報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「善場との再会」

2024-12-19 20:15:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月16日10時03分 天候:晴 東京都台東区上野 JR上野東京ライン1853E列車・4号車内]

 品川止まりの電車のせいか、電車が都心に近づく度に車内が空いてくる。
 普通車の様子は分からないが、少なくともグリーン車はそうだった。

〔次は、東京です〕

 上野駅を定刻に発車し、下車駅の新橋駅はもうすぐである。
 ここまで何も起こらなかったことに、私は少し安心していた。
 だが、それは突然現れる。
 電車が上野駅を発車すると、すぐに中央通りとの立体交差が現れる。
 都営バスも走っているバス通りで、交通量も人通りも多い。
 私達は進行方向左側に座っているのだが、その窓側に座っているリサが目を丸くした。

 リサ「レイチェルだ!レイチェルがいる!」
 愛原「えっ、どこだ!?」
 リサ「今の、駅前の横断歩道の所!目が合った!きっとバレた!!」
 愛原「ええっ!?」

 この時にはもう既に電車は上野駅前商店街の横を走行していて、私が確認しようとした時には、もう見えなかった。

 愛原「本当にレイチェルだったのか?」
 リサ「間違い無いよ!目があったから気づかれた!」
 愛原「この時間、学校はまだ授業中だろ?どうして上野駅前にレイチェルがいたんだ?」
 リサ「今、ヨドバシからLINEがあって、学校に“コネクション”を名乗る所から爆破予告があったんだって。それで急きょ、学校は2時間目途中で終わりになったらしいよ」
 愛原「“コネクション”が今さらそんなチンケなテロするわけないだろう!」

 バイオテロ組織が、新型のウィルスをばら撒くというのならまだしも、爆弾テロだなんて……。
 でもまあ、学校としては大事を取らざるを得ないか。
 当然、警察なども大勢駆け付けることになるだろう。

 リサ「うわ!レイチェルから鬼LINE来たーっ!」

 リサのスマホの画面を見せてもらうと、『今はどこにいますか?』『今は列車に乗っていますか?』『これからどこへ行きますか?』『あなたが答えない場合、BSAAの緊急出動案件となります』と、恐らく英語を翻訳機能で日本語に直訳したようなメッセージが載っていた。

 愛原「安心しろ。この電車に乗っていたとしても、どこに行くか想像なんて付かないだろ」

 最近の行き先表示器がLEDタイプの車両は、省電力の為、走行中は側面の行き先表示を消している場合が殆どである。
 当然この電車も例外ではない。
 但し、運転室上の行き先表示器や列番表示機は常時点灯している。
 横断歩道でレイチェルを見たということは、前後の行き先表示は見えないはずだ。
 この電車は品川止まりだが、東海道本線に直通する熱海行きだとでも思ってくれれば、どこで降りるかは分からないだろう。
 もしかしたら、品川乗り換えの羽田空港でこれから高飛びする予定かもしれんw

[同日10時30分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 新橋には予定通り到着した。
 そこから徒歩で、デイライトの事務所に向かう。

 善場「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原「善場係長も御無事で何よりです」
 善場「情報交換だけで時間が掛かりそうですね。まずは会議室へ。お手洗いなど、先に済ませて頂いて結構です」
 リサ「じゃあ、わたし行ってくる」

 リサはトイレに向かった。
 私達は先に会議室に入る。

 愛原「リサから聞いたのですが、何か、東京中央学園で爆発物の脅迫があったとか……」
 善場「そのようですね。今、警視庁が出動しているようですので、対応はそちらに任せることと致します」

 係長は他人事のようだった。
 まあ、気持ちは分かる。
 バイオテロ組織の“コネクション”が、どうして爆弾テロなんかするのかと。
 恐らくは“コネクション”の名前を勝手に使った愉快犯だろうが、その愉快犯が本物の爆発物を使わないとは限らないので、警察が出動するわけだ。

 愛原「それと、ここに来る途中なのですが……」
 善場「はい?」

 私は電車が上野駅を発車した時の話をした。
 すると、係長の顔色が変わった。

 善場「直ちに地下に避難しましょう!まだ、霞ケ関はBSAAとの交渉を終えていません!」
 愛原「ええっ!?」
 善場「リサを呼んできてください!」
 パール「か、かしこまりました!」
 愛原「係長?」
 善場「愛原所長!所長が乗られた電車は、遅延していましたか?」
 愛原「いいえ。ほぼダイヤ通りだったかと思いますが……」
 善場「少し調べれば、あの電車の行き先が分かります!そして、新橋に止まることも分かるでしょう。BSAAはリサが愛原所長と共に行動していることを知っているはずです。そして、新橋に止まる電車に乗っているのを見たということは、ここに向かったと推理するでしょう。私もここにいると知っていますからね」
 愛原「な、なるほど……!」
 リサ「ねぇねぇ!一体何があったの!?」
 善場「移動しますよ!」
 リサ「えっ!?」

 善場係長は、ビルのエレベーターに乗り込んだ。
 そして、エレベーターの操作盤を開けて、地下へのボタンを押す。
 まるで、斉藤家のエレベーターのようだ。
 そして、エレベーターのドアが閉まって、下階へと移動した。
 会議室フロアは3階にあるから、3フロア分移動するわけだな。

 愛原「ん!?」

 エレベーターが1階を通過する。
 ここは雑居ビルのエレベーターということもあり、斉藤家のホームエレベーターのような、ドアに窓は無い。
 それでも、1階から怒号が聞こえたような気がした。

 善場「どうやら、本当にBSAAが攻め込んで来たようですね」
 愛原「ま、マジですか……」
 リサ「レイチェルがチクッたんだ!今度はレイチェルを『授業中おもらし』の刑に……」
 愛原「ロケランで仕返しされるからやめなさい」

 エレベーターが『B2』階に到着する。
 ドアが開くと、四方をコンクリートに挟まれた無機質な空間が広がっているだけだった。

 リサ「先生、ここスマホの電波が入らないよ?」
 愛原「マジか」

 その代わり、何故かエレベーターの横には壁掛けの電話機が置いてある。
 また、通路の向こうからは、地下鉄の電車が走行する音が聞こえた。
 善場係長はその電話の受話器を取ると、どこかへ電話を始めた。

 善場「お疲れさまです。○○○の善場です。緊急事態発生です」

 時折何か暗号なのか専門用語なのか分からない単語が出ていたが、どうやら外部に、BSAAに攻め込まれて退避中である旨を関係先に報告しているようだった。
 それが公安調査庁なのかは不明だ。
 デイライトは今や、BSAAからは悪魔に魂を売った組織扱いされているようだ。

 善場「取りあえず、関係機関には報告しておきました。取りあえず、ここから離れましょう」
 愛原「まさか、BSAAが敵に回るとは……。欧州本部は既にグダグダだって聞いてはいたけど……」
 善場「今回はまあ、仕方がありません」

 “青いアンブレラ”が実は1番正義だったりして?
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“私立探偵 愛原学” 「東京へ」

2024-12-19 14:11:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月16日08時00分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区宮町 イージーステイ大宮1階イートインスペース]

 ここで最後の朝食。
 カレーはいくら食べても飽きない。
 ……と、思っていたが、もうしばらくはいいかな。
 リサはビーフカレーをガツガツと食べていたが。

 愛原「食べたらチェックアウトして、デイライトの事務所に向かうぞ」
 リサ「はーい」
 パール「かしこまりました。警察の方は大丈夫なのでしょうか?」
 愛原「善場係長の話では、公安調査庁が動いているらしいから、特に心配はしなくていいらしい。もしも、それでも警察が来たら、善場係長達に振っていいってさ」
 リサ「なるほど……」
 愛原「問題は、BSAAだ。そっちはまだ偽情報に踊らされているらしいから、BSAAが拘束してくる恐れがある」

 因みに公安調査庁が調査機関を設けて……というのは、本来は秘密なので、公言してはいけない。
 本当は善場係長達は、私達にもそれは内緒にしたかったのだろうが、そうもいかなくなってきたということだ。

 愛原「だからGPSは、事務所に着くまで切ったままでいいとのことだ」
 リサ「なるほと、分かった」

 滞在先が窓の少ない……というか、殆ど無いカプセルホテル兼ネカフェで良かったと思う。

 パール「途中、郵便ポストに立ち寄っても宜しいですか?」
 愛原「ん?」
 パール「マサ宛てに書いた手紙を出したいので」
 愛原「ああ、いいよ。確か、途中にあったな……」
 リサ「駅前ならあるよね?」
 愛原「最悪、駅の中にもある」

 ここに来る直前に立ち寄ったコンビニで、パールは便箋と封筒と切手を買っていた。
 あれはそういうことだったのか。

 愛原「今日は金曜日だから、今日出しても、届くのは来週月曜日になりそうだな」
 パール「ええ。でも、特に急ぎというわけではございませんので」
 愛原「そうか」

[同日09時30分 天候:晴 さいたま市大宮区錦町 JR大宮駅→高崎線1853E列車・4号車内]

 カプセルホテルをチェックアウトして、大宮駅に向かう。
 埼玉県の代表駅のすぐ近くということもあり、商店街や駅前の道は多くの人が往来していた。
 普通、警察はこういう所では容疑者を捕まえないらしい。
 人通りの少ない場所などに来た時に、ようやく捕まえに来るのだそうだ。
 刑事ドラマでも、東京駅などの巨大な駅の構内で犯人を捕まえる描写が無いのは、何も撮影現場に困るからではなく、事実だからである。
 但し、痴漢などの現行犯は除く。
 因みに駅に向かう途中の道に、郵便ポストがあったので、パールの手紙はそこに投函した。
 この辺だと、集配局はさいたま新都心の郵便局になるだろうか。
 高橋も、消印がそこだと首を傾げるかもしれない。

 愛原「一応、グリーン券を買っておこう」

 朝ラッシュのピークは過ぎたとはいえ、まだまだ多くの人が行き交う大宮駅。
 券売機で、紙のグリーン券を3枚買い求めた。
 平日だとやや高いが、これも安全にデイライト事務所まで行く為だ。

 パール「先生、警察が……」
 愛原「ん?」

 改札口は手持ちのICカードで入ろうとしたところ、パールが耳打ちしてきた。
 パールの視線に目を移すと、改札口を入った先に、制服警官が立哨していた。

 愛原「あれは、ただ単に警戒警備中の鉄道警察だ。俺達を捕まえに来たんじゃない」

 仮に公安調査庁の通達が間に合わず、埼玉県警が捕まえに来たとしても、恐らく部署が違う。
 ああいった制服警官ではなく、私服警官が捕まえに来るだろう。

 愛原「ただ、挙動不審にしていると、さすがに職質されるからな?しれっとしてろ」
 パール「はい……」

 パールもかつては、散々っぱら警察に追われる毎日を過ごしていたクチだ。
 今でも苦手意識があるのだろう。
 むしろ挑発してナンボの高橋とは、その辺り対照的である。
 改札口を通過して、乗車予定の電車が来るホームに下りた。

 

〔本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の、6番線の列車は、9時33分発、普通、品川行きです。この列車は、4つドア、10両です。グリーン車が付いております。……〕

 愛原「たったの10両か。まあ、グリーン車にしといて良かったかもな」

 そう言って、10両編成でグリーン車の来る位置に並ぶ。

〔「今度の高崎線の電車は、上野東京ライン経由の普通列車、品川行きです。短い10両編成で参ります。ホームの中ほどでお待ちください。停車位置にご注意ください。品川から先においでのお客様は、その後の9時44分発の上野東京ライン、国府津行きをご利用ください」〕
〔まもなく、6番線に、上野東京ライン、普通、品川行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、4つドア、10両です。……〕

 下り方向から眩いHIDランプを光らせて、電車がやってきた。
 フルカラーLEDの行き先表示がよく見える。
 いくら朝ラッシュのピークが過ぎているとはいえ、たったの10両では、普通車はそれなりに賑わっていた。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。6番線の電車は、上野東京ライン回りの品川行きです。品川止まりの電車です」〕

 大宮駅でぞろぞろと降りて来る。
 目視で確認できた所、まるっと2人席が空いたのは平屋席の方だったので、そちらに向かった。

 

 パールには申し訳無いが、近くの空いている通路側の席に座ってもらうことにする。
 平屋席のメリットは、荷棚があること。
 なので、機内持ち込み可程度の荷物なら、そこに置くことができる。

〔「この電車は、上野東京ライン直通、普通列車の品川行きです。まもなく、発車致します」〕

 座席に座ると、ホームから発車メロディが聞こえて来た。

〔「6番線から、上野東京ライン、品川行き、発車致します」〕
〔6番線の、上野東京ライン、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 電車のドアが閉まり、スーッと動き出した。

〔この電車は、高崎線、上野東京ライン直通、普通電車、品川行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。グリーン券を車内でお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、御了承ください。次は、さいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 愛原「今日は蒸し暑くなりそうだな……」
 リサ「ねー?服全部脱ぎたい」
 愛原「ここではダメだぞ?」
 リサ「家に着いてからね」
 愛原「着替えるか、風呂入る時だけにしてくれよ?」
 リサ「ずっとシャワーだけだったから、今夜はお風呂に浸かりたいね」
 愛原「それは確かに」
 リサ「先生と一緒に」
 愛原「……それはまた別の機会に」
 リサ「えー?」

 私はスマホを取り出すと、善場係長に上野東京ラインの電車に大宮駅から乗った旨をメールで報告した。
 ここから新橋までは、およそ40分の鉄道旅である。
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“私立探偵 愛原学” 「解決に向けて……」

2024-12-18 20:39:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月15日13時00分 天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区宮町 イージーステイ大宮1階イートインスペース]

 昼食はカップラーメンにした。
 ここの宿泊客はカレーライスの他、カップラーメンも無料で食べ放題である。
 カップラーメンの他にも袋麺やカップ蕎麦、カップうどんもあった。
 ただ、カップ焼きそばは無かった。
 他にもインスタントの味噌汁もあるし、ドリンクバーではコーンスープを出すこともできる。
 今のところ、まだ善場係長からの連絡は無い。
 パールは風邪気味でダウンした為、手持ちの市販の風邪薬を飲ませて休ませる。
 高熱こそ無いものの、微熱があった為、館内の自販機で冷たい水のペットボトルを買い与え、これで額を冷やすように伝える。
 カプセル内は飲食禁止となっているが、ペットボトルはOKとのこと。

[同日18時00分 天候:雨 イージーステイ大宮1階イートインスペース]

 夕食は食べ放題カレーのビーフカレーにした。
 店舗オリジナルのレシピでこだわりを持って作った……とのことだが、レトルト感はどうしても拭えない。
 とはいえ、けして味は悪くなく、大盛りを平らげることができた。
 パールはカプセルで休んでいるとのことで、夕食はリサと一緒に取った。
 このスペースもまた24時間開いているので、夜中に小腹が減っても利用することができる。
 そこは24時間営業のカプセルホテル兼ネットカフェである。

 リサ「善場さんからは、まだ電話無いの?」
 愛原「そうなんだよ……」

 私は項垂れた。
 こりゃあ、本格的に対策を練らないといけなくなる。
 デイライトから報酬を受け取れないばかりか、私達までBSAAや警察に逮捕されるかもしれないのだ。
 拘束されたらカレーなど食べれないだろうからと、今のうちに食べておく。

 リサ「わたし、土曜日から停学明けだけど、行けるのかなぁ……?」
 愛原「分からん。その辺も含めて明日、デイライトの事務所に行ってみよう」

 その前に拘束されるかもしれんがな。
 テレビやネットのニュースでは、相変わらず静岡県富士宮市郊外の事件の事を報道していたばかりか、斉藤元社長の家にBSAAが緊急捜査に入ったというニュースもやっていた。
 そして、BSAAが国際バイオテロ組織“コネクション”の関係者を追っていると……。

 愛原「……俺達、『コネクション』の関係者扱いだで?どうするよ?」
 リサ「もしも先生が死刑になるようなことがあったら、わたしもできる限り暴れるからね?東京にTウィルスから特異菌まで、全部ばら撒くんだ!」
 愛原「おいおい、勝手に殺すなよ……」

 地中海でTアビスをバイオテロ組織ヴェルトロにばら撒かせたモルガン・ランズディールでさえ、禁錮20年だというのに。
 70代の被告に禁固20年だから、ほぼほぼ終身刑のようなものだ。
 バイオテロの首謀者が死刑や終身刑にならなかったのは、それまでは真面目にバイオテロ撲滅に勤しんでいた功績と、いくらテロ組織と結託したとはいえ、結果的にそのテロ組織を潰したという成果が認められたというのもある。
 とはいえ、FBCの存在感を増す為にマッチポンプを行った罪は裁かれて、禁錮20年とのこと。

[同日21時30分 天候:雨 イージーステイ大宮2階カプセルスペース]

 シャワーを浴びて、宿泊しているカプセルに戻る。
 そして、金庫に入れて充電していたスマホを取り出すと、着信履歴を確認した。
 それは全てがメール着信であり、仕事関係や無関係なダイレクトメールが何通かあったが、その中に善場係長からのメールがあった!

 愛原「!!!」

 早速、開いて確認する。

 善場「『愛原所長、お疲れ様です。まだ、警察機関やBSAAには拘束されておりませんでしょうか?もしまだでしたら、お話ししたいことがあります。私共、ようやく警察機関からの拘束を解かれて、移動中です。宜しければ、お電話ください』」

 とのことだった。
 着信があったのは21時5分だから、私がシャワーに行って5分くらいにメールされたらしい。
 早速私はスマホを持って、1階に下りた。
 それから、掛け直す。

 愛原「もしもし、善場係長ですか!?」
 善場「愛原所長、お疲れ様です。今、御無事ですか?」
 愛原「おかげさまで。リサやパールも無事です。今、さいたま市の……」
 善場「宿泊施設におられるわけですね?」
 愛原「そうです!」
 善場「かしこまりました。私共も今、静岡県内を移動中です」
 愛原「先ほど、警察署から出られたというわけですか?」
 善場「さようです。本庁まで話が行きまして、本庁の職員が動いてくれまして、ようやく釈放です」
 愛原「そうですか。警察もかなり強引ですね」
 善場「警察機関に対する抗議等は、本庁に任せます。それより明日、こちらの……デイライト東京事務所まで来れますか?そんなに早い時間でなくて良いので」
 愛原「分かりました。伺います。ただ、警察機関とかは……」
 善場「大丈夫です。本庁が動いていますので、警察機関はもう動くことはないでしょう。それでも、もしも拘束された場合は私共の名前を使って頂いて構いません。私共の方から本庁を通して、その警察署に働きかけますので。問題は、BSAAですね。BSAAは私達が“コネクション”に魂を売ったと誤解しているようですので、こちらも誤解を解かなくてはなりません」
 愛原「実は係長、その事ですが……」

 私は今、BSAAからの追跡を逃れる為、GPS機能付きのアプリをアンインストールしたこと、そしてリサのGPSも切っている旨を話した。

 愛原「BSAAに対する敵対行為と取られかねませんが……」
 善場「仕方が無いですね。これに関しては翌日、私共の事務所に来られるまで、そのままにしてください。ただ、リサのGPSを切っているということは、もしも今のタイミングで他のバイオテロ組織などがリサを拉致したとしても分からないということです」
 愛原「あっ……!」
 善場「今のところは大丈夫のようですが、一応、所長達の宿泊先の名前と住所をメールで送ってください。口頭で言う必要はありません」
 愛原「分かりました。係長方は、これからどうされるおつもりですか?」
 善場「今、静岡事務所の者に、新幹線の新富士駅まで送ってもらっているところです。急げば、東京行きの最終列車に乗れそうなので、それで帰京する予定です。その頃にはもう深夜帯になりますので、話は翌日ということにさせてください」
 愛原「了解しました。引き続き、明日のチェックアウトまでは、施設の外に出ないようにします」
 善場「よろしくお願いします」

 私は電話を切ると、急ぎ足で2階の男性用カプセルフロアに戻った。
 ここから先がセキュリティエリアとなり、宿泊者のみが受け取れるカードキーでないとドアが開かない。
 急いで自分のカプセルに戻ると、カーテンを閉めて、リサとパールにグループLINEを送った。
 善場係長と連絡が取れたことと、明日にはチェックアウトしてデイライトの事務所に向かうこと、そして、明日のチェックアウトまではこの施設の外には絶対に出てはならないということを伝えた。
 パールからはすぐに既読が付いて、了承の旨の返信があったが、リサが既読すら付かないので心配になった。

 愛原「リサ、どうした?」

 と、メッセージすると、パールが、

 パール「リサさんは今、シャワーに行っていますので、すぐには返信できません」

 とのことだった。

 パール「戻って来たら、私の方から、先生のLINEを確認するように伝えておきます」

 とのこと。

 愛原「そうか。じゃあ、宜しく頼む」

 と送信すると、私は再びカプセルから出た。
 そして、自販機コーナーに向かった。
 風呂上がりの飲み物を確保する為だ。
 イートインスペースにドリンクバーはあるが、それをカプセルに持ち込むことはできないので。
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“私立探偵 愛原学” 「カプセルホテルでひきこもり」

2024-12-16 20:43:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月15日08時45分 天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区宮町 イージーステイ大宮]

 館内着を着たまま、1階のイートインスペースで朝食を取る。
 リサとパールと一緒に食べたが、パールがやや疲れ気味だ。

 愛原「大丈夫か、パール?」
 パール「ええ、大丈夫です。今、私達の服を洗濯しているところでして、それが終わったら、また少し休みます」
 愛原「ああ、そうするといい。どうせ今日は何もできん」

 外は雨だし、何より善場係長から連絡が来ない。
 連泊の申し込みはできたので、このままここにもう1泊することになりそうだ。
 但し、いつまでもここにいるわけにはいかない。
 もしもこのまま連絡が無くて翌日を迎えたら、その時はここを出て、新橋のデイライト事務所に向かうつもりだ。
 かなり危険かもしれないが。
 まだデイライト東京事務所には電話していないが、後で電話してみたいと思う。
 朝食は朝カレーにした。
 既に電気式の寸胴にカレーが入っており、炊飯器も置かれているので、そこから自由に取って食べて良いことになっている。
 私はオニオンカレーにしてみた。
 玉ねぎタップリのカレーかと思っていたが、そういうわけでもなく、色合い的にリサの食べているビーフカレーとどう違うのかよく分からなかった。
 昨日の夕方から何も食べていない為か、朝から大盛りカレーを食べてしまった。
 他にも食べ放題の物にカップラーメンなどがあり、昼はそれにしようと思う。

 愛原「リサの方はどうだ?」
 リサ「どうって?」
 愛原「秋田の太平山美樹とか、学校の『魔王軍』とか……」
 リサ「ああ、ミキね。連絡したよ。そしたら、従兄弟?と、ひいお爺ちゃんが旅行に行ってたから、それじゃないかって。伊豆半島に、ひいお爺ちゃんの知り合いがいるから、会いに行ったんだって。でも、ひいお爺ちゃんは歳だから、その付き添いで従兄弟も一緒に行ったらしいよ?」
 愛原「そうなのか。その従兄弟君が、リサのことを気にしているようだが?」
 リサ「『わたしには愛原先生がいるから、わたしの事は諦めてって言っといて』ってLINEした」
 愛原「そうか。で、何だって?」
 リサ「『伝えとく』だって。あ、あと、『金棒も新しいの送るから。着払いでヨロシク』だってさ」
 愛原「あ、そう。まあ、いいや」

 鬼の里まで集荷に行く運送会社も大変だ。

 愛原「レイチェルは?」
 リサ「LINEしてもダメだね。どうも、今日は学校休んでるみたいだよ」
 愛原「どうしてだ?」
 リサ「そりゃあ、わたしの捜索でもしてるんでしょうよ。でも、先生の言う通りGPSは切ったし、アプリもアンインストールしたから、探しようが無いね」
 愛原「恐らくヘリを飛ばして上空から捜索しているんだろうが、今日も1日雨だそうだ。梅雨前線に感謝だな」

 さすがに明日は梅雨晴れとなって暑くなるそう。
 梅雨寒となるのは、今日まで。
 それもまた、私達がタイムリミットを明日のチェックアウト時間までとした理由だ。

 愛原「俺はパソコンで少し仕事してるから、2人は適当に寛いでていいぞ。但し、この店からは出ないようにな」
 リサ「はーい。……ねぇ?あそこのスナック菓子とかは買っていい?」
 愛原「いいよ」

 イートインコーナーとは別の場所に、有料商品の販売も行われている。
 アルコール飲料や、それのおつまみ用なのか、スナック菓子がそうだ。

 愛原「さすがにアルコールはダメだからな?」
 リサ「はーいw」

[同日09時30分 天候:雨 イージーステイ大宮・ランドリーコーナー]

 朝食が終わると、私はランドリーコーナーに行って、昨日着ていた服や下着を洗濯した。
 ここにはワーキングスペースもあったので、洗濯機を回している間、ここでパソコン作業をすることにした。
 その間に善場係長に電話をしたが、やはり出なかった。
 もしかすると、どういうわけだか、このスマホだと出ないのかもしれない。
 理由は不明だが。
 その後で、デイライト東京事務所に掛けてみる。
 知らない女性職員が代表電話に出たが、私が名前を名乗り善場係長のことについて聞いてみた。

 職員「担当外ですので、お答えしかねます」
 愛原「昨夜、静岡県警富士宮警察署に白峰主席と共にいらっしゃったそうですが、拘束されていたりとかはありませんか?」
 職員「お答えしかねます。……が、関係者総出で情報収集並びに対応に当たっております。強いてお答えできるのはここまでです」
 愛原「分かりました」

 デイライト東京事務所も、善場係長達の身に起きたことは把握していて、それに関する情報収集や対応を協議しているということか。
 善場係長達が違法・触法行為をされるとは思えないので、恐らく係長方のバックボーンである公安調査庁が、静岡県警本部に何がしかの圧力を掛けるものと思われる。
 取りあえず、ここまでだな。
 私はパソコンの作業を始めた。
 バッテリー内蔵ではあるが、カウンター席にコンセントもある。
 店内にはWiFiも飛んでいるので、これでメールのやり取りは可能だろう。
 この時、ネットニュースで、『斉藤容疑者、モスクワを離脱か?』というニュースを見つけた。
 この斉藤容疑者というのはやはり斉藤元社長のことで、今までロシアに潜伏しており、モスクワ市内にいたということだが、最近になってそこからいなくなったのではというニュースであった。
 ウクライナとの戦争激化の為、ロシアを離れることにしたのではないかとされているが、その方法は不明とされている。

 愛原「ああ、そうか……」

 私は少し納得した。
 先日観た斉藤元社長の画像。
 窓から明かりが差し込んでいたから、外国だと思っていたが、やはりそこはロシアだったか。
 そして……彼が画像を送って来た場所は、潜伏先ではない。
 いや、潜伏しながら移動しているという意味では、潜伏先なのかもしれないが……。
 何が言いたいのかというと、斉藤元社長は、確かにモスクワを脱出した。
 そして彼の言う通り、こちらに向かっている。
 しかし、その交通手段は飛行機ではなく……。

 愛原「シベリア鉄道だ……」

 外国人旅行客にも利用が開放されているとはいえ、まだまだ軍事色の強い鉄道路線。
 BSAAの介入など、ロシア軍が許さないだろう。
 国連の常任理事国、ロシアが『右向け右』と言えば、国連軍の一派であるBSAAも右を向かざるを得ない。
 もちろん、列車内でバイオテロが発生すれば、話は別だが。
 ただ単に、『バイオテロの容疑者がいるかもしれないから』という理由で介入は許されない。
 『それなら、まずは地元警察にお任せください』となるからだ。
 日本は敗戦国だし、今の左傾化した政権では、外国人にペコペコしている状態だから、平気で介入を許しているが。
 恐らくは、偽情報をいくつも流したのは斉藤元社長。
 そして、それに踊らされたのがBSAAや日本の警察機関であったというわけだ。
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“私立探偵 愛原学” 「大宮に泊まる」

2024-12-16 16:44:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日22時45分 天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区宮町 イージーステイ大宮]

 電話を終えた私達は、宿泊先へと向かった。
 外は雨が本降りになってきた上、傘は持っていなかったが、幸い宿泊先はアーケード街の中にあり、濡れたのはその外側にいる時だけだった。
 途中にあるコンビニにリサが寄りたがったので、そこに立ち寄らせてやる。

 愛原「多分、アメニティーとか、食べ物とか、中にあると思うぞ?」
 リサ「ちょっとね……」

 宿泊先は漫画喫茶に併設されていた。
 当然ながら、24時間営業である。

 スタッフ「男性1名様、女性2名様のご利用ですね?」
 愛原「はい」

 初めて利用するということもあって、スタッフが丁寧に館内のことについて説明してくれる。

 愛原「1泊で予約したんだけど、連泊したい場合は、できますかね?」
 スタッフ「はい。部屋が空いていれば可能です。今ですと……まだ、チェックインして頂くお部屋そのままで連泊が可能ですが、お取りしますか?」
 愛原「お願いします」
 リサ「先生?」
 愛原「善場係長の指示が無いことには、俺達も動けんよ。いいか?指示があるまでは、ここから出ないように。分かったな?」
 パール「承知致しました」

 カードキーを受け取る。
 男性専用エリアは2階とのことで、パールやリサとは、ここでお別れとなる。
 但し、イートインコーナーは共有スペースなので、そこで落ち合うことは可能だろう。
 私は荷物を持って2階に上がった。
 エレベーターは無いので、階段で上がることになる。
 新しい施設だからなのか、カプセルは広めである。
 小さな荷物なら、そのままカプセル内に持ち込めるほど。

 愛原「ふう……」

 このまま眠りたいところだが、さすがに緊張で変な汗とかかいてしまったし、シャワーくらいは浴びないとな。
 アメニティーの中には館内着もあるので、これに着替えて館内を過ごすことができる。
 スマホを見たが、善場係長からの着信は無かった。
 まさか本当に逮捕されてしまったのだろうか?
 本当に、今何が起きているのか分からない状態である。
 私はカプセルの中で館内着に着替えた。
 急な泊まりの為、換えの下着も1着は持って来ているようにしている。
 今回はそれで正解だったようだ。
 ただ、もう1泊するとなると、選択が必要だ。
 幸いここにはコインランドリーがあるようなので、そこで洗濯は可能だ。
 リサ達にも、グループLINEでそれを伝えておいた。
 まあ、疲れたので、洗濯は明日しよう。
 明日、何か動きがあるかもしれないし。
 財布などの貴重品は、カプセル内の金庫に入れ、アメニティの袋に入っていたタオルなどを持って、シャワー室に向かう。
 移動の際もカードキーが必要とのことで、それは忘れずに持って行く。
 因みにカプセルの出入口はカーテンなので、鍵は無い。

[同日23時30分 天候:雨 同地区内 イージーステイ大宮]

 シャワー室は広く、16ものブースがあった。
 ボディソープやシャンプーなども備え付けられていて、それで体を洗うことができた。
 あとは歯磨きをして、取りあえず寝るとしよう。
 リサには、BSAAのGPSを切るように言ってある。
 これはBSAAに対する反逆行為と取られかねないが、そもそも偽情報で私達を捕まえようとしているBSAAに居場所を教えるわけにはいかない。
 当然、アプリもアンインストールだ。
 部屋に戻る前に、自販機コーナーで水のペットボトルを買っておいた。
 カプセルホテルとネットカフェは空間が別々になっていて、そこを行き来するのには、専用のカードキーを使わないといけない。
 ではカプセルホテル利用者は、一切マンガが読めないのかというと、そうでもない。
 カプセルが並んでいるエリアにも、そこかしこにマンガが入った棚が置かれており、また、自販機コーナーも、自販機の数より、マンガの本棚の方が主張が強いくらいだ。
 それでも足りない場合は、ネットカフェエリアのマンガも読んで良いとのこと。
 私は明日、持ち込んだノートPCで仕事をするつもりだが、リサ達にはマンガの読破で時間を潰してもらうしかない。
 あとはWiFiも飛んでるから、手持ちのスマホで過ごしてもらうか。
 コンセントはカプセル内にもあるし、テレビもある。

 リサ「先生、明日は何時に起きればいい?」

 部屋に戻ってスマホを確認すると、リサからLINEが来ていた。
 私は、『何時でもいい。善場係長から連絡が来るまで、明日もここで過ごすことになる。マンガ読むか、スマホやるか、テレビ観るか、好きに過ごしてくれ』と、答えておいた。
 するとリサは、イートインスペースのカレーをもう食べたのか、それが美味かったと回答してきた。
 宿泊者は、イートインスペースにある食べ物は基本的に無料で食べ放題とのことだ。
 早めに夕食を食べてしまったので、やや小腹が空いている感があったが、それ以上に疲れていたので、今夜はもう寝ることにした。
 最後に善場係長には、『いつでも連絡お待ち申し上げております』と、メールを送っておいた。

[同日08時10分 天候:雨 イージーステイ大宮2階・カプセルホテル]

 愛原「んん……」

 緊張の為か、夜中に2~3回ほど起きた。
 次に目が覚めた時には、8時を回っていた。
 どうやら、周囲の宿泊客がチェックアウトの為にワサワサしており、それで目が覚めたらしい。
 個室ではないので、どうしてもそうなる。
 気になる場合は、耳栓とかが必要になるのだろう。
 まあ、そこそこ眠れたので良しとしよう。
 枕元に置いたスマホを見ると、メール着信があった。
 だが、メールは仕事関係の物と、通販サイトからのダイレクトメール、そして上野利恵からの物が1通あるだけで、善場係長からのメールや着信は無かった。
 利恵のメールを見ると、『秋田の太平山家の方より、リサさんの個人情報を教えろと来たのですが、どうされますか?』とのことだった。
 どうやら、リサに関心を寄せている鬼の男だろう。
 太平山美樹の親戚筋と思われる。
 なので私は、『太平山美樹というコが、リサと知り合いのようなので、そのコに聞いてくれと伝えて』と返信しておいた。
 あとはリサからのLINE。
 リサも起きたようで、『一緒に朝ご飯食べよう!』と誘って来た。
 私は顔を洗ってから、そうすると返信しておいた。
コメント
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