社会主義のもっとも厭うべき点、そのためだけでも私がこの主義
に賛同しかねるのは、社会主義が嫉妬を人間の行動の主なバネにし
ており、また実践活動においてもそれを信奉者に教えこんでいるこ
とである。
嫉妬や、それと密接な関係のある意地悪な満足は、貪欲とならん
で、まだ改善されない人間の本性の一番悪い性質である。
ただ、いかんながら言いそえなければならないのは、これらの性
質が他の領域においてもふんだんに見受けられる、しかも諸国家み
ずからがその実例を示していることである。
なぜなら、国家が実際政治と呼んでいるもの、また互いに監視し
あい、相手のどんな勢力拡大にたいしてもたえず妬(ねた)ましげ
な対抗の努力をもって応じるよう駆り立てられるのは、大がかりな
嫉妬よりほかのなにものでもない。
嫉妬がトルコやシナを保全せしめ、新たな戦艦の建造をうながし、
また、現今の戦争に対してもその責めを負うべきものだ。自分の属
する国家が、さけがたい害悪、また許さるべき措置だなどと日々公
言してはばからぬ事柄を、どうして個人が邪悪だと考えそれを避け
ねばならないのだろうか!
いわゆる強大政治は、まさしくキリスト教とは明白に矛盾するも
のである。その代表的政治家はおそらく二つの魂をもっているにち
がいない。一つは私用のために、一つは公用のために。
これはスイスの法律家カール・ヒルティ(1833~1909)の「眠ら
れぬ夜のために」六月十七日よりの引用です。彼の死後、共産主義
国家が生まれましたが、結末はあなたもご存じの通りです。嫉妬を
バネとする限り、良い結果は得られないようです。
小田原梅干し:梅丸