愛原:「バスはこの前体験したように、ジャックされる恐れがあるので、選択肢には入れてませんでしたが……」
 善場:「今回は鉄道も危険ということです。もちろん、彼らがどのような手段でリサを強奪するつもりなのかは分かりません」
 愛原:「主任はどのようなテロ組織が動いているのか、分からないのですか?」
 善場:「一応、目星は付いています。だからこそ、航空便で帰京して頂きたいのです。そのチケット代はこちらで持ちますから」

 摘発されたヤング・ホーク団は、主に航空機を使用したテロを得意としていたらしい。
 しかしそんな彼らは昨日、摘発されてしまった。
 他のテロ組織は爆弾テロや要人拉致などの前科があるという。
 ヴェルトロが『陸路』と明言してしまった為に、却って空路は手薄なのではないかというのが善場主任らの見方だ。
 海路についてだが、仙台~東京間の旅客便は存在していない。
 貨物便は少なからず存在しているので、それに紛れて私達を帰京させるという案もあったそうだ。
 実際、2017年にアメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件も、元はと言えばバイオテロ組織が新型BOWエブリンを貨物船に便乗させて輸送していたところ、その船が現場近くの浅瀬に座礁したのが発端だという(更に言えば、その貨物船が座礁事故を起こした原因はエブリンが船内で暴走したからである)。
 ただ、善場主任達が目星を付けているテロ組織の中にはシージャックを得意とするのも含まれており、もしかしたら彼らはヴェルトロの指示とは別に、独自に海路を押さえる恐れがあったので却下されたそうだ。
 貨物船に紛れて移動するという案は、テロ組織でも考えるようなことだ。
 その為か、最近はよほど船会社関係者に縁でも無い限り、貨物船への便乗者を断る傾向にあるそうだ。

 愛原:「分かりました。飛行機は午後のようですね」
 善場:「1日2往復しか飛んでいないのです。午前中の便は恐らく間に合わないと思い、午後便にさせて頂きました」
 愛原:「きっとそうですね。分かりました。主任の指示に従います」
 善場:「御理解が早く、助かります」
 愛原:「しかし、出発までどうしたらいいでしょうね?まあ、航空機ですから早めに空港に行く方がいいとは思いますが……」
 善場:「そうですね。なるべくなら、ホテルに留まって頂くのが1番なんですが……」
 愛原:「10時までにはチェックアウトしないといけませんしね」
 善場:「ですよね」
 愛原:「分かりました。一応、少し早めに空港に行くようにしましょう。ただその場合も、結局は電車かバスで行くことになるとは思いますが……」
 善場:「テロ組織は東京方面に向かう新幹線やバスは警戒するでしょうが、仙台空港に行く列車やバスについてはマークしないと思います」
 愛原:「ですよね」

 急な帰京方法の変更だった。
 まさか、仙台~成田に航空路線があったとは。
 国際線への乗り継ぎ用としての需要だろうか。
 しかし今はコロナ禍で国際線が軒並み運休している中、よく飛んでいるものだ。

 高橋:「リサは飛行機に乗せても大丈夫なんスよね?」
 愛原:「大丈夫だろう。だってだいぶ前、八丈島から帰る時に乗ったからな」
 高橋:「それもそうっスね」

 なので、何の問題も無い。
 ……はずだ。
 善場主任との通話が終わってから、私はどのように仙台空港へ行くか検討してみた。
 バスにしろ電車にしろ、地方空港へ行くローカル線やバスなので、そんなに輸送量は大きくない。
 つまり目立たないということだ。
 一応、基幹となっているのは鉄道だろうな。
 もしかしたら、ついでに押さえられているかもしれない。
 だったら、まだバスの方が目立たないかもしれない。
 バスについては最近になって新規参入してきたバス会社が運行しているものがあるし、仙台空港のある名取市や岩沼市の中心駅、名取駅や岩沼駅から路線バスもある。
 さーて、どうしたものか……。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「仙台最後の朝」

2021-08-31 16:44:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日07:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 スーパーホテル仙台・青葉通り6F客室]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「んん……」

 枕元に置いたスマホのアラームが、ダイレクトに7時にアラームを鳴らす。
 私はすぐにそれを止めて起き上がった。
 枕が変わると、抵抗無く起きられるものだ。
 2段ベッドの下段に私は寝ているが、そこはダブルサイズのベッドなのに対し、高橋が寝ている上段はシングルサイズだ。

 愛原:「高橋、起きろ。時間だぞ」

 私はベッドから出ると、上段で寝ている高橋を起こした。

 高橋:「先生のモーニングコール……。功徳です……」
 愛原:「なに顕正会員みたいなこと言ってんだよ。さっさと起きろ」

 高橋を起こすと、私は隣の部屋で寝ているリサを起こしに行った。
 初めて一緒に住み始めた中学生に入るか否かの時は、まだ子供だからと遠慮せずに起こしに行ったが、今はさすがになぁ……。
 あられもない姿になって寝ているといけないので、私はそっと中を覗く。

 愛原:「何だ、もう起きてるのか。ちゃんと1人で起きれるようになってて偉い……」

 ベッドにはリサの姿は無かった。
 きっとバスルームにでもいるのだろうと思って引き返そうとした時、私の視界に黒い物体が通り過ぎた。
 これ……一般人だったら、思いっ切りホラーだぞ。
 いや、思いっ切りホラーに慣れている私はとっくに変人か。

 愛原:「リサ、寝惚けるな!起きろ!!」

 私は天井に向かって声を荒げた。
 リサは第2形態まで変化し、背中から出した触手で天井にぶら下がって寝ていた。
 私の視界をよぎった黒い物体というのは、何本か生えた触手の1つだ。
 オリジナル版リサ・トレヴァーの特徴の1つは派生改良型である日本版リサにも受け継がれており、前者は素早い跳躍力と恐ろしいまでの腕力で攻撃してくるが、後者はこの触手も武器の1つ。
 だから下手に触ろうとすると、ダメージを受けるので注意。
 だが、私の場合は何故かOK。

 愛原:「リサ、また化け物になってるぞ!起きろ!」

 私は手持無沙汰でぶら下がっている触手の一本を掴むと、思いっ切り引っ張ってやった。

 リサ:「いだだだだだだ?!」

 これがBSAAの猛者相手なら、触手を斬り落とされても平気だろうに、変化が完全ではないのか、まるで髪の毛を引っ張られたかのように痛がる。

 リサ:「あ、先生。おはよ……」
 愛原:「おはよ、じゃねぇ!早いとこ人間の姿に戻れ!」
 リサ:「あ、はーい」

 リサは器用に触手を使って床に降りると、まずは鬼娘姿の第1形態に戻る。
 それから、人間の姿の第0形態になった。

 リサ:「枕が変わると変な夢見るもんでw」
 愛原:「この前みたいに、もう1人の自分が現れてってヤツ?」
 リサ:「今回は全然。私がパチンコやってて、先生が玉になって転がるヤツ」
 愛原:「どんな夢やねん!?……あー、もういいから!さっさと着替えろ!」
 リサ:「はーい」

 変化したことでリサの浴衣は乱れており、下は辛うじて浴衣に隠れていたものの、上は完全にはだけて黒いスポブラが見えていた。
 昔はノーブラで寝ていたみたいだが、さすがに成長するにつれて乳首が気になるようになったのか、今はスポブラを着けているらしい。

 愛原:「高橋も二度寝すんな!」
 高橋:「あ……サーセン」

 私が部屋に戻ると、高橋が二度寝していたので再度叩き起こした。

[同日07:30.天候:晴 同ホテル1F朝食会場]

〔1階です。上に参ります〕

 朝の身支度を終えると、私達は朝食会場に向かった。

 愛原:「お、やってるやってる。食べ放題のバイキングだ」
 リサ:「さっき変化したから、エネルギー使っちゃってお腹空いたよ」
 愛原:「そりゃ一気に第2形態まで変化したらな……。というかオマエ、最近寝惚けて変化してたりすること、多くなってないか?」
 リサ:「んー、そうかも」
 愛原:「俺達の時はまだいいが、学校で修学旅行とか合宿の時とか困るぞ」
 リサ:「修学旅行……コロナのせいで無い……」orz
 愛原:「あ、いや、悪かったよ」

 中等部時代に行われるはずだった修学旅行は中止となり、高等部でその代替案が模索されていたが、全く収束の兆しを見せない為、それも頓挫してしまったそうだ。
 それでも近場への社会科見学などで、何とか代替案を模索しているそうだが……。

 リサ:「私は感染しないのに……」
 愛原:「オマエはな」

 ていうか、私達もか。
 Tウィルスに抗体のある者は、新型コロナウィルスに対しても抗体があるとか言われている。
 霧生市のバイオハザードに巻き込まれて、ゾンビ化しなかった元市民達が自信を持っているとか。

 愛原:「また山盛りにして……」
 リサ:「もちろん、ちゃんと全部食べるよ」
 愛原:「全く……」

 朝食会場内にはテレビがある。
 私達はそのテレビが観える場所に座った。

〔「……次です。昨日午後、山形県内の山中で、日本アンブレラの秘密研究所跡と思われる地下施設が見つかり、これを受けて、自衛隊と国連組織BSAAが合同で出動する騒ぎがありました」〕

 愛原:「え?」

〔「見つかったのは山形県○×市郊外の山中で、BSAA極東支部日本地区本部の部隊と陸上自衛隊が共同訓練していたところ、偶然にも発見されたものです。自衛隊とBSAAが地下施設に突入したところ、国際バイオテロ組織ヴェルトロのメンバーと思しき男達が発見され、拘束して事情を聴いています」〕

 愛原:「ヴェルトロ見つかったの!?」
 高橋:「早っ!?」

〔「男達はヴェルトロから活動支援の依頼を受けていた、かつてアメリカでハイジャック事件を起こしたヤング・ホーク団のメンバーと見られ、今日、身柄を山形県警本部に移される予定です」〕

 愛原:「バイオテロ組織じゃないから、BSAAからは解放されたか」
 高橋:「バイオテロ組織が別のテロ組織に協力依頼するってあるんですね」
 愛原:「まあ、そうだろうな」

〔「メンバーの中にはヤング・ホーク団のリーダー、ジャック・シュラ・カッパー容疑者と見られる男も含まれており、BSAAに拘束された際、流暢な日本語で、『怨嫉謗法はやめなさい!それより功徳を語りましょう!』と叫んでいたということです」〕

 愛原:「リーダーが既に捕まってるぅ!?」
 高橋:「ダサイっスね」

〔「カッパー容疑者率いるヤング・ホーク団は201×年、アメリカでハイジャック事件を起こしており、アメリカ国内の刑務所にて服役していましたが、協力者により脱獄しており……」〕

 愛原:「悪いヤツだな」
 高橋:「アメリカンポリスに射殺されりゃ良かったんスよ」
 愛原:「ああいうヤツに限って、いざ警察に捕まる時は大人しくするから、射殺されないんだよ。で、取り調べの時はあーでもないこーでもないとクダを巻く」
 高橋:「なるほど。俺の時とは逆っスね」
 愛原:「オマエら暴走族も日本の警察は優しいから調子に乗れるだろうが、アメリカンポリスだったらパトカーで体当たりされるか射殺されるかのどっちかだぞ?或いは両方か……」
 高橋:「なもんで、アメリカにはゾッキーはいないらしいっスね。いるのはもうヤンキーを通り越したギャングだそうで」
 愛原:「そういうことだ」

 因みにリサが会話に参加していないのは、食べるのに夢中になっているからである。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする