報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「市街地へ移動」

2021-08-23 19:52:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日10:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 コロナワールド仙台]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ホテルをチェックアウトした私達は、再び隣接するコロナワールドヘと足を運んだ。
 正面入口はまだ封鎖されていたので、別の入口からアクセスする。
 そして、その中にあるゲームセンターへ向かった。

 愛原:「この筐体だが、間違いないか?」
 リサ:「うん、間違いない……」

 リサの夢に出て来たテディベアを扱うクレーンゲームの筐体である。
 実際、私は昨夜、高橋とこのゲームをやった。
 私の結果は散々なものだったが、高橋はものの見事にゲットした。

 愛原:「やってみるなら、お金入れるぞ?」
 リサ:「うん。ありがとう」

 私は500円硬貨を入れた。
 これなら6回操作できる。

 リサ:「まずはこのボタンを押して……」
 高橋:「おっ?」
 リサ:「次にこのボタンを押す……」

 1回ではなかなか取らせてもらえないが、それでもリサは初心者にしては珍しく、いい所に景品を持って行った。

 リサ:「夢の中に出て来た、もう1人の私が教えてくれたの」

 とはいうものの、やはりそこは初心者。
 6回やっても取れなかった。

 リサ:「まあ、そうだよね。夢の中では私が倒れた時、下から顔を覗かせてた……」

 リサがしゃがみ込んで景品取り出し口を覗く。
 私や高橋もつられて取り出し口を覗いた。
 その時、ガタンという音がしたかと思うと、そこからテディベアが顔を覗かせた。

 リサ:「え?」
 愛原:「え?」
 高橋:「え?」

 今度は一斉にケースの中を覗く。
 他のテディベアと一緒にケースの中で転がっていた1つが無くなっていた。
 つまり、景品取り出し口に落ちて来たのだ。

 リサ:「え……と?」
 愛原:「何で落ちて来たんだ?そんなギリギリまで行ってたっけ?」
 高橋:「えっと……」

 私は景品取り出し口からテディベアを取り出した。
 確かに、ケースの中に入っていた物と同じ物だった。
 何らかの拍子に穴に入ってしまったのだろうか?
 リサはいい所までクレーンで連れて行ったものの、ギリギリの所まで運んだわけではない。
 まるで、テディベアが自らの意思で穴に飛び込んだかのようだ。

 愛原:「何か仕掛けが……?」

 しかし、外見上は特に不審な点は見当たらない。
 やはり、何かの拍子に穴に入ってしまったのだろうか。

 愛原:「まあいい。持って帰ろう。高橋、袋持って来てくれ」
 高橋:「分かりました」

 高橋はテディベアを入れる袋を取りに行った。

 愛原:「2つともゲットしちゃったな」
 リサ:「これはサイトーへのお土産にしよう」
 愛原:「なるほど」
 リサ:「私が取ったものだと言えば、喜んで受け取るはず」
 愛原:「……確かにな。なあ、リサ。もしかしたら、オマエがやったから今の不可思議現象が起きたのかもしれない。もう1度やってみないか?」
 リサ:「分かった」

 私はもう1度、500円玉を入れてリサにやらせてみた。
 リサは夢の中のもう1人のリサに教わった通りにやるのだが、やはりある程度上手くはできるものの、やはり6回では普通に取れない。
 そしてさっきと同じように、景品取り出し口を覗かせた。
 今度は私達はケースの方を見ている。
 しかし、ケースの中のテディベアは動くことはなかったし、取り出し口に実はあったなんてこともなかった。
 更に今度は高橋にやらせてみた。
 景品の位置は店員に頼んで元の位置に戻してもらい、そこからやらせてみた。
 ゲームの上手い高橋でさえも、毎回必ず取れるというわけではない。
 前回はたまたま取れたのだろう。
 それさえ、6回目でギリギリ取れたようなものだった。
 で、今回は取れなかった。
 それでも一応、景品取り出し口とケースを同時に見た。
 やはり、不可思議現象は起こらなかった。

 愛原:「……やっぱり、ただの偶然か……。偶然、何かの拍子に景品が穴の中に落ちたんだろうな」
 高橋:「そ、そうですね……」

 腑に落ちないものであったが、私達はそう考えることにした。
 何だか私達も、リサの夢の中に取り込まれているような気がしてしまった。

 愛原:「よ、よし。それじゃあ、ここを離れることにしよう。車を返しに行かないと」
 高橋:「そ、そうですね」

 再び別の出入口から外に出て駐車場に回り、私達は車に乗った。

[同日10:45.天候:晴 仙台市宮城野区榴岡2丁目 ENEOS]

 車を返す前に、近くのガソリンスタンドに寄ってガソリンを満タンに入れる。
 セルフスタンドではなく、店員が給油してくれるフルサービスの店であった。

 リサ:「先生、車返した後はどうする?時間余るでしょ?」
 愛原:「そうだな。まあ、どこかに遊びに行こうかとは思ってる」
 リサ:「先生の御実家でゆっくりされるという手もありますよ?」
 愛原:「どうせ夕方、食事会やるからな。今はコロナ禍だし、今回みたいな調査でも無ければ、本来は家で自粛しているべきはずなんだからな」
 高橋:「そうは言いましても……」
 愛原:「リサはどうしたい?」
 リサ:「私は……思いっ切り体を動かしたい。あの変な夢のせいで、少し鬱になってるから」
 愛原:「なるほど。分かった。それなら1つ思い当たる所がある。そこに行ってみよう」
 リサ:「! おー!」
 高橋:「しかし先生、車は返しちゃいますよ?」
 愛原:「分かってる。ちゃんと電車で行ける所を知ってるさ」
 高橋:「それならいいですが……」

 給油が終わって、私達は駅レンタカーへ向かう。

 高橋:「体を動かしたいっつっても、色々あるだろ」
 リサ:「何でもいいんだけど……」
 愛原:「まあまあ。一応知ってるから、そこに行ってみよう」
 高橋:「先生にお任せします」
 愛原:「おう。俺に任せとけ」

 車を返却した後、私達は仙台駅に向かった。
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“愛原リサの日常” 「夢オチ?」

2021-08-23 16:04:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日07:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台]

 リサ:「……はっ!」

 そこで目が覚めた。
 リサはホテル客室のベッドで寝ていた。
 まだ状況が把握しきれない中、突然机の上の電話が鳴った。

 リサ:「!?」

 リサが起き上がると、服は館内着を着ていた。
 いつの間に自分はここで寝ていたのだろうか。
 あれは夢だったのか?

 リサ:「も、もしもし?」

 電話を取ると、その向こう側には……。

 愛原:「おー、リサ、起きたか。朝食、食べに行こうと思うんだけど、どうだ?」
 リサ:「……うん、行く。ちょっと待ってて」

 リサは電話を切ると、バスルームに向かった。
 取りあえず、トイレを済ませておくのと、軽く顔を洗う為だ。
 それから部屋の外に出ると、そこは普通の光景が広がっていた。
 別に、靄が充満していることはないし、レヴェナントなるクリーチャーが徘徊しているわけでもない。

 愛原:「おー、リサ。起きたか。朝食会場に行くぞ。カードキーと朝食券、忘れるなよ」
 リサ:「あ……ちょっと待って」

 リサは部屋に戻ると、カードキーと朝食券を取りに行った。

 リサ:「お待たせ」
 愛原:「よし、行こう」

 エレベーターに乗り込み、朝食会場に向かう。
 会場は1階にあった。
 ロビーの奥にある。

 スタッフ:「いらっしゃいませ」

 朝食はバイキング形式だった。
 朝食券をスタッフに渡して、早速料理を取る。

 愛原:「リサ、取り過ぎるなよ。いくら食べれるからと言っても」
 リサ:「うん、分かってる」
 愛原:「後でリサに渡したいものがあるんだ。帰りに部屋に寄ってくれ。まあ、隣の部屋だけど」
 リサ:「うん……」
 愛原:「何か、浮かない顔してるな?どこか体の具合でも悪いのか?」
 高橋:「生理が来たか?」
 リサ:「違う。そうじゃない。昨夜、変な夢見て……」
 愛原:「変な夢?」

 席に着くと、リサは愛原達に昨夜見た夢の話をした。

 愛原:「確かに研修でウロボロス・ウィルスとか、それを投与して造られたBOWの話は聞いたことがあるが……。しかし、リサとは直接関係無いだろう?」
 リサ:「うん、無い。……はず」
 愛原:「もう1人の自分が現れるなんて、統合失調症の症状にあるらしいな」
 高橋:「ビョーインで観てもらった方がいいんじゃね?」
 愛原:「まあまあ。……というかリサ、食べ終わったら部屋に戻る前に、ちょっと行ってみよう」
 リサ:「んん?」

 今朝のリサはあまり食欲が無く、いつもなら皿に山盛りに料理を乗せて尚おかわりもするのに、今回はおかわりはしなかった。
 朝食を終えると、部屋に戻る前にホテルの外に出た。

 リサ:「一体なに?……って、あれ?」

 ホテルに隣接するコロナワールドの正面入口に、消防車やパトカーが何台か止まっていた。

 リサ:「火事でもあったの?」
 愛原:「あったらしいな。因みにリサ、オマエはどこで発煙筒を拾った?」
 リサ:「そんなの覚えてないよ。霧が濃かったし、レヴェナントから隠れるのに必死だったから」
 愛原:「そうか。じゃあ、発炎筒でレヴェナント1匹を焼き殺した場所は知っているかな?」
 リサ:「入口入ってすぐの所だよ」

 正面入口まで行くと、そこが封鎖されていた。
 温泉施設などはもうオープンしている時間帯なのだが、正面入口からは入れないので、スタッフ達が来客達に別の入口を案内していた。

 スタッフ:「申し訳ありません。館内でボヤが発生しまして、只今警察と消防が現場検証中です」
 愛原:「因みに、どの辺でボヤがありました?」
 スタッフ:「そこの階段の横辺りです。何が燃えたのかは分かりません」

 エントランスには2階へ上がる階段とエスカレーターがあるのだが、その横の床が大きく焦げていたというのだ。
 第一発見者はここで勤務する警備員であった。
 しかし不思議と、火災感知器などは作動しなかったという。
 もちろん、故障していた可能性はあるが、それも含めて現場検証を行っているという。
 不思議なのは床が激しく燃え上がった跡はあるのに、壁や近くにあった子供向けの遊具には全く焦げ1つ付いていなかったことである。

 リサ:「あの辺りって……」

 リサには記憶があった。
 夢の中で襲って来たレヴェナントに対し、発炎筒を焚いて投げつけた場所だ。
 レヴェナントは火に弱く、火の点いた火炎瓶を投げつけただけでも倒せるほどだという。
 また、燃え上がった仲間の近くにいるレヴェナントにも簡単に引火して燃え上がり、纏めて倒すことが可能である。
 それくらい火に弱いレヴェナントであるから、発炎筒を投げつけただけでも倒せるのである。

 リサ:「私がレヴェナントを倒す時に発炎筒を投げつけた所……。レヴェナントは燃え上がって、そのまま倒れたはず」
 愛原:「でも夢の中の話なんだろう?」
 リサ:「そのはず……。先生、昨夜もしかして、私に内緒でパチンコに行った?」
 愛原:「ど、どうしてそれを?」
 リサ:「私、客室の窓から見てたの。先生を追おうとして部屋を出たら、もう1人の私が現れて……あとは夢の中っぽくなった。だから、どこからが夢なのかがさっぱり分からない」
 愛原:「安心しろ。少なくとも、今は現実の世界だ」

 すると高橋が、リサのほっぺたをつねった。

 リサ:「いひゃい!」(←つねられた状態で喋った)
 高橋:「ほら、夢じゃねーだろ?」
 愛原:「そうだ。夢の中でオマエ、第1形態に戻れなくなっていたって言ってたな?今はどうなんだ?部屋に戻ったら、ちょっとやってみろ」
 リサ:「分かった」

 再びホテルに戻る。
 そして今度はリサは、愛原達の部屋に行った。

 愛原:「はい、これ。リサにプレゼント」
 リサ:「テディベア!?」
 愛原:「実はパチンコに行っただけじゃなく、隣のゲーセンにも行ったんだ。そこで高橋が取ってさ。パチンコは負けたんだが」
 リサ:「い、いいの?お兄ちゃんが取ったのなら、あのメイドさんにあげたら……」
 高橋:「パールにテディベアは合わねーよ。よしんばあげたところで、切り刻みの練習台にされるだけだ」
 リサ:「あ、ありがとう」

 リサは嬉しさよりも、夢の中に現れたもう1人のリサの言った通りになったことで、逆に薄気味悪く感じた。

 リサ:「ね、ねぇ。そのゲームセンター、私も行ってみていい?」
 愛原:「どうしたんだ?」
 リサ:「あの夢の終わり……。そのテディベアがいたクレーンゲームの所だったの」
 愛原:「そうなのか。分かった。確か10時オープンのはずだ。このホテルのチェックアウトもその時間だから、それに合わせて行ってみよう」
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