報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「東京へ」

2024-12-19 14:11:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月16日08時00分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区宮町 イージーステイ大宮1階イートインスペース]

 ここで最後の朝食。
 カレーはいくら食べても飽きない。
 ……と、思っていたが、もうしばらくはいいかな。
 リサはビーフカレーをガツガツと食べていたが。

 愛原「食べたらチェックアウトして、デイライトの事務所に向かうぞ」
 リサ「はーい」
 パール「かしこまりました。警察の方は大丈夫なのでしょうか?」
 愛原「善場係長の話では、公安調査庁が動いているらしいから、特に心配はしなくていいらしい。もしも、それでも警察が来たら、善場係長達に振っていいってさ」
 リサ「なるほど……」
 愛原「問題は、BSAAだ。そっちはまだ偽情報に踊らされているらしいから、BSAAが拘束してくる恐れがある」

 因みに公安調査庁が調査機関を設けて……というのは、本来は秘密なので、公言してはいけない。
 本当は善場係長達は、私達にもそれは内緒にしたかったのだろうが、そうもいかなくなってきたということだ。

 愛原「だからGPSは、事務所に着くまで切ったままでいいとのことだ」
 リサ「なるほと、分かった」

 滞在先が窓の少ない……というか、殆ど無いカプセルホテル兼ネカフェで良かったと思う。

 パール「途中、郵便ポストに立ち寄っても宜しいですか?」
 愛原「ん?」
 パール「マサ宛てに書いた手紙を出したいので」
 愛原「ああ、いいよ。確か、途中にあったな……」
 リサ「駅前ならあるよね?」
 愛原「最悪、駅の中にもある」

 ここに来る直前に立ち寄ったコンビニで、パールは便箋と封筒と切手を買っていた。
 あれはそういうことだったのか。

 愛原「今日は金曜日だから、今日出しても、届くのは来週月曜日になりそうだな」
 パール「ええ。でも、特に急ぎというわけではございませんので」
 愛原「そうか」

[同日09時30分 天候:晴 さいたま市大宮区錦町 JR大宮駅→高崎線1853E列車・4号車内]

 カプセルホテルをチェックアウトして、大宮駅に向かう。
 埼玉県の代表駅のすぐ近くということもあり、商店街や駅前の道は多くの人が往来していた。
 普通、警察はこういう所では容疑者を捕まえないらしい。
 人通りの少ない場所などに来た時に、ようやく捕まえに来るのだそうだ。
 刑事ドラマでも、東京駅などの巨大な駅の構内で犯人を捕まえる描写が無いのは、何も撮影現場に困るからではなく、事実だからである。
 但し、痴漢などの現行犯は除く。
 因みに駅に向かう途中の道に、郵便ポストがあったので、パールの手紙はそこに投函した。
 この辺だと、集配局はさいたま新都心の郵便局になるだろうか。
 高橋も、消印がそこだと首を傾げるかもしれない。

 愛原「一応、グリーン券を買っておこう」

 朝ラッシュのピークは過ぎたとはいえ、まだまだ多くの人が行き交う大宮駅。
 券売機で、紙のグリーン券を3枚買い求めた。
 平日だとやや高いが、これも安全にデイライト事務所まで行く為だ。

 パール「先生、警察が……」
 愛原「ん?」

 改札口は手持ちのICカードで入ろうとしたところ、パールが耳打ちしてきた。
 パールの視線に目を移すと、改札口を入った先に、制服警官が立哨していた。

 愛原「あれは、ただ単に警戒警備中の鉄道警察だ。俺達を捕まえに来たんじゃない」

 仮に公安調査庁の通達が間に合わず、埼玉県警が捕まえに来たとしても、恐らく部署が違う。
 ああいった制服警官ではなく、私服警官が捕まえに来るだろう。

 愛原「ただ、挙動不審にしていると、さすがに職質されるからな?しれっとしてろ」
 パール「はい……」

 パールもかつては、散々っぱら警察に追われる毎日を過ごしていたクチだ。
 今でも苦手意識があるのだろう。
 むしろ挑発してナンボの高橋とは、その辺り対照的である。
 改札口を通過して、乗車予定の電車が来るホームに下りた。

 

〔本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の、6番線の列車は、9時33分発、普通、品川行きです。この列車は、4つドア、10両です。グリーン車が付いております。……〕

 愛原「たったの10両か。まあ、グリーン車にしといて良かったかもな」

 そう言って、10両編成でグリーン車の来る位置に並ぶ。

〔「今度の高崎線の電車は、上野東京ライン経由の普通列車、品川行きです。短い10両編成で参ります。ホームの中ほどでお待ちください。停車位置にご注意ください。品川から先においでのお客様は、その後の9時44分発の上野東京ライン、国府津行きをご利用ください」〕
〔まもなく、6番線に、上野東京ライン、普通、品川行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、4つドア、10両です。……〕

 下り方向から眩いHIDランプを光らせて、電車がやってきた。
 フルカラーLEDの行き先表示がよく見える。
 いくら朝ラッシュのピークが過ぎているとはいえ、たったの10両では、普通車はそれなりに賑わっていた。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。6番線の電車は、上野東京ライン回りの品川行きです。品川止まりの電車です」〕

 大宮駅でぞろぞろと降りて来る。
 目視で確認できた所、まるっと2人席が空いたのは平屋席の方だったので、そちらに向かった。

 

 パールには申し訳無いが、近くの空いている通路側の席に座ってもらうことにする。
 平屋席のメリットは、荷棚があること。
 なので、機内持ち込み可程度の荷物なら、そこに置くことができる。

〔「この電車は、上野東京ライン直通、普通列車の品川行きです。まもなく、発車致します」〕

 座席に座ると、ホームから発車メロディが聞こえて来た。

〔「6番線から、上野東京ライン、品川行き、発車致します」〕
〔6番線の、上野東京ライン、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 電車のドアが閉まり、スーッと動き出した。

〔この電車は、高崎線、上野東京ライン直通、普通電車、品川行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。グリーン券を車内でお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、御了承ください。次は、さいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 愛原「今日は蒸し暑くなりそうだな……」
 リサ「ねー?服全部脱ぎたい」
 愛原「ここではダメだぞ?」
 リサ「家に着いてからね」
 愛原「着替えるか、風呂入る時だけにしてくれよ?」
 リサ「ずっとシャワーだけだったから、今夜はお風呂に浸かりたいね」
 愛原「それは確かに」
 リサ「先生と一緒に」
 愛原「……それはまた別の機会に」
 リサ「えー?」

 私はスマホを取り出すと、善場係長に上野東京ラインの電車に大宮駅から乗った旨をメールで報告した。
 ここから新橋までは、およそ40分の鉄道旅である。

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